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カテゴリーアーカイブ: 今月の花

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今月の花(五月) 朴の木

caffe kigosai 投稿日:2024年4月30日 作成者: mitsue2024年5月1日

朴の新芽 クラスのFさんの作品

朴(ほお)の木は、学名にモクレンと共通のmagnoliaが付くモクレン科に属し、30メートルにもなる山地に自生する木です。

五月の末から六月にかけ、枝先に淡い黄色がかった白い花を香り高く咲かせます。上を向いて開く花は直径15センチ程にもなります。幸運にも中を覗くチャンスがあれば、中心に赤い花糸がみられるでしょう。しかし、開ききると同時に花びらは茶色になりはじめ、長く持って二日、束の間の美しさを終えます。

大きな花にふさわしい大きな葉は、枝の先にある花の周りをぐるりと囲みます。30センチ程の長い楕円形で、やや厚めです。

初夏の季節も終わりいよいよ本格的な夏を迎えるころ、この日本で最大級の葉と花は存在感が頂点に達します。

私が好きなのはそのもう少し前、この葉の芽が出た時です。

年に一度あるかないか、お稽古にこの朴の新芽を付けた花材が届けられます。包んでいる古新聞紙を注意しながらとると、みずみずしい若葉がかすかにピンク色をおびた葉(托葉)の間から覗いています。生徒さんたちに「そっとね、そっと扱ってね」と声をかけたくなる初々しさです。

葉の下の枝はほとんどまっすぐです。その中から、少し弧を描いている枝をみつけて大胆にいけているメンバーのなかから、「あ、開いてきた、葉が!」という声が上がります。枝の元の切り口から水を吸い上げた新芽がかすかに開き、包んでいた薄紅色の托葉を外へと押し出そうとしているのです。

それは、いけはじめてほんの20分ほどの間だったでしょうか。自然の力が実際に目の前で示される、こんな時に立ち会う瞬間は至福です。

朴の枝は大きな葉がついていても持ってみると意外と軽いのです。下駄の歯の材料だと知ったのが、私が朴の木を知ったきっかけですが、その軽さゆえに家具にも使われます。当たりが柔らかいところから、まな板にも使われるそうです。

葉は料理をのせる皿としても使用できます。食材を包んで蒸しても、甘い芳香が移ります。殺菌抗菌作用もあるので安心です。また朴葉味噌や朴葉飯が名物のところも各地にあります。

そして、朴の木は太鼓のばちやピアノの鍵盤などにも用いられるとか。新芽が緩やかにほぐれていく姿を思い浮かべると、朴を使ったものは特別な音質で空気を伝わっていくのではないかと思えます。他の素材で作られた鍵盤のピアノと朴の鍵盤のピアノの響きとを聞き比べてみたくなりました。(光加)

今月の花(四月)御衣黄桜

caffe kigosai 投稿日:2024年3月31日 作成者: mitsue2024年4月1日

この季節、日本を訪れる外国の人たちが楽しみするのが桜、そして観光客は日本の桜の種類の多さに驚きます。

次々と咲いていく多くの種類の中で、私は四月も最後の方に咲く薄緑の桜、鬱金桜や御衣黄桜が気に入っています。

桜の中でも濃い目のピンクや文字通りの桜色、白に近いピンクなどがある中にともすれば見逃してしまうような薄緑の少し黄色がかった色の桜は、もうお花見も終盤にかかった時に咲きだします。

鬱金桜は八重咲の薄黄緑色で、開いたときは直径四センチにもなり垂れ下がって咲きます。

御衣黄も八重咲で12~4枚の花びらは薄緑色からやや黄色、花が終わるころになると花の中心に紅色の筋が出て来るのが特徴です。花弁の中に葉緑体があり、新芽や新緑の間で見過ごされがちですが、見つけた時はうれしくなる桜です。

