↓
 

caffe kigosai

作成者アーカイブ: koka

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

今月の花(3月)青麦

caffe kigosai 投稿日:2015年3月4日 作成者: koka2015年3月5日

aomugi

花やさんから届けられるお稽古の花材に青い穂をつけた麦がでてくると、春も一段と進んでいることを知らされます。子供の頃、麦の穂を形成している伸びた芒(のぎ)の先がいかにも心地よさそうで、思わず頬を寄せて柔らかい緑色の感触を確かめようとしたら、先端は思ったより痛いことも知りました。茎は中空なので、濃緑の葉を節からとるときは気を付けないと穂の元や茎を折ってしまいます。

日本には4,5世紀に渡ってきたといわれる麦。麦踏みという作業は動力にとって代わりましたが、麦秋での収穫に至るまで今でも大事に育てられています。心地よい風が吹く青々した麦畑でならす麦笛、藁ぶき屋根、麦わら帽子、麦ごはん、味噌は裸麦から、夏の乾いた喉に麦茶、一生懸命かきまぜた麦こがし。パンやお菓子、麺類も小麦から、朝はライ麦のパン、あるいは燕麦が原料の一つのオートミールなど私たちの生活と麦は切っても切れません。

学校帰りの炎天下、駅から我が家へ向かう途中にある牛乳やさんで、大きな冷蔵庫から出された牛乳瓶の丸い紙のふたを、店のおじさんが先のとがったもので、チョンと開けてくれたものです。ガラス瓶ごと冷やされた牛乳が、黄色くつやつやしたストローを伝ってあがってくる。外の暑さに対して急にきゅんと来る冷たさが和らげられていたのは、ストローが自然のものだからでしょう。麦のはじめの記憶はこのストローで、英語で麦わらを意味することも知りました。

大麦には六条麦と二条麦があり、穂についている実の列数が異なります。麦茶の宣伝でも知られる六条大麦は穂を上から見ると実の列が6列、二条大麦は2列です。

ある程度の技術と表現に達し証書を申請する時、いけばなでは先生から名前、「雅号」をいただきます。クラスに長く通ってきている男性は私の光加の「光」をとって光麦(こうばく)という雅号になりました。本人が麦酒、つまりビールが大好きだからです。

二条の麦はウイスキーやビール、焼酎などの原料のひとつとなり、大人になっても麦にはいろいろお世話になり続けるのです。(光加)

アネモネ

caffe kigosai 投稿日:2015年2月14日 作成者: koka2015年2月20日

anemone
その名がラテン語の「風」から来ているといわれるアネモネは、英名もWind Flower (風の花)でキンポウゲ科に属し地中海の原産です。

春も進むと淡い色の花々の中に、だんだんとくっきりとした色調の花が混じってきますがアネモネもそのひとつです。

アネモネコロナリアという、王冠のアネモネという意味の名を持つアネモネは一般に見かけられる園芸種で、茎に一輪花が咲きます。花の色は白、ピンク、紫、藍 濃いピンク、赤、また、元の部分が少しだけ白いものもあります。花びらのように見えるのは萼です。園芸種は八重咲きや、半分八重のようなものもあります。

春の光に蕾が開き始めると、目覚めた花が精一杯伸びをしているようにそりかえらんばかりに花が開いていくので、すぐに散ってしまうのではと心配になります。

花の真ん中の濃い紫色の雄蕊が、まるで花の眼のようでこちらが気がつくのを待っているような視線を感じるのです。ひょろりとした茎からは切れ目の深い葉が周りを囲むようについています。

ギリシャ神話のなかでは、アネモネに関する話の一つに美の神アフロディーテの愛したアドニスの物語が知られています。狩猟好きの美少年アドニスは追いかけたイノシシの牙に刺され命を落としますが、アドニスの流した血が赤いアネモネになったという話です。

