カフェネット投句(11月) 飛岡光枝選

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【入選】

柿加へ白和え少しよそゆきに  涼子

「加へ」がかたい。「白和え」→「白和へ」。「柿たして白和へ少しよそゆきに」。

開拓の夢の小豆ぞ引きつがむ  隆子

「小豆引く」と「引き継ぐ」を足したようなことばに無理がある。「開拓の夢の小豆を引きにけり」。

きちきちを両手広げて追いにけり  周作

「両手ひろげて」に少年の(ような)わくわくする心が表現された。「追いにけり」→「追ひにけり」。

前々と這いずり回る南瓜かな  周作

「這う」に南瓜が地面の上で実る様子が感じられる。が、「前々」は意味不明、「這いずり回る」は大げさ。「這い」→「這ひ」。

綿入れも死語となりしや冬来る  弘道

「綿入れも死語となりしか冬来る」。

音もなくただひたすらに木の葉降る  弘道

「ひたすら」がいい。ただ、木の葉でこのような句はたくさんある。この句に「音もなく」はなくてもいいので、より自身に引き寄せた表現をする工夫を。

窓を打つ木枯らしの音眼鏡拭く  弘道

「音」はいらない。

【投句より】

くり抜かれお化け提灯大かぼちや
・そのままを説明しただけになってしまった。

夕日より茎の赤しよ蕎麦を干す 
・「夕日より茎の赤しよ」が冗長で赤が見えてこない。

ぽつぽつと綿咲く道に乳母車
・この「に」の使い方注意。とたんに説明になる。

今月の季語(十二月) 冬の衣(2)

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先月のクイズの答えは「綿(わた)」でした。毛は違うのか、革は候補にならないのか、などなど楽しい意見交換ができました。今月はそれらをまとめて続編としてお届けします。

「綿(わた)」はこのままで冬の季語として使えます。「毛」と「革」は語を足して冬の季語になります。どんな語を足せばよいでしょう。

毛をウールととらえれば、それを紡いで糸にした〈毛糸〉、着用できる形に作り上げる行為である〈毛糸編む〉、その結果できあがった〈セーター〉〈マフラー〉〈冬帽子〉〈手袋〉など、実に多くの冬の季語につながります。

毛糸屋にわが好む色ひとも買ひぬ    及川 貞

ひとときは掌の中にある毛糸玉      黛まどか

寄せ集めだんだら縞の毛糸編む     野見山ひふみ

女性ばかりでなく男性も毛糸を詠んでいます。例えば、

毛糸玉幸さながらに巻きふとり      能村登四郎

毛糸編はじまり妻の黙はじまる      加藤楸邨

プレゼント大きく軽し毛糸ならむ       松本たかし

ここに挙げた男性俳人はどうやら「編み物王子」ではなさそうです。男性自らが編む主体となって詠むと、どんな句ができるのでしょうか。今後に期待したいところです。

セーターの鎖の模様胸を逸れ        宇多喜代子

逢ひに行く緋のマフラーを背に刎ねて  辻田克巳

冬帽のやはらかなるを鷲摑み        鷹羽狩行

ふかふかの手袋が持つ通信簿      井上康明

〈黒手套嵌めたるあとを一握り  岡本 眸〉の黒手套はおそらく布製でしょう。衣類や小物類は毛糸で編み上げたものとは限りませんが、近い雰囲気を持つ句を選んでみました。素材感まで詠み込めることを味わってみましょう。

「革」も同様に〈革手袋〉〈革ジャンパー〉〈革コート〉〈革足袋〉など、防寒のための素材として使われると冬の季語になります。また毛がついたまま鞣した〈毛皮〉も冬の季語です。

洞窟に似し一流の毛皮店          大牧 広

人形の手に正札や銀狐            星野立子

〈毛布〉も羊毛などで織った防寒用の寝具や膝掛けを指す冬の季語です。毛より〈布団・蒲団〉の仲間として認識していそうですが。

毛布にてわが子二頭を捕鯨せり      辻田克巳

ダリ展の隅の監視の膝毛布          冨田正吉

余談ですが、人の毛髪にも冬の季語があります。髪は四季を問わず生え変わりますが、この時期の抜け毛を木の葉が散るのになぞらえて〈木の葉髪〉と呼ぶのです。

音たてて落つ白銀の木の葉髪       山口誓子

指に纏きいづれも黒き木の葉髪     橋本多佳子

先月のクイズはまだまだ発展形が考えられます。他の季節の歳時記もひっくり返して、探してみてください。(正子)

