↓
 

caffe kigosai

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

十月 秋果(2)

caffe kigosai 投稿日:2025年9月19日 作成者: masako2025年9月27日

何年か前に「秋果」のテーマで初秋のころの果物をとりあげ、その結びに「今から柑橘類が次々に旬を迎える」と書いていました。今月はその柑橘類をとりあげます。

とはいうものの、柑橘類は種類によって出回る時期が多岐にわたっています。殊に「みかん」と呼ばれるものは、新種も加わってざっと10月から5月ころまで、いつも何かが旬を迎えています。柑橘好きにはうれしい、贅沢な時代になったものです。

ひとまずここでは秋(から少し冬に入ったところまで)に限って、季語と例句を見ていきましょう。

〈蜜柑〉(温州みかんを指すことが多い)が熟すのは冬に入ってからですから冬の季語です。それに先立ち、秋の季語として〈早生蜜柑〉〈青蜜柑〉があります。

船はまだ木組みのままや青蜜柑             友岡子郷

青みかん置いてそのまま夜の脚立           岩津厚子

蜜柑出荷用の船でしょうか。木に生っている蜜柑はなお青く、船も仕上がっていないということでしょう。

脚立は収穫のために立てたものでしょう。そのまま放置され、夜になっているのです。青みかんは単数とも複数とも解せますが、私はとりこぼした1個がぽつりと置かれている景を思いました。

ちなみに〈蜜柑〉のみで実を指します。花をいうときには〈蜜柑の花〉(夏)とします。

花蜜柑島のすみずみまで匂ふ               山下美典(夏)

近景に蜜柑遠景に蜜柑山                   宇多喜代子(冬)

緑の葉影に真緑の実をつけていた〈柚子〉は、黄金色に熟れ始めます。ご存知のように、果肉をそのまま食することはありませんが、果汁を調整して飲料にしたり、調味料として広い用途があります。冬の鍋物には欠かせない存在でもあります。

柚子すべてとりたるあとの月夜かな         大井雅人

柚子の香のはつと驚くごと匂ふ             後藤立夫

柚味噌やひとの家族にうちまじり           岡本 眸(秋・生活)

ふるさとの無くて柚餅子の懐かしき         文挟夫佐恵(同)

黄金の実をとってしまえば、柚子は単なる緑の木となります。夜ともなれば黒々とした一塊の影となるでしょう。そこへ昇ってきたのが月です。なにがなし凜々と生っていた実の再来のようにも思われます。

柚子は色佳し香り佳し。表皮も削いだりおろしたりして料理に使われます。〈柚味噌(ゆみそ/ゆずみそ〉や〈柚釜(ゆがま/ゆずがま)〉、〈柚餅子(ゆべし))は、かつてはそれぞれの家庭の味でもありました。

秋刀魚を焼いたときに添える〈酢橘・酸橘(すだち)〉はピンポン玉ほどの大きさです。松茸料理にも欠かせません。徳島の特産品です。すだちより一回り大きい〈かぼす〉はまろやかな酸味が特徴。大分産が有名です。

ふたり住むある日すだちをしたたらす       黒田杏子

年上の妻のごとくにかぼすかな             鷹羽狩行

その名が体を表す〈金柑〉も晩秋に熟します。果皮ごと生食できますが、甘露煮や果実酒などにもします。次の句の季節は冬(季語=〈霜夜〉)ですが、金柑といえば思い出す私の愛称句です。

金柑を星のごと煮る霜夜かな        黒田杏子            (正子)