御衣黄桜は江戸時代に仁和寺で栽培されシーボルトも持ち帰ったともいわれています。

私がこの仁和寺を訪れた時は御室桜(おんむろざくら)が見事でした。数えきれない桜の木は、すこし白がかったピンクの花が薄曇りの空の下に今を盛りと誇らしげに咲いていました。背の低い枝はそれぞれ個性的な形をしていました。その日は時間が限られていたこともあり御衣黄桜は見つける事はできませんでした。

「御衣黄」とは貴族のまとっていた衣の萌黄色に近い色のこと。平安の貴族たちは庭に桜を植え、自分のまとっている萌黄色に近い桜を見てみたいと漠然と思ったのでしょうか。その夢は江戸時代になって実現されました。

数週間前、幼稚園からお母さまとお稽古に通っていたお嬢さんが 大学合格の知らせをもってお稽古に復帰のご挨拶にみえました。ご両親の転任で外国に何度もおいでになったり、受験勉強だったり中断はありましたが、いけばなが好きなのでしょう。お稽古の啓翁桜を大事に持って帰りました。その時、京都のお土産にと有名なお店の金平糖を頂きました。

薄い緑とピンクの金平糖は、桜が咲くころには売り切れてしまうそうです。小さなピンクと薄緑の金平糖は、塩漬けの桜から長い時間かけて作られる人気のお菓子です。

春は心の中にも何かが目覚める季節。桜の開花宣言や列島を花が駆け上るニュースをを聞いたり、実際に花の下を歩いたりする時つい背伸びをしたり深呼吸をしてしまうのは、日本人のDNAに桜が特別に刷り込まれているのでは?とさえ思ってしまいます。

桜の花がほころび始めると、それを見ている人たちの表情も桜と同じようにときほぐれていきます。満開の花の下、様々なことはひとまず置いていい表情をみせている人たちも、桜からの贈り物の一つかもしれません。(光加)

今月の花(三月)黒文字の花

caffe kigosai 投稿日:2024年2月23日 作成者: mitsue2024年2月23日

写真の男の子は門下のひとり、小学2年生です。のびのびと黒文字の枝をいけてくれました。(個人情報保護のため顔半分の写真で失礼!)。

この時期は、繊細な線の先にまだ固い茶色の蕾を付けた黒文字をいけることが多くなってきます。同じクスノキ科の青文字も直径3ミリほどの薄緑の実のような蕾をつけます。

青文字は茎も枝も緑色ですが、黒文字は枝に黒い斑のような模様が入っています。それが文字のように見え、この名がつけられたと言われています。

青文字は花を包む薄緑色の皮をつぶすと柑橘系の香り、また黒文字も枝を切って鼻を近づけるとよい香りがして、春の鼓動を感じるのです。

この枝達が花材として出始めると、春の到来をいち早く確かめたくて切ったりつぶしたりして香を楽しみます。和菓子を頂くときの楊枝に使うのはこの芳香も関係しているのかもしれません。

黒文字は爪楊枝にも使われています。いまでこそ歯間ブラシなどがありますが、つい数十年前まで食後はもっぱら爪楊枝が使われていました。前家元の外国出張に、通訳兼秘書として随行した折(先生は東京の専門店のこのサイズの爪楊枝をお使いなので必ず荷物に入れるように)という伝達事項がありました。普通の楊枝より細く強くしなやかだからということで、黒文字で作られたものでした。この店は今でも東京にあり、たくさんあった楊枝専門店も今では全国にここだけということです。

サウジアラビアの歯木

「植物を口の中へ」ということで思い出す、不思議な光景があります。サウジアラビアのリヤドのマーケットで男性数人が口の中に木の細い棒を突っ込み、チツチツと磨くような動作をしていました。(あれが買いたい!)と私と助手は短い棒のようなものが数本輪ゴムで束ねられたものを市場でお土産に買いました。

その木の枝は口の中で柔らかくして歯ブラシ代わりに使うと説明を受けました。乾いた薄茶色の木は何の木なのか、という疑問がずっと残りました。でも、自分で口の中にいれる勇気はなくそのままになってしまいました。