今月の花(十二月) カトレア

ran師走に入ったころ、テレビの画面の歌謡祭で受賞者たちの胸につけられていたのは大輪の紫ピンクのカトレアでした。直径が15センチもあろうかというその花は、受賞者が挨拶をしたり歌うとき、あたかもつけている人の喜びと緊張を伝えるかのごとく震えるように揺れていました。あれは20年くらいも前だったでしょうか。それ以来私には、カトレアは晴れの日の花というイメージがあります。

カトレアは蘭科に分類され、属名をカトレアといいます。19世紀の英国人ウイリアム カトレ―という蘭の愛好家にちなんでその名がつけられた蘭の一種です。花は中央に上(背)萼片と二枚の側萼片があり、それに二枚の花弁とからなっています。口唇または唇弁(リップ)と呼ばれる突き出した部分があり、その縁はフリル状になっています。カトレアのなかでも代表的な、カトレア ラビアータの「ラビアータ」は口唇のあるという意味、また英名のautumn cattleyaは、秋のカトレアという意味です。花の咲き具合は日照時間に関係があり、元々は日の短くなった秋に咲いていたのでしょうか。今はそれぞれの季節に咲く品種があります。

交配種は様々で、黒とブルーを除き花弁や口唇の色は思いのまま、花のサイズも小さいものから大きなものまであり、数輪の花をつけるものもあります。

短い茎のついた花を高くいけようというときは、その茎を長さ数㎝の水のはいったプラスチック製の筒に差し込み、その下部についている棒の長さを切って調節しなければなりません。高さのある花器の口元にそのままカトレアの短い茎をいれて水を飲ます、ということもできますがいけるときの花の位置はほとんど定まってしまいます。思った通りにいけたいとなると、なかなか厄介な花なのです。

薄ピンクや黄色の小ぶりで優しげなカトレアは、数輪家の中に飾ると気分も華やぎます。ところが大輪の豪華なカトレアが一輪いけてある空間は落ち着きません。蘭の中の女王という孤高のカトレアにじっと見つめられていると一対一で勝負を挑まれているような気がしてきます。

原産地は中南米で、その太く丈夫な根で他の植物の幹や枝、石などにまで着生して肉厚の葉を持つカトレアですから、そんじょそこらの花とはたくましさが違うのです。貫禄の差でしょうか。(光加)

今月の料理(12月)_牡蠣蕎麦

soba  一枚残ったカレンダーを眺め、つくづくとこの一年の速かったことを思うのは毎年のことです。若いうちはクリスマスや年末休暇など楽しいことがあった年の瀬ですが、現役を退職し毎日が日曜日となると年末年始の混雑が返って煩わしく思えます。とは言え、自分ばかり世の中の時間の流れとは無関係に過ごせるわけではありません。

かたちだけになった年越しの行事ですが、それでも年越し蕎麦をいただき、新年を迎える気持ちはまだ、老若男女だれにでも残っているようです。縁起を担いでの年越しそばは大晦日にまわして、今月は今が旬の牡蠣を使った温かいお蕎麦です。牡蠣は煮すぎると硬く風味も落ちますのでさっと火を通すようにするとお蕎麦と共に喉越しよくするするといただけます。普通お蕎麦は醤油仕立ての汁ですが、ここでは塩で味付けし薄口?油で香り付しました。香りのよい三つ葉と海苔、柚子を一片添えて熱いうちにどうぞ。

【作り方】
鍋に出汁を煮たて牡蠣を入れさっと火を通します。
牡蠣に火が通ったら牡蠣だけをすくい、残った出し汁に塩、薄口醤油を入れて味を調ます。
蕎麦を器に盛り、煮立った出汁を加えて上に牡蠣と刻んだ三つ葉、海苔を盛り薄くそいだ柚子を添え   て出来上がりです。
【分量】
蕎麦一束 (一人前)
出汁  1.5カップ
三つ葉       適量
海苔  適量
柚子  適量
塩  約小さじ半分弱
薄口醤油 少々

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」(10月)

ine朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。10月の兼題はサイト「カフェきごさい」より、「季語」(秋の野遊び)、「料理」(新米)、「花」(ななかまど)です。

