今月の季語(12月)_冬の鳥

十月に取り上げた「渡り鳥」は、日本で越冬するために、秋に渡って来る鳥のこと、十一月の「水鳥」は冬の水上にいる鳥のこと、でした。
今月の「冬の鳥」とは、渡り鳥、留鳥、漂鳥を問わず、また山野、水上を問わず、冬に見かける鳥の総称です。
冬の鳥射たれ青空青く遺る 中島斌雄
冬の鳥短かき音を立てにけり 桂 信子
若狭乙女美(は)し美(は)しと鳴く冬の鳥 金子兜太
いずれも鳥そのものの姿というよりは、背景、気配、心情などが主となっています。「冬の鳥」一切、と題を出すときには便利な季語ですが、詠むときには焦点の合わせ方を考える必要がありそうです。
寒禽の取り付く小枝あやまたず 西村和子
寒禽しづかなり震度7の朝 戸恒東人
「寒禽」も冬の鳥のことですが、小さな鳥を指すのが普通です。大きい鳥や、特徴からその名が明らかに判る鳥は、「冬」や「寒」を冠して名前で呼びます。
冬の雁生死知れねばあきらめず 安住 敦
冬鵙のゆるやかに尾をふれるのみ 飯田蛇笏
冬の鳶鳴けば微風の青畳 飯田龍太
寒雀身を細うして闘へり 前田普羅
鳶や雀のように名前だけでは季語にならない鳥や、雁や鵙のように他の季節の季語になっている鳥が、このケースです。
名前そのものが冬の季語となっている鳥もいます。
白鳥といふ一巨花を水に置く 中村草田男
抜け目なささうな鴨の目目目目目目 川崎展宏
大利根の動くと見ればかいつぶり 瀧 春一
「白鳥」や「鴨」は渡り鳥ですが、「鳰」は、一年中見られる鳥です。鳰には冬に渡来する種もあって水上が賑やかになりますし、寒そうな声をしているなどという理由で、他の水鳥同様、冬の季語になっています。
かよひ路のわが橋いくつ都鳥 黒田杏子
ゆりかもめ白刃となりて吾に降り来 大石悦子
「伊勢物語」にも登場する「都鳥」は、くちばしと脚が赤い、鴨ほどの大きさの白い鳥です。「百合鷗」とも呼ばれます。名前や見た目の美しさに反して、なかなか獰猛なところがあります。
冬ざれの地上水上に鳥の姿がすっかり見える季節です。先入観をはずして向き合ってみると、新しい発見があるかもしれません。
最後に一つ。「冬鳥」という季語もありますが、こちらは渡ってきて冬にいる鳥のこと。冬に見られる鳥に違いありませんが、「の」の有無で意味が少し異なることを、頭の隅に置いておきましょう。(正子)
