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クリスマスブッシュ

caffe kigosai 投稿日:2015年11月22日 作成者: koka2015年11月23日

pl-2014223189903クリスマスカードが届きはじめるころ、暖かいハワイや南半球のニュージーランドやオーストラリアをはじめとする国々からのものの中には、なかなか個性的なカードがあります。

サンタクロースがサーフィンボードに乗ってくるものや、カンガルーがサンタの格好をしていたりします。

クリスマスを祝う風習は世界中に広まり、フィンランドのサンタクロース村に行けばサンタクロースの家までみられ、真っ白な雪、クリスマスツリー、サンタがプレゼントを届けるための橇や、それを引くトナカイなど、次々とクリスマスのイメージがわきます。

しかし地球の向こうの南半球はクリスマスのある12月は夏です。この季節を祝うのにはどんな植物があるのでしょうか。

思いつくのはクリスマスブッシュです。クノニア科で、正式の名前はケラトベタルム クンミフェルムでオーストラリアのニューサウスウエルスの初夏に咲き、New South Wales Christmas bushと呼ぶのが正しいそうです。

はじめは小さな花が開きますがその時は目立たず、花が終わりに近づくとそれを囲んでいる5つの萼の部分が紅色に色づき、それがきわ立った時に花としての印象が強くなります。常緑樹でつやのある緑の小さな葉が花を引き立てます。

ブッシュという言葉は低木を意味しますが、この木は5m以上のものもあり、たくさんの花が枝につくときにはそれは見事だそうです。でもオーストラリア人の男性の知人に聞いたところ、この時期はほかにも花はたくさん咲いているので、例えばポインセチアのように特別にクリスマスの花という認識はない、といっていました。

日本の気候の中で鉢物や庭に植えられているクリスマスブッシュが開花するのは春から夏にむかう時です。季節感を大事にする日本人にはクリスマスブッシュというこの名前が、花の咲く季節とずれていてしっくりこないのでしょうか、初夏に切り花や鉢でも花店であまり見かけることはありません。

花屋さんで初冬にこの花がふんわりとした赤い塊を作っているのを見かけたら、それはオーストラリアからの輸入ものです。やがて鮮やかな赤を誇る様々な花がクリスマスブッシュをかき消すように店頭を飾り、師走の気ぜわしさが増す時期になっていきます。(光加)

今月の花(十一月)郁子

caffe kigosai 投稿日:2015年11月4日 作成者: koka2015年11月6日

pixta_5775413_S展覧会の作品に郁子を使いたくて花屋さんに注文をしました。実はついていなくてもかまいません、と付け加えたのは、蔓の方を使いたかったのです。伸びやかに、けれども緩急を心得ているように線を描いていく蔓の先端は、くるくると独特の線を描いて終わります。

葉は、軸のまわりに手をひらいたようにつき、三枚、五枚、七枚とつくので、七五三のお祝いにいけられることもあったようです。艶やかな常緑の葉ゆえに、常盤アケビという名もあります。
そのあけびは同じ時期に実を結びますが、その時は、葉が落ちてしまいます。郁子の赤紫色の実と比べればあけびの方が大きく、紫いろが濃いのですが、熟すとあけびの実はパックリと口をあけます。郁子はそんなことはなく、卵型の5cmー8cmの実が垂れ下がります。
「むべなるかな」という言葉があります。もっともなことである、というときに使われます。天智天皇が、たくさんの子宝に恵まれた元気な老夫婦に遭われたとき、その長寿の秘訣を尋ねると、「郁子を食べているから」という答え。天智天皇は「むべなるかな」と頷かれたという話が伝わっている郁子の里があります。一つしか付いていなかった郁子の実は展覧会の終わりとともに大事に持ち帰ってきました。割ってみると中には黒い種が沢山、果肉は甘みがあり、ぬるぬるとしています。この成分、確かに体に良さそうです。老夫婦の長寿の秘訣を天皇と同じく推察できそうな気がしてきて私も思わず言いそうになりました。

むべなるかな。(光加)

