苺の売り上げが伸びるのはクリスマスの頃と旬のものが出回る頃と聞きましたが、季節感の失われた昨今、何時が旬なのかわからないものも多いようです。苺の花は晩春、実は初夏の季語です。白く咲いた花の芯の部分をよく見ると、もう苺の形をしているのがわかります。
今年も農家の方が夕方、野菜や果物をもって雁木の下で商いを始める頃となりました。これからまた、年の瀬までのあいだ顔見知りのおばさんとの付き合いが始まります。「今年も宜しくね」と何か買えばそれ以上のおまけが付いて来ることもあります。
この季節の一番のお目当ては苺。熟した苺は軟らかく、洗うのも手で摘まむのもためらわれるほど、風に当てることも出来ません。蔕にはまだ白い花びらが残っています。10日間くらい旬の味を楽しみますが、そろそろ収穫も終る頃になると小粒の苺を目当てにジャムをつくります。
5パック買えば必ず1パックおまけ、今日はもぎたての胡瓜もおまけです。「沢山こうてもろて(買って貰って)ありがとね、ありがとね」と車まで運んでくれました。家に着くまで車の中は苺畑を走っているようで、何とも幸せな気分です。
さて、夕食を終えて水洗いした苺の蔕を取るのですが、つい一つ二つと口の中へ。甘い美味しい苺に当るとまた一つときりがありません。今度は胃の中が苺畑のようです。この苺に砂糖をかけ一晩寝かすのですが、台所にはもう苺の香りが漂っています。ちょうどこの頃は伽羅蕗を作るのと重なり、苺と蕗の大鍋がコンロを占領します。
翌日、火にかけるとさらに香りが立ってきました。火を入れた蕗も独特の香りを立て始めます。ふつふつと沸騰している苺を焦がさないようにゆっくりと木ベラでかき混ぜるのですが、鍋の中はドロドロとしてまるでマグマのようです。一方、煮詰められた伽羅蕗はつややかに黒さを増してゆきます。二つの食材の個性的な匂いがぶつかりあい、台所が一挙にけたたましく?なります。
出来立ての苺ジャムは香りもよく色も鮮やか。このアツアツのジャムをアイスクリームやヨーグルトにかけると、普段とはちょっと変わった味わいが。自家製だからこそ出来る楽しみ方です。
【作り方】
苺を水洗いして笊にあげます。水気がきれたら蔕を取って鍋に入れ、ざっとまんべんなく砂糖をふりかけ一晩置きます。
翌日苺からたっぷりの水がでますので、このまま炊き上げます。昔は苺と同量の砂糖で炊いたそうですが、今では甘すぎます。砂糖の量(甘さはお好みでよいと思います)の目安は苺の量の半分位です。
中火にしてとろとろになるまで煮詰め最後にレモン汁を加えます。
甘いのがお好きな方は、煮詰める途中砂糖を加えてください。また、苺の粒が残っているくらいにしたい時は、ちょうど良いと思った頃、苺を笊に上げ汁のほうを煮詰めて仕上がる前に苺を戻します。
シャムを煮る苺の香り家ぢゆうに 善子

先日突然訪ねてきた友人。お孫さんが生まれるので忙しくなる前に、骨休めをするため気ままな一人旅に出たとか。ご当人は気ままでも突然の来訪には驚かされます。


学生時代に仲間とよく行ったお店に「煮凍り」と書かれた品書きを見て、みんなで首をかしげた記憶があります。注文してみると白身魚の身をほぐし入れた煮凝りが出てきました。その店には「天豆」と書いたものもあり、いたずら好きの店主が勝手に品書きで遊んでいたようです。

零余子、都会に住む方は余り見た事もないでしょう。でもちょっとハイキングなどに行ったおり、注意してみると笹の葉や潅木にからまった山芋の蔓を見つける事が出来ます。秋になるとこの蔓に指先ほど黒い小さな実がつきます。これが零余子です。この蔓を手繰っていくと自然薯までたどり着くのですが、これを掘るのが大変です。土の中で木の根や石を避けて成長するのですから、まっすぐに育った自然薯などあろうはずもなく、掘るにしても一筋縄で行くものではありません。この自然薯を掘る人は、目印として葉の落ちる前に蔓に紐を結んでおき、寒くなってから山に入って採取するそうです。
金木犀の花が咲いたらそろそろ茸が採れるころ。昔、外まわりの仕事をしていた村のお年寄りから聞いた言葉です。今年も何処からともなく、この花の香りがしてきました。