【特選】

新米の粥一粒をお食ひぞめ  隆子

新しい小さな命を寿ぐに相応しい新米。「食ひぞめ」は素直に「食ひ初め」とすること。この句に「初」の一字大切。

淋しさにあふぐ青空ななかまど  涼子

青空にななかまどが印象鮮明。

この坂を登れば届く今日の月  涼子

月に触れそうという句はたくさんあるが、「登れば届く」と断言したところがこの句の手柄。坂を登りながら月を見上げている様子がきちんと描かれ、一句をしっかりとしたものにしている。

【入選】

賑やかに炊上りたる今年米  周作

「賑やかに」に新米の喜びが溢れる。

一掬は田の水口へ今年酒  隆子

「一掬」がかたい。「は」が説明的。「一掬ひ田の水口へ今年酒」。

この山に火伏権現ななかまど  隆子

形はよくできているが、「ななかまど」(七竈)と「火伏」が付きすぎ。

芒原身を潜ませし風の音  周作

芒原をゆく風の音に身を任せて。

御くるみより拳のぞかせ菊日和  涼子

説明しすぎで印象が薄くなってしまった。「御包みから小さなこぶし菊日和」。

二人ゆく山の高さにななかまど  稲

道行と読むととてもよい。

朝に散り夕に降りける山紅葉  周作

紅葉の散る様を繊細に描いた。「朝に散り夕べに降りて山紅葉」。

厚き蓋突き上げ突きて今年米  周作

新米の力強さ。「厚き」が少し説明的になるので「釜の蓋突き上げ突き上げ今年米」。

忽然と薔薇の花より枯蟷螂  稲

冬に鮮やかに開く花と鮮やかに枯れる虫の饗宴。

こんにちはと過ぎる木道草紅葉  涼子

よくある風景だが、この作者らしく明るい一句とした。

今月は実感のある句が揃いました。実感とは実際に見たかではなく感じたか。見ることは大切ですが、感じなければ、何を感じたかをしっかり捉えなければ伝わる一句にはなりません。11月の兼題は「カフェきごさい」より「季語」冬の衣、「料理」白和え(林檎、柿)、「花(植物)」南瓜 です。(飛岡光枝)

大揺れに揺れし田んぼや今年米  光枝

カフェネット投句(10月)飛岡光枝

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【入選】

ひつそりと外人墓地に女郎花  弘道

丈高い女郎花がよく見える。

太陽にかわく泪や実オリーブ  隆子

「実オリーブ」が窮屈。「太陽にかわく泪やオリーブ摘む」。

霧の中ぬーつと接岸鉄の船  周作

もっと焦点を合わせたい。「鉄の船霧の中より現はるる」。

筋雲と確かな秋の浅間山  周作

「筋雲の確かな秋や浅間山」。

からがらの命ぬくめよ芋煮会  隆子

秋の行楽の「芋煮会」にからがらの命は少し大げさだが、自然災害が多い昨今、被災地などでの芋煮会ではこんな思いが重なるのかもしれない。温かい料理の季語にするとより焦点が絞れる。

【投句より】

今月より、入選外の句についても取り上げます。

・竜胆を一輪活けて珈琲を

「竜胆」でなくてもよい句。しっかりした一句にするには、「竜胆」にぐっと迫る必要がある。竜胆の何に感動したのかを見極めたい。

・不気味なり大きな船は霧の中

「不気味なり」で片づけないで、具体的な事象で。

今月の花(11月)南瓜

%e3%81%8b%e3%81%bc%e3%81%a1%e3%82%83%e5%8d%97%e7%93%9cカナダの首都、オタワのダウンタウンにあるマーケット。そこには土産物や手芸品、お菓子や瓶詰などの食料品などを扱う店、そして屋外には果物や野菜を売る屋台に交じり、オレンジ色の大小のカボチャを売るスタンドがありました。購入した人たちはおばけの顔や動物や魔女などを彫り、灯りが入れられて十月末のハロウイーンの夜を飾るのでしょう。

ウリ科の南瓜には大きく分けて西洋カボチャ、日本カボチャ、ぺポカボチャの三種類があります。ハロウイーンに使うオレンジ色の南瓜はペポカボチャで他に緑や黄色、白や縞のあるものなど、形も色も大きさも様々です。食用には煮ると素麺のように実が崩れる金糸瓜(素麺かぼちゃ)、ズッキーニもその仲間です。

ポルトガル船で日本へ渡ったものがカンボジア産のものであったため、「カンボジア」という響きから「かぼちゃ」とよばれるようになったという説もある日本カボチャは、皮が黒く溝があり、料理をすると煮くずれしにくい特徴があります。

