和柄の赤い布のケースにいれられた柘植の櫛。それは初代家元の奥様に頂いたものです。何かの集まりにその場にいた女性全員にくださいました。晩年は車いすでしたが豊かな白髪を後ろで短くちょこんとまとめられ、付き添いの方の手をかりて本部の会館にお出ましのところを何度かお目にかかりました。
柘植の櫛は手入れがよいと一生ものと言われます。柘植の枝をいけてみて、その意味がわかる気がしました。見た目が細いわりに鋏を入れると固く、四画い断面は緻密です。なるほど印鑑や彫刻にも使われる理由もわかります。
柘植はツゲ科のツゲ属で高さは5メートルにもなるそうですが、私は家の庭に植えられていたおよそ1メートルくらいのものしか見たことがありません。光沢のある1センチちょっとの卵型の葉が特徴で、春には枝先に小さな薄黄色の花が咲きます。
柘植の花は一個の雌花の周りを雄花が取り囲んでいてあまり目立たないそうで、家の柘植の花には気が付きませんでした。葉の付け根や枝先にまとまって咲くそうです。
柘植の枝が固いこと、枝分かれが多いことから、枝をまるごと漂白して刈込み、丸い形にして柘植玉と呼びいけばなの大作に使うこともあります。
柘植の櫛の手入れには椿油がいいといわれます。105才までしっかりしていらした、大奥様と呼ばれた初代家元夫人の見事な白髪は柘植の櫛で整えられていたのでしょう。
会館でお目にかかった時の車いすからの呼びかけはいつも「あなたたち、勉強してる?しないと止まるわよ!」
柘植の櫛を手に取るたび、あの声が聞こえてきます。(光加)













