春を告げる花木(かぼく)を一月にいけるのなら、私は瑞々しい黄色の花をつける花木からいけたいのです。黄色の花をつける花木なら年末にも蝋梅がありました。しかし年が変わるともう花屋からは消えています。
新しい年に待ってました、とばかり店先に現れるのがまず連翹、次に山茱萸 万作 と続きます。中国原産といわれているモクセイ科の連翹は、葉の出る前に先が四つにわかれた2~3センチの黄色の花をつけます。木の高さは2~4メートルほどになり、枝が地に着くとそこからまた根が出るほどの生命力を誇ります。
連翹の「翹」という字は雉の羽を意味しますが、その中でも尾羽をさし連翹の弧を描く線が思いだされます。種類は多く、チョウセンレンギョウは緩く湾曲しますが シナレンギョウは枝が立ちぎみです。ヤマトレンギョウ、小豆島レンギョウなどは日本特産のものですが花の付き方はよくないようです。今日本で私たちが見かける鮮やかな黄色のレンギョウは交配による園芸種が多いと聞きました。
連翹には連翹空木という別名があります。枝の節のところは固いのですが、枝の中の髄は空洞となるので空木という名前が付け加えられるのでしょう。いけばなのクラスで生徒さんに「この枝はためられますか?」と聞かれるのですが、自分で矯めてみては?ということにしています。曲げようとすると「ぽきっ」と折れてしまうこともしばしば。花材はそのままを生かした方がいいものもあると手が学習をするのです。
ゴールデンベルという英名を持つ連翹は、世界中多くの場所で見ることができます。冬のヘルシンキ、車から降り雪の上を足元に気を付けながら着いた花市場。市場の中も寒く思わず襟をすくめたのですが、花々の並ぶ隅に数本の連翹の花の鮮やかな黄色を見つけた時、一瞬寒さを忘れさせてくれました。
日本への渡来は江戸時代とも平安時代初期ともいわれています。春はあけぼの、やうやう明けゆく中にーーその時この連翹があったら清少納言は紫たなびく雲から目を転じると、すぐそこに黄色の花が咲いていることに気が付いたでしょうか。(光加)