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加賀の一盞(12月)能登の海鼠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月21日 作成者: mitsue2025年11月21日

これを最初に口にした人は大したものだ、と世間でよく言われるものがある。その最たるもののひとつに海鼠がある。まさに海の鼠のような形をしている。ただ髭と足と尻尾が無いだけだ。

この少しグロテスクでもある海鼠、特に能登の海鼠の素晴らしさを今回紹介したい。

11月6日と言えば北陸から山陰にかけての日本海で蟹の解禁日である。その同じ日、能登の海鼠漁も解禁になる。蟹よりも海鼠が待ち遠しく感じる好き者が私を含めて金沢には多い。料理屋で蟹をむさぼっている横で一人寡黙になまこ酢をつまみ、温め酒をちびりちびり楽しむ。これぞ至福のひととき。こりとした歯触りから嚙み切ると淡い風味、お店の三杯酢がからみつく。

ここでさらに海鼠の楽しみをふたつ、そのひとつが海鼠腸(このわた)。なまこの内臓を塩辛にしたもの、身の淡白さからはかけ離れた磯臭さが凝縮されている。これこそ旨味のある能登の地酒の燗が絶妙、ひと口で広がるなまこの磯の香をさらに濃厚にして流してくれる。盃にこのわたを少し入れ燗酒を注ぎ頂く、これこそ通。

もうひとつ、これぞ珍味の王様、干くちこ。金沢ではその高級さから、おくちことも言う。なまこの内臓、その卵巣のみをひと筋ひと筋紐に掛けて干したもの。一辺7センチくらいの三角形が一枚で、作るのに数十キロの海鼠が必要になる。これを少し炙って酒の肴にする。ここまで来ると食通を通り越して粋の領域に入る。もちろん地酒との相性は抜群である。もっと贅沢なのはみじん切りにした干くちこの炊込みご飯。部屋中に広がる芳醇な香り、まさに天国か竜宮城。

蟹の陰に隠れた能登の海鼠、冬の心地よい酔いへと導いてくれる。ぜひご賞味を。

まるまると太るしあはせ能登海鼠  淳

今月の花(十二月)いいぎりの実

caffe kigosai 投稿日:2025年11月19日 作成者: mitsue2025年11月19日

iigirinomi
(今月は2013年12月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

明るい朱色の房になって垂れ下がるいいぎりの実は、ひときわ華やかな晩秋を演出します。いいぎり(飯桐)と呼ばれるのは、昔その大きめの葉にご飯を包んだり、盛ったりしたからといわれています。日本の中でも西では(いとぎり)ともよばれるそうです。

南天桐という別名は、艶やかな丸い実が南天の実の色と形に似ているからでしょう。この実をつけている季節は、木が10数メートルに達する高さであることもあって一段と目立つのですが、それは人間だけでなく鳥とて同じ。遠くから実をながめて楽しもうと思っていた矢先、そこにあったはずの実が下がっていない!

―――花材として綺麗なままをとろうとすれば、そりゃできる限りの高さに鳥よけの網をかけて、実を守るしかないからねーーーいけばなの枝をたくさん扱っている花屋さんの話です。長ければ20センチ近くの房になり、実は秋が深くなるまで枝に残っています。大きな葉がなくなってしまえば、元の枝から切り取って水につけなくても、実は急に落ちたり、表面の皮がすぐにはしおれる事は少ないでしょう。こんな理由もあって、この時期の花展には花材としてよく見かけられます。

木肌は確かに桐に似ています。桐から下駄やたんすが作られるのは他の木と比べると軽めだからといわれますが、この南天桐も実がついているわりに、持ってみると想像していたより軽く感じられます。

実に充分に陽が当たるように、という植物本来の持っている知恵でしょうか、枝は真っ直ぐ羽を広げたように伸びています。そこに下がる房の間隔は隣の房にあまり邪魔にならないよう、絡む事のないよう、うまく配置されているかのように見えてくるのです。

夏も終りのころのいいぎりを見た事があります。その緑の実からは、秋も深まったころの豪華に垂れ下がった姿はあまり想像できません。熟していないため実の形もほっそりとしています。でもこれはこれで面白く、魅力があります。朱赤ではなく白い実をつけた(いいぎり)もあるということですが 私はまだ見たことはありません。

