↓
 

caffe kigosai

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

浪速の味 江戸の味(五月) 鯉の洗い【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2023年4月21日 作成者: mitsue2023年4月21日

初夏の風に吹かれる鯉幟は、いつ見ても心躍る情景です。急流を登る鯉の生命力にあやかり出世を祈念してあげる鯉幟。そんな見た目の良さだけでなく、鯉は食べても栄養満点な食材です。

昔は産後の女性が食すと乳の出がよくなると信じられ、眼病や胃腸病にもよく効く薬用魚として知られていました。鯉は鰻と並ぶ人気の食材で、川や堀の多い江戸では鯉釣りに挑む人も少なくなかったそうです。

江戸の下町本所には「本所七不思議」と呼ばれる話が残っています。そのひとつ「置行掘(おいてけぼり)」は、釣人が帰ろうとすると水の中から「置いてけ~」という声がして、逃げ帰るといっぱいだった魚籠が空になっているという怪談で、鯉釣りが題材になっているとのこと。

鯉の夏の料理といえば、なんといっても「洗い」。夏に演じられる落語「青菜」には鯉の洗いが登場します。仕事先のご隠居に鯉の洗いをご馳走になった植木屋が「口の中が涼しくなりやすね」と言うセリフが印象的で、一緒に勧められる冷えた柳蔭(みりんと焼酎のブレンド)と共になんとも涼し気です。

洗いは、新鮮な刺身を冷水につけて洗ったもの。脂肪や川魚特有の癖がとれあっさりした食感になります。氷水で引き締めた鯉の洗いが氷片に盛られた様子は、身の薄紅色と相まって清々しい一品です。

現在の東京では鯉を食べる機会は減りましたが、帝釈天で知られる柴又の傍を流れる江戸川や隅田川沿いには鯉を出す料理屋があります。そんなひとつ、隅田川の両国橋のたもとの川魚料理屋で鯉の洗いを頂きました。店を出たのは、そろそろ日も傾く頃。一合の冷酒に火照った頬を川風が撫でていきました。

川浪に日の落ちゆくや洗鯉  光枝

今月の花(五月) 黒花蝋梅

caffe kigosai 投稿日:2023年4月19日 作成者: mitsue2023年4月19日

蝋梅科の植物はさほど多くはなく、その中で見かけることが多いのは年末から咲き始める黄色いコロンとした蕾を持つ蝋梅でしょう。葉の出る前にぽつぽつと付く蕾が開き始めると、その甘い香りにもうすぐ春が来ると実感するのです。

私にとって楽しみなのは季節もすすみ、そろそろ花木も終わりそうな頃に現れる蝋梅科の黒蝋梅です。

同じ蝋梅科でも属がちがい、黄色の花が咲くのはロウバイ属、チョコレート色の花をつける黒蝋梅はクロロウバイ属です。アメリカ蝋梅ともいい北アメリカが原産地。日本に入ってきたのは明治時代だそうで、庭木などに植えられました。花のまわりに小さな葉をつけ、枝はわずかな曲線を描く黒蝋梅をはじめて見た時、蝋梅と近縁とは思いませんでした。

花の形と色が楽しめるのは新緑から梅雨に向かっていく頃です。花店で見かけることはあまりありません。お稽古の花材としてめずらしいのは、この木は高さもなく、主に庭木として植えられているということでしょうか。 

たまたま手にすることがあると、どんな花にも相性のよい雰囲気を持つこの花にいろいろと違った花材を合わせてみたくなります。何本も使っていけるのもよし、アクセントに登場させるもよし、と時間を忘れてしまいます。

学名はCalycanthus fertilis といい、主に実に毒があります。Calycanthus という言葉から推測されるかもしれませんが、カリカンチンという物質が葉や枝にあり、実は特に気を付けなければなりません。やはりきれいな花を咲かせるものはこうして自分の身を守るのだ、という事実を思い起こさせます。

毒があってもやはり魅かれるこの花、年に一回もいけられないこともあるので、入手した時はいつにもまして心を込めていけあげ、あとは必ず手を洗ってこの季節ならではの花を楽しみます。

都会のマンション暮らしでは鉢に植えても育つかどうか、まして庭に植える楽しみは望めません。「先生用」とマジックで書かれた古新聞に包まれた数本の黒蝋梅は、そのことを知っている花屋さんのうれしいプレゼント。感謝しながらあれこれと棚から花器を引き出しては何にいけるか決めかね、豊かな時が過ぎていくのです。(光加)

今月の季語(5月)牡丹と芍薬

caffe kigosai 投稿日:2023年4月18日 作成者: masako2023年4月18日

牡丹

芍薬

「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」は、古来美人の形容に使われるフレーズですが、百合はさておき、芍薬と牡丹を見分けることができますか?

