今月の季語(1月)_寒の月・寒の星
あけましておめでとうございます。
皆さまそれぞれに、新しい年をお迎えのことでしょう。
2014年が天災も人災も無く、それぞれの願いや祈りを胸に、前を向いて進んでいける年になりますように!
さて、年が明けるとすぐに寒の入り、1年でいちばん寒い季節を迎えます。今年は1月5日が小寒です。
機密性の高い家屋、たゆみ無き物流事情等々により、昔とは冬の備えも異なってきていますが、それでも籠もり居がちになり、〈冬籠〉の気分になるのが今の時期でしょう。一方で、夜空では天体が冴え冴えとした光を放ち始めます。天文少年少女でなくても、〈冬の星〉の魅力を否定する人はいないでしょう。
ことごとく未踏なりけり冬の星 高柳克弘
冬の星でまず思い浮かべるのは何でしょう。〈シリウス〉でしょうか? それとも〈オリオン座〉? 私の場合はオリオンの三つ星をまず見つめ、狩人を形作る矩形を夜空に描き、そののち……、と進みます。その人ごとの順番で冬の夜空にさまざまな描線が飛び交うものなのかもしれません。
ゆびさして寒星一つづつ生かす 上田五千石
凍星を組みたる神の遊びかな 須佐薫子
〈天狼〉とも呼ばれる〈シリウス〉の、青白い輝きは全天一でしょう。「星はすばる」と、かの清少納言にも言わせた〈昴〉は、おうし座に属する星団。〈六連星(むつらぼし)〉とも呼ばれるその形が特徴的です。また、冬の初めは見えづらくなっていた北斗七星も、冬の深まりとともに再び鮮やかに、印象的な柄杓の形を夜空に刻むようになります。
オリオンの真下に熱き稿起こす 小澤克己
天狼やアインシュタインの世紀果つ 有馬朗人
遙かなるものの呼びこゑ寒昴 角川春樹
生きてあれ冬の北斗の柄の下に 加藤楸邨
また〈銀河〉〈天の川〉といえば秋の季語ですが、冬の冴えた空に仰ぐのは、秋とは違った味わいです。
冬銀河らんらんたるを惧れけり 富安風生
再びは生まれ来ぬ世か冬銀河 細見綾子
そして何より忘れてはならないのは〈冬の月〉〈寒月〉でしょう。天心近くをくっきりした輪郭で進む月の光は、冴え渡っておそろしいほどです。
寒月やわれ白面の反逆者 原 石鼎
耳鳴りは宇宙の音か月冴ゆる 林 翔
戸口まで道が来ており冬の月 鳴戸奈菜
空気の冴えた夜は、しっかり防寒対策をして、空を仰いでみませんか? (高田正子)