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今月の季語 二月 猫の恋

caffe kigosai 投稿日:2026年1月17日 作成者: masako2026年1月17日

六年前に〈囀り〉すなわち〈鳥の恋〉をテーマにしました。今月は身近な哺乳類、猫の恋をみていきましょう。

猫の恋やむとき閨の朧月                      芭蕉

うらやまし思ひきる時猫の恋                 越人

濡れて来し雨をふるふや猫の妻            太祇

同じ哺乳類でも〈鹿の恋〉(=秋)は雅なものとして和歌に詠まれてきました。卑俗な〈猫の恋〉は俳諧では句材として好まれ、江戸期以降多くの例句を見ることができます。

山国の暗(やみ)すさまじや猫の恋                  原 石鼎

武蔵より相模へ通ふ猫の恋                            有馬朗人

闇も濃く深いですが、その闇を破るように展開する猫の恋です。猫の恋ゆえにすさまじくなっている「暗」なのでしょう。

武蔵から相模へ通うには、多摩川を渡らねばなりません。水が嫌いな猫ですが、恋のためなら泳いででも渡るのかもしれません。

恋する猫を〈猫の夫(つま)〉〈猫の妻〉と呼びますが、〈恋猫〉は雌雄を問わず使えます。

恋猫の恋する猫で押し通す                           永田耕衣

恋する猫で押し通すと、怪我をしたり、汚れたりします。

恋猫の丹下左膳よ哭く勿れ                          阿波野青畝

恋猫となりしにはかの汚れかな                  遠藤若狭男

昨今の飼猫は外へは出してもらえませんが、昔はその点おおらかだったようです。ふらっと出ては何日も帰らず、飼主を心配させることも。

恋猫の皿舐めてすぐ鳴きにゆく            加藤楸邨

恋猫のかへる野の星沼の星                          橋本多佳子

それでも餌は律儀に食べに帰ってくるのが楸邨の猫です。一方多佳子の、出かけたきりなかなか戻らなかった猫は「五郎」。多佳子の猫好きは有名ですが、生涯に五匹の猫を飼ったといいます。五郎はその五代目です。

〈春の猫〉も〈恋猫〉と同義に使われます。

尾は蛇の如く動きて春の猫                           高浜虚子

恋の結果として生まれる〈猫の子〉〈子猫/仔猫〉も春の季語です。

百代(はくたい)の過客(かかく)しんがりに猫の子も 加藤楸邨

百代の過客」は芭蕉の紀行文『おくのほそ道』の冒頭にある語です。この世に生きる人は皆旅人のようなものだ。旅人の中には猫の子もいて、後ろからちょこちょことついてゆく、という句。新たにこの世へ仲間入りをした猫の子へ、愛に溢れた挨拶を贈っているようです。楸邨が亡くなったときには、

猫の子をのこし楸邨逝き給ふ                       原田 喬

と詠まれてもいます。泣き笑いしてしまいそうな追悼句です。

スリッパを越えかねてゐる仔猫かな                 高浜虚子

あそびけり子猫のいやがることをして               行方克巳

一生懸命な仔猫のさまは愛らしく、ゆえにちょっといじってみたくもなるのでしょう。(正子)

今月の花(1月)南天

caffe kigosai 投稿日:2025年12月25日 作成者: mitsue2025年12月31日

福島光加 作

お赤飯にその葉が添えられていたり、庭の鬼門とされる方角に植えられていることで南天に出会うことがあるかと思います。これは、南天が<難を転じる>ということで縁起の良いとされる植物のひとつだからです。

お正月には赤い実のつく南天(Nandina domestica)をいけることが多くあります。白南天という白い実をつける南天もありますが、こちらの葉は紅葉しません。

17世紀に渡来したと言われるヒイラギ南天(Mahonia japonica)と言われる種類は、光沢のある葉がヒイラギのようにとがっています。南天と言われますがこの種類は学名にNandinaがつかず、先の南天とは違い、黄色の小さな花が咲きます。

ヒイラギ南天(門下の作品)

秋になると、枝の先に放射状についた黄褐色や紅色の葉が目を引きます。中心にある7ミリ程の粉をふいたような黒紫の実に注目!この秋の展覧会では、繊細な花びらの糸菊といけた門下がいて、季節感を強調した作品となっていました。

また細羽ヒイラギ南天と言われるものは、いけばなをいける方なら岩南天という名でおなじみでしょう。

新年、我が家は赤い実をつけた南天をいけてみたいと思っています。飾るところが問題、と初心者の若い方がおっしゃるので、実南天と言って、南天の実だけを若松一本とドアに飾ったらいかがかしら?水を入れる小さなチューブに生のお花を一、二本いれ、水引きをかければお正月を迎えられますよ!!