どちらもボタン科の植物で、牡丹は花の王、芍薬は花の宰相と呼ばれます。品種も多く、花だけを見て区別するのはなかなか難しいです。

芍薬を牡丹と思ひ誤りぬ                    寺田寅彦〈夏〉

寺田寅彦は、物理学者にして洒脱なエッセイでも知られ、俳句にも一家言あったお方。その先生がかような句を作っておられました。ちょっと安心? 私は専門家ではないので、アヤシイことも書きそうですが、たぶん見分けられてい(ると思ってい)ます。私なりの見分け方を先人の俳句とともにお届けしましょう。

まず、牡丹は木、芍薬は草です。

かたまりて芍薬の芽のほぐれそむ    五十嵐播水〈春〉

芍薬は草ですから冬には地上から消えて無くなります。が、多年草ですから、季節が巡ってくると土中から芽を出します。芍薬の芽は土から現れ出るのです。

ほむらとも我心とも牡丹の芽            高浜虚子〈春〉

対して、虚子が見つめている牡丹の芽は、枝先に噴き出した真っ赤な芽です。落葉して冬の間は「枯木」ですが、地上には確と存在しますし、年々枝を張って大きくなってもいきます。

音もなくあふれて牡丹焚火かな       黒田杏子〈冬〉

毎年十一月に須賀川の牡丹園で行われる牡丹供養の句です。木であるからこその、炎の供養です。

次に、咲く時期ですが、関東圏に住む者の感覚であるとお断りしたうえで申しますと、牡丹はGWには散ってしまいます。芍薬はもう少し後。五月半ば過ぎに莟を愛でたこともあります。

母の日の更に芍薬ひらきけり         百合山羽公

芍薬のつんと咲けり禅宗寺           一茶

数行前に「莟」と書きましたが、芍薬はつんとした「莟」、対して牡丹はどっしりと丸い「蕾」というのが私の感覚です(品種が非常に多く、当てはまらないことも)。一茶の「つんと」に力を得た思いですが。

左右より芍薬伏しぬ雨の径           松本たかし

先端に花を付けた芍薬の茎は健やかな緑色、牡丹は花を支えている新しい茎は緑色ですが、本体は木ですから、途中までは木質の色をしています。たかしの句の、左右より伏して芍薬が見せているうなじは、美しい翡翠の色をしていることでしょう。

慣れてくると葉の形が明らかに違うことにも気づきます。葉といえば、牡丹にそっくりな葉をした草があります。

鯛釣草たのしき影を吊り下げて   山田みづえ〈春〉

ある年、東京・上野の牡丹園で、隣り合って咲く牡丹と鯛釣草(華鬘草)の、花の形がこれほど違う(鯛釣草はケシ科の多年草)のに葉がそっくりなことに驚いたことがあります。

専門家がご覧になったら噴飯ものの見分け方に違いありませんが、こんな感じに気ままに楽しんでいます。今年は牡丹王、芍薬宰相の花期も早まりそうですが、艶姿を見逃さぬよう。

芍薬の後ろ姿が気に入らぬ                鳴戸奈菜

この世から三尺浮ける牡丹かな            小林貴子

ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに        森 澄雄   (正子)

 

第一回 カフェきごさいズーム句会

caffe kigosai 投稿日:2023年4月11日 作成者: mitsue2023年4月12日

2023年(令和五年)4月8日

飛岡光枝選
第一句座              

【特選】
がうがうと落花吸ひ込むマンホール    藤倉桂
水の音クレソン白き花つけて       斉藤真知子
花あられ貰うて帰る彼岸寺        矢野京子
鶯や鳴き損なひも晴れ晴れと       藤倉桂

【入選】 
青き踏むここも地球の真ん中ぞ      伊藤涼子
八ヶ嶺に押し寄せるごと梨の花      早川光尾
山独活のほろ苦きそを天麩羅に      前﨑都
桜餅よく喋る孫娘かな          赤塚さゆり
朧夜の入江に眠る真珠かな        鈴木勇美
寅さんも歩きし土手や春の雲       上田雅子
転がりし石にも春の深みゆく       斉藤真知子
オオタニの放物線や春来る        早川光尾
句座ひとつここに立ちたる桜かな     矢野京子
折らぬやう手の力抜き独活を掘る     前﨑都
いかなごを炊くや大鍋揺らしつつ     斉藤真知子
田起こしやゐもり慌てて腹を見せ     早川光尾
パンジーや思ひ思ひの昼休        赤塚さゆり