実際のアネモネには茎にプロトアネモニンという毒があり、茎を切ったときににじみ出てくる液体は手につくと肌の弱い方は皮膚炎などのトラブルを起こしかねないので気を付けなければならないようです。それはもしかしたら、私に近づくな!というアドニスのメッセージなのかもしれません。美しいアドニスはアフロディーテだけでなく、彼を育てた女神のぺルセポネまで夢中にさせてしまったのですから。

多々ある花のなかでもこんなにも長い間愛されてきたアネモネ。この花がやはりあの物語のアドニスの化身かと思えるのは、春の花いっぱいの店先で、この花をみつけた女性たちの「可愛い!」という声が何度となく聞こえてくる時です。

いずれにしても、古今東西を問わずイケメンは得ということなのでしょうか。(光加)

 

今月の花(2月) 姫水木(日向水木)

caffe kigosai 投稿日:2015年2月2日 作成者: koka2022年5月14日

hyuugamizuki水木と呼ばれるものは多いのですが、さんご水木、ドッグウッドと呼ばれるアメリカハナミズキ、初夏に平たく伸びた枝にたくさんの白い花のつく水木もあります。

その中で、春にもう一歩という頃に見られるのは日向水木とも呼ばれる姫水木です。姫水木の枝は葉が落ちて、まるで魚の小骨のようにお互いに平行に近い距離を保って伸びています。細かくてきゃしゃなその枝にぽちぽちとついている少しだけ先のとがった蕾に、ごく薄い緑がさしているのをみかけることでしょう。

春の花木はさんしゅゆ、万作、連翹など黄色いものがまずでてきますが、その中でこの木の枝につく蕾の淡い緑は外の空気の温度を感じながら花を開く機会を伺っているようです。やがてうつむき加減に開く花の花弁は5枚で長さは1センチにもみたず、少し黄色い雄蕊は花弁より短いのです。

富山に住んでいる知人の本部講師が展覧会をしたときに、小さな会場せましとばかりこの姫水木だけがいけられていました。

会場のドアを開けると、そこは深いブルーに着色された姫水木の枝だけが空間に舞っていました。

よく見るとその中に、薄緑色の花が塗料を突き破り、あちらにもこちらにもあたかも浮かんでいるように小さな無数の薄緑の蕾が。

「バケツに付けて置いたら塗料がかかってしまった時があって、その青くなった枝からでてきた花が面白かった」と、知人はいっていました。「雪が降ると、家から表の道に出る道を毎日雪かき」する生活を送る彼の春を待つ心がこんな目のつけどころとなって現れたのでしょうか。冬が中から押し上げた春がその小さな花にはありました。

花が終わるとやがて葉脈のはっきりした清々しい緑の卵形の葉がでてきます。

高知県の台地に自生していた土佐水木も、この日向水木とおなじころか少し後に花がでてきてたれさがります。枝はダイナミックな線を描き、曲げてみると柔らかくしなやかです。初夏に差しかかったころは葉の爽やかな緑を楽しむことができます。ときどき少し赤みを帯びた葉もあります。

この土佐水木に比べると、花が小さいので日向水木は姫水木とよばれるのでしょうか。

季節は乾燥した冬からいよいよ瑞々しい時へと移り変わっていきます。(光加)

アスパラガス ルツイィ(ルトジ)

caffe kigosai 投稿日:2015年1月26日 作成者: koka2015年1月28日

2013 Akachen 022
2月、凍てつくようなフィンランドのヘルシンキで、デモンストレーションを依頼されました。最後の大作にぱっと目を引く花材がほしかったのですが、花市場では見つかりませんでした。長年の私の門下のリサの家でその話をしていると、

「そうそう、納屋の奥にあったわ!先生がおいていったアスパラガス!ほら、ずっと昔のアートセンターのいけこみの時の!」。

部屋に持ち込まれた埃っぽい段ボール箱は180cmx20cmくらい。アスパラガスといわれても合点がいきませんでした。ふたを開けて中を改めようとしたとたん、パラパラとこぼれる水色やピンクのもの。着色されたルトジの乾ききった葉状枝(葉のように枝が変化したもの)でした。包んであった日本の新聞の日付は1992年となっていて、確かにこの年、リトレッティ アートセンターで私は花をいけました。

