浪速の味 江戸の味(四月) 桜えび【江戸】
桜えびは、日本では駿河湾、東京湾、相模湾、五島列島沖に分布しますが、漁獲しているのは駿河湾だけです。漁期は「春漁(3月下旬~5月)」と「秋漁(10月~12月)」の年二回。深海にいる桜えびが上がってくる暗夜に、袋状の網を引く船曳網漁が行われます。
駿河湾での桜えび漁が始まったのは明治28年。その前年、静岡市清水区の由比で、深く潜ってしまったアジの漁網に大量の桜えびが入ったのがきっかけとのことです。その由比が今でも桜えびの最大の漁港で、特に春漁の時期には解禁を待って新鮮な桜えびを求めて多くの人々が訪れます。
数年前の解禁直後、友人と由比で新鮮な生桜えびを楽しんだことがあります。帰路、立ち寄った東名高速由比パーキングエリアの簡素なお蕎麦屋さん。あまり期待はせずに食べた桜えびのかき揚げが絶品で、さすがは解禁時期の地元の味と感激しました。
通常、年間を通じて私たちの口に入るのは「干し桜えび」です。水揚げシーズンになると駿河湾にほど近い富士川河川敷の干し場には一面桜色の桜えび畑が出現し、その向こうには雪が残る富士山が春の空に聳えています。
今年の春の漁期は3月27日から6月8日と発表がありました。近年は漁獲高が減り、予定の漁期より前に終了することもあると聞きます。原因は潮流の変化や富士川水系の濁りなどが考えられるそうです。深海からやってくる春の宝を大切にいただきたいと思います。
真暗な海をふぶくや桜えび 光枝