西洋カボチャは甘味が強くほくほくとした食感が好まれ、現在日本で出回っている南瓜は、明治の初期に渡来したこの種類が多く、栗南瓜もこの種類です。

夏に花が咲き秋に実る南瓜は秋の季語ですが、冬には冬至南瓜として登場します。冬至に食べれば風邪をひかないといわれ栄養面でも優れています。長く保存ができる南瓜は野菜が乏しい昔の冬には貴重なものでした。現在では南半球のニュージーランド産のものが多く輸入されています。

南瓜はズッキーニに代表されるように黄色い花を食べたり、スープやお菓子にしたりと様々な用途があります。オーストリアの都市、グラーツに行った時も隣国スロヴェニアまで足を伸ばし、カボチャオイルを絞る工場に連れて行っていただき帰りに炒りたての香ばしい種をお土産にいただきました。その南瓜にはかすかに縞があるのですがこれもペポカボチャの一種でしょうか。

ところでこのオタワの市場に来た理由は、この街の花屋さんや花市場には日本に比べて枝や花の種類が少なく、代わりの花材になるようなものを求めて訪れたのでした。早速個性的なペポカボチャの中から鶴首南瓜を手に入れました。かなりの重さがあり、デモンストレーションの舞台ではバランスを見ながら鉄の花器に紅葉した楓と黄色いガーベラ、モカラという蘭といけました。この南瓜が登場したとき、300人の観客の皆さんのオヤ?という反応があり、やがてすぐに笑いが広がっていきました。

「シンデレラ」の物語にも南瓜の馬車が登場しますが、さてそれはどの種類の南瓜だったのでしょうか。

その多様な色と姿に、作品のイメージも食欲も想像力をも掻き立てられる南瓜なのです。(光加)

a la carte 運動会

undoukai先日、近くの小学校区の13の自治会が集まって市民体育祭が開催されました。参加者は幼児から父母世代、祖父母世代と幅広いです。

美しい秋空の下、小学校の校庭で全員参加のラジオ体操から始まりました。競技内容は、小学生の50m走、中学生の100m走、グランドゴルフ(60歳以上)、障害物リレー、紅白玉入れ、大縄跳び、綱引き、パン食い競争など盛りだくさんです。

パン食い競争は、私の子どもの頃は餡パンと決まっていましたが、今はコロッケパン等バラエティーに富んでいます。目指すパンに向かってダッシュです。

一番盛り上がる種目は、自治会対抗リレーです。午前中に予選があり、上位6チームだけが午後の決勝に出場できます。小学生、中学生、高校生、大人とバトンを繋いでいきます。オリンピックならずとも、自治会のチーム優勝を目指して、真剣勝負です。お父さん、お母さんが少年、少女にもどって必死に走ります。そんな両親を子ども達が大きな声で応援しています。

私は今年、自治会の役員をしていて、前日のテント設営などの準備からお手伝いをしました。近隣の人々の交流の場として、運動会はいいものだと改めて思った楽しい一日でした。(洋子)

兄ちやんが二人抜いたぞ運動会    洋子

今月の料理(11月)_白和え

%e6%9f%bf 秋に入って立て続けに台風に見舞わたせいか野菜の高騰が話題になっています。先日、東京に住む友人からレタスや葉物、ニンジンなどの値段を聞かされその馬鹿々しい値段に少し呆れかえりました。もちろん、便乗値上げなどもあるのでしょうが日常使う野菜が高いのは考えものです。こんな時は田舎住まいの良さを痛感しますが、地方も段々と都市の悪いところ?を真似て少しづづ野菜などが値上がっているのも事実のようです。

収穫の季節も終わり、刈り取った田にはこの暖かさでひつぢ穂が勢いよく育っています。この頃、見渡しの良くなった田圃に見かけるのはびっりしと実をつけた柿の木。昔は貴重な食糧だったのでしょう。梅と共にどの農家にも必ずと言ってよいほど植えてありました。以前、新潟から東京へ就職した知り合いが「東京では柿とイチヂクを売っている」と驚いて話してくれましたがこの風景を見ると納得します。こちらでは、柿やイチヂクは庭や野にあるものなのです。

