カフェきごさい「ネット句会」(7月) 《互選》+《飛岡光枝選》
《連中》守彦・涼子・良子・和子・粗笠・雅子・勇美・桂・都・すみえ・裕子・光尾・南行・隆子・弘道・光枝
(和子選)
けふ生きて大夕焼にお辞儀せん 都
塔の家いくつ聳えて月の島 粗笠
夕風を染めて盛りの合歓の花 勇美
(勇美選)
滴りや奥に地球の軋む音 和子
南天の花は銀河に雨しとど 南行
父の日や酔ふてをるかな雲の上 涼子
(涼子選)
いづこより甘き花の香夏至の雨 勇美
けふ生きて大夕焼にお辞儀せん 都
扇風機ひとりの刻を回るなり 良子
(裕子選)
初めての駅に降り立つ雲の峰 良子
琴線に触れてつせんの花揺るる 隆子
滴りや奥に地球の軋む音 和子
(すみえ選)
海亀や月の涙を砂の中 南行
断崖に鳥居の並ぶ晩夏かな 良子
馬鈴薯の花や峠に近き畑 光枝
(都選)
海亀や月のなみだを砂の中 南行
水鉢に水のあじさい夏の夢 雅子
梅雨茸しあはせの木に顔を出す 涼子
(光尾選)
滴りや奥に地球の軋む音 和子
南天の花は銀河に雨しとど 南行
本晒す中に父の一書あり 弘道
(南行選)
スカイプは初めて同士柿若葉 雅子
扇風機ひとりの夜を回るなり 良子
夜空へと海の中へと蚊帳の中 裕子
(雅子選)
縁側の籐椅子今日は猫のもの 桂
音立てて閉ぢる扇や一手打つ すみえ
扇風機ひとりの夜を回るなり 良子
(桂選)
南天の花は銀河に雨しとど 南行
父の日は酔ふてをるかな雲の上 涼子
夜空へと海の中へと蚊帳の中 裕子
(隆子選)
馬鈴薯の花や峠に近き畑 光枝
父と子の最初の絆甲虫 桂
父の日や父あざやかに鰯裂く 雅子
(良子選)
音たてて閉ぢる扇や一手打つ すみえ
江田島は海軍の魂雲の峰 都
老いてなほ人を恋ふるやさくらんぼ 桂
(弘道選)
音たてて閉ぢる扇や一手打つ すみえ
馬鈴薯の花や峠に近き畑 光枝
老いてなほ人を恋ふるやさくらんぼ 桂
蚊帳へ入る時の不思議な感覚は夏ならでは。原句は「夜空へと海の中へと蚊帳の中」ですが、この句の場合は動作をしっかりと表現することで、上五中七がより生きます。
滴りの奥に地球の軋む音 和子
自然界の恵みに触れながらも感じる地球の危うさ。互選でも多くの方が選ばれてけっこうと思います。原句は「滴りや奥に地球の軋む音」。切れの見極めを。
父の日や父あざやかに鰯裂く 雅子
父親の存在感をアピールするのはなかなか難しいようです。句のお父さんは釣り好きか料理好きか、手際の良さが目に浮かびます。ことばの運びも手際良くみごと。
黴取ればただの花瓶でありにけり 涼子
愉快な一句。古色蒼然とした花瓶、もしやお宝では?とたぬきの皮算用。花瓶にしてみればほっとかれてがっかりされてと散々であります。原句は「黴取ればただの花瓶でありしかな」。
【入選】
いづこより花の香るや夏至の雨 勇美
原句は「いづこより甘き花の香夏至の雨」。この句では「甘き」がない方がより花が香ります。
けふ生きて大夕焼にお辞儀せん 都
大自然に圧倒された時、人間の本音心が出るのかもしれません。「大」が効いています。
縁側の籐椅子今日は猫のもの 桂
「今日は」が要。これがないとただの報告。
久し振りうからやからと泥鰌鍋 守彦
「うからやから」のごちゃごちゃした感じが「泥鰌鍋」らしい。「久し振り!」と声かけあって。
琴線に触れてつせんの花開く 隆子
原句は「琴線に触れてつせんの花揺るる」。鉄線と琴線、微妙なところを上手に詠みましたが「揺るる」では甘い方に引っ張られすぎでしょうか。
虞美人草コクリコポピーひなげしと 光尾
ひなげしの様々な呼び名を詠み込んだ意欲作。あたかも蝶が花から花へめぐるような楽しい一句です。原句は「虞美人草コクリコポピーひなげしか」。
水鉢に白きあぢさゐ夏の夢 雅子
原句は「水鉢に水のあじさい夏の夢」。雰囲気はいいのですが、「水のあじさい」はこの句の場合少々強引でしょうか。旧かなご注意を。
扇風機ひとりの夜を回るなり 良子
ことばの運びが巧みでよく出来ています。ただ同様の発想の句はあるので今一歩前へ。
地平線めざし少年草いきれ すみえ
原句は「地平線めざし少年夏野原」。「夏野原」ではめざしているわりには立ち止まってしまうので、せめて「夏野行く」ですが、これではただごと。「草いきれ」よりいい季語を探してみてください。
塔の家いくつ聳えて月の島 粗笠
月の光と塔の影と。イタリアの町を思いましたが、物語のなかの島のようでもあります。秋の句です。
南天の花や銀河に雨しとど 南行
ちらちらと咲く南天の花に銀河を思ったのでしょうか。原句は「南天の花は銀河に雨しとど」。
父と子の最初の仕事甲虫 桂
原句は「父と子の最初の絆甲虫」。「絆」はわかるようでわかりにくい、かつちょっと怪しい。
本晒す中に親父の一書あり 弘道
愛読書はその人の多くのことを伝えてくれます。親のことを驚くほど子は知らない。原句は「本晒す中に父の一書あり」。