「歯木(しぼく)」というものがあり、お釈迦様に深く関係していて柳の枝などが使われているそうです。おつとめの前に口の中も清潔にということなのでしょう。また江戸時代に使われていた房楊枝は、黒文字や柳の小枝の先を煮て叩いて割り、かみ砕いて歯ブラシ代わりにしていたということを考えると、リヤドでみた光景は日本のあの時代の歯磨きと同じなのかと思いました。楊枝という字は確かにやなぎの枝の意味です。そして今でも房楊枝が残っている国があるそうです。

黒文字の話がとんだ話になりました。プラスチック由来の廃棄物が地球を汚すと危惧されている今日、人の生活に密着した植物素材の物はさらに注目を浴びることでしょう。黒文字も口の中を清潔にするのにお役に立とうと、さらなる登場の機会を狙っているかもしれません。(光加)

今月の花(二月)山茱萸

caffe kigosai 投稿日:2024年1月27日 作成者: mitsue2024年1月27日

春の兆しが伝わってくるのは花店の店先に黄色の花を見かけた時です。1月の末にはこの季節ならではのラナンキュラスやチューリップ、フリージアや菜の花など黄色い花でにぎわいます。眺めるだけでこちらまで温かさが届けられる気分になります。

一方このころは学校では試験の季節です。

私たちの流派でも師範の最高の資格とその一つ下の資格獲得のため、このころ年に一回、家元立ち合いの試験があります。その一つに時間内にその日与えられた花材でいける試験があります。詳しいことはここでは述べられませんが、当日その場で発表される花材はこの季節ならではの花材です。長い年月いけばなを勉強してきた国内外からの受験者は、その日が近づくと今年の試験には何の花材を使うのかしらと気になるのです。

花ものと同じく、黄色の花をつけた花木(かぼく)もこのころから登場します。山茱萸、連翹、万作と、黄色の花たちが早春の光に呼応して固いつぼみをほころばせます。

初稽古も終わり通常のクラスに戻ったころ、スタジオにまっすぐな線の褐色の枝の束が届けられました。目を凝らしてみると、小さなころりとした花芽の先がかすかにとがっています。他の枝には黄色い花があちこちとほころびはじめていました。山茱萸です。

枝は素っ気ない位の直線ですが、矯めてみると意外と思うような線が作れます。幹に手が触れると、茶色の樹皮はところどころ薄く剥がれます。太い枝は鋏で一度にはなかなか切れないのですが、鋏で注意深く切れ目を入れながら力をかけて曲げます。力の入れ加減によっては枝が折れたかと思うかもしれません。直径の3分の1くらい繋がっていれば水は上がっていき、花も開き、春に宿る生命力の強さに目を見張ります。

ミズキ科の山茱萸は18世紀の初頭に日本に渡ってきたと言われ、成長すれば5メートル以上の高さになります。うららかな雲一つない青空に枝を広げ、小さな黄色い花を無数に付けたさまは、他の花木を率いていよいよ到来した春のにぎやかな空間の出現を予感させます。

「サクラサクーー」かつて試験の合格を知らせる電報は、さくらにたとえられて届きました。さて、私たちの流派の試験の結果はもし植物に例えれば、今年はなんの植物が吉報となって心待ちにしている受験者たちに伝えられるのでしょうか。(光加)

今月の花(一月)若松

caffe kigosai 投稿日:2023年12月29日 作成者: mitsue2023年12月29日

福島光加作

年末のお正月花のお稽古には、12月の2週目に市場で開かれる松の市で競り落とされた松を使います。今年は何をいけるか、生徒さんたちはそれぞれ若松、蛇の目松、根引きの松、大王松、五葉松などを予約してもらいます。