もしもこの時期、いいぎり南天を幸運にも見かけることができたら色と形をじっくり観察してみてください。毎日の散歩の途中、すこし首を伸ばして上をみて探してみてください。都会の真ん中でもいいぎりは意外と回りに見つかるかもしれません。鳥たちに先を越されなければ、ですが。(光加)

十二月 冬籠

caffe kigosai 投稿日:2025年11月17日 作成者: masako2025年11月20日

新型コロナ禍の籠り居から解放されたかと思いきや、今年の夏はあまりの暑さに籠もって過ごすことに…。暑さがようよう納まり、さあいよいよ秋だと喜んだのも束の間、急速に冷え込むようになってきました。

こうなってくると、暮らしの近代化により実感を失った〈冬籠〉が気になります。歳時記をひもとくと、昔の人がしていた〈冬籠〉が垣間見えます。

まず冬を迎える前に〈冬支度〉をします。これは晩秋の季語です。衣類、寝具、燃料の準備、家まわりの補修をし、干したり漬けたりして保存食の仕込みをします。地方や家庭によってさまざまですが、冬になる前に行う、冬を過ごすための準備全般を指します。

ちなみに〈障子貼る〉も冬支度の一つです。「えーっ」と思った方もおられましょうが、秋の季語であることを覚えておきましょう。

ふるさとへ障子を貼りに帰りけり                     大串 章〈秋〉

独りなり障子貼り替へてはみても                    奥名春江〈秋〉

喋りつつはかどつてゆく障子貼り                    三村純也〈秋〉

いろいろな障子貼りがありそうです。山廬・飯田家では代々の当主が障子貼りの名人だったとか。現当主が先代(父)龍太の腕前もすばらしかったと書いています。

そして冬になると仕込んだ漬物や、干したり塩にしたりして貯蔵した食糧を少しずつ消費しながら暮らしていきます。

妻と我沢庵(たくあん)五十ばかりかな      島田五空

夜ふかしを妻に叱られ干菜汁(ほしなじる)        沢木欣一

塩鮭の塩きびしきを好みけり                    水原秋櫻子

家まわりの防寒・防雪の備えが必要な地方もあります。

高き木に梯子かけたり冬構(ふゆがまへ)          高浜虚子

山祇(やまつみ)の出入りの扉あり雪囲      前田普羅

樹木や草花にも冬構を施します。

霜除(しもよけ)の藁に降る雨だけ見えず          後藤比奈夫

風垣(かざがき)のくくり縄嚙む放ち鶏        皆川盤水

菰巻(こもまき)の松の鱗の落ちつきぬ      永方裕子

家うちでは〈隙間風〉を防ぎ、建具を入れ替えて暖房効果を高めます。

ことごとく北塞ぎたる月夜かな                 大峯あきら

首の骨こつくり鳴らす目貼(めばり)して    能村登四郎

運ばむと四枚屏風に抱きつきぬ                 後藤綾子

濤うちし音かへりゆく障子かな                 橋本多佳子

君と寝む襖(ふすま)の虎に囲まれて                高山れおな

暖房も今ならばスイッチ一つで切換えられますが、かつてはさまざまな使い勝手のものがありました。

スチームや中世の色濃きホテル                千原叡子

一片のパセリ掃かるる暖炉かな                芝 不器男

ストーブの中の炎が飛んでをり                上野 泰

学問のさびしさに耐へ炭をつぐ                山口誓子

今では〈炭〉をつぐのはお茶を嗜む方くらいかもしれません。〈炭〉を使わない家には〈炭斗(すみとり)〉や〈火消壺〉もありません。〈炭売〉という商売もあがったりになります。

ですがまだ歳時記にはこれらの「記憶」が残っています。時には解説にとどまらず考証まで読んでみてはいかがでしょう。(正子)

浪速の味 江戸の味(十一月) 軍鶏鍋【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年11月10日 作成者: mitsue2025年11月10日

いつまで続くのかと絶望的になるほどの夏の暑さでしたが、さすがに十月の声を聞くと東京はぐっと気温が下がり、慌てて衣替えをしました。

気温が下がると急に恋しくなるのが鍋料理。秋晴れの一日、以前から気になっていた東北自動車道の「羽生PA」に鍋を食べに行きました。パーキングエリアで鍋とは?