加賀の一盞(9月)金沢の九月

caffe kigosai 投稿日:2025年9月5日 作成者: mitsue2025年9月5日

新学期が始まる9月は金沢の二つの食に関する大事な月、食通ならずとも待ち遠しい楽しみな日が続く。

ひとつは日本海側の底引き網漁解禁の9月1日。7月8月は資源保護のため禁漁、その間日本海中央部にある大和堆まで漁に出なければならないが、解禁後は近場での漁となりより新鮮で安価な魚貝が店頭に並ぶ。甘エビ、ガスエビ、小鯛、カレイ、メギス、はたはた、のどぐろなどなど。どれも水揚げされて1日と時間が経っていないものばかり、刺身や塩焼き、ふぁっと煮るなど庶民の味で楽しむ。この煮付けはカレイやメギスなど白身魚を鍋に入れ、ひたひたの水と金沢近郊の港町大野で醸造される旨味の醤油や能登の魚醤いしるを加え、落し蓋をして強中火でほんの4~5分炊いたもの、凝った味付けは不要、家庭の味が楽しめる。刺身では甘エビやガスエビの秋を感じる甘さがたまらない。
 
もうひとつは日本酒ひやおろし販売開始、今年は9月5日。日本酒は前年11月頃より造りはじめ、春先まで続く。出来てすぐの酒はあらばしりなどと表示され、少し発泡またはおりがらみの若々しい味を楽しむ。その新酒を一度火入れして低温タンクで静かに半年あまり寝かせ、上澄みを生酒として瓶詰めされたものがひやおろし。雑味が無く滑らかで香り豊かな風味となる。その日酒屋、デパートではのぼりを立てて、県内ほぼ全酒蔵の銘柄を並べて売り出す。また金沢の酒飲み仲間の会ではひやおろしを集め、各蔵の今年の出来栄えを評価して楽しむ。

ここで底引き網漁の魚貝とひやおろしのマッチングが始まる。甘エビなどとろりとした味わいにひやおろしの綺麗な風味をかぶせ、余韻は芳醇な残り香が鼻に抜ける。これぞ金沢9月の醍醐味、至高の一瞬である。10月4日には酒マルシェと称するイベントが金沢中心地の緑地で開催され、県内酒蔵が一堂に集まる。市内料理屋の出店も出て毎年数千人がひやおろしや大吟醸を楽しむ。

金沢の秋はこれからが本番、山海の美味が目白押し。鰤に脂がのり出し、そして11月7日のズワイガニと海鼠の解禁へと絶頂を迎える。まだまだ知られていない美食金沢の秋を紹介させて頂きました。

眠りから覚めて秋麗ひやおろし   淳

今月の花(九月)おおうばゆり

caffe kigosai 投稿日:2025年8月23日 作成者: mitsue2025年8月23日

福島光加作(おおうばゆり、オクラレルカ、ミスカンサス)

夏の帯広のホテルでの撮影の際、カメラマンのMさんが「もうそろそろ終わりだけど」と言いながら、この土地ならではの花材を切ってきてくださいました。

うす黄緑の鉄砲百合のような形の花を8輪ほどつけたその花は、「おおうばゆり」でした。花は横にそれぞれの方向に向いていました。東京の花屋さんで「うばゆり」なら一度だけ見たことがあります。関東から西の常緑樹の中に育つのが、うばゆりです。

おおうばゆりも多年草で、本州の中部から北海道、樺太にもあり、こちらは落葉樹の中で生育するそうで、2メートルにもなるとか。

「姥百合」という名は、茎の下の方に対生している厚みと光沢のある細長い卵型の葉が、花が咲くと朽ちてなくなってしまうので「葉(歯)がぬけていく」のが姥の歯のよう、ということが由来とのことです。が なんだか拍子抜けする命名の理由は本当でしょうか?アイヌの方たちは、鱗茎に含まれる澱粉を大事な食料として球根を輪形に乾かして保存食としたようです。

雌雄がある、というのも興味深いです。雄のおおうばゆりは発芽して数年後にふとい茎となり、時には二十もの花をつけ、花が散ると種の入った蒴果をつけて、立ち枯れするそうです。この蒴果は長く丸みをおびていて、うばゆりのほうだったかもしれませんが一度東京の花屋で見たことがあります。

