à la carte さんきらい
「さんきらい」という名で呼ばれ、緑の葉の間からのぞく丸い実をつけた蔓性の植物。夏から花屋さんにも出回りますが、それは別名「さるとりいばら」と呼ばれる植物です。実は数個が節から球体を作るかのように放射状についています。丸くて先端がちょっと突き出した葉を一枚手に取ってみると、かすかに波を打つ両側の葉の縁は中を向き、元から葉先に向かって数本の葉脈があります。節からは蔓性の植物の特徴である巻きひげがでています。
棘には気を付けてください、不用意に手に取るとチクリとするものがあります。さるとりいばらという名前が付いた理由を実感することでしょう。蔓はジグザグの線を描き、たやすく折ることはできないほど丈夫なのに、まげて形を付けられる柔軟性があり、鋭い棘に敏捷な猿も手足をとられるということなのでしょうか。
実と葉のついたさんきらいを季節の植物と一緒に竹籠に入れてみても、器を柱にかけて実と葉のバランスを考えながら垂らしても、蔓をさっと巻いて白磁の壺にいれても、ガラス花器に葉をとっていけて奔放に実を遊ばせても楽しめます。萩焼の女流作家の展覧会で彼女の小さめの壺に、出始めた白いリンドウを少しとさんきらいとをさりげなく入れたところ「まあ、清々しいこと!いけた、というより器の中から出てきたみたい」と喜んでくださいました。その作品を求めた方も「お花も一緒にいただけるかしら」と持ち帰られました。
年末には、葉をすっかり落とし赤い実だけになったさんきらいがクリスマスリースやお正月の松の緑とともにいけられているのを、あちこちで見かけます。この時期は需要が多く、国産のものだけでは間に合わないこともあって輸入もされています。実の色は鮮やかな赤なのですが落ちやすく、棘も多いように思えるのは、日本への輸送の方法に問題があるのでしょうか。
冬になれば赤い実は他にもたくさんあるので、私は夏の時期の滴るような緑のさんきらい、さるとりいばらに魅力を感じます。そのまん丸な青い実の表面に、ぽっと赤みがさしているのを見つけた時、それはしのびよってくる秋への信号がともった時なのです。(光加)