今月の花(九月)木賊
「これは竹の一種ですか?」という質問を、木賊を見た方がされることがあります。
すっと伸びた緑の茎に間隔をおいて幅数ミリの節のような黒い線がアクセントのように取り巻いているからです。その黒い線の上にわずかに薄茶色の皮のようなものがあります。これは退化した葉で、この節からさらに細い緑の線が数本出ているものもあります。
そして頭の先には黒い帽子のような胞子嚢穂をつけています。どこかで見た形!そう、同類にはスギナがあり出たての土筆のかたちにそっくりです。
表面には稜と呼ばれる細い縦の溝があり触れるとざらざらしています。緑の色が軽く見えるのはその線のような溝により微妙に緑の光と影が作られるからでしょう。茎は中空で、そのため深い器にいけようとするとあ浮いてしまうこともあります。中にワイヤーを通して形を作ることも可能です。
英語名はhorsetailで馬の尾という意味。スギナもfield horsetail(野の馬の尾)と呼ばれるのはもともとこの属のラテン語名は馬を意味する言葉を含み、ある種の木賊の水中に伸びる根が馬の毛に似ていることからつけられたそうです。
ある年太めの木賊の元を長い間水につけておき、その後、何年か前からあった木賊のプランターに追加して植えました。そしてあの大震災がきたのです。あまりの衝撃に自宅にこもる日が続きました。何も手につかないなか、プランターの植物だけには水をたっぷりとやっていました。すると短いまま何年も伸びなかった木賊が急に1mに成長するまでになったのです。辞書には、木賊は約3億年前に繁栄し石炭の元になった植物の子孫とあり、今に至るまで生き延びたその強さを知り元気が湧いてきました。
かつて茎を乾かして研磨剤としたところから、砥草(とぎぐさ)、それがとくさという名になったといわれます。「荒城の月」や「花」で知られる滝廉太郎は爪を砥ぐのに使っていたというエピソードもあります。つやのなくなるまで干して爪とぎに使ってみましょうか。他の素材で作ったものより細かく砥げて、優しく爪にあたるのでは、という気がしてきました。(光加)
折々の恋刻みつつとくさ伸び 光加