一方雌は茎や花を持たず、球根の鱗茎の先端に一枚ずつの葉をもつ、と書いてあり、帯広市の図書館で私は思わずうなりました。想像はますます膨らみ、不思議なおおうばゆりのことをもっと知りたくなりました。

複雑な植物に敬意をこめて、ホテルの寿司カウンターにこの花を使って一作いけました。明日も部屋に置いて眺めてみたい、と思いましたが花はすでに茶色くなり始めていました。

北海道帯広でいける機会に恵まれたおおうばゆりにすっかり魅せられ、植物との出会いはつくづく面白いと思ったのです。(光加)

今月の季語(9月)秋の水

caffe kigosai 投稿日:2025年8月18日 作成者: masako2025年8月23日

朝晩は鉦叩が鳴き、ときには他の虫も加わって、うっすらと秋を感じるようになってきました。が、昼は相変わらず残暑に焙られているような日々です。涼を求めて水辺に寄ることも、まだまだ多いのではないでしょうか。水辺で秋の季語、見つけてみませんか?

〈秋の川〉(秋の池)〈秋の湖〉は(もちろん)秋の季語です。この形で見出しに掲載されており、三秋(秋の間はずっと)使えます。

秋の川真白な石を拾ひけり             夏目漱石

鳰の子のくゞる稽古や秋の池          青木月斗

山襞の折目正しく秋の湖               金箱戈止夫

漱石の真白は秋の色である「白」を意識してもいるでしょう。流れの中に白い石を認めて拾い上げたととらえると、流れの清涼感も覚えます。

月斗の鳰の子は、この夏浮巣で孵った雛でしょう。雛は哀れなことに減っていきますが、ここまで育った「子」が池の面に何度も何度も水の輪を作っているのです。

戈止夫の山は襞をしっかりたたんでいます。それをそっくり映し出している湖面も鏡面を成して明るいことでしょう。

句の水辺はどれもそれぞれに静かで、水が澄んでいる感じです。今年は気温が下がり切らず、水もまだまだぬるそうですが、昨日よりは澄んでいるかも、と覗いてみるのはどうでしょう。〈水澄む〉は秋の季語です。

水澄みて四方に関ある甲斐の国        飯田龍太

よぎりたる蜂一匹に水澄める          深見けん二

龍太の句からは水音が聞こえてきそう。対してけん二の句は、蜂の翅音のみを私は想像しますが、皆さまはいかがでしょうか。

水が澄む季節であることを讃える〈水の秋〉という季語もあります。

病む父のほとりに母や水の秋          長谷川櫂

平らなる広がりにあり水の秋          桂 信子

父と母が身を寄せ合って日々を過ごしていることが「ほとり」という柔らかな語感から伝わってきます。「ほとり」は水の縁語でもあります。〈水の秋〉という季語は、両親の凪いだ暮らしを願う子の祈りでもありましょう。

信子は、この平らで広らかなことこそが〈水の秋〉の本意だ、ここはまさにそういう美しさだと眼前の景を褒め讃えています。この句、もし〈水の秋〉でなく〈秋の水〉であったらどうでしょう。「平らなる広がりにあり秋の水」――そりゃ水は平らだよね、と突っ込みたくなりそうです。〈秋の水〉も澄んだ水を讃える季語ですが、こちらは水そのものを強調します。水も含めて水辺の秋を讃えるのですから〈水の秋〉。似て非なるところを汲みましょう。

草に触れ秋水走りわかれけり          中村汀女

秋の水ひかりの底を流れけり          井越芳子

水が走る、水が流れる、と汀女も芳子も確かに水そのものを詠んでいます。

水辺に降りると、夏の間は青くそよいでいた蘆に穂が出、中には絮を飛ばし始めたものもあります。蒲にもソーセージのような穂が。

蘆の花近寄るほどに高くなる          右城暮石

海山の神々老いぬ蒲の絮          田中裕明

いろいろなものが秋を告げています。さがしてみましょう。

(正子)

