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浪速の味、江戸の味 (四月)桜餅

caffe kigosai 投稿日:2019年3月22日 作成者: youko2019年3月28日

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桜の花が開くころ食べたくなる桜餅。関東と関西ではその姿は異なる。関東では小麦粉の生地を薄くのばして焼いた皮で餡を巻き、塩漬けの桜の葉で包む。関西では、道明寺粉の生地で餡をくるみ、桜の葉の塩漬けで巻く。関東の桜餅はさっぱりとしたクレープのような、関西の桜餅はもっちりとした食感である。初めて長命寺ゆかりの桜餅を食べたのが三年前で、それまでは道明寺粉の桜餅しか知らなかった。姿、食感は違ってもそれぞれおいしいし美しいと思う。

桜餅は桜の名所で知られた江戸向島の長命寺の門番山本新六が考案し売り出したのが始まりといわれている。文化・文政年間(1804~1830)には大評判となった。いつごろから小麦粉を原料とするようになったのかは不明である。江戸後期の随筆『嬉遊笑覧』には、初めはうるち米の粉仕立、後に葛粉で作られるようになったとある。他の文献では小麦の粉を練り蒸して生地にしていたと書かれているので、店それぞれが工夫していたのであろう。評判になった桜餅は各地に広まる。

大坂では道明寺糒(ほしいい)を原料にして作られた。道明寺は藤井寺市にある菅原道真の叔母、覚寿尼ゆかりの寺である。覚寿尼は道真が太宰府に下った後、毎日陰膳を供え無事を祈った。そのご飯のおさがりが病気回復にご利益があったので広く求められるようになったといわれている。道明寺糒は、もともと飯を干したものであった。現在はもち米を水に浸した後、蒸したものを乾燥させ粒子をそろえた道明寺粉が使われる。

どちらの桜餅も桜の葉の塩漬けがあればこそで、桜餅の風味の立役者である。

初役にいどむ稽古や桜餅   洋子

 

カテゴリー: à la carte (アラカルト), 浪速の味 江戸の味

浪速の味 江戸の味 2月、ぬくめ鮓

caffe kigosai 投稿日:2019年1月21日 作成者: youko2019年1月23日

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鮓は唐から伝わり、平安朝のはじめには広がっていたという。魚を用いた発酵食品である熟鮓である。魚の内臓をとり一夜漬けしたものに冷ました米飯を埋めるようにして重ね、重しをかけ発酵させる。夏の間に漬けこんだので夏の季語となった。発酵がもたらす酸っぱさは、酢を使うようになり手軽に鮓を作れるようになった。暑い時期に飯の防腐の面でも酢は有効である。

江戸前の握り鮓に対し浪速は箱鮓、巻鮓である。火を通したり、塩や酢や昆布で下味をつけ、生ものである握り鮓よりは持ちがよかった。行楽の弁当などに重宝である。

そのような夏の鮓に対し、京阪には冬ならではの鮓がある。ぬく鮓、ぬくめ鮓である。鮓飯に味をつけた椎茸、干瓢をまぜ、蓋付茶碗に盛り、好みで穴子海老などをのせ、蒸籠で蒸す。仕上げに錦糸卵をたっぷりとのせ、紅生姜を彩りに置く。別名茶碗ずしとも。最近は、見かけなくなったが、おすもじ屋のかどには、ぬくめ鮓の蒸籠が湯気を上げていた。