花店の社長から、今年はまあまあの松と聞いてほっとしました。その年の気候により、緑と黄色が美しい蛇の目松は「ちょっと色が今一つ出てないねえ」といわれたり、若松は「葉の伸びが・・・」とか報告が入ると、それらを予約した生徒さんにはほかの松をすすめます。

稽古の日、外国出身の方もいました。学生時代から日本に在住、夫人は日本の方、いけばなはもう18年以上たしなみ、今の先生の許可を得て数年前から私のクラスにも時々やってくる方です。昨年は確か大王松をいけていました。

今年選んだのは若松。90センチ近くありまっすぐに伸びたいい形で長めの青々とした葉もたっぷりと房を作り、近年にない美しい立派な若松と思いました。

ふと彼を見ると若松を一心に曲げようとしているのです。いけばなでは、自分がこうあるであろうという自然を表現するには、無技巧の技巧と言われるように元からあるように枝を曲げる技術を習いますが、一方で花材が美しければそれをそのまま生かしていける決断も必要です。

彼は何度もお正月にこの松をいけただろうとは思いましたが、なぜお正月に松をいけるのか、日本の照葉樹林文化のことも説明しました。葉が散った樹々の中で常緑樹の松は、特別な力を持っていると考えられ、能舞台の背景に松が描かれるのは,神を迎えて演じられるという意味があること、門松も年の神様を迎えるということで立てられるということ。

むろん展覧会や表現を追求する研究会などは松をどのように使っても可能です。部屋に松を使ったたくさんのいけばながあれば、その一つとして若松を使って曲線を作るのも面白いと思います。またお店に飾るなら松を水につけず、若松を真横にいけても受け入れられるでしょう。展覧会で大王松の葉をすっかり取り造形的に形を作る作家もおいでです。

襟をただしてまっさらな年を迎える。私なら今年のこんなに美しい若松は、お気に入りの花器にすっくと立てて使い神様を迎えたいと思った時、気が付きました。生まれてこの方、年末から年明けまでこの時期に日本を出たことは一回しかありませんでした。日本に生まれ、どっぷりと日本文化に浸っていた自分に気が付いたのです。

松は外国にもたくさんあります。シンガポールに夫君が駐在の門下は、生徒さんと輸入の松をいけました、中国か台湾からと思われますと写真を送ってきました。ドイツからはドイツの松を使いましたという写真には、赤いたわわな実をつけた庭の南天も一緒にいけられていました。日本みたいな松はこちらにはないわ、近いのは盆栽を作っている所ならあるけど短いのでいけばなには向かない、というオーストラリアの門下。ローマの笠松も思い出し、世界の松に思いを馳せながら、皆様の新しい年のご多幸をお祈りいたします。(光加)

今月の花(十二月)蕪

caffe kigosai 投稿日:2023年11月27日 作成者: mitsue2023年11月28日

明治生まれの父は蕪が大好きで、蕪の茎や葉、油揚げなどと一緒に炊いたものを(ああ蕪の季節になったな!)と、湯気がまだ少したっている小鉢からおいしそうに食べていたのを思い出します。蕪はどう料理してもおいしいね、というのも父の口癖でした。

日本書紀にも登場し、春の七草のスズナというのは蕪のこと。古くから知られている日本の野菜のひとつです。種類も多く聖護院蕪から作られる千枚漬も楽しみです。

蕪はアフガニスタン原産、また地中海沿岸原産と種類があり、ヨーロッパでは初めは家畜の飼料として使われていたようです。

いけばなの仕事で今まで数えきれないほど行っているフィンランドでこの6月、はじめて蕪料理を頂きました。寒い北欧というイメージがあり、根菜類といえばまずじゃがいもを想像していました。あとで聞くとじゃがいもは1720年代にドイツ方面からフィンランドに入ってきて、スエーデンとプロイセンの戦い【ポメラニアン戦争】(1752-62)の後、より食べられるようになったと言われています。

じゃがいもより前から食べられていた蕪は、日本の蕪と味も似ていて大きさも普通スーパーに並ぶ蕪と変わりません。ただ6月に蕪があったのは北の国だからでしょうか?