フォックスフェイス

caffe kigosai 投稿日:2015年10月13日 作成者: koka2015年10月13日

DSCN1189秋の実の中でひときわ鮮やかな黄色が目立ち、つややかな表皮を誇っているフォックスフェイス。枝のまわりに黄色い大小のふっくらとした実を数個ずつ付けます。実の元にはあたかも小さな耳のような部分もあり、フォックスフェイス、狐の顔と呼ばれているのも納得できるでしょう。この名前は日本でつけられたといわれますが、日本人には昔からいろいろな話の中に狐が登場するので、どこか親しみがわくのでしょうか。

子供のみならず、手に取った人の中には筆ペンやマジックインクをもってきてこの実を顔に見立て眼や口を描いたりするのです。

花はナスの花と同じような大きさと形で栽培農家は太陽を好む実の色をよくするため、ある程度に成長すると周りの葉を切るということです。実の色が薄い緑からオレンジ色がかった黄色に近くなってくると切り取ります。水を飲ませなくてもすぐ萎んでくることがないので、黒い斑点がでてくるまで一か月以上、水の心配は無用です。

初めていけたときから、その色といい形といい、豊かでどこかありがたいイメージがありました。冬に向かう寒さを少し感じ始める季節に、お稽古で手にするからなのでしょうか。

英語ではnipple fruit と呼ばれ、直訳すれば乳首の果実。確かに全体の形は黄色い乳房を連想させます。子孫繁栄、五穀豊穣にも通じていくようです。

中国出身の知人に尋ねると、中国では「黄金果」と呼ばれるフォックスフェイスは広東ではお正月に家の中に飾られるそうです。五代同堂ともいわれ、一家団欒の象徴でもあることを教えてくださいました。添えられていた写真を見ると、皿に実だけがたくさん円錐状に高く盛られたものがいくつも並べられて売られていました。

おおらかで、ユーモラスで、暖かいフォックスフェイスの原産地は熱帯アメリカといわれていますが、そこでも人を楽しくさせていたのでしょうか。

しかし角なす、カナリアなすなどの別名が示すように確かにナス科ですが、実には毒があります。母性を感じさせる形に反して食べることはできません。

今年もあますところ数か月という町のどこかで、だんだんと膨らんで鮮やかな色どりをそえつつあるフォックスフェイスをそろそろ見かけるころです。(光加)

今月の花 (十月) 栗

caffe kigosai 投稿日:2015年9月25日 作成者: koka2015年9月26日

kuri「あ、痛ッ!」親指と人差し指でつまみ上げる青栗。

柔らかい緑色をしているのでつい手をだしてしまうのですが、中の若い栗を守るために、自然はこんな時期からすでにイガの針を鋭く作ったのでしょうか。6,7月には黄色く垂れ下がる雄花、基には雌花がつきます。夏の終わりには気が付けば茂った葉の間から青栗が顔をのぞかせています。

丸いイガの形が愛らしく、この時期栗をいけるのを楽しみにしています。枝を切るとやがて乾いて巻いてしまう葉を、思いきり切り落とし栗を目立つようにします。

イガはぐんぐんと大きく茶色となり、中からつやつやの実が顔をだします。実は3個が多いのはなぜなのでしょうか。湯がいて厚い皮をむきますが子供のころは固い皮と渋皮をとるのももどかしく、包丁をいれてもらって2つに割りスプーンで中身をかきだし、口の周りに残るのを気にしながらほおばったものです。

日本の栗には芝栗をはじめとしていくつかの種類があります。丹波栗は甘みの強い栽培種です。ヨーロッパでスタンドで売られる焼栗になるものや中国の天津栗はまた違う種類です。

焼栗の他、マロングラッセ、モンブラン、栗饅頭、栗蒸羊羹、栗おこわ、甘露煮、そして栗きんとんと栗にはさまざまな楽しみかたがあります。

栗蒸羊羹の季節を迎えると覗く小さな和菓子屋さん。大福や豆がびっしり入った豆餅などを入れた塗りの箱の並ぶガラスケース。その奥の暖簾のむこうでは、蒸し上がったばかりの栗蒸羊羹を、エプロンをつけ手拭いをかぶった女性たちが冷めた順に一本ずつハトロン紙のようなものにくるんでいました。ある程度の大きさのかけらも入った栗いっぱいのここの栗蒸羊羹を、今年も予約を入れなくてはと思うのもこの頃です。

