今月の季語(3月)_受験
今年のセンター試験は国語で史上最低の平均点をマークしたそうです。受験生にはナーバスな幕開けとなりました。当人はもとより、身近に該当者がいると実に落ち着かないのが、春先のこの時期です。
汗と涙の甲斐があってか、「受験」は春の季語となっています。昨今の受験はさまざまなエントリーのしかたがあって、既に冬のころから始まっていますが、「受験期」「受験生」「入学試験」、またその結果を表す「合格」(残念ながら「不合格」も)すべて春の季語です。
一人づつきて千人の受験生 今瀬剛一
入学試験幼き頸の溝ふかく 中村草田男
合格を決めて主審の笛を吹く 中田尚子
高校、大学のみならず、小・中学校、幼稚園でも行われていますから、句にはさまざまな年齢の子が登場します。
「千人の受験生」は単身で来ているようですから、大学入試。「幼き頸」は小学校でしょう。中学入試でもよいのですが、個人差がありそうです。あまねく幼いのは小学校の入試かと。「主審の笛」を吹いているのは、高校進学を決めた中学生――などと経験値を生かし、想像しながら読んでみましょう。
在校生にとっても、進級や卒業が決まる大切な季節です。日常的にはあまり使いませんが、進級試験や卒業試験を指す「大試験」という季語があります。「大試験」の先には「及第」「落第」「卒業」が待っています。
大試験山の如くに控へたり 高浜虚子
落第子母うながして帰りけり 西嶋あさ子
卒業の兄と来てゐる堤かな 芝不器男
緊張のシーズンを通過して迎えるのが、「進級」「入学」「入園」です。
制服の少女の手足進級す 金久美智子
入学の子のなにもかも釘に吊る 森賀まり
名札の字やうやく読めて入園す 西村和子
「入園」はもちろん「入学」の句にも、登場するのは幼い子であることが断然多いです。ぴかぴかのランドセルに新品の学用品一式を入れ、手を引かれて校門をくぐる姿は、ことさらに感慨深いものだからでしょう。(正子)