フィンランドのヘルシンキでは、日本のお寿司の看板を何軒も見かけました。もともと海と接しているこの国の人たちは、魚を上手に食べます。先日門下のフィンランド人とそのグループで神楽坂の居酒屋に集まりましたが、秋刀魚がおいしいと皆さんお箸できれいに食べていて、合間には蕪の漬物も召し上がっていました。

そしてこの国では今、野菜中心の料理が注目を浴びています。ヘルシー志向はここでもブームになっていて、有名なシェフの野菜レストランもあります。

ソースにカシューナッツや黒い豆、野菜の芽を飾りにちりばめたフィンランドの蕪料理は、日本でもはやるのではと思わせた一品でした。あの味を探しにまたフィンランドに行ってみたいと思います。

蕪といえば、ロシアに「大きな蕪」などの童話もあり、料理や歴史など掘り下げていけば面白いことがたくさん出てきそうで興味は尽きそうもありません。(光加)

今月の花(十一月)落花生

caffe kigosai 投稿日:2023年10月30日 作成者: mitsue2023年10月30日

子供の頃、落花生は木の枝から下がっていると思っていました。

咲いた花の花びらはすぐに落ちますが、子房が伸び土の中にもぐっていき落花生になります。落花生はアンデス原産ということです。

秋の花展のテーマが発表されたのは夏に入ったころでした。いけるのはいけばなに必要な三つの要素である 線、色、塊 の中から一つを選んでの制作も可ということでした。この中から「塊」を選択。しかし塊をテーマとするいけばなは、内に秘める力強さを表すために多めに花材を用意して、塊を作る、と注意が。

落花生の生命力の強さに心惹かれ、旬の「おおまさり」という落花生ををいけてみようと長野の農家の知り合いの畑から送っていただく手筈を整えました。子供のころから不思議だった落花生をこの機会に手元でしげしげと見たかったので葉と根が付いたものを注文しました。

数日後、ずっしり重いすこし湿った段ボール箱を開けると新聞紙の中に青々した葉にうずもれた茎に下がる大小の落花生!!

その日から私の落花生との格闘がはじまりました。根から垂れ下がる細い茎の部分を残しながら秋になっても青々とした葉を取るのは時間がかかり同じマンション在住の門下にも‘出動‘を依頼したほどでした。落花生の栽培には畝を作るところから始まり、収穫までにはたいそう手間がかかり、掘り出すのにも力がいることでしょう。

食べ物を粗末にしてはいけない、という思いと花展が終わってから門下と乾杯の時につまみにどうだろうか、などと雑念がわき接着剤を使っても思うように塊のいい形にできません。

殻のひだの部分には土が残っていて 使わない歯ブラシでとってもきれいには取れません。

あと一週間に迫った花展に、うごめいているような落花生の殻の集まりだけではなんだか気味が悪いので、赤と緑の秋色あじさいを追加として花店に注文しました。美女と野獣に見えたらいいなあ、と独断で。

いけこみの二日前、作った塊には今一つ迫力が必要と感じました。農家にはもうなく、代わりに通りがかったカフェにおおまさりが売られていたのをおぼえていたので調達。ベランダで天日干しにしましたがいけこみ当日触ってみるとまだ手には湿り気を感じたのです。会場のデパートのいけこみは遅い午後。キッチンのフライパン二つを使い、乾煎りをして水分を少しでも飛ばそうとしました。

手のかかった落花生は展覧会で皆さんの興味を引いたようです。今年の晩秋は落花生に振り回されて過ぎていきました。(光加)