同じ時期、家では早めの冬支度が始まっていました。

「ついでにそろそろ火鉢をだしておこう」

火鉢は栗の木をくりぬいた木目の美しい手あぶりでした。中は赤と呼ばれる銅板がまわり、灰をいれてあります。久しぶりに部屋に立ち登る炭の香り。鉄瓶に水をいれてのせ、やがてふたがチンチンという音を立てはじめ、程よい湿気が部屋に漂いはじめます。「お正月のくりきんとんは今年はどうしようか」と話だす頃、秋はすっかり次の季節に比重を移しているのです。(光加)

今月の花(九月)木賊

caffe kigosai 投稿日:2015年8月31日 作成者: koka2015年8月31日

DSCN2475「これは竹の一種ですか?」という質問を、木賊を見た方がされることがあります。

すっと伸びた緑の茎に間隔をおいて幅数ミリの節のような黒い線がアクセントのように取り巻いているからです。その黒い線の上にわずかに薄茶色の皮のようなものがあります。これは退化した葉で、この節からさらに細い緑の線が数本出ているものもあります。

そして頭の先には黒い帽子のような胞子嚢穂をつけています。どこかで見た形!そう、同類にはスギナがあり出たての土筆のかたちにそっくりです。

表面には稜と呼ばれる細い縦の溝があり触れるとざらざらしています。緑の色が軽く見えるのはその線のような溝により微妙に緑の光と影が作られるからでしょう。茎は中空で、そのため深い器にいけようとするとあ浮いてしまうこともあります。中にワイヤーを通して形を作ることも可能です。

英語名はhorsetailで馬の尾という意味。スギナもfield horsetail(野の馬の尾)と呼ばれるのはもともとこの属のラテン語名は馬を意味する言葉を含み、ある種の木賊の水中に伸びる根が馬の毛に似ていることからつけられたそうです。

ある年太めの木賊の元を長い間水につけておき、その後、何年か前からあった木賊のプランターに追加して植えました。そしてあの大震災がきたのです。あまりの衝撃に自宅にこもる日が続きました。何も手につかないなか、プランターの植物だけには水をたっぷりとやっていました。すると短いまま何年も伸びなかった木賊が急に1mに成長するまでになったのです。辞書には、木賊は約3億年前に繁栄し石炭の元になった植物の子孫とあり、今に至るまで生き延びたその強さを知り元気が湧いてきました。

かつて茎を乾かして研磨剤としたところから、砥草(とぎぐさ)、それがとくさという名になったといわれます。「荒城の月」や「花」で知られる滝廉太郎は爪を砥ぐのに使っていたというエピソードもあります。つやのなくなるまで干して爪とぎに使ってみましょうか。他の素材で作ったものより細かく砥げて、優しく爪にあたるのでは、という気がしてきました。(光加)

折々の恋刻みつつとくさ伸び  光加

 

白樺

caffe kigosai 投稿日:2015年8月23日 作成者: koka2015年9月2日

085樹肌が白い樺の木、白樺はしらかんばともいい、時に20メートル以上の高さにもなります。

緑の中にこの白い木肌があちこちで見え隠れして、爽やかでなんとも解き放された思いを味わった高原での夏休みがよみがえってきます。

幹や枝は若木の時は濃い茶色で成長するにつれ白くなり、樹皮は紙のようにすぐ剥がれます。春の季語である白樺の花はあまり目立たず、若葉の間に雄花は垂れ下がり雌花は枝の上に上向きます。葉は先のとがった長い卵形で縁には鋸歯のような切れ込みがあります。

真冬のヘルシンキに降り立った時、前日降った雪の眩しい反射の中、葉をすっかり落した白樺があちこちで真っ青な空を指して立っていました。その姿は高原の白樺より太く逞しく見えました。秋には黄色く紅葉します。