アスパラガスの仲間にはスマイラックス,てんもんとう、ミリオグラタスなどがあります。かつて花束のボリュームを出すためによく使われたアスパラは古くなると細かい葉が緑の粉のように落ちるのに困った方もあるでしょう。

アスパラガス ルツイィは「ルトジ」とよばれ、2m位にも伸び、乾燥させて色を付け大きな作品にふわりとかけたり、滝のように垂らせたりします。他のアスパラガスと同じく軸はしっかりしています。

当時教えていた東京のギャラリーがフィンランドの催しに参加。スタッフのT君が私のアシスタントとして脚立に登り、ルトジをいけるのを手際よく手伝ってくれました。数年後、病に倒れ30代で逝ってしまったいけばな好きだったT君よりこのルトジはずっと長く、ここでひっそりと生き延びていたのでした。

デモンストレーションの当日、最後の作品にと幹がしっかり残っていた白、ブルーやピンクのルトジを手にすると、T君と一緒にいけているような感覚に陥つていました。参加者たちは大いなる興味を示し、どこで入手できるかと聞かれました。英国ジャージー島からやってきた旧知のHさんによろしかったら、と進呈しました。春は花いっぱいのあの島でもルトジは語り継がれていくのでしょうか。鋏を入れればそれまで、されど植物であるがゆえのしっかりとした芯をもつルトジの強さを異国で私は改めて実感したのです。(光加)

今月の花(1月) 梅

caffe kigosai 投稿日:2015年1月7日 作成者: koka2015年1月7日

ume静岡県熱海市のMOA美術館では国宝に指定されている尾形光琳の紅白梅図屏風が、梅が咲き始める少し前から咲き終わる頃まで展示されます。

この前に立つと紅白の梅の花の美しさとともに、私は光琳の描いた躍動感のある枝の動きに注目してしまいます。

実際の梅の枝の独特な線は、春華やかに咲く桜の枝が描き出す線とは違い、伸びていくうちに直面する暑さや寒さ、風が揺らして耐えたあと、大雨や乾燥した時期、それを梅は枝に忠実に映していくような気がして、時の軌跡としての枝の線に心惹かれるのです。若い緑のまっすぐな枝も生命感にあふれています。

苔梅と呼ぶ苔のついた梅をいけることもあり、梅は枝の向きや特徴に注意していけます。

「春の夜の闇はあやなし梅の花色こそ見えね香やはかくるる」

(凡河内躬恒 古今和歌集)

清楚な香りは万葉の時代から愛されていますが、様々な香りが充満している現代から比べれば、闇を引き出すことで、その香が当時の人々にとってどんなに特別なものであったかが想像できます。

万葉集では白梅のみが登場し、紅梅が出てくるのは後になってからですが、その紅梅の枝を切ってみると、中がうっすらとピンクになっているものを見かけます。紅梅は白梅より少し遅れて咲きます。野梅系、紅梅系、豊後系、色も白から淡紅、紅と多種で、中国生まれのもともとの梅の花は花弁が5枚ですが、今はたくさんの花びらを持つものもあります。

梅は日本人の生活に入り込み、梅酒、梅干しから始まり、薬にも用いられ、その酸味のせいもあるのか梅何とか、と名前につくと体に良さそうに思えてきます。

いつも通る路地で薄ピンクの大きな八重の花を楽しませてくれる梅が、実をとる豊後梅だと知りました。ブロック塀の外の枝もきれいに整理されていたので、家の人が大切にしているのがわかりました。もうすぐ花を見られると楽しみにしていたのに、久しぶりに通るとそこには新しい家が建っていました。あの梅がどこかで根付いてくれて春の到来を待つ楽しみを誰かに与えてくれていたらと願っています。(光加)

 