第二句座(席題、春ショール、囀り)

【特選】
退院の母へかけやる春ショール       前﨑都
春ショールたたむや花をこぼしつつ     斉藤真知子

【入選】
草叢より軒端にうつり囀れる        伊藤涼子
朝まだき恋の囀り始まりぬ         上田雅子
ベランダに何鳥か来て囀れり        上田雅子
湘南の風にあそばせ春ショール       鈴木勇美
囀りのあふれて障子開けにけり       伊藤涼子
さへずりを聞いてをるらし赤ん坊      矢野京子
白髪にピンク鮮やか春ショール       上田雅子

浪速の味 江戸の味 4月【桜菓子】浪速

caffe kigosai 投稿日:2023年3月26日 作成者: youko2023年3月28日

桜の満開情報が届く季節になりました。コロナ禍のため、集まっての花見を控えていた人々も、今年は久しぶりに家族や友人と花見を楽しまれることでしょう。

毎年、吉野山で花の句会を行っていたのですが、ここ三年は中止になっていました。今年は四年ぶりに吉野山で花の句会を開催します。花時の吉野山は押すな押すなの賑わいです。さらに今年は久しぶりに吉野山へ花見に出かける人が多いので、四月上旬の吉野山の人出はいかばかりかと思います。

吉野山は、奈良県中央部にある標高455メートルの山で、吉野山・高野山から熊野にかけての霊場と参詣道が世界遺産に登録されました。吉野山は、金峯山寺の門前町として開け、花時には多くの観光客が訪れます。

一目千本と呼ばれ、下千本・中千本・上千本・奥千本と咲き上る山桜は見事でまさに全山花盛りになります。昔から歌や俳句に花の吉野は詠まれてきました。現在も貞室と同じ感慨を持つ人々で賑わいます。

これはへとばかり花の吉野山   貞室

みよし野は右往左往の花見かな  貞室

吉野山のみやげとして有名な吉野葛。美しい葛の花は秋の七草の一つでもあります。多年草で、晩秋に枯れますが、根っこは次の春に備え養分を蓄えます。そうして大きくなった葛の根っこが店先に飾ってあるのをみると野趣に富んでいます。

吉野葛作りは、雑菌の繁殖などが無く、品質のよい葛粉作りに適した冬の冷え込みが厳しい時期に行われます。山中から掘り出した葛の根を砕き、地下水を張った桶で攪拌します。褐色の葛が真っ白になるまで何度も水を替えて洗います。

その後、適当な大きさに割り、二か月自然乾燥し、純白の吉野本葛になります。

老舗の和菓子店では桜の花の木型を使って作った桜の葛干菓子が店頭に並んでいます。桜の蕾、葉などの型抜きもあり、菓子箱に吉野の花見の思い出が詰まっています。

久しぶりに一目千本の花を愛で、桜の葛干菓子を食べて吉野の花見を楽しみたいと思います。

み吉野の花や蕾や桜菓子   洋子

「カフェきごさいズーム句会」スタートします

caffe kigosai 投稿日:2023年3月25日 作成者: mitsue2023年4月11日

4月8日(土)より、ズームを使用した「カフェきごさいズーム句会」がスタートします(サイト右のご案内参照)。パソコン機能を使った句会は、日本(世界)各地から参加可能です。入会後、希望者にはズーム及びズーム句会(投句、選句方法など)のレクチャーを行いますので、お気軽にご参加ください。不明点などは、メニューの「お問い合せ」欄からどうぞ。

【「カフェきごさい句会」のみなさまへ】
偶数月に開催していました「カフェきごさい句会」は、「カフェきごさいズーム句会」へ移行させていただきます。投句数も増え、毎月選評を直接お伝えできるより力の入った句会となりますので、ぜひ引き続きご参加ください。システムは若干変わりますが、投句、選句方法はほぼ変わりません。ズーム当日ご欠席の場合は、欠席投句が可能です。みなさまのご参加をお待ちしております。(店長・飛岡光枝)

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」二月

caffe kigosai 投稿日:2023年3月23日 作成者: mitsue2023年3月23日

新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより二月の季語「雛」、花「紅梅」、浪速の味「丁稚羊羹」です。