蒸すことで、酸味が柔らかくなる。あっさりと温かいぬくめ鮓は消化もよく、心までほっこりとさせてくれる。

蓋とれば湯気ほんのりとぬくめ鮓   洋子

a la carte 門松

caffe kigosai 投稿日:2017年12月30日 作成者: youko2018年1月1日

 正月の神祭の場所であることを示し、歳神様を迎える門松。松飾などとも言い、松をはじめとする常緑樹の緑が冬枯の景色の中でひときわ美しい。自ずと新年を迎える心持になる。吟行で先日、掛川市八坂にある事任(ことのまま)八幡宮を訪れたところ、鳥居の傍らに門松が立てられていた。「枕草子」にも(ことのままの明神いとたのもし)とこの社の名前が登場する。東海道筋の箱根に次ぐ難所といわれた小夜の中山の手前に鎮座している。道中の無事を祈って、昔の人々はこの社に参った。和歌にも詠まれ、多くの紀行文にも記載されている。真を知る神、言の葉で事を取り結ぶ働きをもたれる神、言の葉を通して世の人々に加護を賜う「ことよさし」の神である。ことだまの社である。しっかりとお参りをした。みなさま、よい歳をお迎えください。

門松やはるかに白き富士の山     洋子

 

a la carte 蓮池

caffe kigosai 投稿日:2017年7月4日 作成者: youko2017年7月5日

万博記念公園の蓮池に行きました。

1970年、大阪の千里丘陵で開催された日本万国博覧会の跡地が記念公園になっています。当時植えられた樹木が、半世紀近く経過した現在、大緑陰をつくっており、訪れる人々の憩いの場となっています。公園を歩きながら、当時何度か万博に通い、各パビリオンの描く「未来」にわくわくしたのを思い出しました。

蓮池は日本庭園内にあり、1200株の蓮の花がちょうど見ごろでした。水面からすっくと茎が伸び、蓮の葉が風に翻っています。明日咲きそうな莟には、エネルギーが充満している感じです。蓮池を見渡せるベンチに休憩しながら「天上界ってこんなところかも」と思いました。

蓮の花が咲くこの時期に、早朝観蓮会が開催されます。そして、大きな蓮の葉の中心に穴を開け、酒を注ぎ、切断した茎をストローにして飲む「象鼻杯」を楽しみます。飲んだ方に伺ったところ、蓮の茎の苦味が少し加わった味わい深いお酒だそうです。(洋子)

ぽんと咲く音を聞きたや蓮の花    洋子

a la carte 枝垂桜

caffe kigosai 投稿日:2017年4月3日 作成者: youko2017年4月5日

三月下旬に愛知県犬山市の圓明寺(えんみょうじ)の境内で、樹齢300年の枝垂桜をみました。今年の開花は例年より少し遅いようです。その時はまだ五分咲きほどでしたが、淡いピンクの可憐な花が天から降りそそいでくるようでした。

古木の太い幹には草が生えています。その枝垂桜を撮影している男性がいました。私も写真を撮ったのですが、「こちらから撮るといいですよ。」と声をかけてくださいました。聞くと毎年この枝垂桜を撮りに通っておられるとのこと。今年も満開になるまで毎日通われるそうです。

「今年も元気でこの枝垂桜の開花を見ることができたというのが、私の生きている証なんです。」と言われたのが心に残りました。人それぞれ、心を通わす桜の木があるように思います。根を下ろした場所で300回も花を咲かせてきた枝垂桜が、来年も可憐な花を咲かせていること、そしてまたあの男性が元気に枝垂桜に会いに来られることを祈ります。(洋子)

再会を約す一本桜かな     洋子

a la carte 運動会

caffe kigosai 投稿日:2016年10月22日 作成者: youko2016年10月22日

undoukai先日、近くの小学校区の13の自治会が集まって市民体育祭が開催されました。参加者は幼児から父母世代、祖父母世代と幅広いです。

美しい秋空の下、小学校の校庭で全員参加のラジオ体操から始まりました。競技内容は、小学生の50m走、中学生の100m走、グランドゴルフ(60歳以上)、障害物リレー、紅白玉入れ、大縄跳び、綱引き、パン食い競争など盛りだくさんです。