私たちの流派のいけばなは、レリーフといって壁に制作するレッスンも教科書にはあります。それをいかすチャンスではないでしょうか、と。

南天をたくさんいけ、もし難が押し寄せたら南天を味方に、幸いに転じる年にしていこう、と思っています。

皆様も健康に気を付けられて、2026年が良い年になりますように。(光加)

加賀の一盞(1月) かぶら寿し

caffe kigosai 投稿日:2025年12月22日 作成者: mitsue2025年12月22日

 お正月にはやはりお雑煮、全国それぞれ味付け、具材、餅の種類など特色がある。

 ご当地加賀の金沢は極めてシンプル、醬油味のすまし汁に角餅、三つ葉と削り節を乗せただけ。その理由は雑煮椀のまわりには豪華なお節の重箱、鰤の刺身、治部煮などたくさんのご馳走が並んでいて、お雑煮に具材を入れる必要が無い百万石なのだ。
 
 そこで本題、金沢の正月に無くてはならないかぶら寿し。材料はこの季節みずみずしさと甘みを増した青首かぶら、同じく脂ののった天然鰤、そして酒米にも高級な山田錦の米糀。作り方は皮をむき厚めの輪切りにしたかぶらに切れ目を入れ3日ほど塩漬けにする。別に塩漬けにした鰤のそぎ切りをかぶらにはさみ、糀とお米で作った甘酒で漬け込む。7日間ほどで出来上がる。
 
 むかし母方の実家に行くと、おばあちゃんがあっという間に治部煮を作り、自分で漬けたかぶら寿しを出してくれた。自作するのが当たり前だったころの話。ただかぶら寿しは長持ちしない、漬けて2週間もすれば酸っぱさが増してくる。今でも買い求めるときはお店の人に美味しく頂ける日にちを聞くことが肝心だ。
 
 お節の箸休めにひとつまみ、雑煮を食べながらひとつまみ、何もなくても燗酒にひとつまみ、価格は高めだが金沢文化を秘めた味は見のがせない。

頬はさむ君の手の平かぶら寿し  淳

「カフェきごさいズーム句会」報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年12月21日 作成者: mitsue2025年12月22日

第三十三回「カフェきごさいズーム句会」(2025年12月13日)の句会報告です。(  )は添削例です。

第一句座              
【特選】
冬館あの日のままのチェスの駒      鈴木勇美
もうすこし遠くへ吹かれたき落葉     斉藤真知子

【入選】   
気遣ひは少し温めの柚子湯かな      赤塚さゆり
のぞき見る水の鏡に冬もみじ       矢野京子
土塊の温かき秋球根植ふ         早川光尾
(土塊の温かきかな秋球根)
浮雲の影まろびゆく大枯野        伊藤涼子
悠然と潮吹く鯨小笠原          藤井和子
そばがきや遠き昔の母の笑み       藤井和子
仲代が木の葉時雨の旅を逝く       早川光尾
その中の一番太き大根買ふ        斉藤真知子
白い息切れすぎ無用町研ぎ屋       立花武
(息白く町の研ぎ屋の包丁研ぐ)
初雪やわが青春の荒井由実        矢野京子
クリスマス天にも地にも星あふれ     伊藤涼子
太古の光メタセコイアの冬紅葉      早川光尾
母の手を離せばすぐに悴んで       鈴木勇美
冬雲に触れんばかりや海猫(ごめ)のこゑ  葛西美津子
花枇杷や五島遥けきマリアさま      花井淳
(花枇杷や五島遥けきマリア像)
とりどりの虫の寝床や枯葎        藤倉桂
(とりどりの虫の寝床や枯葎)

