カフェきごさい「ネット句会」12月 ≪互選+飛岡光枝選≫
【連中】すみえ 都 桂 良子 裕子 光尾 涼子 酔眼 雅子 みやこ 隆子 利通 光枝
≪互選≫
都選
大根干す海はるかなる峠道 光枝
静けさの身に沁みとほる小夜しぐれ 裕子
ひとひらの花閉じ込めて滝氷る 光枝
桂選
大根干す海はるかなる峠道 光枝
飛騨からの大工を待つも冬構 隆子
耳鳴りの寂しき音に耳袋 雅子
良子選
よぢ上りぐるり螺髪の煤払ふ 涼子
百年の柱磨きて年用意 みやこ
冬ぬくし刺子ふきんの花模様 みやこ
裕子選
耳鳴りの寂しき音に耳袋 雅子
湯ざめして再び試すパスワード みやこ
秋暮れて古書よりゲルベゾルテの香 利通
光尾選
冬ぬくし刺し子ふきんの花模様 みやこ
身に叶ふ椅子を月見の座となせり 利通
湯ざめして再び試すパスワード みやこ
涼子選
どこでもドアぎいと開くや雪の夜 光枝
森深閑遠く熊鈴熊の架(たな) 酔眼
今日もマスク行こ行こ仮面舞踏会 桂
みやこ選
手に顎をのせて火鉢の太宰かな 隆子
狼の遠吠へ抱き山眠る 桂
耳鳴りの寂しき音に耳袋 雅子
すみえ選
百年の柱磨きて年用意 みやこ
開戦日油焼けした花骨牌 利通
耳鳴りの寂しき音に耳袋 雅子
雅子選
飛騨からの大工を待つも冬構 隆子
百年の柱磨きて年用意 みやこ
身に叶ふ椅子を月見の座となせり 利通
隆子選
野良猫の庭に住みつく石蕗の花 裕子
冬ぬくし刺し子ふきんの花模様 みやこ
橋裏に水面の揺らぎ小六月 良子
利通選
森深閑遠く熊鈴熊の架 (たな) 酔眼
橋裏に水面の揺らぎ小六月 良子
冬ぬくし刺し子ふきんの花模様 みやこ
酔眼選
小春日や缶からドロップ何の色 すみえ
大根干す海はるかなる峠道 光枝
よぢ上りぐるり螺髪の煤払ふ 涼子
≪飛岡光枝 選≫
【特選】
よぢ上りぐるり螺髪の煤払ふ 涼子
仏様を清める季語としては「御身拭い」(春の季語)があります。その荘厳な様子に比べ、句は家の煤を払うように仏像にぱたぱたとはたきをかけるような気安さが愉快。「よぢ上る」、「ぐるり」という語でその様子をしっかり描きました。
狼の遠吠へ抱き山眠る 桂
「遠吠へ抱き」が秀逸。絶滅した狼の俤を抱いて眠る山々。
開戦日油焼けした花骨牌 利通
日本軍が真珠湾を攻撃した太平洋戦争開戦の日。「開戦日」との取り合わせの中七下五は、具体的には様々にとれますが、退廃した雰囲気がこの後の暗い時代を感じさせます。アジアへの侵略を続けていた軍隊、そして日本の退廃とも映りました。
耳鳴りの寂しき耳に耳袋 雅子
寒い冬に使う耳袋の心もとなさがよく出ている一句です。原句は「耳鳴りの寂しき音に耳袋」ですが、「音に」とすると理屈がかってしまうのではないでしょうか。
【入選】
冬支度大したことは何もせず 雅子
冬がたいへんな雪国などでも時代が便利になったこともあり、このような思いで冬を迎える方が多くなっているのではないでしょうか。楽といえば楽ですが、一抹の寂しさを感じるのも確かです。
野良猫の庭に住みつく石蕗の花 裕子
時々餌をやっても野良は野良、懐かないのがまたいい(猫派)。冬ざれた庭にひときわ明るく咲く石蕗の花のもと、少しだけくつろいでいる猫の様子が見えるようです。
百年の柱磨きて年用意 みやこ
大黒柱に一年の礼をつくして、年用意の始まりです。
冬ぬくし刺し子ふきんの花模様 みやこ
刺し子の布巾を使っているのか、刺し子を刺しているのでしょうか。花模様がいい。
直会が済んでほろ酔い秋収め 酔眼
「ほろ酔い」に秋の収穫への喜びが感じられます。「酔い」は「酔ひ」。
タイマーのごときゆばりの夜寒かな 光尾
タイマーは「タイムスイッチ」のことですね。(「セルフタイマー」や「ストップウオッチ」だと大変(!))。原句は「タイマーのごときゆばりや夜寒かな」。「や」「かな」なので提句も一案ですが「タイマーのごときゆばりや夜を寒み」なども。夜寒のしみじみとした心細さがよく出ています。
橋裏に水面の揺らぎ小六月 良子
繊細な景を捉え、しっかりと描いた一句。「揺らぎ」と切ったところは立派。
秋暮れて古書よりゲルべゾルテの香 利通
この秋、ある詩集をネット古書店で買いました。新品同様で大満足なのですが、開くたびに煙草の香りが。あまり読まなかったものの書棚に並べていた愛煙家の姿も想像しながら楽しんでいます。句の「ゲルべゾルテ」は虜になる香りとか。作者の青春の香りでしょうか。季語「秋暮れて」も上々。
今年も、カフェきごさい「ネット句会」へのご参加ありがとうございました。来年もみなさんと俳句を楽しんでいきたいと思います。初句会は2月です。どうぞお元気でよい年をお迎えください。(光枝)