【入選】
手を繋ぎ春満月の家路かな  さゆり

朧の大きな満月に見守られながらの帰り道。原句は「手を繋ぐ春満月の家路かな」。

梅林や思ひのままを探しつつ  勇美

‘「思ひのまま」は梅の名なり‘などの前書きが必要か。思いのままの散策が梅の季節の心持とよく合います。

ふるまひは荒汁河津桜かな  勇美

鮮やかなピンク色の河津桜は近年各地で人気ですが、もともとは伊豆の温暖な地域で2月末から長く咲いている桜です。句は伊豆半島の河津桜でしょうか。新鮮な魚の荒汁はなによりの御馳走。下五は動きを入れてよりいきいきと。「ふるまひは荒汁河津桜咲き」など。

紅梅の光あふるるちさき庭  和子

「ちさき庭」がいい。紅梅は数輪でも存在感があり、早春の空気を運んできてくれます。慎ましい暮らしが思われる清々しい一句です。

亡き人の面影浮かぶ雛かな  和子

雛人形には様々な事柄や人を思い出させる力があるようです。原句は「亡き人の面影浮かぶ古雛」。この句の場合「古」が説明的になり、かえって思いが伝わりにくくなります。出来た後に句を眺めて言い過ぎていないかなど推敲を。

校庭に名残りの雪の兎かな  勇美

春の雪で作った雪兎。小さくて頼りなさげでかわいらしい。名残りの雪であり、春を運んできた名残りの雪兎でもあります。

飛梅の発止発止と開きけり  光枝

今月の花(四月)桜

caffe kigosai 投稿日:2023年3月21日 作成者: mitsue2023年3月21日

数あるバラ科の植物の中で、日本人にとってこれほど特別な意味を持つ花はないでしょう。東京では、靖国神社のソメイヨシノの標本木が五輪以上開花すると開花宣言がだされます。他の国、他の花では聞いたことがありません。

満開の花を見上げて楽しむ人々、散りはじめると東京のあちらこちらで見られる見事な桜吹雪、やがて桜前線は北に上っていきます。そんな報道に接すると、殺伐とした世の中をしばし忘れてしまいます。桜を眺めている人たちの解き放たれたような表情は自分にも移ってくるようで、この時期には近くの桜の名所、千鳥ヶ淵を歩くのが楽しみです。

六年前の桜の頃、詩人の大岡信先生が亡くなりました。何人かの親しかった方たちとご自宅に向かったのは次の日でした。

お体の調子を崩されてまもなく、先生は故郷に引越されました。それまで親しくしていただいた方たちが折に触れては訪れ、桜の季節になるとお花見と称して先生の周りを取り囲み、今の文学の話題や仲間の懐かしいエピソードなどを話して和やかに過ごしました。

その日、周りの杉林の向こうに陽は落ち始め、あたりはだんだんと暗くなっていきました。黒紋付に着替えられ、永遠の眠りについた先生の周りで時々静かに言葉を交わしていた古くからの編集者の一人が、窓の向こうを見ながらつぶやきました。

「西行だね、先生は。ほら、桜が」

どんな光の屈折なのか、小さなサンルームのガラス窓に写りこんだ花の影がもう片方のガラス窓に反射していました。目を凝らすとそれは実際の花ではなく、八分咲きになった桜のピンクの花が何輪も重なってぼおっと映っていたのです。

お住まいの近くには大きな桜が何本かあり年々枝も張りだしてきて、サンルームのガラス窓にも届く桜の枝が何本か花を咲かせていました。集まった方たちは「本当だ」といってその窓ガラスに映った桜に見入っていました。

願わくば花の下にて春死なむ
        その如月の望月の頃

西行のこの歌は、たくさん書かれた先生のご本の中に幾度となく取り上げられています。この夜は満月ではありませんでしたが一週間もしないうちに満月。まさに望月の頃、でありました。

間もなく周りが闇となると、その花の影は消えていきました。先生の宇宙からのメッセージに桜の精も寄ってきたのでしょうか。

さまざまの事思ひ出すさくらかな 芭蕉

永遠の一瞬に立ち会った気がして、芭蕉のこの句に共感する思い出が私の中にまた一つ加えられたのです。(光加)

今月の季語(4月) 辛夷・片栗の花

caffe kigosai 投稿日:2023年3月18日 作成者: masako2023年3月20日

辛夷の花も片栗の花も、四月の季語として掲げるにはいささか遅いのですが、今回は、俳句においては掟破りとされる季節を戻すことをさせてください。

三月十四日、訃報をひとつ受けました。私は東京・国分寺市の殿ヶ谷戸公園にいました。実は公園に入る前に、きごさい理事長の長谷川櫂さんから「本当か」という問い合わせを着信していました。ガセであってほしいと祈りながら、公園内をぐるぐる巡っているところへ届いた、確かな筋からの知らせでした。

