今月の花(12月) シクラメン
今年もシクラメン街道が賑わいだした、というニュースが新聞に載っていました。
シクラメン街道とは東京都青梅市から埼玉県入間市に通じる岩倉街道の,中でも瑞穂町のシクラメンを栽培する農家が集まっている街道沿いのことです。毎年各農家が丹精したシクラメンを初冬に売りだし、それを買い求める人たちが繰り出すのです。
ここのシクラメンを吟味して送ってくださる方がいて、鉢植えのこの花が我が家に届くと、大きな箱の中に納まっている花を傷つけないように腕をのばして注意深く取り出します。徐々に家の中が殺風景で雑になるこの時期、小さな花をびっしりとつけた色鮮やかで元気な一鉢が現れたとたん生気が周囲にあふれ、いよいよ今年もあと一か月、と花に気合をいれられます。
ある日茎の先で下を向いていた蕾の5枚の花びらが開き始めたと思うと急に反り返ります。「篝火花」という別名があり、燃え盛る炎のような花ということで付けられたのでしょう。火がいれられた途端ぱっと炎が立ち登る瞬間とこの素早く反る花の時間とを重ね合わせて名前をつけたのかもしれません。
「ブタのまんじゅう」という英名(sowbread)からきた名前もありますが、気の毒な名前でさすがに日本では使われていません。しかしこれは花をさすのではなく、球茎のことをさして呼んだということです。
その球茎からでている茎の元をつまんで注意深くまわして咲き終わった花を摘み取り、球茎は夏に植え替えてあげればまた楽しめるといわれますがうまくいったことがなく、いっそ種を買ってきて蒔いてみようと思いますがこちらも難しそうです。
サクラソウ科のこの花はかつて原種にはほのかな香りがあったそうです。小椋佳さん作詞作曲の「シクラメンのかほり」という歌は大流行をしました。その前後から香りのあるシクラメンも出回ります。
原産地の地中海沿岸の石の間や丘に咲くシクラメンは今でも密かな香りをまとい、変わることなく咲いているのでしょうか。もちろん花たちは、園芸種となった遠い親戚である様々な形や色のシクラメンが日本の年末の喧噪の中で華やかに咲き誇っていることを知る由もありません。(光加)