今月の花(四月) ユーカリ
コアラが食べる葉は?と言われれば多くの方がユーカリと答えられるでしょう。
原産地はオーストラリアでフトモモ科に属し何百という種類があります。その中でも特定のユーカリがコアラの食物です。
日本で私たちがよく見かける丸い葉のユーカリは、灰色がかった緑で粉のふいたような葉をつけます。持ちがいいのでいけばなにもよく使います。
昔お稽古に見えたインドネシアのご婦人が、ユーカリを手にとって「これは薬にも使う」とおっしゃった時、その香りの強さに納得したものです。鼻先に持ってくると、ミントの香りの様にさわやかではあるもののミントよりぐっと濃厚な香りです。いけているとすぐ手に匂いが付いてしまいます。ユーカリの葉や茎からにじみ出た油なのでしょう。深く吸い込むと、この香りは咳などにきくのでは?と思ったものです。
曲げやすい枝や茎も粉が吹いたような白い緑です。灰色がかった実やたくさん下がったツンと尖った蕾もぜひいけてみたい花材なのですが、日本では一部の花屋さんを除き手に入りにくく季節も限られます。
ユーカリの木は季語としては三夏です。南半球のオーストラリアに住む門下のサンドラのところは日本とは季節が真逆となり、今は夏から秋へと移っていく頃です。ユーカリの赤い花を使った彼女の作品写真が送られてきました。私は日本ではユーカリは白い花を数度しか見たことがありません。日本で見かけるユーカリの多くはタスマニア原産と言われています。現地では赤い花の他に白や紅色、ピンクや黄色などの花があると教えてくれました。花はoperculumと呼ばれるキャップをかぶっていて、それが落ちると開くというとても特徴のある構造です。属の学名Eucalyptos はkalyptos(覆う)という意味です。
木は時には数十メートルにも成長し、街路樹としても植えられます。写真を送ってくれた門下の彼女もシドニーの自宅に植えたそうですが、場所にもよるのでしょうか、なかなか成長しないと言っていました。
ユーカリは生えている土地や種類により木の皮もそれぞれ面白く、送ってきたサイトの写真は木肌がマーブル模様だったり赤かったり、すぐはがれるような薄い皮をまとった木もありました。はがれるものはgum treeと呼ぶそうです。
キャンプソングの「kookabarra song(笑いカワセミの歌)」というのがオーストラリアの歌であり、この鳥がold gum treeに止まっていて――という歌詞があるのを思い出しました。以前はわかりませんでしたが、あの鳥はユーカリの木に止まっていたのですね。数十年ぶりに解明しました。
ユーカリの木はとても生命力があり、先住民のアボリジニの方たちも生活の中でさまざまに使っていました。山火事など気候の変動にもたえ、これからもずっと美しい花を咲かせることでしょう。知れば知るほど構造も、性質もとても不思議な木の一つだと思いました。(光加)