秋になると木々には様々な実が色づいていますが、その中で白い実を見ることは意外に少ないものです。
シンフォリカルポスはその一つ。木そのものは1mから2m位の灌木で、夏に開く花は小さくて目立ちません。真珠のような丸い粒が枝に付きますが直径1cm前後で色は不透明で冷たい色感をもつ白です。プクプクとした大小の実が枝についているところをみると、思わず触ってみたくなる愛らしさがあります。たくさん実がつけば重みで枝は垂れ下がります。実は白の他に薄いピンクや、ルビー色、濃い赤もあります。切っていけていると実が熟していくうちに葉はだんだんと落ちていきます。
シンフォリカルポスという名をはじめて聞いた時は、競馬で走っている馬の名前みたい、と言ってしまいました。
英語ではsnowberry (スノーベリー)、雪の実といわれれば、こちらのほうがなるほどと思います。もともとアメリカにあった雪(せっ)晃(こう)木(ぼく)を観賞用に品種改良されたもので、雪晃木にも白く丸い実がなるそうです。
シンフォリカルポスという名はもともと属名で、カルポスがギリシャ語では実を意味します。何科に属する植物かといえば、すいかずら科というのは意外でした。
すいかずら科の代表は何といってもすいかずらで、忍冬ともいい、蔓性です。白く咲いた花が終わりの頃には黄色になり、ふたつの色が同時に枝にあることから金銀花と呼ばれ英語名はhoneysuckle ,ハニーサックルです。それがこのシンフォリカルポスとどこがどう共通なのか、だれとだれが血のつながった親戚といわれても、にわかに類似を見出すのに戸惑があるのと同じです。
シンフォリカルポスは12月くらいまで実をしっかりつけているそうですが、花屋さんで見かけるのは夏が終わってから秋に移っていく時です。秋も深まり、実ものが熟して色も豊富な様々な種類のものが次々と花市場に登場すれば影をひそめます。シンフォリカルポスは実を楽しむ季節の、先導をしているのでしょうか。
ふと気が付くと周囲から消えているこのシンフォリカルポス。季節から季節へと、あっという間に駆け抜けていくのです。(光加)