今月の花(10月)オリーブの実

「それで、植えるオリーブは、食べるほう?それともオイルをとるほう?」
イタリアはフィレンツェの郊外。800本以上のオリーブの畑を一望できるペンショーネのテラス。オリーブを植樹したいという私の願いを、ここの女あるじのベアトリーチェとご主人のダニエレが快く聞き入れてくださったのです。
ここ20年間、何度となく滞在しているうちに、ペンショーネのオーナーの一家と顔見知りとなりました。今では娘のベアトリーチェ夫婦が切り盛りをしていますが、母上のカルラも40室ある部屋の泊り客が食堂に降りてくると、娘夫婦たちとテーブルを回ってエレガントに挨拶したり夫君のシモーネとワインを勧めたりしています。
曽祖父がここを購入する以前は、母屋は女子修道院、その前はローマ法王庁の小さな出張所に使われていました。
テラスにいると、オリーブの丘をふもとから上がってくる風が教会の鐘の音も運んできます。葉の裏側が銀色を帯びたオリーブの木は、10数メートルの高さにもなりますが、ここのはせいぜい3メートルくらいでしょうか。夏に行ったときはダニエレと何人かの人が木々の間をまわって水やりに忙しくしていました。剪定され手入れの行き届いたオリーブの木に囲まれると満ち足りた気分になり、夜はぐっすり休めるのです。
「何万分の一はあなたの植えたオリーブがはいっているかも」
年の初め、思いがけなくベアトリーチェからオリーヴオイルの缶が届きました。
オリーブグリーンってこの色なのだ!グラスにとってかざしてみると、限りなくピュアで神秘的な緑色でした。私が植えたのは確かフラントイアという種類で、「フラントイア」とはイタリア語でオリーブの製油所も意味します。
オリーブは国連のマークにもなっていて平和を象徴しています。旧約聖書のノアの箱舟の物語の中で、神の起こした洪水が引き、地表が現れたかを知るために箱舟からノアが放った鳩がオリーブの小枝をくわえて帰ってきたという話はよく知られています。日本では小豆島が有名ですが、今では花屋さんでも鉢植えを手に入れることができます。
10月に入ると、短くなった陽を気にかけながら熟したオリーブの実のとりいれの準備に、トスカーナの丘はまた忙しくなるのです。(光加)