「白樺はどこにでもあるのでよく使うわ」と門下のリーサは言います。フィンランドから数えきれないほど来日し、日本語も話し、書も嗜む彼女が展覧会に白樺を使いたいといってきたことがあります。彼女が送ってくれた写真は、白樺の表面の皮を剥がし、内側を表にして丸めたものでした。皮を剥がすのには力がいりパイロットを引退したご主人の助けを借りたそうです。薄茶色のところに断続的に入っている横線、薄い皮の幾重にも重なったところは柔らかな光沢もあり、外側の白くてごつごつとした木肌との対比が面白いのです。

フィンランドの人たちは多くの家庭がサマーハウスを持ち、数えきれないほどある湖のほとりや森の中に、時には自分たちで素朴な家を建て夏休みや週末はのんびりとそこで過ごします。

リーサの片腕で私も子供のころから知っているヘレナは「うちのサマーコッテージも周りは白樺だらけよ。夏に行くと秋から暖炉で燃やす薪を割っておくの。」短い夏から急に寒くなるこの国では、小柄で優雅な彼女の母上はもちろん、家族全員で準備をするのでしょう。

フィンランドの人々に密着している白樺は、彼らが健康的な生活を送るための様々な用途に使われます。サウナの中では立ち登る香りを楽しみながら葉つきの小枝で体をたたいたり、枝でバスケットを作ったり、また、虫歯を防ぐというのでガムなどに使われるキシリトールの原料の一つでもあります。そんな白樺なので1988年、投票によりフィンランドの国樹に認定されたと聞けば、心から納得するのです。(光加)

クルクマ

caffe kigosai 投稿日:2015年8月10日 作成者: koka2015年8月11日

DSCN2466盛夏を迎えると、花をいけても暑さですぐにしおれてしまいます。玄関にいけた花の器に指を入れると水が暖かくなっていた、などということもあることでしょう。

そんな時のお勧めがこのクルクマです。クルクマ草ともいい、原産地は東南アジアなので暑さもなんのその。色は薄いピンク、濃いピンク、紫に近いようなもの、緑や白など、鮮やかな色調で元気いっぱいに咲いて花やさんにでまわります。花のように見える部分の高さは15センチ前後ですが小ぶりなものもあります。ショウガ科に属し、文字通りショウガという言葉を含むレッドジンジャーや、げっとう(月桃)もその仲間です。

クルクマとは属名で、ターメリックと呼ばれる根がカレー粉の原料になる鬱金もクルクマ属で、鬱金でそめられた黄色の風呂敷は何か大切なものを包むときに使われるので、お近くにあるかもしれません。

クルクマは、粉が吹いたような緑色の葉をつけますが、特徴的なのはすっとした茎につく花の形です。花といいましたが、じつは花びらのようなものは苞です。苞はふっくらしていたり、先が少しフリルになっていたり、ピンクの先に緑色が入っているもの、グリーンで褐色が入ったものなどがあります。茎に近い緑の苞の中をのぞくと、白と薄紫色で、ごくたまに薄ピンクの小さな「本当の」花が見えることでしょう。

タイに行った時、町でもこのクルクマをよくみかけました。

切り花として各所で飾られている色とりどりのものはもちろんですが、花の装飾文化を紹介するミュージアムの、元は個人の住宅だったその館の庭のすみで、旺盛なエネルギーを発散する熱帯の木々のもとにひっそりと咲いていた薄ピンクのクルクマも印象的でした。

この夏は日本中がかつてない暑さとなりましたが、気候により咲く花も変化していくことでしょう。日本では数年前まではそれほどみかけなかったクルクマですが、いまは色や形が多様化して登場しています。それがもし地球の温暖化に関係あるとすれば、一概に私たちは喜べないのかもしれません。ともあれクルクマに罪はなく、元気に夏を乗りきろうと私たちに無邪気に呼びかけているかのようです。(光加)