第二十九回 カフェきごさいズーム句会報告(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年8月12日 作成者: mitsue2025年8月12日

第二十九回 (2025年(令和七年)八月九日)の句会報告です。(  )は推敲例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。詳しくは右の案内をご覧ください。見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
おみやげの貝風鈴も古びたり     矢野京子
(江ノ島の貝風鈴も古びたり)
赤信号木槿の影で黙祷す       矢野京子
(原爆忌木槿の影で黙祷す)もしくは「八月六日」と前書き
隅ながら泰然として冷奴       早川光尾
(ガラス器に泰然として冷奴)

【入選】
ゆく夏のかほが映りぬ夜の窓     葛西美津子
駅出でて男もすなる日傘かな     伊藤涼子
踊の輪ここが世界の中心よ      赤塚さゆり
稲妻を肴に今宵一人酒        藤倉桂
遠雷をしんと聴き入る夜の窓     葛西美津子
図書館の窓にゴーヤのたわわかな   鈴木勇美
蝦夷萱草オロロン街道真っ直ぐに   早川光尾
         (真つ直ぐ)
星祭吾娘に宿りし命かな       藤倉桂
(星祭わが娘に宿る命かな)
おはやうの声よく通る今朝の秋    藤倉桂
砂浜にスコップひとつ夏の果     鈴木勇美
いくたびも雲見上げゐる原爆忌    高橋真樹子
(いくたびも雲を見上げる原爆忌)
命終ゆ蝉も大事にこどもかな     斉藤真知子
(命終ゆ蝉を大事とこどもかな)
朝顔の窓よりラジオ講座かな     鈴木勇美
首里城へ案内するかに青蜥蜴     葛西美津子
差入れの西瓜届きし合宿所      赤塚さゆり
(差入れの西瓜の届く合宿所)
朝日さすなめくぢの道しろがねに   葛西美津子
飛び出す枝豆のまだ見つからず    斉藤真知子

飛岡光枝出句
夏鶯龍太の山をほしいまま

第二句座(席題・初嵐、秋簾)
【特選】         
縄かけて白山豆腐初あらし     花井淳

【入選】
初嵐ロープ行き交ふ船の上     葛西美津子
初嵐牛の群れなす丘の上      高橋真樹子
初嵐鶏に餌一掴み         藤倉桂
カンカンと帆柱鳴れり初嵐     葛西美津子
探し物なにかを忘れ初嵐      高橋真樹子
母逝きし家そのままに秋簾     高橋真樹子
(母逝きし家そのままに初嵐)

飛岡光枝出句
岬馬白きたてがみ初あらし

浪速の味 江戸の味(八月)芋ようかん(さつまいも)【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年8月7日 作成者: mitsue2025年8月7日

さつまいもは17世紀初めに中国から琉球へ伝わり、その後薩摩で栽培されるようになり「薩摩の芋」として定着しました。

八代将軍吉宗が、飢饉の対策として青木昆陽に命じて薩摩から江戸に種芋を取り寄せ、小石川御楽園などで試作させたことはよく知られています。

現在でも関東でのさつまいも栽培は盛んで、近年では鹿児島に次いで茨城が二位、千葉が三位の生産量となっています。

そのさつまいもで作った和菓子に「芋ようかん」があります。さつまいもを使った駄菓子は古くからありましたが、明治三十年代、芋を裏ごしするなどして滑らかな口当たりの芋ようかんを売り出したのは、浅草寿町で芋の卸問屋を営んでいた小林和助でした。

店のくず芋を利用、当時高級品だった練羊羹の代わりになるものとして、千葉県船橋市出身の石川定吉と共同開発したとのことです。後に浅草一丁目に創業した「舟和」は、船橋の「舟」と和助の「和」をとって店名としました。

下町の手土産の定番として人気の「舟和」の芋ようかんは、寒天を入れる製法もあるなか、さつまいもと砂糖のみで作られ芋本来の味がより感じられます。最近では、芋ようかんのアイスやパフェを開発するなど、定番の味を進化させています。