今月の花(十月) 秋明菊

caffe kigosai 投稿日:2023年9月15日 作成者: mitsue2023年9月16日

秋の高い空の下、揺れている秋明菊。貴船菊とも呼ばれ、京都の貴船に多く見かけたということでこの名があります。

秋明菊は菊の仲間ではなくキンポウゲ科に属します。学名はAnemone hupehensis var. japonica といい、アネモネの仲間です。

キンポウゲ科のラナンキュラスやアネモネは、ひょろりとのびた茎の先に花がついています。この秋明菊も花や葉、茎を観察すると特徴が重なり、なるほど同じキンポウゲ科と納得していただけると思います。

学名にjaponicaとついていますが、日本原産ではなく大陸から中国をへて日本に入ってきたものです。

花は白、ピンク、一重や八重があります。一本の茎から枝分かれした先に花が開くと、賑やかな雰囲気が周りにひろがります。紅葉し始めの樹々の中に置いても佳く、また、豆柿やキササゲ、まだ緑や黄色の皮をかぶったままの実をつけたツルウメモドキ、少し赤くなった雪柳の葉や吾亦紅などと、いけばなでのとり合わせにいけてもお互いが引き立てあいます。

秋明菊は高さは1メートル近くになり、地上近くの大きな葉に対し、上のほうの小さな葉は三箇所さけ目があり茎にじかにつきます。お店では白い花弁が5枚くらいの秋明菊がよく売られていますが、花被片が20以上もあるものが日本には自生しているようで、それはまた違った華やかさがあることでしょう。

私はコロンとした秋明菊の蕾が好きで、いけながらこの位置に蕾がくるといいな、と構えて剣山にいけます。剣山にはささるものの、蕾は思うような位置に止まってくれない時もあります。意に反してくるりとそっぽをむかれてしまうと、あらためてさしなおさなければなりません。細い茎に対して蕾や花が重いのでしょうか。

すらりとした気まぐれな女の子のようだ、と手にすると思いますが、水につけないとすぐに萎れてしまいます。切り口にアルコールをつけると元気を取り戻すとか。多年草で、地下茎で増殖して次の年にも現れるとなれば、なかなかのお嬢さん、とも言えるでしょうか。

秋を彩る個性的な枝や花々が楽しみな季節が巡ってきました。(光加)

今月の花(九月) 麻の実

caffe kigosai 投稿日:2023年8月18日 作成者: mitsue2023年11月1日

彩色苧殻を使った作品

夏の終わり、いけばなの教室に花屋さんから花材が届きました。目を引いたのは、長さ80センチ程度のまっすぐな数本の棒。赤、青、黄と鮮やかに塗られ、手に取ればなんとも軽くおもちゃのような楽しさが伝わります。乾かした麻の茎に色を塗った苧殻です。

さわってみると縦にかすかにうねりがあります。軽いのは乾かされて中が空洞のためです。「取り扱い注意!折れやすいでしょう?」と説明をします。

お盆休みで実家に行っていた生徒が「苧殻ってご先祖様のお迎え火や、送り火に使うあの苧殻ですか?それに色をつけた、ということか」と手に取ってしげしげと見入っていました。

子供の頃、お盆にはいる日「さ、お迎えしましょう!」という母の掛け声の下、小さな庭に下り暮れていく夏の空を仰ぎ見ていると「危ないから近づかないで」とさらに母の声。

何本にも折られてほうろく皿に盛られた苧殻にマッチで点火すると、パッと燃え上がった炎がいつも見ている家族とは少し違ったそれぞれの表情を照らし出したものです。今や都会の集合住宅に暮らす身にとっては、思い出としてのみ残る光景となりました。

このころは、苧殻が麻布を織る繊維を取るために栽培した麻の、皮をはいだあとの茎ということを私は知りませんでした。

麻の栽培歴史は古く、起源前から存在していたとも言われ、日本のみならず今に至るまで人々の生活に寄り添った植物として知られています。

もみじの葉より少し切れが深いような形をしている麻の葉の模様は、子供が健康に育つようにという思いを表すそうです。昔、白地に紺の線で六角形の麻の葉が描かれた布が物干しざおに何枚も干してあるのを見て、この家には生まれたばかりの子供がいるのでは?と思ったものです。麻は成長するのが早く3メートルを超すこともあり、麻のようにすくすく育ってほしいという親の願いを表わしているのでしょう。

