カフェきごさい「ネット句会」6月 互選+飛岡光枝選
〔連中〕あきえ 都 良子 昌子 桂 雅子 光尾 すみえ 涼子 裕子 弘道 隆子 勇美 粗笠 利通 光枝
*お詫び* 投句欄4番の句の一字「掴」が?になっていました。大変失礼しました。お詫びいたします(店長)
≪互選≫
あきえ選
7 てきたうに相槌打つて冷奴 良子
19 学友と傘寿祝いの新茶汲む 昌子
24 香水の残り香に負ふ深手かな 隆子
桂選
22 幸せが跳ねて弾んで小鹿かな 雅子
34 薄暑めく踝ほどの川遊び 利通
41 面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
良子選
9 ひと休み世を遠くして飲むラムネ 昌子
17 夏服や藍色深き有磯海 裕子
20 繰り言は生きてる証冷奴 都
裕子選
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海 勇美
21 見つからぬ身の置きどころ毛虫かな あきえ
41 面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
都選
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
12 ランドセルが弾んで行くよ梅雨晴間 涼子
29 石楠花に雨ぽつぽつと峠越え すみえ
光尾選
9 ひと休み世を遠くして飲むラムネ 昌子
26 初夏や標どほりに山の寺 良子
37 八十路背広着て見る衣替 弘道
すみえ選
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
13 ワレワレハチキュウジンナリ熱帯夜 勇美
14 一寸の胡瓜かがやく花の先 涼子
勇美選
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
20 繰り言は生きてる証し冷奴 都
伊藤涼子
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海 勇美
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
40 蔓薔薇からみて静かなる真昼 光枝
雅子選
1 頼もしや義士より多し日傘骨 粗笠
7 てきたうに相槌打つて冷奴 良子
46 瑠璃蜥蜴水口はやも乾きけり 利通
弘道選
20 繰り事は生きてる証し冷奴 都
29 石楠花に雨ぼつぼつと峠越え すみえ
34 薄暑めく踝ほどの川遊び 利通
粗笠選
7 てきたうに相槌打つて冷奴 良子
29 石楠花に雨ぽつぽつと峠越え すみえ
30 田植え機の去りて田水の澄み初むる 裕子
昌子選
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海 勇美
7 てきたうに相槌打って冷奴 良子
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
隆子選
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
21 見つからぬ身の置きどころ毛虫かな あきえ
44 夕映えの心は詩人麦の秋 裕子
利通選
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
24 香水の残り香に負ふ深手かな 隆子
41 面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
夕闇迫るころに飛び交う蝙蝠。運河を往くダルマ船に夏の疲れが漂います。「傾く」にある不安感も「蝙蝠」に通じます。原句は「かわほりや運河に傾くダルマ船」。仮名遣いは作者の自由ですが、この句会は旧かな遣いで統一しています。
サイダーや今だけ君を独り占め 桂
サイダーを飲む喉元から目が離せない恋の句。「今だけ」がせつない。某飲料メーカーにぜひ売り込みたい一句です。
ふるさとや持ち重りする夏蜜柑 あきえ
強い酸味と苦みがある夏蜜柑は近年人気を落とし、甘夏蜜柑などがもてはやされています。そんな夏蜜柑は確かにふるさとへの思いに通じます。「持ち重りする」が秀逸。原句は「ふるさとは持ち重りする夏蜜柑」。助詞を消して散文から韻文へ。
昭和今明治のやうに夏の雲 弘道
司馬遼太郎が『坂の上の雲』で描いたように、近代日本へ向かう明治の勢いはどこまでも上る夏雲のようでした。「明治のやうに」と思い切った省略がいきいきとした句に。「昭和今」は、気持ちはわかりますが理屈に落ちてしまいます。例えば「湧き上がり明治のやうに夏の雲」のようにストレートに。
瑠璃蜥蜴水口はやも乾きけり 利通
田へ水を豊かに流していた水口の泥が乾きはじめ、日照りを予感させる季節。てらてらと輝く瑠璃蜥蜴が不安感を煽ります。上五の季語と中七下五が響き合う取り合わせの句です。
【入選】
ここ夜市手掴みで食うメロンかな 都
メロンのおいしさが伝わります。苦労された「ここ夜市」ですが、もう一苦労(工夫)を。「夜市の灯手掴みで食ふメロンかな」などなど。
てきたうに相槌打つて冷奴 良子
相槌を打つ方も打たれる方も冷奴をつつきながら。ここは冷奴でないといけない場面です。
ひと休み世を遠くしてラムネ飲む 昌子
「世を遠くして」が上手い。原句は「ひと休み世を遠くして飲むラムネ」。だらだらと最後まで続けないように。
マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
「マンゴ」は栽培地域は限られますが夏の季語。上五中七はしっかり描写できていますが、「走り梅雨」が季語としてあまり効いていない。「マンゴ」の句として再考を。
ランドセル弾んで行くよ梅雨晴間 涼子
原句は「ランドセルが弾んで行くよ梅雨晴間」。「が」で句が散文になってしまいます。「晴間」が理屈、季語再考を。
ワレワレハチキユウジンナリ熱帯魚 勇美
意欲作ですが、原句の「熱帯夜」では茫洋としてしまいます。「熱帯魚」は一例ですが、より具体的に。
石楠花に雨ぽつぽつと峠越え すみえ
夏山登山でしょうか、石楠花の咲く頃の様子を丁寧に描きました。
田植ゑ機の去りて田水の澄みわたる 裕子
田植えが済んだ安堵感が伝わります。原句は「田植え機の去りて田水の澄み初むる」。
湯上りの枝豆ぷりつと顔を出し 光尾
ゆでたての美味しそうな枝豆を描きました。「顔を出し」が嬉しそう。ビール!ですね。
箱庭や鶫のこゑを遠近に 隆子
箱庭に鳥の声を取り合わせた新鮮な句ですが、「遠近に」が少々わかりにくい。「鶫の声の真上より」など言いたいことをより明確に。
髪染めて甲飾らん皐月晴 粗笠
『おくのほそ道』斎藤別当実盛のオマージュ。ご自身を鼓舞するように「皐月晴」としたところが上々。
面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
少しぱっちゃりとした丸眼鏡の井伏鱒二。帽子はカンカン帽でしょうか。「面影」とあるので「似たり」は取る工夫を。
夕映えて詩人のこころ麦の秋 裕子
麦畑を染める夕日に心までもが染まるようです。原句は「夕映えの心は詩人麦の秋」。