à la carte 胡蝶蘭

caffe kigosai 投稿日:2014年12月18日 作成者: koka2014年12月19日

kotyoran選挙の折、候補者が当選したとたん次々とお祝いの花の注文が花店に舞い込みます。こんな時、議員事務所に運び込まれる花鉢は、何輪もの花が豪華にたれさがる胡蝶蘭が多いのです。

この花は属名「phalaenopsis」をそのままをあてはめ、「ファレノプシス」とも呼ばれます。花びらの色は白やピンク、また、小ぶりのものではそのほかにも黄色や緑がかったものなどの園芸種も見かけるようになりました。リップといわれる中心にある唇弁は3つにさけ、白の元に黄色が入ったもの、ピンク色や赤に近いピンクもあります。

この英名はMoth orchid「モス オーキッド」、直訳すれば「蛾の蘭」です。

多数ある蘭の中でも花びらが平たく開くのでこの名前がついたようで、蛾では日本人には違和感があるのか和名は胡蝶蘭となっています。花のつき具合、大きさにもよりますが、東京の花店で見かけるものは一本が八千円から一万円で、鉢に3本立ち、5本立ち、となれば、この鉢は、大体このくらいの値段とわかり、自分では決して買わない花です。

南半球の国から国賓として来日の大統領か首相のご夫人だったでしょうか。随行団の中には報道の方たちもおいででした。お迎えした部屋で私が数作いけた後、竹を土台とした背丈ほどあるフィナーレの作品に「この作品を仕上げていただけませんか?どこに入れましょう」と純白の大輪の胡蝶蘭をお持ちしました。じっと見ておられたスーツ姿の夫人はさっと立ちあがり、中央のくりぬかれた竹の中に「ここかしら?」と入れられたのです。カシャカシャカとプレスたちのカメラのシャッターを切る音が響き、声がかかりました。「マダム、そのまま花の近くで、もう一度お願いします。」垂れかかる胡蝶蘭に手をそえてカメラに微笑む夫人の濃いめの色の肌に、白い胡蝶蘭がなんと映えたことでしょう。

白い花の花びらは奥に向かって透き通っていくような白さを持つものと、同じ白でも光を集めて強く跳ね返して輝くものがあります。胡蝶蘭はその後者にあたると、この時強く実感しました。夫人の美しさをより際立たせ、胡蝶蘭自身も光を放っているように見えたのです。花と花との取り合わせはよく言われますが、それは花と人とにもある、この蘭を選んでよかったと、私は夫人と並んでカメラに収まったのです。(光加)

カテゴリー: à la carte (アラカルト), 花

今月の花(12月) シクラメン

caffe kigosai 投稿日:2014年12月4日 作成者: koka2014年12月9日

sikuramen
今年もシクラメン街道が賑わいだした、というニュースが新聞に載っていました。

シクラメン街道とは東京都青梅市から埼玉県入間市に通じる岩倉街道の,中でも瑞穂町のシクラメンを栽培する農家が集まっている街道沿いのことです。毎年各農家が丹精したシクラメンを初冬に売りだし、それを買い求める人たちが繰り出すのです。

ここのシクラメンを吟味して送ってくださる方がいて、鉢植えのこの花が我が家に届くと、大きな箱の中に納まっている花を傷つけないように腕をのばして注意深く取り出します。徐々に家の中が殺風景で雑になるこの時期、小さな花をびっしりとつけた色鮮やかで元気な一鉢が現れたとたん生気が周囲にあふれ、いよいよ今年もあと一か月、と花に気合をいれられます。

ある日茎の先で下を向いていた蕾の5枚の花びらが開き始めたと思うと急に反り返ります。「篝火花」という別名があり、燃え盛る炎のような花ということで付けられたのでしょう。火がいれられた途端ぱっと炎が立ち登る瞬間とこの素早く反る花の時間とを重ね合わせて名前をつけたのかもしれません。

「ブタのまんじゅう」という英名(sowbread)からきた名前もありますが、気の毒な名前でさすがに日本では使われていません。しかしこれは花をさすのではなく、球茎のことをさして呼んだということです。