飛岡光枝出句
煮凝にあるかなきかの鮒の骨  

第二句座(席題・狐、障子)
【特選】        
貼り立ての障子に朝の来てをりぬ     斉藤真知子
臥す母の命養ふ障子かな         藤倉桂     
薄々と模様の浮かぶ障子かな       矢野京子
(薄々と雪花浮かぶ障子かな)
訪ね来て障子に映る人影や        前田悠
(訪ね来て障子に映る影やたれ)

【入選】
子の部屋の破れ障子はそのままに     斉藤真知子
このところ夜遊びの狐ばかりかな     高橋真樹子
(この里は夜遊び狐ばかりかな)
耳立てて黄泉の声聞く狐かな       葛西美津子
膝の子の絵本に狐鳴く夜かな       高橋真樹子

飛岡光枝出句
白障子母の寝息を確かむる

一月 寒(3)

caffe kigosai 投稿日:2025年12月19日 作成者: masako2025年12月22日

〈寒(かん)〉とは、〈寒の入り〉から〈節分〉(=立春の前日)までのおよそひと月の期間を指します。〈寒中〉〈寒の内〉とも呼び、一年のうちでもっとも寒い時期にあたります。

約束の寒の土筆を煮て下さい                       川端茅舎

寒といふ弩(いしゆみ)をひきしぼりたる            友岡子郷

単に「寒」といえば時候の季語ですが、「寒○○」の形でほかの章にも多く見られます。

寒の月白炎曳いて山をいづ                           飯田蛇笏〈天文〉

寒の水こぼれて玉となりにけり                     右城暮石〈地理〉

罪障のふかき寒紅濃かりけり                        鈴木真砂女〈生活〉

風神を祀らすとかや寒詣(かんまゐり)     後藤夜半〈行事〉

今月は〈動物〉の例をみていきましょう。

寒雀身を細うして闘へり                                  前田普羅

寒鴉己(し)が影の上(へ)におりたちぬ             芝 不器男

いつも見かける雀、鴉も、寒をつけて季語になります。前出の子郷は阪神淡路大震災に遭遇し、こう詠みました。

倒・裂・破・崩・礫の街寒雀                            友岡子郷

動いているものは寒雀だけだったかもしれません。

魚や貝も俳句では「動物」にくくられます(確かに動く物です)。

塩打ちし寒鰤の肌くもりけり                草間時彦

食べ物を旨そうに詠むことにおいて、時彦の右に出る者はいないかもしれないほど。対抗できるのはこの人、

品書きに鰤書き足して鰹消す              鈴木真砂女

銀座「卯波」の女将、食べさせる側の真砂女かもしれません。

寒鯉のかたまつてゐて触れ合はず                  伊藤伊那男

寒鮒を焼けば山国夕焼色                             山口青邨

寒蜆売にふたりの子がをりぬ                 今井杏太郎

身近な存在である鯉、鮒も、寒をつけて季語になります。

〈蜆〉は春、〈土用蜆〉は夏の季語です。要するにいつも食卓に上り得る小貝ですが、寒中にとれるものを特別に〈寒蜆〉と呼びます。「ばけばけ」のおトキさんも売り歩いていましたね。

虫も俳句では動物の仲間です。「寒○○」より「冬○○」の用例が断然多いようですが、冬になっても残っている虫ですから、生死の境をさまよっています。凍蝶は冬の蝶よりさらに哀れな様子です。

日向へと畦ひとつ越す冬の蝶              木内怜子

凍蝶の花にならむと石の上                 遠藤若狭男

石の上でじっと動かない蝶には霜がびっしりと降りているかもしれません。作者は、花になろうとしているのか、と見ています。

「植物」にも寒○○はたくさんあります。

一輪の寒紅梅の天地かな                   深見けん二

山の日は鏡のごとし寒桜                    高浜虚子

寒丹大往生のあしたかな                     黒田杏子

寒菊のほか何もなき畑かな                 山本一歩

植物については別の機会にゆっくり読むことにしましょう。(正子)

「カフェきごさいズーム句会」報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年12月18日 作成者: mitsue2025年12月22日