さて、何もかも枯れて行く中で柿の実が赤々と実っているのはとても印象深いものです。昔は天の取り分として最後の一つを木につけたままにしておく習慣がありましたが、これが「木守」です。まだ、本格的な冬には時間がありマーケットには柿が沢山出回っています。今月の料理は柿を使った白和えです。精進料理などにはよく柿の白和えが用いられますが、少しアレンジして若い方にも好まれるように洋風にしてあります。柿ばかりでなく、手近にある果物を使ってお試し下さい。

普通白和えと言えば和え衣にお豆腐を使いますが、水切りが中々面倒です。そんな時は水切り不要の濃いお豆腐を使うと簡単に出来ます。ここで用いたもは普通のお豆腐よりかなり水分がぬけていてオリーブオイルと塩、コショウでいただくもの。商品名は「ナチュラル豆腐」とありました。丁度頂き物の柿がありましたので、柿とリンゴを使って仕上げてあります。キューイフルーツなどもおすすめです。

和え衣はお豆腐のほかクリームチーズを使っています。ここではお豆腐とチーズを同量でもちいましたが、チーズが苦手な方はお豆腐を多めにしてチーズで和え衣のコクを出すようにすると食べやすいと思います。

【作り方】
クリームチーズとお豆腐をよく混ぜあわせ和え衣つくります。チーズは冷蔵庫から出して室温に戻すと柔らかくなります。
リンゴは一部皮を残して剥き、柿と共に同じ大きさに切りチーズとお豆腐とで合えます。味は塩とレモンで整えます。果物の甘みが強い時はレモンを利かすとさっぱりといただけます。

今月の季語(十一月) 冬の衣

クイズです。麻、絹、綿、毛。このうち冬の季語はどれでしょう。

答えは綿。ただし、読み方はメンではなくワタです。木綿のワタのほかに、絹のワタである真綿(まわた)や化学繊維のワタ等があります。衣類や蒲団に使うシーンを指して季語になっています。

旅路来て綿紡ぐてふわざに佇つ    富安風生

あのふわふわしたものが紡がれて糸になり、布に織られて日々の営みに適用されていきます。

〈綿入(わたいれ)〉は表布と裏布の間に綿を入れた着物のことです。着物を和服の意にとれば、今では舞台で見られるくらいと言ってもよさそうですが、この技法はつまりはキルティングですから、そう言い換えればコートなどに現代の綿入と呼べるものがあることに思い至るでしょう。

綿入や妬心もなくて妻哀れ    村上鬼城

〈負真綿(おいまわた)〉は真綿を使った袖の無い防寒衣のこと。今ならさしずめダウンのベストでしょうか。

負ひ真綿して大厨司る      高野素十

〈蒲団・布団〉が冬の季語と聞くと、年中使っているのに何故と思う人もいるでしょう。大昔は昼間来ていた衣類を被って寝ていたことを想像してみてください。当然夏は単衣、春秋には袷、冬には綿入を被ることになります。やがて夜専用の綿入(〈夜着〉や〈掻巻〉)が作られるようになり、蒲団へと進化していきました。

佐渡ヶ島ほどに布団を離しけり     櫂未知子

翔べよ翔べ老人ホームの干布団    飯島晴子

ちなみに〈綿入〉の対義語は〈綿抜(わたぬき)〉です。昔は綿入の季節が過ぎると綿を抜いて袷に仕立て直すということをしていました。「四月一日さん」(姓)を「わたぬきさん」というのはそうした所以です。

ワタはアオイ科の植物の実からとります。五月の連休の頃に種を蒔くと、七月頃芙蓉に似た黄や白の大きな花が咲きます。

雲よりも棉はしづかに咲きにけり   福島小蕾〈夏〉※棉(わた)と木偏の文字も使います。

花の後、卵形の〈綿の実〉をつけますが、晩秋には熟して裂け、白い絮毛をつけた種を露出します。このことを〈綿吹く・桃吹く〉、絮毛を採取することを〈綿取〉〈綿摘〉といいます。

明月の花かと見えて綿畑        芭蕉〈秋〉

蕾あり花あり桃を吹けるあり      三村純也〈秋〉

綿の実を摘みゐてうたふこともなし  加藤楸邨〈秋〉

その後、冒頭の例句の作業に移ります。

分業が当然となり、出来上がった衣類を購入するようになった現在ではほとんど意識しない事柄が、季語の中にはこうして生きているのです。

クイズに並べた麻(リネン)、絹(シルク)、毛(ウール)も、いろいろな形で季語となって歳時記に掲載されています。探してみてください。(正子)