パン食い競争は、私の子どもの頃は餡パンと決まっていましたが、今はコロッケパン等バラエティーに富んでいます。目指すパンに向かってダッシュです。

一番盛り上がる種目は、自治会対抗リレーです。午前中に予選があり、上位6チームだけが午後の決勝に出場できます。小学生、中学生、高校生、大人とバトンを繋いでいきます。オリンピックならずとも、自治会のチーム優勝を目指して、真剣勝負です。お父さん、お母さんが少年、少女にもどって必死に走ります。そんな両親を子ども達が大きな声で応援しています。

私は今年、自治会の役員をしていて、前日のテント設営などの準備からお手伝いをしました。近隣の人々の交流の場として、運動会はいいものだと改めて思った楽しい一日でした。(洋子)

兄ちやんが二人抜いたぞ運動会    洋子

a la carte 燕の子

caffe kigosai 投稿日:2016年6月26日 作成者: youko2016年6月27日

001最寄り駅の券売機の右上の壁に、燕が巣を作り子育て中です。ここなら、いつも人がいて鴉が襲ってくる心配もありません。

燕が巣を作り上げてしばらく経つと、雛がぴいぴいと鳴きながら顔を覗かせるようになりました。最初二羽かと思っていたら、だんだん増えて六羽いるようです。

親燕が餌を探しに行ってしまうと、子燕はおとなしく口を閉じて親の帰りを待っています。頭の毛が立っていてなんとも愛らしいです。親燕が餌を運んで来ると、顔より大きく口を開けて、必死で餌をねだります。人間同様、親燕は子育てに奮闘しています。

改札を通る人の頭上に糞が落ちないよう、駅員さんが巣の下に段ボールで作った「糞受け」を取り付けました。そして、「しばらくの間、あたたかく見守ってください」と書いた、子燕のイラスト入りポスターが貼られました。

乗降客は足をとめ、「大きくなったね。」と笑顔で成長を見守っています。私も、燕の子に元気をもらっています。巣立ちの日がくるのが、うれしいような寂しいような気分です。(洋子)

いつだつて腹をすかせて燕の子    洋子

蜆取

caffe kigosai 投稿日:2016年4月10日 作成者: youko2016年4月10日

sijimitori伊勢参りと言えば、清流の五十鈴川を思い起される方も多いのではないでしょうか。内宮に参拝する前に、五十鈴川の御手洗(みたらし)場で、手を清めます。川に手を浸すと、心まで洗われたような清々しい気分になります。

五十鈴川は市中を流れ、やがて伊勢湾に入ってゆきます。その河口付近で大和蜆がとれると聞いていましたが、先日、実際に蜆を取っているところを見ることができました。

伊勢市二見町の御塩殿神社に御参りした折のことです。神事に用いられる御塩(みしお)を作るための御塩浜(塩田)が、五十鈴川の河口付近にあると知りました。行ってみると、小さな鳥居と、柵で四方を囲んだ御塩浜が見えました。

7月下旬から8月にかけての土用のころ水門を開き、御塩浜を五十鈴川から引いた汽水で満たします。天日で水を蒸発させ、鹹水(かんすい)を作ります。その鹹水を御塩殿神社内の施設で粗塩にし、年2回、3月と10月に焼き固め、堅塩にするそうです。

御塩浜を眺めながら御塩作りに思いを馳せていたのですが、道をはさんだ五十鈴川に目を移すと、小舟のそばで膝まで浸かりながら、何か取っている人が見えました。地元の方にお聞きすると、蜆を取っているとのこと。蛤、浅蜊とともに蜆もこの地の名産で春のごちそうです。

河口付近の五十鈴川は、まさに人の暮し、日々の食卓に密接に関わっています。上流の御手洗場の清らかな雰囲気とはまた違う親しさを感じました。(洋子)

蜆取る人も光や五十鈴川   洋子

a la carte 雪紅梅

caffe kigosai 投稿日:2016年1月28日 作成者: youko2016年2月2日

!cid_image003_jpg@01D15C1E先日、季語と歳時記の会主催の「第五回きごさい講座+句会」に参加しました。

講師は、虎屋文庫の中山圭子さん。「梅の菓子の魅力」について講演されました。講演の後は質問の時間があり、すてきな笑顔でわかりやすく答えてくださいました。和菓子の世界に遊んだようで、実に和やかで楽しい講座でした。