第三十二回「カフェきごさいズーム句会」(2025年11月8日)の句会報告です。(  )は添削例。
「カフェきごさいズーム句会」は世界中どこからでも参加可能です。(右の案内を御覧ください)見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
松林の松奔放に冬に入る       斉藤真知子
もふ猫に狙はれてゐる障子かな    斉藤真知子
  (はや猫に狙はれてゐる障子かな)
部屋中に酢橘の香る夕餉かな     上田雅子   
【入選】   
機嫌よきうちに写真を七五三      葛西美津子
利酒のちよこを干しては目を細め    矢野京子   
絹雲や赤く染まりて暮れ残る      早川光尾
晩秋に脱皮のごと引っ越しす     立花武
  (暮の秋脱皮するごと引つ越しす)
綿虫にけふはやさしき曇り空
     葛西美津子
茶の花や少し猫背の羅漢様       村井好子
信楽の厚き湯呑や今朝の冬       藤倉桂
古墳ごと甘きくれなゐ柿の山      高橋真樹子
  (古墳抱き甘きくれなゐ柿の山)
秋雨や山芍薬の実の真つ赤       藤倉桂
(秋の雨山芍薬の実の真つ赤)
秋の夜にモロッコワイン雄弁に     立花武
穏やかなけふの血圧冬紅葉       花井淳
山茶花の散るや雀のこゑの中      葛西美津子
つる草に足取らるるや火恋し      藤倉桂
昆布締めの鯛に散らせし黄菊かな    矢野京子
  (昆布締めの鯛に散らして菊の花)
哀しみの背中揺らして熊穴へ      藤倉桂
柊の花一輪のかをりかな        斉藤真知子
燃やしたきもの一抱へ秋の暮      葛西美津子
  (秋の暮燃やしたきもの一抱へ)

飛岡光枝出句
 足裏美しき半跏思惟像冬深む
   

第二句座(席題・焼芋、冬紅葉)
【特選】        
 焼芋屋元安川のほとりゆく     矢野京子
【入選】
 焼芋をガザの紙面に包み込む    高橋真樹子
(焼芋をガザの紙面に包みけり)
 凩の角を曲がれば焼芋屋      葛西美津子
 焼いもや薄暗き路地晴れやかに   藤倉桂
 神の山祈りのごとく冬紅葉     前田悠

飛岡光枝出句
 今年また同じ顔して焼藷屋
   

加賀の一盞(12月)能登の海鼠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月21日 作成者: mitsue2025年11月21日

これを最初に口にした人は大したものだ、と世間でよく言われるものがある。その最たるもののひとつに海鼠がある。まさに海の鼠のような形をしている。ただ髭と足と尻尾が無いだけだ。

この少しグロテスクでもある海鼠、特に能登の海鼠の素晴らしさを今回紹介したい。

11月6日と言えば北陸から山陰にかけての日本海で蟹の解禁日である。その同じ日、能登の海鼠漁も解禁になる。蟹よりも海鼠が待ち遠しく感じる好き者が私を含めて金沢には多い。料理屋で蟹をむさぼっている横で一人寡黙になまこ酢をつまみ、温め酒をちびりちびり楽しむ。これぞ至福のひととき。こりとした歯触りから嚙み切ると淡い風味、お店の三杯酢がからみつく。

ここでさらに海鼠の楽しみをふたつ、そのひとつが海鼠腸(このわた)。なまこの内臓を塩辛にしたもの、身の淡白さからはかけ離れた磯臭さが凝縮されている。これこそ旨味のある能登の地酒の燗が絶妙、ひと口で広がるなまこの磯の香をさらに濃厚にして流してくれる。盃にこのわたを少し入れ燗酒を注ぎ頂く、これこそ通。

もうひとつ、これぞ珍味の王様、干くちこ。金沢ではその高級さから、おくちことも言う。なまこの内臓、その卵巣のみをひと筋ひと筋紐に掛けて干したもの。一辺7センチくらいの三角形が一枚で、作るのに数十キロの海鼠が必要になる。これを少し炙って酒の肴にする。ここまで来ると食通を通り越して粋の領域に入る。もちろん地酒との相性は抜群である。もっと贅沢なのはみじん切りにした干くちこの炊込みご飯。部屋中に広がる芳醇な香り、まさに天国か竜宮城。

