今月の花(六月)太藺

植物の中で姿が直線に近いものといえば、まずあげられるのがこの太藺でしょう。初夏には緑の濃さがきりりと際立ちます。長いものだと2m以上の高さになるものもみかけます。先端についている茶色の穂が特徴です。
数本の太藺を手にi取ってみると、その線はいかにも涼しげで、ひろげていけば爽やかな空間が生まれていくことに気がつくでしょう。茎の途中を折りまげてみればモダンな鋭角が生まれます。
一気に二つに折るということではなく、指の腹の間に太藺を挟み、折りたい所をそっとつぶすのです。その瞬間、しゃりっとして、肩すかしをくったような感覚が指に伝わります。内部が海綿のような構造になっているからです。元の直径1センチ前後のところを輪切りにしてみると、緑の内側は白く、変形の気泡のようなものがたくさん見られます。水を入れた長い花器に太藺だけいけるとき浮力が付き、好みの位置に定まらないことがあるのはこの構造のせいです。中に注意深く針金をとおして曲線をつくることや、乾かして使うこともできます。
緑一色の太藺の他に、白と緑が交互に入った縞太藺もあり、自然が作り出した色の配置は粋でなかなかおしゃれです。
太藺と同じカヤツリグサ科のトトラを使って作った浮島に何代も住んでいる人たちが、南米のペルーとボリビアにまたがる標高約3800メートルにあるチチカカ湖にいます。昔はトトラで小舟も作り、食用にもしていたと聞きました。地下茎でつながっているこの植物の葉や根が日常生活のあらゆるところで巧みに使われているという話に、太藺を作品に使う者としては、実際にトトラがどう使われているのかいつか見にいきたいと思います。
どんな植物と組み合わせてもしっくりとくるのに、一方で強い個性をもつ太藺は、この時期の湿気を含んだ空気のなかで、まわりの植物たちや動物たち、そして人間たちにも「さあ、しゃんとしなさい」とでも言いたげな様子で一直線に伸びていくのです。(光加)
新しき畳にいける太藺かな 光加
