浪速の味 江戸の味(1月)【白みそ雑煮】(浪速)
『大阪府の郷土料理』に大正初期の船場商人のお正月の様子を紹介した大阪朝日新聞(大正六年一月四日)の記事が掲載されています。
先ず、小梅を煎茶にいれた大ぶくで祝う。大ぶくの時は無言である。次に出る雑煮に箸を一寸添え「お祝いお祝い」の言葉とともに屠蘇に移る。屠蘇の酒杯は最年少者から酌みはじめ、順々に年長者に回す。雑煮は大抵味噌雑煮。箸紙にさした雑煮箸は出入りの大工が特に持って来るので、大店では立派な箸を用いていた。とあります。
雑煮は古くは内臓を養い健全な状態に保つという意味で「保蔵」と呼ばれ、保は同音の煮るを意味する烹に、蔵は種々のものを入れることから同音の「雑」に変わり、「烹雑(ほうぞう)」となったが、近代になり「雑煮」と書くようになったとのことです。
大阪では、餅搗きは二十八日か三十日に行っていました。語呂合わせで、二十九日は「苦の餅」になるので避けたとのことです。河内の一部では二十九日に搗き、こちらは「二十九日(福)」の語呂合わせです。まあ、何でもいい方にとればうまくいくということです。
雑煮は丸餅で、白みそ仕立てです。これに使う水は若水(元日の早朝に汲む井戸水)を用い、豆木を燃やして炊きました。今は水道の水ですが、元日の早朝というだけで、気分は若水です。雑煮は丸餅に、にんじん、大根、子いも、彩に水菜などをいれたシンプルなものです。その他に牛蒡、焼き豆腐など地域、家庭により具は少し違うようですが、白味噌の甘味が丸餅によく合います。三日には、焼き餅に水菜を入れたすまし雑煮となります。三日目に、あっさりしたすまし雑煮になるのも雑煮の味の変化を楽しむということで納得です。
雑煮をいただき、よい年を始めたいと思います。
一年の力湧きくる雑煮かな 洋子