日光街道、奥州街道から江戸への入り口にあたる栗橋関所にほど近い埼玉県の「羽生PA」には、鬼平犯科帳をモデルにした江戸の街が再現されています。鬼平に登場する様々な店が並び、その一軒が鬼平ファンにはお馴染みの「五鉄」。密偵たちとの連絡場所として物語に頻繁に登場するこの店の名物が「軍鶏鍋」です。

江戸時代初期にタイから日本に渡来したといわれる軍鶏。その名は、タイの旧名「シャム」に由来します。勇猛な性質で闘鶏に使われましたが、引き締まった肉はうまみが濃厚で江戸名物の「軍鶏鍋」は武士や町人に好まれました。

賭博の闘鶏が禁止されてからも、日本各地で食用として品種改良されてきた軍鶏。江戸時代の軍鶏の血統を濃く引き継ぎ、飼育期間が一般的な鶏より三倍近く長い「東京しゃも」という鶏も誕生しています。

現在の「五鉄」の軍鶏鍋も江戸っ子好みの濃口醤油味。ささがき牛蒡がいいアクセント。この店では鬼平に登場する同心木村忠吾の好物「一本饂飩」も味わえます。こちらもみりんの利いた濃厚な汁に驚くほど太い饂飩が鎮座している逸品。

この冬は寒くなるのが早いとの予報、インフルエンザも早々流行期突入とか。「軍鶏鍋」と「一本饂飩」で精をつけて、この冬を乗り切りたいものです。

トントンと二階へ運ぶ軍鶏の鍋  光枝

カフェきごさい句会報告 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2025年11月8日 作成者: mitsue2025年11月8日

第三十一回「カフェきごさいズーム句会」(2025年10月11日)の句会報告です
(  )は添削例です

第一句座              
【特選】
よき音でもの食ふ人よ鰯雲       葛西美津子
手の先をすぐによごして葡萄摘む    高橋真樹子
(両の手のすぐによごれて葡萄摘む)
雲晴れてどかと富士山鯊の秋 葛西美津子
秋日浴び散らばつていく練習艇     上田雅子

【入選】
湯豆腐や庭に実りし柚子もらひ    上田雅子
(湯豆腐や庭に実りし柚子搾り)
ラフランス甘き香りに包丁す     高橋真樹子
(ラフランス甘き香りを包丁す)
駅出でて匂ふ銀杏や上野山      早川光尾
(駅出でて匂ふ銀杏上野山)
ひたすらに木の実拾ひし別れかな   藤倉桂
ひと束の草々の秋供へけり      花井淳
(ひと束のりんどうの秋供へけり)
花蕎麦の先や静もる村ひとつ     伊藤涼子
(蕎麦の花先に静もる村ひとつ)
今年またお裾分けくる唐辛子     高橋真樹子
子を宿す嫁に一献菊の酒       藤倉桂
人波に埋もれし長城国慶節      周龍梅
(人並に埋もれ長城国慶節)
ひとひらの松茸なれど馳走かな    斉藤真知子 
キラキラと手首のボルト秋の空    立花武
無謀にもカントに挑む夜長人     赤塚さゆり
濃竜胆葉先の枯れて咲きはじむ    伊藤涼子
けふ土手は祭たけなは曼殊沙華    藤倉桂
悔しくてレモンに噛みつく未成年   赤塚さゆり
菊酒やしみじみと良き母の顔     赤塚さゆり
秋高の日の本大谷大の里       花井淳
青空のはるかへ胡麻の爆ぜる音    藤倉桂