暦の上では秋とはいえ、まだまだ暑い八月、冷たい芋ようかんスイーツで残暑を乗り切りたいものです。

生身魂芋やうかんに頬ゆるび  光枝

第二十八回 カフェきごさいズーム句会報告(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年8月2日 作成者: mitsue2025年8月2日

第二十八回(2025年7月19日)の句会報告です。(   )は推敲例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。詳しくは右の案内をご覧ください。見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
夏負けてをり人間も愛猫も        矢野京子
(夏負けてをり人間も三毛猫も)  
ひたすらに島辣韭を剥くおばあ      葛西美津子
平和とは七夕竹の重みかな        赤塚さゆり
(平和とは七夕竹の軽さかな)
新しきぬか床に先ず茄子一つ       上田雅子
昼顔の花眠さうや波の音         葛西美津子
一本の夏草さへもなき更地        矢野京子

【入選】
ぐずる子に紅き鬼灯ゆらしけり      鈴木勇美
亡き妻へいまひと言を夏花摘む      花井淳
冷素麺流す孫との物語り         周龍梅
(冷素麺流し孫との大笑ひ)
梅を干すひと日は家を離れざる      斉藤真知子
あかあかとグロリオーサや雲の峰     上田雅子
森の樹の眠り覚ますや朝の蝉       斉藤真知子
(森の樹の眠りを覚ます朝の蝉)
夏霧の涯に浮ぶや花の島         鈴木勇美
をちこちの担ぎ手能登へ夏祭       花井淳
手花火の懐かしきかなビル住まひ     伊藤涼子
思ひ出の真ん中に立つ大夏木       伊藤涼子
ひらがなをやうやく書けて星の竹     斉藤真知子
蝉の殻風の軽さとなりにけり       藤倉桂
(蝉の殻風の軽さと吹かれけり)
青簾してつつがなき暮らしかな      矢野京子
(青簾ゆれつつがなき暮らしかな)
入院の夕餉の皿に初メロン        村井好子
形代に我家の犬を描き添へて       赤塚さゆり
バタフライ鯨となりて大海を       藤倉桂
(バタフライイルカとなりて大海を)
そろばんと名付けて旨し鮎なます     花井淳

飛岡光枝出句
サーフボードオリーヴの花すり抜けて
 

第二句座(席題・パイナップル、合歓の花)
【特選】         
アナナスや山原になほ不発弾      花井淳
(パイナップル山原になほ不発弾)
夕風に心許すや合歓の花        藤倉桂
(夕風にこころを許し合歓の花)
【入選】
南国の客室に盛る鳳梨かな       周龍梅
(南国の客室に盛り鳳梨かな)
まだ夢の最中にをりて合歓の花     斉藤真知子
合歓咲くや見てゐて眠くなりにけり   斉藤真知子
パイナップルほんに上手に切り分けて  矢野京子   
銀の雲流れてきたり合歓の花      葛西美津子
久闊の孫と鳳梨ふいに来る       前田悠
パイナップル市場の女王の髪飾り    周龍梅

飛岡光枝出句
パイナップ売るパイナップルのシャツを着て

今月の花(八月) 番外編・いけばなと俳句

caffe kigosai 投稿日:2025年7月23日 作成者: mitsue2025年7月24日

Liisa Nurminen 作(フィンランド)
 

Sandra Marker 作(オーストラリア)

昨年、フィンランドでのいけばなワークショップで、英語とフィンランド語に訳した芭蕉の俳句から考えを飛躍させ作品を作るという試みを参加者にしてもらいました。俳句に詠まれたものの再現ではなく、その中から各自強くひかれた点を、目の前の花材の特徴を見極めて作品としてあらわすのです。私の海外とのオンラインクラスでは、数十年いけばなに携わっている師範たちにも時々この俳句と花のかかわりの課題を出しています。