その球茎からでている茎の元をつまんで注意深くまわして咲き終わった花を摘み取り、球茎は夏に植え替えてあげればまた楽しめるといわれますがうまくいったことがなく、いっそ種を買ってきて蒔いてみようと思いますがこちらも難しそうです。

サクラソウ科のこの花はかつて原種にはほのかな香りがあったそうです。小椋佳さん作詞作曲の「シクラメンのかほり」という歌は大流行をしました。その前後から香りのあるシクラメンも出回ります。

原産地の地中海沿岸の石の間や丘に咲くシクラメンは今でも密かな香りをまとい、変わることなく咲いているのでしょうか。もちろん花たちは、園芸種となった遠い親戚である様々な形や色のシクラメンが日本の年末の喧噪の中で華やかに咲き誇っていることを知る由もありません。(光加)

ふうせんとうわた

caffe kigosai 投稿日:2014年11月28日 作成者: koka2014年12月2日

huusenntouwata
「先生!朝起きてみたら爆発していました!」

「それはそれは。やっぱりね。」

この穏やかならぬ会話、私のスタジオでのお稽古の時のことです。

「爆発」したのはその前の週にお稽古で使ったふうせんとうわたの実です。自宅でいけておいたところ、丸い緑の実の一部が気が付かないうち破れていて、なんとそこから黒い種をつけた綿毛のようなものがでていたという生徒さんの報告です。次の日には、種の一部が部屋の中にふわふわ舞いはじめているということでした。

これより少し前に実る、蔓に緑の小さな実のつくふうせんかずらの実より、ふうせんとうわたの実は大きくなります。流線型の葉をつけ、夏にかけて白い小さな花が咲きます。しかし表情がより面白いのは実がついてからで、一本の緑の枝に大きければ直径7センチもある丸い実が数個なります。内部は空洞に近く、表皮も薄めなので見た目にも軽やかで、昔、紙風船をついた時の風船を受けた手の感触を思い起こさせ、思わず手にとってみたくなります。

しかし、ちょっと待ってください。ミルクのような白い液が出ているのがおわかりでしょう。液には毒があり、触った手で眼をこすると後で医者に駆け込むことになります。触った手は十分に洗ってください。

丸い表面にはごく柔らかい棘があり、その実は大きくなるとてっぺんが少し茶色がかり、やがて突然種が出てきて驚かされます。この南アフリカ原産の植物のユーモラスな姿は、今年スイスや、シンガポールの花市場でも見かけました。大きく膨らんだところを裂いててみると 黒い種が中央にびっしりとついていました。

この丸い実は心休まる形なのに、個性的な植物と組み合わせても違和感がなく、また、たくさんの強く鮮やな色の中においても埋没することもなくしかもしっかり主張しています。一つまた一つと手の中で束ねていけば、風船たちが空に浮き上がり、どこかに連れていってくれるような錯覚に陥るかもしれません。

秋の空気を胸の底まで大きく吸いこみ、もう我慢しきれなくてとうとう爆発して種が出没するこのふうせんとうわたはどこか動物的な植物です。

空間の中で浮遊しているような姿は、植物界のマンボウ、ともいえるでしょうか。(光加)

 

まゆみ

caffe kigosai 投稿日:2014年11月14日 作成者: koka2014年11月28日

mayuminomi
「あら!私の木だ!」

お稽古に来たまゆみちゃんが驚いたのは、ピンク色の実が華やかにいくつも下がっている枝を見た時でした。まゆみは檀、真弓とも書き、女の子の名前によくつけられます。

ニシキギ科に属し、5メートルくらいの高さにもなりますが、花は目立ちません。しかしなんといってもこの木の一番の見ごろは、秋が深まり、1センチほどの大きさでくっきりと4辺の稜がある実が枝から下がるころです。色は濃いピンク、淡紅色、そして白に近い色もあり、やがて4つの稜の先がわれ、中から種を包んでいる赤い仮種皮が現れて、枝は一層にぎやかになります。