飛岡光枝出句
足腰の強き婆なり曼珠沙華
 

第二句座(席題・栗、鹿)
【特選】        
恵那山の風に毬栗育ちけり      花井淳   
さびし山神を起こして栗拾ふ     周龍梅

【入選】
ふりかへり又ふりかへり鹿山へ    斉藤真知子
人住まぬ島守る鹿や神の鹿      藤倉桂
渋皮煮つくれと夫の栗拾ふ      藤倉桂
(渋皮煮つくれと夫の栗拾ひ)
向きあふて言葉少なに栗むけり    斉藤真知子
かたまつていつもの鹿の家族かな   高橋真樹子
み吉野の鹿のこゑ聴く一夜かな    葛西美津子
母子鹿波が波打つ崖に立つ      藤倉桂
栗の毬次々割れて熊怖ろし      葛西美津子
鹿鳴はきこえなくなりよきめおと   立花武

飛岡光枝出句
風強き三日三晩を渋皮煮

今月の花(十一月)かくれんぼく

caffe kigosai 投稿日:2025年10月27日 作成者: mitsue2025年10月27日

kakurenbo
(今月は2013年11月の「アラカルト」へ掲載のエッセイをお届けします)

仕事のため大阪に行くことになり、現地の紹介された花屋さんに電話をしました。そこですすめられたのがこの、かんれんぼく、でした。「かんれんぼく?どんな字をかくのですか?」

いけばなの手ほどきを受けた時から数えれば、半世紀以上はたっている植物とのかかわりですが、まだまだ知らないものが外国はもちろん、国内にも数限りなくあります。当日は楽しみに大阪入りをしました。

かんれんぼくは「旱蓮木」と書くそうです。花屋でごつい茶色の紙の中から取り出されたのは、葉がなくて実だけとなったものでした。赤や黄色の実がなる植物が多い時期に、きれいな薄い緑色をした実がとても新鮮に見えました。しかもよく観察すれば、青い小さなバナナの房のようなものがいくつも集合して一つの球を作っているのです。さわるとパラリと落ちた(ミニバナナ)のひとつを拾って手にとってよくみれば、しっかりと3つの稜がありました。

ひとつの枝から分かれた細い枝の先にいくつもぶら下がっているところは、緑の大小の惑星が宙に浮かんで漂っているような楽しい光景です。宿にもって帰り、この(ミニバナナ)のひとつを輪切りにしてみました。つっと入っていく刃の先に、少しだけ手ごたえのある核があるのが本当の種かもしれません。やがては全体が茶色になっていくのでしょう。生命力の強いかんれんぼくは薬用としても研究されていると聞きました。

10メートル以上にもなる木は、葉脈のはっきりした、つやのある大きな緑の葉をつけます。遠目には、やつでの花の形にも似た、白に近い薄緑の花をつけたところを、来年の夏にはみてみたいものです。かんれんぼくは中国南部の原産。バナナ状の実にたくさんの種がある事が子孫繁栄をあらわすからでしょうか、別名は(喜樹)。「Happy Tree (ハッピーツリー)」という英名もあります。確かに実を見ているとハッピーな気分になります。

せっかちな人間たちがそろそろクリスマスを意識しだす頃、自然もつられてクリスマスのオーナメントをつくってみたような、そんなメッセージさえ感じさせる丸いかんれんぼくの実が、この季節にはさがっているのです。(光加)

十一月 枇杷の花 柊の花 

caffe kigosai 投稿日:2025年10月17日 作成者: masako2025年10月22日

枇杷はバラ科、柊はモクセイ科。どちらも常緑ですが、木の姿も花の形もまるで異なります。共通するのはその佳き香り―と聞いて「え、枇杷の花って香るの?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。私も自分の鼻でその香りを捉えたのは、さほど昔のことではなく、二〇一九年十一月のことでした。

「俳句四季」十一月号(十月二十日刊行)にそのいきさつを長々と書きましたので詳細は省略しますが、その日、どこよりか芳しい香りが漂ってきてあたりを見回すと、大きな枇杷の木が遠目にもわかるほど白く花を付けていました。何度も通った場所ではありました。ここに枇杷あった? 枇杷の花って香るの? 近づくにつれ強くなるその香に、同行の者は皆、絡め取られるように酔い痴れたのでした。

