浪速の味 江戸の味(五月) 柏餅【江戸】
端午の節句が近づくと餅屋、和菓子屋はもちろんのこと、スーパーやコンビニの店頭にも柏餅が並びます。
奈良時代に朝廷で始まった端午の節句は、江戸時代には民間の行事として盛んに行われるようになりました。当時から江戸では主に柏餅、京阪地方では粽が節句の菓子として愛好され、江戸の柏餅は自家製が多かったようです。
柏の葉を用いた柏餅は、九代将軍家重から十代家治の頃、江戸で生まれたといわれています。この時代は田沼意次が活躍した庶民文化興隆の時期にあたります。その後、参勤交代で全国に広まったと考えられています。
柏の葉は、新芽が育つまで古い葉が落ちないことから子孫繁栄を願って用いられたといわれますが、清々しい香りと色が端午の節句に相応しいと思います。何よりそのまま持って食べられるのが好もしい。
写真は、飛鳥山にほど近い東京都北区上中里の「平塚神社」境内の一角にある和菓子店「平塚亭つるおか」の柏餅です。「平塚神社」の歴史は古く、創立は平安後期といわれています。
源氏の棟梁、八幡太郎源義家が奥州征伐の凱旋途中にこの地を訪れ、領主に鎧を下賜、それを清浄な地に埋め塚(平塚)を築いたところから平塚の地名となったそうです。御祭神が武勇に秀でた義家とその弟達という「平塚神社」。その門前の柏餅を頬張ると力が漲る心持がします。
をみなこそここ一番ぞ柏餅 光枝
追記
俳句結社「古志」の長年の句友、福島県南相馬で餅屋を営む宮本みさ子さんが、初句集『餅屋句集』(青磁社)を上梓されました。「わが店の柏餅なりすべて白」をはじめ、柏餅の秀句が並びます。機会がありましたらぜひご一読ください。