古くは木の実や甘葛(蔦の樹液を煮詰めたもの)の甘味を楽しみ、餅や団子が唐菓子、点心、南蛮菓子などの外来食物の影響を受けて発展してきたという和菓子の歴史、砂糖が広く使われるようになった江戸時代に和菓子が大成したというお話を興味深く聞きました。

江戸時代の京菓子司の梅花餅、うす雪餅、山吹餅、などの菓銘は四季や古典文学の情趣を連想させ、琳派の作品の影響を受けた洗練された美しい色形は、今の上菓子に受け継がれています。

梅は花の魁で、雪や霜の中でも凛として咲いています。可憐な梅は馥郁とした香りが魅力です。また、慶事のイメージもあります。寒紅梅、霜紅梅、雪中の梅、夜の梅、梅が香などの菓銘を聞くだけでどんな菓子だろうと想像力がかきたてられます。

和菓子の意匠にも、絵画のように「具象」と「抽象」があり、「具象」の方が人気があるというお話もおもしろかったです。

楽しいお話を聞いた後、梅の菓子を食べたくなり早速買いに行きました。写真の菓子は湿粉製棹物を切り分けたものです。菓銘は、「雪紅梅(ゆきこうばい)」です。【「雪紅梅」は、冬の「かさねの色」(平安貴族の衣装の色合せで、季節ごとに植物などの名称がつけられている)にちなんでおり、紅梅に雪がうっすらとかかったさまを表しています。】との説明がついていました。

上下が、そぼろ状で真中が練り羊羹になっています。昔の人々の春待つ心に想いを馳せながら、春のさきがけの梅の菓子をおいしくいただきました。

春をよぶ雪紅梅のかさねかな   洋子

a la carte   踊

caffe kigosai 投稿日:2015年8月18日 作成者: youko2015年8月19日

odori京都の伝統行事である五山の送り火は、八月十六日の午後八時から点火されてゆきます。その送り火の一つに、松ケ崎の「妙法」があります。松ケ崎にある涌泉寺(日蓮宗の寺院)では、八月十五日と十六日の夜、「題目踊」と「さし踊」が行われます。

盆踊というと賑やかなイメージがあったのですが、「題目踊」は、古式ゆかしく静かな踊です。男衆と女衆が向き合って「南無妙法蓮華経」と呼応しながら、しみじみ唄う中、檀家の人々が、揃いの浴衣を着て、前傾姿勢で扇子を膝のあたりで表裏表裏と返しながら、時計回りと反対方向にひたすら進みます。

「さし踊」は楽しそうな唄で振付もあります。飛び入りもOKなので、外国の方も手振りを真似て踊ります。「さし踊」は、時計回りに進みます。

十五日と十六日は、同じ踊でも雰囲気が少し違うように感じました。十五日は午後八時から踊り始めます。踊の輪の中に入り、心地よく精霊も踊っておられるように感じました。

十六日は、送り火が終わった後、午後九時ごろから踊り始めます。唄の哀感が印象に残り、彼の世に帰る精霊との別れを惜しんでいるようでした。

お盆も終わり、朝夕は秋の気配です。(洋子)

踊りつつ精霊帰る虚空かな    洋子

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カフェ_ネット投句とネット句会

・ネット投句は、朝日カルチャーセンター新宿教室(講師_飛岡光枝)の受講者が対象になります。
・毎月20日の夜12時が締め切りです。
・選者はカフェ店長の飛岡光枝、入選作品・選評は月末までに発表します。
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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。朝日カルチャーセンター「句会入門」講師。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。句集に『玩具』『花実』。著書に『子どもの一句』。和光大・成蹊大講師。俳句結社「藍生」所属。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょうよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。

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