例句を調べると、

蜂のみが知る香放てり枇杷の花              右城暮石

香りの句もありますが、芳香を絶賛しているわけではなさそうです。

十人の一人が気付き枇杷の花                高田風人子

一人が「いい匂い」と気付いた可能性も無くはないのですが……。

満開といふしづけさの枇杷の花             伊藤伊那男

故郷に墓のみ待てり枇杷の花                福田蓼汀

裏口へ廻る用向き枇杷の花                    山崎ひさを

やはり裏手にあたるところにひっそりと咲く花のようです。

「俳句四季」には三十名の会員に句を寄せていただきましたが、その中に香りの句が三句ありました。

明かぬ夜やきのふの枇杷の花匂ふ    堀口知子

このにほひは母の鏡台枇杷の花             原田桂子

ふるさとの甘やかな風枇杷の花             仙波玉藻

二〇一九年の体験以来、私は枇杷の花を見つけると、必ず寄って行くことにしていますが、いつも香るとは限らないようです。ものの本には、花が黄色くなるにつれ、強く香るとありますが。

この冬、皆さまにも枇杷の花の香りを確かめていただければと願っています。

柊の花のほうは、その香を知らぬ人はいないでしょう。モクセイ科なだけはあるという香りです。こちらも花自体はさほど目立たず、芳香によってその存在に気付くことが多いようです。

柊の花一本の香かな                 高野素十

柊のひそかな花に顔よせて          星野立子

素十の句は、たった一本あるだけでこれほどまでに香る、と読みたいですし、立子が顔をよせたのは、その芳香ゆえ、と思います。

私自身がその香に吸い寄せられた定かな記憶は、一九九九年十一月下関でのことです。少しひんやりした日でした。ふいにその日の空気より冷たい流れが頰に触れ、モクセイ? と思いました。が、既にその季節は過ぎています。ではヒイラギ? あたりにそれらしきものが無いので、探しながらさらに進むと、一軒をすっぽりと囲む生垣がどうやらそれらしく思われました。近づくと「ヒイラギモクセイ」と札が付いていました。欲張りな名前だなあ…。その後のことは、句会場の床の間に柊が生けられてあったこと以外の記憶が欠落しています。

ひひらぎの生けられてすぐ花こぼす      髙田正子

ひひらぎの花まつすぐにこぼれけり

思い出から拾った、初冬の芳しい花ベスト2でした。 (正子)

 

 

第三十回 カフェきごさいズーム句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年10月4日 作成者: mitsue2025年10月4日

第三十回(2025年九月十三日)の句会報告です。(  )は推敲例です。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。詳しくは右の案内をご覧ください。

第一句座              
【特選】
いずこより猫迷ひくる野分あと     赤塚さゆり
届きたり縫ひ目拙き菊枕        藤倉桂
(届きけり縫ひ目拙き菊枕)

【入選】
馬のほか動くものなし夏競馬      早川光尾 
(馬のほか動くものなし大夏野) 
天の川いつでも夢を口遊む       早川光尾
かぜ台風ゴジラを遠くすつ飛ばし    立花武
句会せむ句座の真中に萩生けて     藤倉桂   
くさぐさに秋の佇む子規の庵      葛西美津子
買ふつもりなき松茸を品定め      斉藤真知子
泡立草押し倒し行く上り道       藤井和子
(泡立草押し分けて行く上り道)
稲雀食ふても食ふても百万石      花井淳
朝霧の尾根にリュックの赤と青     鈴木勇美
(朝霧の尾根にリュックの赤動く)
ひやひやと布団をさがす足裏かな    高橋真樹子
鎌掲げ我を討たんと子かまきり     上田雅子
これはまたひよろりとながきふくべかな 葛西美津子
鶏頭花泣いて笑つて村歌舞伎      藤倉桂
(村中の泣いて笑つて村歌舞伎)
初秋の空に束の間赤き月        上田雅子
(闇迫る空に束の間赤き月)
いましばしクルマの窓に霜おりて    立花武
(しばらくは車の窓に霜おりて)
水澄むや金の水尾ひくからし鯛     伊藤涼子
立ち飲み屋残る暑さの月のぼる     葛西美津子

