大待雪草〔おおまつゆきそう〕という名のほかに、鈴蘭水仙という名もあるスノーフレーク。けれど(雪のひとひら)という意味の「スノーフレーク」とそのまま呼んだほうが、その清楚な花の色と姿に似つかわしい気がします。
葉はまっすぐに伸び、先まで40センチほどの明るい緑色で水仙の葉によく似ています。純白の花は釣鐘のように下を向き、一本の花茎におのおの距離を置き数個下がって咲きます。花と葉をみれば鈴蘭水仙といわれる理由がわかります。
小さな花の6つに分かれた花びらの先端近くに、緑の斑点がそれぞれについているのが大きな特徴で、英語名はsummer snow flake,夏の雪のかけら、の意味です。ヨーロッパ中南部原産で園芸種もたくさんあります。
数年前、オーストリアのウイーンから車で2時間あまりのグラーツでいけばなのセミナーに招かれた事がありました。このグループでの催しは初めての運営ながら大成功に終わったのは、先頭にたって家族ぐるみで計画から実行まで親身になって切り回してくれたDさんのおかげでした。大学教授のご主人は連絡と花器や花材をはこぶドライバー。本番の週末はカメラマンに徹して記録係。お嬢さんのTさんはボーイフレンドまでまき込んで会場設営はじめもろもろの細かいことを率先して手伝っていました。
この街を発ちウイーンに戻るとき、見送りにきてくれたこのTさんが〔さよなら〕のキスとともに渡してくれたのが、庭に今を盛りと咲いてたこのスノーフレークでした。くしゃくしゃの茶色い紙の中から出てきたそのひがんばな科の花は日本のものより少し大ぶりで、花びらの緑の点の色もわずかに薄かったのですが、どう見てもそれはスノーフレーク。「オーストリアでは、このあたりだったら今頃どこでも咲いているのではないかしら,このfruhlingsknotenblumeは。ちなみにfruhlingは春という意味」と彼女は説明してくれました。英語では頭に(夏)がつくスノーフレークですが、ドイツ語では(春)とつくのでした。グラーツでは2月末から3月になると見ごろをむかえ、もうすぐ一気に春の盛りを迎えるという自然の予告なのでしょう。
そういえば数十年前、東京の我が家の庭にもスノーフレークがあったことを思いだしました。毎年4月頃になると花壇の隅の同じところに咲いたのは 球根だからなのでしょう。花屋では切花では見かけたことはありませんが、近頃では園芸店では鉢で見かけることがあります。秋の初めには、秋咲きスノーフレークautumn snow flakeというピンクの淡い花を咲かせるものがあると聞いたので、今年は手に入れたいと思っているところです。(光加)
春深しスノーフレーク花ゆれて 光加