a la carte_デルフィニウム(きんぽうげ科)
花をびっしりとつけたデルフィニウム。その茎をしっかりもって真逆さまにして、水差しの細い口から直接に茎の中に水を流し込みます。紙をつめてふたをして、水に戻す。茎が中空で、丈の長いこの花の水揚げをする時によく使う方法です。
園芸種も多く、濃い青のほか、空色、白、濃い紫、藤色、近頃では黄色やピンク、赤に近いものも見かける事があります。
デルフィニウムという名はヨーロッパ的な響きを持ちますが、ギリシャ語で(イルカ)をさす言葉から発生したといわれます。それは、種類の多いこの花のなかにギリシャ産のイルカに似た形のものがあったからだそうです。デルフィ。確かに英語のドルフィン(イルカ)という言葉が浮かんできます。
「大飛燕草」というという別名があるのは、花被片が伸びて距になり、花がツバメが飛んでいる形ににているから、と本に書かれていました。距とは花弁やガク片の一部がくぼんで突き出したものを呼ぶそうです。どちらかといえば平たい形の花ですが、鳥や動物にたとえられているのですね。
たとえ一本だけでも丈高くいけられていると、その空間に一緒にいると贅沢な気分にさせてくれるデルフィニウムですが、気をつけなければならないのはその背の高さと、先ほどあげたように茎の中が空洞のため折れやすいという事です。しっかりさせるため、状態を見ながらワイヤーを茎の中に入れることもあります。
下の部分から花は咲き終わっていきますが それをつめば、まだ充分綺麗な花がたくさん残ります。一輪だけとっても色々と応用ができます。
ポルトガルで、リスボン在住の日本の方のお宅にお昼に招かれました。セットされたテーブルの中央には一枚の黒漆の板。ブルーの大小10輪ほどのデルフィニウムの花が、白い薔薇とともにその上にちりばめられていました。庭から切ってきたばかりのグリーンのアイビーがその間をリズミカルにぬって繋いでいました。
線と色とボリューム。漆塗りの板の平面を最大にいかし、黒い色に映えるようにたくみに配された敷き花は、これも日本のいけばななのです。
何日かいけられていて、すでにたっぷりと水を含んだ花を 思いきって茎から離して再利用すれば 又違った面を見せてくれます。デルフィニウムだけでなく、そういう花を使えば、種類によっては2~3時間なら水なしでもこんな表現も可能です。
仕事の旅の途中での久しぶりの和食。花の知識と知恵を持つ女主人の心配りに、すっかりくつろいだリスボンの昼下がりは時がゆっくりと流れていきました。(光加)