西洋だんちく

caffe kigosai 投稿日:2015年8月5日 作成者: koka2015年8月5日
撮影/中野義夫

撮影/中野義樹

夏にデモンストレーションを依頼されると、花材のひとつに暖竹(だんちく)を選ぶことがあります。

原産地が日本であるだんちくは緑の葉のものが多いのですが、作品をいける時には私の好きな、葉に緑と白の縞があり、ヨーロッパから入ってきた西洋だんちくといわれる園芸品種のものを使います。大正から昭和初期の粋な女性が初夏に着る大胆な縞のきものを連想させられ、その斑入りの葉のもたらす涼感にひかれるからです。

だんちくの厚めの葉は一枚ずつ茎を囲むようにつき、下方へと緩い弧を描きます。秋が近づくと花穂が出てくるだんちくの別名は葦竹です。節もあることから竹の種類かと思われがちですがイネ科の植物で、成長すると4mをこすこともあります。丸い茎を切るとシャキッという音がしてこの植物の性質が手を通して伝わります。いけるときは茎を水の中で切り、切り口を酢に浸すと新鮮な状態の時間を伸ばすことができます。

西洋だんちくは英語ではgiant reed でreedとは葦をさします。日本語でいうと巨大葦ともいえるでしょうか。音楽でreed(リード)といえば、サックスやクラリネットなどの管楽器を吹くのには特に大事なもの。直接唇にあたる部分の形や性質によって演奏の音も違ってきます。リードの素材はだんちくや葦であることが多く、繊細で個性があり同じものはないので、思うような音を出すため自ら削る方もあるといわれます。だんちくや葦の中空の茎は、その組織を見てみると、水を上げ空気を通す管の直径が他のものより大きいとのことです。ちなみに和楽器では篳篥(ひちりき)も本体は竹ですが、蘆舌(ろぜつ)と呼ばれるリードには葦が使われ、この部分に使われる最適な性質の葦をまず育てることが重要なのだそうです。

知人がクラリネットを演奏するとき、楽器本体からこのリードを外して演奏直前まで水に浸けたり出したりしていました。乾燥すると乾いた音になってしまうので、ということでした。

だんちくや葦のリードを通して管楽器の中に吹き込まれる息は演奏する人の独特の音色をかもしだし、つぎの瞬間に消えてゆきます。人は自然といろいろなかかわり方をしますが、小さなリードを通して、ともすれば捉えどころのない自然界の一端につかの間とは言え、ふれる幸運を味わうこともできるのです。(光加)

今月の花(八月) 朝顔

caffe kigosai 投稿日:2015年7月31日 作成者: koka2015年8月4日

asagao子供の頃、夏休みの宿題で朝顔の観察日記を付けた方もおいででしょう。朝顔は日本に昔からあり、江戸時代には様々な品種が作りだされて変化朝顔としてブームにもなり、今なお私たちの心をとらえて離さない花です。東京入谷の朝顔市は今年も7月6日から8日に開かれました。色も形も様々な花が並ぶ中、どの一鉢にしようか選ぶ人たちでにぎわったようです。

ある夏の一日、流派のスタジオでプロのカメラマンによる雑誌用の作品の撮影がありました。最後にもう一作自由にいけるようにといわれ、小さな花屋なら2,3軒分にも当たる花材の中から朝顔の鉢を見つけました。行燈づくりの絡んだ茎を外し、空色の花の朝顔を半透明のガラスの器にいけました。手の熱が伝わらないうちにと、それ!と勢いでいけたつもりが、どうも気に入りません。そしてその後、撮影の強いライトにさらされる花はシャッターが切られるまで耐えられるとは見えず、撮影を断念したのです。

利休の庭の朝顔が見事なので秀吉が行ってみると、すべて切られ、床の間にたった一輪の朝顔が咲き誇っていたという朝顔の茶会の話は広く知られています。利休の美意識について述べるとき必ずというほど引き合いにだされます。

けれども実際に賓客の席入りから退出までのごく限られた時間に究極の一輪を選ぶとなれば、蕾の開き具合、咲いてから萎むまで、と時間をまきもどす緻密な計算が必要です。庭にどんなにたくさん朝顔が咲いていても、正午を待たずにしおれます。秀吉が目にする時、一番美しく咲き誇っているものを探しこれでは駄目、あれも間に合わない、と消去すれば誇張ではなくて一輪の朝顔にたどり着きます。