草月の本部からの私のオンラインクラスは、日本在住の会員のためのものでした。先日、あえて地球の北半球と南半球に住んでいる二人、オーストラリアとフィンランドの門下を選びこの試みを紹介しました。その時はドナルド・キーンさん英訳の芭蕉の句、そして山頭火の句をとりあげました。

四十年近く私の門下であるリーサは、フィンランドで数か所の町でいけばなを教えています。日本にはほぼ毎年来ていて万葉集や書の勉強もしています。「じゃ、あとでね!」というと(ワレテモスエニアワントゾオモウ)などと言ってびっくりさせます。

夏草や兵共がゆめの跡 芭蕉

写真はこの句を元とした作品で、黒いものは馬鍬だそうです。毎夏行く自分たちのサマーハウスの近くで見つけたものでしょう。もう使われてはいないけれど、昔動いたその音が聞こえてきそうです。枯れた花材はサマーハウスの近くの草むらからでしょうか。

北半球に住むリーサに対して、真逆の季節の南半球、オーストラリアのサンドラもいけばなクラスをたくさん持って活躍しています。彼女には種田山頭火の句を選びました。

分け入っても分け入っても青い山 山頭火

送られてきた作品は初めは下の緑の部分が少なかったので、迫力がもう少し欲しいと思い緑を加えてもらいました。

何十年ものキャリアがあり、どこか自分の表現に物足りなさを感じた時、俳句は全くほかの方向からIkebana artistたちの感性に揺さぶりをかけてくれるのでは、と私は思っています。(光加)

今月の季語(八月) 秋草

caffe kigosai 投稿日:2025年7月19日 作成者: masako2025年7月23日

〈秋草〉は秋の野山に見られる草の総称です。夏には〈夏草〉が繁茂し、秋には〈秋草〉が咲き乱れるといったイメージでしょうか。

 

わが丈を越す夏草を怖れけり          三橋鷹女

秋草に跼めば日暮れ迅きこと          折笠美秋

 

とはいえ、秋草と呼ばれる種類の草も、夏のうちから結構な茂り具合をしています。それらがいっせいに花をつけ、その場所を〈花野〉と呼ぶにふさわしくなるのが秋なのでしょう。

 

満目の花野ゆき花すこし摘む          能村登四郎

 

中でも〈秋の七草〉は代表とみなされている七種の草です。

 

萩の花尾花葛花瞿麦(撫子)の花女郎花また藤袴朝貌(あさがほ)の花 山上憶良   ※朝貌は桔梗とされる。

 

憶良の歌の順に例句を抽いてみましょう。

白萩の走りの花の五六粒                         飴山實

をりとりてはらりとおもきすすきかな          飯田蛇笏

あなたなる夜雨の葛のあなたかな               芝不器男

大阿蘇や撫子なべて傾ぎ咲く                       岡井省二

女郎花少しはなれて男郎花                        星野立子

すがれゆく色を色とし藤袴                              稲畑汀子

桔梗(きちかう)や男も汚れてはならず      石田波郷

 

誰もが思い浮かべる句が多いことに気付くでしょう。憶良のころから数え上げられていた草々だから、という思いが俳人を駆り立てるのでしょうか。それとも誰もが自ずと詠みたくなる草だからこそ七草足りうるのでしょうか……。

もちろん七草のほかにも数えたい草はたくさんあります。

 

吾亦紅ぽつんぽつんと気ままなる      細見綾子

水引のまとふべき風いでにけり        木下夕爾

旅びとを濡らせる雨に濃竜胆          下村槐太

頂上や殊に野菊の吹かれをり          原 石鼎

 

もっとも〈野菊〉は固有名詞ではありませんが。

あなたなら何を加えますか?