師・黒田杏子急逝の報に、綺麗だなあと仰いでいた空の色が違って見えました。黒い画用紙の上に青い絵の具を塗ったような色。青くはあるのですが、冥いのです。こころ次第で見え方が変わることを、こころならずも実感しました。

殿ヶ谷戸公園には二月にも来ていて、そのときには節分草が咲いていました。

ふたり棲む節分草をふやしつゝ               黒田杏子『一木一草』

節分草白光(びやつくわう)金とむらさきと 同   『日光月光』

母のこゑ節分草の咲くころね              同

節分の名のとおり、冬と春のあわいに咲き出し、ほんの一週間ほどで再び地上から消えます。多年草なので地下で命をつなぎ、一年後にまた現れるのです。「節分」は冬の季語ですが「節分草」は早春の花、歳時記にも春の部に収められています。

近付いてよくよく見ると、まさに二句目のさまであることがわかります。知る人ぞ知るタイプの植物ですから、第一句や第三句のように、人と取り合わせて詠むのもよさそうです。

庭園の方から、同じ斜面に三月には片栗が咲き出すと聞いていましたので、何はともあれ、片栗の斜面を目指そうと、その日は入口から直行したのでした。

かたかごの雨に跼めば男老ゆ               黒田杏子『木の椅子』

かたかごの斜面を満たす山の音    同   『水の扉』

私には何の音も聴き留められませんでしたが、ほつほつと咲き出した紫の花に向き合いながら、お目にかかる前の若い先生の姿を想像していました(『木の椅子』『水の扉』は第一、第二句集です)。

殿ヶ谷戸公園は武蔵野崖線の高低差を利用して作庭されています。片栗の斜面をあとにして、竹林を抜け、暖かな日差しの丘を登りにかかりますと、それはそれは見事な辛夷の大木が。

こぶし咲き満ちたるのちを発たれしと 黒田杏子『日光月光』

飯田龍太夫人への悼句です。そのまま今の私のこころだと思いました。

辛夷との出会いを描いた先生のエッセイがあります。

「ある朝学校に向かっていつもの道を行きますと、雪をかぶったようにまっ白い木が目の前に立っているのです。きのうはなかった、不思議な気持ちで木の下を通り抜けました。帰り道で一緒に歩いていた子供たちが「コブシ、コブシ」とさけんで今朝の高い白い樹に向かってかけ出しました。」(「辛夷の咲く日」『黒田杏子歳時記』)

心ひかれる花の名を知ることは、幼子がことばを獲得するときに似ています。「日本列島櫻花巡礼」で知られる先生ですが、発たれたときのまなうらには、辛夷の白い花があったのではないかと思われてなりません。(正子)

 

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」一月

caffe kigosai 投稿日:2023年2月23日 作成者: mitsue2023年2月23日

新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより一月の季語「一月」、花「結び柳」、江戸の味「雑煮」です。

【特選】
ちよろぎちよろぎ幼き子らの囃しけり 勇美

その形を俵に見立て、縁起物として御節料理の黒豆などに添えられるちょろぎ。くるくるとした紅色は子供たちの恰好の標的。お正月らしい明るさに満ちた句です。原句は「ちよろぎちよろぎ幼き子らを囃しけり」。

【入選】
ひそやかに我を呼ぶ声竜の玉 勇美

竜の玉の冷たさを感じられる一句。

住み慣れし都電沿線去年今年 さゆり

上五中七で過不足なく描かれた作者の生活。季語「去年今年」ではその生活の単純な説明になってしまうのが惜しい。「住み慣れし都電沿線雑煮椀」など一考を。

雑煮餅気づかはれつつ寿 勇美

餅が喉につまらないように気づかわれているのでしょうか。「気づかはれつつ」がわかりそうでわかりにくい。何が一番言いたいのかに焦点をあててみましょう。

丸餅のとろり坐りし雑煮椀 和子

丸餅に雑煮椀の句はたくさんありますが、「とろり坐りし」が、焼かない関西風雑煮らしい風情です。「丸餅のとろり坐りて雑煮椀」と中七で軽く切りたい。

黒豆のひかり華やぐ祝箸 勇美

つやつやの黒豆がズームアップされた一句。言葉が過不足なく使われました。原句は「黒豆にひかり華やぐ祝箸」。

棺行く道を縁取り霜の花 和子

鎮魂の思いが季語「霜の花」に込められています。ただ「縁取る」まで言うと細かすぎ。「棺行く道はるかなり霜の花」など広がるように工夫してみましょう。原句は「棺行く道を縁取る霜の花」。

水の辺のしだれ柳を結びけり 光枝

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2026 - caffe kigosai
↑