浪速の味 江戸の味 6月【魚そうめん】(浪速)
暑くなってくると、さっぱりして、つるっと食べられる冷素麺が食べたくなります。
大阪や京都では、夏になるとかまぼこ店に、その素麺を思い起す「魚そうめん」が並びます。かまぼこ店の魚そうめんは、白身魚のすり身を麺状にしたもので、その名前通り、素麺つゆにつけて食べたり、椀だねにしたりします。食感はかまぼこですが、見た目が涼やかで夏の食卓に上ります。祇園祭や天神祭の時のごちそうの一品にもなります。
もう一つ、かまぼこ店の夏季の名物が「あんぺい」です。見た目が似ている「はんぺん」はつなぎに山芋粉などのつなぎを使いますが、「あんぺい」は魚のすり身だけを柔らかく練り上げて蒸したものです。食べるとふわっと魚の風味が口に広がります。わさび醤油で食べたり、椀だねにもなります。
かまぼこの特徴は、旨さと弾力ですが、大阪かまぼこは、弾力より旨さにこだわってきました。明治から大阪では鱧をよく使っていましたが、現在もそれは受け継がれています。
『大阪食文化大全』によると、かまぼこの名前が文献にあらわれるのは永久三年(1115年)。関白右大臣藤原忠実が催した祝宴のメニューに登場します。今でいう焼き竹輪に似たものであったらしいのです。かまぼこの語源は、ガマの花穂に似ているからとのこと。江戸時代に板付かまぼこが一般化したようです。
「魚そうめん」や「あんぺい」はタンパク質もとれるので、食欲がなくなる夏を元気に乗り切るのに役立っていると思います。
魚そうめん祭支度のはじまりぬ 洋子