 

〈秋草〉の傍題には〈千草〉〈八千草〉〈色草〉があります。

 

淋しきがゆゑにまた色草といふ        富安風生

風の出て千草たちまち八千草に        鷹羽狩行

 

歳時記には別見出しで掲載されている〈草の花〉という季語があります。〈秋草〉を〈千草〉〈八千草〉と言い換えるとイメージがかなり近くなりますが、〈草の花〉のほうが総じてひっそりと静かな印象です。

 

名はしらず草毎に花あはれなり        杉風

原発まで十キロ草の花無尽               正木ゆう子

死ぬときは箸置くやうに草の花        小川軽舟

 

秋の野の、花をつけている草すべてが対象になりそうな季語ですが、「名はしらず」――これが〈秋草〉とのいちばんの違いでしょうか。

 

私の師、故・黒田杏子は〈秋草〉の句は旺盛に詠んでいますが、〈草の花〉は一句も残していません。尋ねる機会は永遠に失われましたが、意識して画然と線を引いていたのだと思います。

 

その名を意識しながら輪郭を明確にして詠むのか、茫々と遠まなざしになって詠むのか、といった作句のスタンスに関わる選択であるのかもしれません。(正子)

 

 

第二十七回 カフェきごさいズーム句会報 (飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年7月12日 作成者: mitsue2025年7月12日

第二十七回カフェきごさいズーム句会(2025年(令和七年)6月14日)の句会報告です。(  )は推敲例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。見学も大歓迎。詳しくは右の案内をご覧ください。

第一句座              
【特選】
イアーゴのたじろぐ白や朴の花       悠
ソーダ水みんな哀しく美しく        真樹子
(ソーダ水昭和哀しく美しく)
わが髪のうねりいよいよ梅雨入りかな    京子
若き日のヴィトンのバッグ黴にやる     美津子
【入選】
老鶯応ふや夫の口笛に           桂
(夏鶯応ふや夫の口笛に)
呼ばれても聞こえぬふりの端居かな     真知子
花南天かすかな風か零れけり 悠
家々の麦飯旨き芒種かな          龍梅
(わが家の麦飯旨き芒種かな)
夏闇に寝る一瓶の梅酒かな         京子
(一瓶の梅酒の眠る夏の闇)
梅雨寒し背番号3旅立ちぬ         光尾
(荒梅雨や背番号3旅立ちぬ)
田植ゑ終へ煙草喫ふ父背の大き       光尾
(煙草吸ふ父の背大き植田風)
これからも二人きりなる冷蔵庫       真樹子
(これからも二人きりなり冷蔵庫)
こどもらはカープデビューよ夏帽子     京子
家中の時刻まちまち時の日よ        光尾
(人類の時刻まちまち時の日よ)
あたらしき夏へ開かん能登の海       京子
(あたらしき夏へ漕ぎ出す能登の海)
骨のかけら珊瑚のかけら沖縄忌       雅子
尾山祭気負ふしんがり能登キリコ      淳
便りまず紫陽花色づきしことを       京子
(便りせん紫陽花の色づきしこと)
半袖の子の腕細し更衣           雅子

飛岡光枝出句
鱚釣りて父の機嫌や酒一合

第二句座(席題・鯰、籐椅子)
【特選】         
人の世を笑ひて不動鯰かな        光尾

【入選】
籐寝椅子からだ横たふるに足りず     京子
この川に鯰ゐるとかゐないとか      京子
ひと風呂の汗ひいてきし籐の椅子     美津子
縄文の色とも思ふ鯰かな         真樹子
(縄文の色して静か大鯰)
空き家なる縁側の主籐の椅子       悠
(空き家なる縁側にゆれ籐の椅子)
籐椅子に雲の曼荼羅見てをりぬ      真樹子
(籐寝椅子雲の曼陀羅見て飽かず)
梅雨鯰泥に潜れて憩ひける        龍梅
(梅雨鯰泥に潜りて眠りけり)
籐椅子を猫に譲りし昼下り        さゆり
(籐椅子を猫に譲りて父の昼)
破れたる父の籐椅子捨てられず      真知子

飛岡光枝出句
中華包丁つるりと逃れ梅雨鯰
  

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2026 - caffe kigosai
↑