蟹の陰に隠れた能登の海鼠、冬の心地よい酔いへと導いてくれる。ぜひご賞味を。

まるまると太るしあはせ能登海鼠  淳

今月の花(十二月)いいぎりの実

caffe kigosai 投稿日:2025年11月19日 作成者: mitsue2025年11月19日

iigirinomi
(今月は2013年12月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

明るい朱色の房になって垂れ下がるいいぎりの実は、ひときわ華やかな晩秋を演出します。いいぎり(飯桐)と呼ばれるのは、昔その大きめの葉にご飯を包んだり、盛ったりしたからといわれています。日本の中でも西では(いとぎり)ともよばれるそうです。

南天桐という別名は、艶やかな丸い実が南天の実の色と形に似ているからでしょう。この実をつけている季節は、木が10数メートルに達する高さであることもあって一段と目立つのですが、それは人間だけでなく鳥とて同じ。遠くから実をながめて楽しもうと思っていた矢先、そこにあったはずの実が下がっていない!

―――花材として綺麗なままをとろうとすれば、そりゃできる限りの高さに鳥よけの網をかけて、実を守るしかないからねーーーいけばなの枝をたくさん扱っている花屋さんの話です。長ければ20センチ近くの房になり、実は秋が深くなるまで枝に残っています。大きな葉がなくなってしまえば、元の枝から切り取って水につけなくても、実は急に落ちたり、表面の皮がすぐにはしおれる事は少ないでしょう。こんな理由もあって、この時期の花展には花材としてよく見かけられます。

木肌は確かに桐に似ています。桐から下駄やたんすが作られるのは他の木と比べると軽めだからといわれますが、この南天桐も実がついているわりに、持ってみると想像していたより軽く感じられます。

実に充分に陽が当たるように、という植物本来の持っている知恵でしょうか、枝は真っ直ぐ羽を広げたように伸びています。そこに下がる房の間隔は隣の房にあまり邪魔にならないよう、絡む事のないよう、うまく配置されているかのように見えてくるのです。

夏も終りのころのいいぎりを見た事があります。その緑の実からは、秋も深まったころの豪華に垂れ下がった姿はあまり想像できません。熟していないため実の形もほっそりとしています。でもこれはこれで面白く、魅力があります。朱赤ではなく白い実をつけた(いいぎり)もあるということですが 私はまだ見たことはありません。

もしもこの時期、いいぎり南天を幸運にも見かけることができたら色と形をじっくり観察してみてください。毎日の散歩の途中、すこし首を伸ばして上をみて探してみてください。都会の真ん中でもいいぎりは意外と回りに見つかるかもしれません。鳥たちに先を越されなければ、ですが。(光加)

十二月 冬籠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月17日 作成者: masako2025年11月20日

新型コロナ禍の籠り居から解放されたかと思いきや、今年の夏はあまりの暑さに籠もって過ごすことに…。暑さがようよう納まり、さあいよいよ秋だと喜んだのも束の間、急速に冷え込むようになってきました。

こうなってくると、暮らしの近代化により実感を失った〈冬籠〉が気になります。歳時記をひもとくと、昔の人がしていた〈冬籠〉が垣間見えます。

まず冬を迎える前に〈冬支度〉をします。これは晩秋の季語です。衣類、寝具、燃料の準備、家まわりの補修をし、干したり漬けたりして保存食の仕込みをします。地方や家庭によってさまざまですが、冬になる前に行う、冬を過ごすための準備全般を指します。