いつの間に夕暮迫る冬瓜汁  光枝

第二句座(席題・虫、糸瓜)
【特選】        
百日の咳に効きたり糸瓜水       葛西美津子
朝鈴の虫籠金の糸垂らし        葛西美津子
(鈴虫の虫籠金の糸垂らし)
【入選】
たそがれ清兵衛虫籠を編む夜更け    葛西美津子
村の子の虫籠提げて登校す       赤塚さゆり
(休み明け虫籠提げて登校す)
糸瓜水美人になるよと母の手に     伊藤涼子
次の世は糸瓜になつてみるもよし    斉藤真知子
虫時雨わが身いつしかからつぽに    藤倉桂
長瓜や同級の顔思ひつつ        花井淳

ゆれながら考えてゐる糸瓜かな  光枝
  

浪速の味 江戸の味(十月) 船場汁【浪速】

caffe kigosai 投稿日:2025年10月4日 作成者: mitsue2025年10月4日

(今月は2019年10月の「浪速の味 江戸の味」に掲載の一文をお届けします)
江戸時代から船場は大阪の商業・金融の中心でした。今の北浜や御堂筋を含む大阪市の中央部にあたります。

大阪は食い倒れといわれますが、「朝の粥昼一菜夕茶漬け」というように商家の日常の食事は質素で、奉公人の食事に魚が出るのは月に二度か三度でした。

桂米朝の「百年目」(『米朝落語全集第六巻』)は「これは船場の御大家のおはなしで・・・」で始まります。「船場あたりの商家のお食事というのは、朝は温いご飯に漬物でんねん。で、昼は温いご飯に、おかずが何か一品つきます。で、晩は冷や飯と漬物で・・・。もう漬物ばっかり食べてた。その代わりその漬物とご飯は、なんぼ食べてもかまわなんだやそうです。・・・その代わり、お一日や、十五日や、祭りや盆や、正月、節句やというたら、そういう時にはいろいろご馳走がつく。それが何よりの楽しみやったんですな。」大店のハレとケの奉公人の食生活が思い浮かびます。

日ごろのまかない料理の一つに「船場汁」があります。船場汁は鯖(塩鯖)のアラを利用したものです。切り身は塩焼きや煮付にし、アラで船場汁を作ります。捨てることなく食材を使いきる始末の精神が発揮されています。

生臭みを取るため、熱湯をくぐらせ、水洗いをした鯖のアラで出汁をとり短冊に切った大根を煮て、塩味をつけると(塩鯖ならもともとの塩分が生かされる)旨い汁ものになり、丁稚たちも楽しみにしていたそうです。浪速は昆布で出汁を取るので、昆布や大根以外の野菜を加えたりして、その家の味を出していたようです。

秋の終わりから冬にかけてがおいしい汁ものです。

秋鯖のアラの手柄や船場汁   洋子

今月の花(十月)すすき

caffe kigosai 投稿日:2025年9月27日 作成者: mitsue2025年9月28日

susuki
(今月は、2013年9月の「花」に掲載されたエッセイをお届けします)
秋の七草のひとつである尾花、すなわちススキの原産地は日本。葉は一般的な緑の他、園芸種では横に薄い黄の斑のはいった(タカノハススキ)、また縦縞の(縞すすき)などがあります。穂がつんと出て開き、たれれば風になびき、やがてほうけ、折々に表情を変えていきます。

昨年10月、ローマで開かれる和食を広める夕食会にぜひいけばなを、という依頼が日本大使館からありました。外国でいけばならしいくいけるとなれば、いけばなの3つの要素、つまり、線、色 塊のうちなんといっても線のものが必要です。大使公邸の庭で、代々の11人の大使に仕えたイタリア人庭師のIさんの案内でさまざまな枝を入手。最後に穂の出たススキを大きな株からたくさん切らせていただき、葉が丸まらないようにすぐに古新聞に包み、水を入れたバケツにつけました。