そして蔓もまた重要です。

「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」加賀千代女のこの句をいま読むと彼女の優しさに思いがいきますが、千代女は朝顔の蔓の伸びる速さに驚いたのでは、と朝顔の観察日記を書いて数年後にこの句を知った中学生の私は思いました。朝顔をいけるときは蔓の線の曲がり具合と強さが花の位置を決めるのです。

小、中学生のころと比べ一年が過ぎるのが年々短くなっていく思いがします。観察日記をつけていたあの頃よりも、朝顔の花の上に過ぎる凝縮された時間に少しは沿うことができるでしょうか。花をいける経験もあの夏の上に積み重ねてきた今、改めて朝顔がいけてみたくなりました。(光加)

ジャカランダ

caffe kigosai 投稿日:2015年7月21日 作成者: koka2015年7月21日

DSCN2354この花を知ったのはある晩自宅にかかってきた一本の電話から始まります。受話器をとると、少し間があって聞こえてきたのはパキスタンの首都、イスラマバードからの当時の日本大使N氏の声でした。

日本とパキスタンの国交成立50周年の行事に首都イスラマバードでいけばなを披露する、というお話は国際交流基金からいただいていました。しかし日本人ジャーナリストが現地で拉致された事件や不安定な状況が報じられる中、返事は保留にしていました。大使の深い声での実際の状況と熱心な説明を伺ううち心が決まったのは「こんな時だからこそ、文化は大事だと思うのです。」という一言でした。

助手をしてくださる生徒さんとバンコク乗換で10数時間、イスラマバードの空港から宿舎の公邸に向かう車窓から緊張しながら街の様子を見ていました。すると茂った葉の中から青紫の花が固まって姿をのぞかせている3~5mの木があちこちに見かけられました。不穏な国情のなかでもけなげに咲いている植物、それがジャカランダとの出会いでした。

ジャカランダはノウゼンカズラ科で、葉はねむの木の葉に似ています。オーストラリアで街中にこの薄紫の花が咲いている写真がありました。熱海では、6月末、蕊を残してすっぽりとぬけたこの花が路上にパラパラと落ちていました。手に取ると先端がいくつかに割れ、長めの釣鐘形でした。

レセプション会場の公邸の入り口にこのジャカランダをいけると決めました。採集に出かけるジープの前の席には庭師のスタッフ、後ろにはバケツやロープ、のこぎりや新聞紙などをのせ、制服の警護同乗でジャカランダの枝を切りに行ったのです。約2.5メートルのものを5本切り、すぐ引きかえしました。公邸のゲートを通るとき、車に不審物が仕掛けられていないか、私たちも車に乗ったまま鏡のついた長い棒が車体の下にさしこまれる毎度の検査は仕方のないことでした。

この花はすぐにしおれるということで、準備室で枝の元を割ったり、表皮をむいたり、アルコールにつけたりとあらゆることをして水につけました。それが功を奏して翌日数輪の花は落ちていたものの、2本のジャカランダだけは葉も花もバケツの中でピンとしていました。

パキスタン政府からは外務大臣、日本からは総理特使と日パ友好議員代表団などの賓客を迎え式典は華やかにとり行われました。葉のない枝を組んで水の入った器を仕掛け、ジャカランダを他の花材と高くいけたいけばなは現地の方に好評で、何組もの方が次から次へこの作品の前で写真をお取りになっていました。

数年後のこと、当時食事にご招待いただいたレストランが爆破された映像をニュースで見て息が止まりそうになりました。その後偶像崇拝を禁止する宗教的な理由を持つ人々により、有名なバーミヤン遺跡の石像も破壊され、あれから10年以上もたちました。あの日の皆様のジャカランダの前での笑顔を思いだすたび、不安定な状況のこの国に、ジャカランダが似合う青い空を心穏やかに見上げる日がどうか一日も早く訪れますようにと、心から願わずにはいられないのです。(光加)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十七回 2026年4月11日(土)13時30分
      (原則第二土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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