à la carte_吾亦紅(バラ科)

8月はじめに旅をした北海道では、すでに秋の気配がありました。
すすきも穂を出しはじめ、女郎花、刈萱、桔梗や撫子が咲き、その間に小さい吾亦紅の花がぽつぽつと出てきていて、花野となっていました。
萩の花尾花葛花なでしこが花をみなへしまた藤袴あさがをの花
秋の七草といえばすぐにこの山上憶良の歌があげられます。
でも、吾亦紅はこの中には入っていません。
吾亦紅の歴史は意外に古く源氏物語の〔匂宮〕の巻にも登場します。さかのぼって7世紀から8世紀に活躍した山上憶良の時代にはまだ吾亦紅がなかったか。あるいは、比較的高い土地で見かけられるので、見る事がなかったのか。はたまた源氏物語の中でも〔ものげなき〕吾亦紅、などといわれているので地味でお気に召さなかったのでしょうか。
吾亦紅は、臙脂の花に対して緑の茎がなんともおしゃれです。その茎は折れやすく、ぎざぎざとした小さな葉をとって、すっきりした線を出そうとすると、なかなか手間がかかります。又、茎には次々とより小さな吾亦紅もでてきているので、空間にこの花をぱっと散らすようにいけようと思うとどれを間引こうか、などと考えます。
春の七草は冬も終りに近づき春にむけて栄養を考えての食用としてあげられますが、秋の七草はまったくの観賞用としてとらえられています。吾亦紅は、この時期あまりない色とかたちゆえに何本かまとめれば、個性のあるふわりと大きな空間もつくれますし、一本でも枝分かれした吾亦紅は出来上がった作品にちょっとした奥行だって足す事が出来るのです。
〔秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七草の花〕
前述の七種類の植物を列挙する歌の前にはこの施頭歌があり、憶良は次に(あれもいいな!これもよい。)と一種類づつ、文字どおり指折り数える和歌を詠みます。
花をいける人が陥ってしまうのは、この次にこれをいけるとどう見えるか、そこに吾亦紅を足すとーーと文字を追いながら頭の中でつい出来上がりを想像してしまうことです。
私なりの現代の秋の七草を問われたら、まず吾亦紅を挙げます。(光加)