殻に守られた麻の実はヘンプシードと呼ばれ、必須脂肪酸や植物繊維が多く含まれたスーパーフードとして近年認識されています。古代中国では五穀のひとつとして知られていました。日本人にとっては七味のひとつとしてお馴染みで、中の一番大きいものが麻の実です。油分の多いことから食品のほかに石鹸やペンキの成分としても使われているということです。

不規則な生活をしている現代人には健康のバランスを取るため貴重なヘンプシードですが、最近気が付いたことがあります。長年着ていた長じゅばんの柄が源氏香の模様ということは知っていたのですが、下地の柄が麻の葉をデザインしたものでした。

思いがけないところで大人になっても麻の葉に守られていたのです。夏ももうすぐ終わり、単衣の着物は今年は着られるかなあ、とふと思った時のことでした。(光加)

今月の花(八月) 松虫草

caffe kigosai 投稿日:2023年7月19日 作成者: mitsue2023年7月19日

高原の滞在もあと少しとなるころ、母と私は地元の知人の案内でお花畑を見に行きました。

子供だった私はお花畑というのは都会の公園の花壇のイメージしかなく、きっとたくさんの花がかたまって一か所ににぎやかに咲いているのだろう、と期待をして歩き始めました。

道はすこし登り坂となり心地よい風が抜けていく頃、草むらの中に、細い茎の頭に薄紫の小さな花びらを中心からぐるりと付けた花がゆれているのを見つけました。直径5センチくらいだったでしょうか。

「あ、松虫草!ここにも!」気が付けば花は草むらのあちこちに咲いていたのです。お花畑のひとつを形作っていました。耳を澄ませばかすかに虫の声も聞こえてきました。

これが松虫草!と私はその名前が不思議でした。愛らしい清楚なたたずまいは昆虫の松虫とにわかに結びつきませんでした。知人は「松虫の鳴き出す頃に咲くからと聞いたことがありますよ」と教えてくれました。

「松虫といえば、あなたの小学校の入学願書をとりに行ったとき、教室から(あれ、松虫が鳴いている、チンチロチンチロチンチロリン)と一年生の女の子たちが先生のピアノ伴奏で一生懸命歌っているのが聞こえてきたの。たしか秋のはじめだったわ。私、何故かはわからないけれど いい学校だなあ、と思ったの」と母が言うのです。季節に合った歌を歌っていることだけが学校を選ぶ理由とは思いませんが、次の年私はその学校の一年生になりました。

日本に自生している松虫草はScabiosa japonicaです。同じ属名scabiosaを持つ植物は西洋松虫草(Scabiosa atropurpurea)やコーカサス松虫草(Scabiosa caucasica)など外国原産のものです。西洋松虫草は中央部が丸く高くなり、コーカサス松虫草は比較すると中央は平たく花は大きめです。園芸種として色も形も多数あり、どの種類もスカビオ―サと呼ばれ花店では一年中見かけます。

花の終わった状態がどこか丸い宇宙船を思わせる形になって売られているものもあります。ステルンクーゲルという名前は、ドイツ語では星の球体という意味だそうで、不思議な形はこれもスカビオサ?と思いますが、花が咲いている時に見ると確かにスカビオサです。

紫や白のほかピンクや赤や黄色、臙脂色、紺に近い青色のもの、細かい花びらの集まった手毬のような丸いもの、灼熱の都会の中で入った花屋さんの涼しいストッカーの中に、華やかなスカビオサを見つけることがあります。色や形は異なりますが、いずれもScabiosaの属名を冠する花たち。見ていると、あの薄紫の可憐な松虫草とチンチロリンという松虫の音がどこか遠いところから聞こえて来そうな気がしてくるのです。(光加)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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