朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」(十月)
新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、十月の季語「鳥渡る」花「桐の実」江戸の味「鯊の佃煮」です。
【特選】
名を変えて川流れゆく帰燕かな 涼子
いくつもの町や村を流れ過ぎていく川を眼下に、帰っていく燕。人に近しい鳥ならではの句。原句は「いくたびか名を変へる川燕去ぬ」。
あの婆は今年も息災柿簾 弘道
みごとな柿簾を遠くから眺めながら。
【入選】
満月やウイグルの闇耿耿と 和子
大草原の深い闇に上る満月。原句は「満月やウイグルの闇黒々と」。
大やんま行つたり来たり山の駅 守彦
みごとな鬼やんまが我が物顔に。列車がめったに来ない山の駅ならでは。原句は「山の駅行つたり来たり大やんま」。
草紅葉燧ケ岳をあふぎ行く 涼子
燧ケ岳の地名の力で燃え立つ紅葉が目に浮かぶ。足元の草紅葉と山の紅葉、どちらかに焦点を当てたい。
鳥渡るコンビナートの薄煙 勇美
よくある光景だが、薄煙によって句にゆらぎが加わった。
新酒汲む約束待たず友の逝く 弘道
友のいない新酒。しっかり詠めているが、全部説明してしまわないで、奥行きある句を目指したい。
藪枯らし縺れし時間そのままに 勇美
「そのまま」がよくわからない。この句の要になるところなので我慢して何を言いたいか探ること。
紺深きなすびの新香先ず一献 守彦
「紺深き」がいい。
歯一本抜けて見上ぐや後の月 勇美
「十三夜」のうすら寒い心持を表現。
どぜう鍋母を囲んで伊勢喜かな 守彦
いい名前の泥鰌屋。原句は「どぜう鍋母を囲みし伊勢喜かな」。過去形にしないでよりいきいきと詠む。
鷹柱くづれて己が風に乗る 涼子
「己が風」がいい。
ゆびきりの代はりにひとつ木の実かな 勇美
小さな、だけど大切な約束。「ひとつ」が上手い。
日闌けて一人はごろ寝鯊の舟 光枝