この日本原産の木が濃いピンクの美しい実をつけているところを、ドイツでも見たことがあります。シーボルトが日本から持って帰ったたくさんの植物の中にあったのでしょうか。

楮や三椏のように古くはまゆみはその皮をはぎ、漉かれて紙として使用され、檀紙と呼ばれました。今でも作っているところがあると聞いています。

枝に弾力性があるところから、かつては弓の材料として用いられ、真の弓として、真弓とも表記されました。

生まれてきた女の子にこの名前をつけた人たちは、その子がまゆみで作られた弓のように、矢をつがえて引き絞った分だけ力をため、放たれた矢のごとく悪を払って困難を跳ね返してほしい。そして秋には美しい実を結ぶがごとく、その子の人生が豊かなものとなるようにという願いをこめて名前を選んだのでしょう。

弓を作る植物としては竹もあります。雪の朝、竹が雪をはね返すしずりの瞬間を見れば、その力強さは弓を作るのに欠かせない竹の性質だとわかります。

梓(あずさ)もかつて弓の材料でした。あずさゆみーという枕詞は植物の梓からきていて、弓という言葉から引く、張る(転じて春)などの言葉を引き出します。別名みずめといい、春、山の中で木々の中に、垂れ下がった花序を付け、それが9センチくらいにもなるものがあったらこの梓かもしれません。檀と同じく女性の名前にもなっています。

檀や梓のように女の子の将来を植物の性質に託し、願を込めた名前をつけることは、日本ならではのことなのでしょうか。日本人ではない友人たちの顔を思い出し、今度名前の由来と意味をきいてみたいと思っています。(光加)

今月の花(11月)リンゴの実

caffe kigosai 投稿日:2014年10月29日 作成者: koka2014年11月4日

ringo
近頃みかけないインドリンゴ。この名称の由来がインドではなくてアメリカのインディアナ州でとれたからと知ったのはごく最近のことです。

ピンクがかった白い5弁の花びらを持つリンゴの花。そのリンゴの属すバラ科の植物は多く、バラを筆頭に、ぼけ、花桃、桜の他、ナシやかりん、びわなどが挙げられます。

交配によって今のように多くの種類ができるようになったのは、日本でリンゴの栽培が盛んになった明治になってからといわれています。

リンゴの実は物語の中でここぞという時に登場することが多いような気がします。

食べてはならぬという神との約束を破ってリンゴを食べたとたん、自分たちが裸だということに気付いたアダムとイブ。ニュートンもリンゴが落ちなければ万有引力の法則に気が付かなかったのでしょう。ウイリアム テルの息子の頭に乗せられたリンゴは、これが他の果物だったら、テルの放った矢が命中し、めでたしめでたしとなったでしょうか。

最近ではリンゴといえばコンピューター会社のロゴのかじられたリンゴを思い出す人も多いのではないでしょうか。このロゴ、初めの頃はニュートンがリンゴの木の下にいるマークでした。のちに変更され、かじられたリンゴは、バイト(ひとかじりを意味する英語)とバイト(コンピューターの容量を意味する言葉)をかけたものと説明されています。

2011年この世を去ったこの会社の創業者スティーブ・ジョブス氏はリンゴのワックスを自身のジーンズで拭きとって、リンゴをまるかじりしながらロゴのデザインを考案したのでしょうか。

リンゴを勢いよくかじれるのは歯のしっかりしている若いうち。ただしよく噛まないと消化も良くありません。あわててのみこめば、喉につかえます。英語で言うAdam’s Apple(アダムのリンゴ)は急いで飲み込むあまり喉につかえて、アダムにできた喉仏から来た言葉です。

リンゴをゆっくりとかめば脳はさらに活性化し、若者は若いからこその知恵もアイデアも出る。時代の先端をゆく機器を追及したジョブス氏は意外とそんなメッセージをロゴに残したかったのではないでしょうか。リンゴでできたお酒、シードルを飲んでいるともくもくとそんな妄想もわいてきます。(光加)

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十七回 2026年4月11日(土)13時30分
      (原則第二土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2026 - caffe kigosai
↑