会場は今では元貴族のプライベートなクラブとなっているボルゲーゼ家の館。内部の写真は絶対撮ってはならぬと何度も念をおされました。ローマの町に陽の落ちはじめる頃、天井の高い声のよく響く二階の会場に花材をもって入ったとたん、豪華な調度や気をつけてといわれた大きく下がったシャンデリアより、吸い寄せられるように目がひきつけられたのは正面の一枚の肖像画。100号くらいのキャンバスに描かれていた人物は、白い羽織とはかまをつけ、髷を結い上げている、まさしく日本人でした。外国の画家の筆によると日本人の目は細く描かれがちですが、その人物は丸い目でこちらをじっと見ているように思えたのでした。

(支倉常長の肖像画といわれています。ここローマに滞在中に描かれたそうです。)

それはまったく予期せぬ名前でした。
400年前に石巻の月浦をたち、メキシコへ、そののちスペイン、ローマと渡っていった支倉常長ひきいる慶長遣欧使節団。何故この館に支倉の肖像画があるのかは私の知識ではすぐには理解できませんでした。人物の白い袴には草のような植物が描かれていて、遣欧使節団は、斬新なデザインのものを用いたことでも有名な伊達政宗の特命をうけたことを思い出させました。

ともかく元貴族の皆さんの集まってくるカクテルの始まる30分前には花を仕上げなくてはなりません。ヨーロッパと日本から集まってきてくれた私の生徒とご主人たちも加わり,ちょうど支倉の肖像画を両方から挟むように竹を立て花をいけると、まるで肖像画に献花をしたようになりました。葉のふちで手を切らないようにいれたたくさんのススキは、その葉の線で繊細な動きを作品に与えていました。

テーブルの上にもなにか、というシェフの突然の要望が出たときはすでに花器を全部使用したあとでした。急遽公邸の古くなった漆塗りのお盆をもちこみ、水を張って日本から何かの折に使うかもと持参した金箔を浮かせその水の面にススキを渡し、菊の花を浮かせました。

今年になってのこと、伊達政宗の特集があるということでテレビをつけた私は、思わず画面に釘付けになりました。支倉常長がローマ法王にと伊達政宗から預かってきた親書が映し出され、紙には政宗の筆に金箔や退色していたものの銀箔がちりばめてありました。その親書を入れていた文箱は黒い漆塗りで、大胆な構図で牡丹に唐草、そして線は細いけれどススキが露をのせて描かれていたのです。その箱にはあとからつけられたであろう茶色になった紙がタグとしてついていました。一瞬でしたが記された字を私は見逃しませんでした。(Borghese)その文箱はボルゲーゼ家の所有だったということに間違いありません。

私がいけた場所は、あちこちにいくつもあるとはいえ、まさにローマの中心にあるボルゲーゼの館そのものでした。(当時の法王パオロ5世はボルゲーゼ家の出身なので、ボルゲーゼ家が文箱をもっていたことは十分ありうるでしょう)と、大使館の若き優秀なイタリアの専門官が説明してくれました。

洗礼をうけた支倉常長はその後日本に帰りますが、そのときキリスト教は禁止されていました。彼は50代のはじめ失意のうちにこの世を去った事になっています。しかし一説には、彼はその後人里はなれたところで30年も生き延びたとも言われています。

ヨーロッパにいたときは、彼はきっと抑えられないくらいの好奇心をもって世界を見ていたのにちがいありません。だから実際にあんな丸い目の印象を画家がもったのでしょうか。それとも何百年もの間、絵の中の常長は日本のいけばなを捧げられた事がなかったので、驚いていたのかもしれないと私は勝手な推測を巡らせたのです。    

ススキは銀色の穂もほうける頃になると、芒と書いたほうがふさわしく思えてきます。しかし文箱に描かれた金の薄は枯れはてて(芒)となることはなく、これからもあのままに、そして大切に保管されるのに違いありません。

ローマのススキが支倉常長へ、彼をつかわした伊達政宗へ、そしてあの時代へと、興味と好奇心の道をつけてくれました。支倉常長から、400年後の私にメッセージがとどけられた気さえします。

かの肖像画の衣装に刺繍された植物もススキと聞くと、支倉常長はやはりあの晩、あの場の花材にどうしてもススキをご所望だったのではないでしょうか。そんな気がしてきます。(光加)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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