今月の季語(7月) 夏の鳥

春や秋とは異なり、夏は鳥の出入りがあまりありません。ですがこの声を聞くと「夏だなあ」と思う鳥がいます。
まず〈ほととぎす〉。
5月頃、南方から渡ってきて日本に夏を告げます。雪月花はそれぞれ冬、秋、春を代表する季語ですが、ここに夏の季語代表として〈ほととぎす〉を加えるほどの存在です。時鳥、不如帰、子規、杜鵑と漢字ではいろいろに書けます。
鳴き声は、私の耳には「キョッキョキョー キョッキョキョー」と聞こえますが、古くより「テッペンカケタカ」「トウキョウトッキョキョカキョク」などと聞きなします。鳴くときに口中の鮮紅色が見えることから「鳴いて血を吐く」ほととぎすと言われます。
谺して山ほととぎすほしいまゝ 杉田久女
次は〈郭公〉。
閑古鳥のことです。夏、南方から渡ってきて「カッコー カッコー」と静かに鳴きます。これをのどかと聞くか、さびしいと聞くかは人それぞれ、時と場合にもよるでしょうが「閑古鳥が鳴く」と言うと商売がはやらないさまとなります。
憂き我をさびしがらせよ閑古鳥 芭蕉
〈夜鷹〉は姿が鷹に似て、夜行性であることによる命名です。口を開いて飛び回り、入ってきた蚊などを食べるので蚊喰鳥とも呼ばれます。
夏の夜「キョキョキョキョキョ……」と長く続けて鳴く声を聞いたことはありませんか。
夜鷹鳴きいつも何かに急かれゐる 棚山波朗
〈葭切〉は葭の茎で巣を作ります。「ギョギョシ ギョギョシ」と賑やかに鳴くことから〈行々子〉ともいいます。身辺をさがすと、鳴きまねの得意な人がひとりはいるーーような気がしますがどうでしょうか。
行々子殿に一筆申すべく 波多野爽波
鳥の種類というのではありませんが、〈羽抜鳥〉も夏の鳥です。人の更衣と同じで、鳥類も年に何度か換羽の時期を迎えますが、季語になっているのは夏期の換羽中の鳥です。
歳時記には、〈羽抜鶏〉の例句が突出して多いです。〈羽抜鴨〉〈毛を替ふる鷹〉という傍題もあります。この鷹は鷹狩用の鷹です。種別に季語となっているのは、身近にいる大型の鳥で感情移入しやすかったからでしょう。羽抜鷹と言わないのは、鷹に対する敬意の表れかもしれません。
人間と暮してゐたる羽抜鶏 今井杏太郎
ほかの鳥たちも同様に換羽します。まとめて〈羽抜鳥〉といいます。春には高らかに囀り、美しい羽根で雌を誘った雄鳥も、今は哀れにもまだらに禿げているということですね。(正子)
