今月の季語(7月)_青野

一時〈空梅雨〉が心配されましたが、一転〈荒梅雨〉の空模様。降ったら降ったで、降らなきゃ降らないで気の揉めるこのごろです。
この時期の草木の生長には目をみはるものがあります。播いた種からようやく双葉が出たと喜んでいたその場所に、隆々と茎がそびえていて驚いた経験は誰にもあることでしょう。〈梅雨の晴間〉に恵まれて外を歩くと、別世界のように思うこともあります。たっぷりとした青い空気に包まれていると、むくむくと元気になってくる気がします。
梅雨どきは青の季節。〈青梅雨〉をはじめ、季語にも「青」のつくものがたくさんあります。
〈夏野〉には〈青野〉という呼び方があります。同義に使えますが、こう呼ぶと「青」の印象が前面に飛び出してきます。
騎手の襯衣びようびよう青き野を駆くる 山口誓子
誓子の「青」の句といえば、
七月の青嶺まぢかく熔鉱炉
が有名です。「溶鉱炉」を見学し、外へ出て「南に聳える青嶺を見た」とき、その「青をじつに美しいと思った」と自解しています。
――その「青嶺」は、夏の真盛りの青嶺であったから、私はそれを「七月の青嶺」を表現せずにはいられなかった。「七月」は伊達ではない。六月でもない、八月でもない「七月」である。『自選自解 山口誓子句集』―――
つまりこの句の心臓部は「溶鉱炉」であるとともに「七月の青嶺」なのです。
〈青野〉も〈青嶺〉も広辞苑(第六版)には載っていませんが、現代の歳時記には季語として採録されています。人口に膾炙する句が誕生することで、歳時記の項目は更新され続けているのです。
青嶺あり青嶺をめざす道があり 大串 章
先月取り上げました〈青田〉も「青」の季語です。こちらは広辞苑にも載っています。〈植田〉の苗が伸びて青々と田を覆い、水面が見えなくなってきたら〈青田〉と呼び替えるのでした。
さざなみの田水や植ゑしばかりなる 高浜年尾
満目の青田を牛も眺めたつ 百合山羽公
青い風もあります。たとえば〈万緑〉を吹き揺るがす風を〈青嵐〉、土用のさなかに吹く東風〈土用東風〉を「青東風」といいます。
夏の「青」はほかにもたくさんあります。日に日に変わる青を意識して見つめてみませんか。(正子)