ちなみに〈障子貼る〉も冬支度の一つです。「えーっ」と思った方もおられましょうが、秋の季語であることを覚えておきましょう。

ふるさとへ障子を貼りに帰りけり                     大串 章〈秋〉

独りなり障子貼り替へてはみても                    奥名春江〈秋〉

喋りつつはかどつてゆく障子貼り                    三村純也〈秋〉

いろいろな障子貼りがありそうです。山廬・飯田家では代々の当主が障子貼りの名人だったとか。現当主が先代(父)龍太の腕前もすばらしかったと書いています。

そして冬になると仕込んだ漬物や、干したり塩にしたりして貯蔵した食糧を少しずつ消費しながら暮らしていきます。

妻と我沢庵(たくあん)五十ばかりかな      島田五空

夜ふかしを妻に叱られ干菜汁(ほしなじる)        沢木欣一

塩鮭の塩きびしきを好みけり                    水原秋櫻子

家まわりの防寒・防雪の備えが必要な地方もあります。

高き木に梯子かけたり冬構(ふゆがまへ)          高浜虚子

山祇(やまつみ)の出入りの扉あり雪囲      前田普羅

樹木や草花にも冬構を施します。

霜除(しもよけ)の藁に降る雨だけ見えず          後藤比奈夫

風垣(かざがき)のくくり縄嚙む放ち鶏        皆川盤水

菰巻(こもまき)の松の鱗の落ちつきぬ      永方裕子

家うちでは〈隙間風〉を防ぎ、建具を入れ替えて暖房効果を高めます。

ことごとく北塞ぎたる月夜かな                 大峯あきら

首の骨こつくり鳴らす目貼(めばり)して    能村登四郎

運ばむと四枚屏風に抱きつきぬ                 後藤綾子

濤うちし音かへりゆく障子かな                 橋本多佳子

君と寝む襖(ふすま)の虎に囲まれて                高山れおな

暖房も今ならばスイッチ一つで切換えられますが、かつてはさまざまな使い勝手のものがありました。

スチームや中世の色濃きホテル                千原叡子

一片のパセリ掃かるる暖炉かな                芝 不器男

ストーブの中の炎が飛んでをり                上野 泰

学問のさびしさに耐へ炭をつぐ                山口誓子

今では〈炭〉をつぐのはお茶を嗜む方くらいかもしれません。〈炭〉を使わない家には〈炭斗(すみとり)〉や〈火消壺〉もありません。〈炭売〉という商売もあがったりになります。

ですがまだ歳時記にはこれらの「記憶」が残っています。時には解説にとどまらず考証まで読んでみてはいかがでしょう。(正子)

浪速の味 江戸の味(十一月) 軍鶏鍋【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年11月10日 作成者: mitsue2025年11月10日

いつまで続くのかと絶望的になるほどの夏の暑さでしたが、さすがに十月の声を聞くと東京はぐっと気温が下がり、慌てて衣替えをしました。

気温が下がると急に恋しくなるのが鍋料理。秋晴れの一日、以前から気になっていた東北自動車道の「羽生PA」に鍋を食べに行きました。パーキングエリアで鍋とは?

日光街道、奥州街道から江戸への入り口にあたる栗橋関所にほど近い埼玉県の「羽生PA」には、鬼平犯科帳をモデルにした江戸の街が再現されています。鬼平に登場する様々な店が並び、その一軒が鬼平ファンにはお馴染みの「五鉄」。密偵たちとの連絡場所として物語に頻繁に登場するこの店の名物が「軍鶏鍋」です。

江戸時代初期にタイから日本に渡来したといわれる軍鶏。その名は、タイの旧名「シャム」に由来します。勇猛な性質で闘鶏に使われましたが、引き締まった肉はうまみが濃厚で江戸名物の「軍鶏鍋」は武士や町人に好まれました。

賭博の闘鶏が禁止されてからも、日本各地で食用として品種改良されてきた軍鶏。江戸時代の軍鶏の血統を濃く引き継ぎ、飼育期間が一般的な鶏より三倍近く長い「東京しゃも」という鶏も誕生しています。

現在の「五鉄」の軍鶏鍋も江戸っ子好みの濃口醤油味。ささがき牛蒡がいいアクセント。この店では鬼平に登場する同心木村忠吾の好物「一本饂飩」も味わえます。こちらもみりんの利いた濃厚な汁に驚くほど太い饂飩が鎮座している逸品。

この冬は寒くなるのが早いとの予報、インフルエンザも早々流行期突入とか。「軍鶏鍋」と「一本饂飩」で精をつけて、この冬を乗り切りたいものです。

トントンと二階へ運ぶ軍鶏の鍋  光枝

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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