今月の花(4月) 雪柳

閉めきった部屋のドアを開けたとき、もしそこに雪柳がいけてあれば、このばら科の花に香りがあったことに気がつくでしょう。
雪柳の花がつぎつぎとほころび始めると、まるで小雪が枝の上にはらはらと降りかかってきたようで、柳に似たまだ幼い緑の葉の上に白がだんだんと増えていきます。5枚の花びらが寄り合った一輪の花の直径は8ミリになるかならないかです。この花の一枝の花びらの合計は、いったい何枚になるのでしょう。
切るときに気がつくのは枝が細く硬めということです。びっしりと花がついたときは、白くてふわりとした線があちこちに向って動き出しているように見えます。それは花をつけている枝がたくさん枝分かれしているからです。花が散りだしたり、葉に元気がなくなったときに思いきって葉も花もすべて取ってみると、この枝の持っている勢いと繊細な線、空間を捕まえようとしているかのような枝先の面白さがわかります。
もうこれが限界と花びらを散らし始めた雪柳は、風が吹くとまるでこれで春のフィナーレとばかり、いっせいに空中に花びらを舞い上げます。地上にこぼれた花びらが米のように見えるため小米花、またその吹雪のように散る様子が桜の散る様子とも重ねられ小米桜とも呼ばれます。
雪柳は新緑が見ごろのときも、柔らかい緑のところをいけます。もちろん花は終わっていますが、たっぷりとした緑を楽しむことができます。昨年の春に展覧会にいけたのは黄金雪柳といわれる種類で、葉が黄色がかっていて、緑が芯から萌え出てくるようなものでした。
雪柳の葉は秋は紅葉もします。作品にもいけますが、すべての紅葉がそうであるように切ってしまうとすぐに葉は乾いたり散ったりします。
開くと薄いピンクの花をつける雪柳もあります。この種類の雪柳はどちらかといえば立ち上がる線が多いので、白い雪柳でみられるようなあちこちに飛び出す奔放な弓のような線はあまり出てきません。
いずれの雪柳も、満開の後は室内でも庭のような所でも散った花びらは軽いので舞い上がり、掃除機でも箒でもたやすく掃き清める事は困難です。この花に春を充分楽しませてもらった代価なのでしょうか。でも見方を変えて、行く春を惜しむのに欠かせない一つの作業と思うことにすれば気が済みます。日本の木々の中でも四季それぞれに異なった楽しみ方のできる雪柳なのです。(光加)
雪柳花みちて影やはらかき 沢木欣一
