朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」(五月)
新宿朝日カルチャーセンターの「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、5月の季語「夏の風」、花「王冠百合」、江戸の味「初鰹」です。
【特選】
白南風やセーラーの襟翼めく 勇美
梅雨が明けた晴れやかな夏の風に吹かれる少女。シンプルな情景に青春が香る。白南風の「白」が「セーラー」「翼」と呼応して。
桑の葉の露拭く母の真似をして 弘道
忙しい養蚕農家は子供も重要な働き手。母の手元を見ながら、お蚕さんにあげる桑の葉を拭く。「桑」は春の季語だが、この句は「露」が季語のしっとりとした秋の句としたい。
雨脚を刈つてゆくなり草刈機 涼子
「雨脚を刈る」が秀逸。
背にはらむ麦秋の風ツーリング 涼子
前句同様、よく見る光景が的確な言葉でとらえられ印象深い一句に昇華している。この句では「背にはらむ」。
【入選】
黒百合の霧を纏うて一人立つ 和子
一人と擬人化して黒百合の存在感を強めた。
ままごとのお茶のお客や雨蛙 勇美
ほんとうに?と聞きたくなるが、かわいらしい雨蛙を見ているとそんな思いにも。原句は「ままごとのお茶のお客は雨蛙」。
初鰹棹しなはせて宙に舞ふ 涼子
「舞ふ」が作りすぎて実感と遠くなってしまった。「初鰹棹のしなつて宙を飛ぶ」など。
頂きを掴む右手に夏の風 和子
「頂を掴む」が力強く夏の風の句らしいが、より強い季語を選びたい。「頂きを掴む右手や大南風」など。
初鰹高らかに告げ島言葉 勇美
初鰹の喜びあふれる一句。島の言葉で鰹は何というのか聞きたいもの。原句は「初鰹告げて高らか島言葉」。
柔らかな日射し湛へし若楓 和子
若楓の葉の柔らかさではなく、日射しを柔らかいととらえて新鮮。「湛へし」→「湛へて」。
海界へ白帆弓なり大南風 涼子
海神の操る帆船のよう。
はちきんは酒豪揃ひぞ初かつを 涼子
高知の女性「はちきん」と鰹は少々付き過ぎだが、「初鰹」の「初」の勢いが感じられる。
森の奥王冠百合の花香る 光枝