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加賀の一盞(六月) 岩魚炭火焼

caffe kigosai 投稿日:2025年5月18日 作成者: mitsue2025年5月18日

白山は水が良い。特に手取川水系は水質において高く評価されている。水の善し悪しが重要な液晶や電子部品のメーカーが多数大きな工場を建てている。もちろん酒造りもさかん。となれば川魚の美味しいのは必然、まして上流域の岩魚はことさらである。

白山をご神体に仰ぐ白山比咩神社はこの手取川扇状地の扇のかなめの地に鎮座されている。その社の真後ろに知る人ぞ知る『いわなの庵』がある。谷川の水をそのまま生簀に流し自然のままに養殖している。

店はその生簀のすぐ脇にある。夏のみの営業で今頃は若葉風が通り、谷川からは雪解水の流れが聞こえる。中央には囲炉裏が置かれ客はそれを囲んで座る。炭火が熾り、串に刺された岩魚が立ちて並ぶ。焼き上がりまで約40分、庵の親父はせわしなく炭の具合を見、串の角度を変えたり表裏を返したりして余念がない。奥さまと娘さんは塩焼きに合わせる炊込みご飯や山菜の和え物、みそ汁など用意する。

焼き上がった岩魚は食べやすい20センチくらい、頭からかぶりつく。この時の感動がすごい。頭や骨を噛む感触が無く心地よい歯応えなのだ。丁度良い苦みが加わり野趣が最高、どんどん食べて尻尾まですべて堪能する。岩魚定食は1匹だが、いつももう1匹追加し2匹で注文する。この美味しさは1匹ではもの足りない。鳥が囀り山吹が色を添える中、白山の岩魚は欠かせない。

転じてお隣の富山県には立山連峰がある。名峰劔岳から続くところ、滑川市に句友の酒井きよみさんが坐忘庵と名付けたお宅に住んでおられる。数年前にお邪魔したら、きよみさん自身が釣った見事な岩魚をご馳走してくれた。後ろは劔岳、前は富山湾から能登半島を望める絶景の坐忘庵、岩魚も格別でした。

大岩魚これを釣つたんきよみさん 淳

今月の季語(6月)木の花(2)

caffe kigosai 投稿日:2025年5月17日 作成者: masako2025年5月18日

新緑から万緑へ移りゆくころとなりました。南のほうから梅雨前線も迫ってきています。そんなころの木の花(木本の意で使っています)として、誰もがまず思い浮かべるのは〈紫陽花〉ではないでしょうか。色の七変化が楽しいだけでなく、花や葉の形に意匠を凝らした園芸種が次々に生まれています。

紫陽花や白よりいでし浅みどり         渡辺水巴

あぢさゐの藍をつくして了りけり           安住 敦

移り気という花言葉もあるそうな。そういう紫陽花なればこそ、

あぢさゐやきのふの手紙はや古ぶ       橋本多佳子

という句も実感とともに受け止めることができるのでしょう。

陰湿な環境を好む紫陽花ですが、ある意味ではこの時期の花形ともいえるでしょう。

ザクロの木が遠くからでもぱっと目を引く朱い花をつけるのもこのころです。

花石榴雨きらきらと地を濡らさず      大野林火

日のくわつとさして石榴の花の数      小林篤子

近くで仰ぐとガラス細工のような…。「雨きらきら」や「くわつと」射す日に、その透明感が際立ちます。

柿若葉重なりもして透くみどり       富安風生(初夏)

若葉のころには息を呑む美しさであった柿の木は、更に茂って葉の数が増えるだけでなく、葉の厚みが増すからでしょうか、晴れた日には照り、雨の日には冥い木になっています。が、よくよく仰ぐと、青葉の間に薄緑にも見える花をたくさんつけています。大概は木の下にこぼれた花を見て気づくことになりますが、壺型の硬質な象牙色の花です。

柿の花こぼれて久し石の上            高浜虚子

百年は死者にみじかし柿の花         藺草慶子

呼鈴に声の返事や柿の花               小川軽舟

掃き寄せられなければいつまでも転がっているような質感です。昭和一桁生まれの女性が、紐で繋いで首飾りにして遊んだとおっしゃっていましたが、宜なるかな。

視覚より嗅覚に訴えてくる花としてはまず〈栗の花〉でしょうか。

花栗のちからかぎりに夜もにほふ     飯田龍太

栗咲く香この青空に隙間欲し         鷲谷七菜子

ムッとした青臭い匂いにあたりを見回すと、かなり遠くに噴水のような花盛りの栗の木を見つけることがあります。ここまでに「にほふ」のかと驚くほどです。

〈椎の花〉もなかなか強烈。神社などでよく見かけます。

椎の花鉄棒下りし手のにほふ         福永耕二

芳香の代表としては〈定家葛の花〉を挙げてみましょう。

虚空より定家葛の花かをる           長谷川櫂

蔓性なので巨木に巻き上って高みから香を降りこぼします。好んで生垣に使う人もいます。先日グリーンカーテン状にしているお宅を見つけ、羨ましく思ったのですが、常緑なので冬は日当たりに問題が出るのでは、とつい余計な心配をしたのでした。(正子)

浪速の味 江戸の味(五月) 柏餅【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年5月5日 作成者: mitsue2025年5月5日

端午の節句が近づくと餅屋、和菓子屋はもちろんのこと、スーパーやコンビニの店頭にも柏餅が並びます。

奈良時代に朝廷で始まった端午の節句は、江戸時代には民間の行事として盛んに行われるようになりました。当時から江戸では主に柏餅、京阪地方では粽が節句の菓子として愛好され、江戸の柏餅は自家製が多かったようです。

柏の葉を用いた柏餅は、九代将軍家重から十代家治の頃、江戸で生まれたといわれています。この時代は田沼意次が活躍した庶民文化興隆の時期にあたります。その後、参勤交代で全国に広まったと考えられています。

柏の葉は、新芽が育つまで古い葉が落ちないことから子孫繁栄を願って用いられたといわれますが、清々しい香りと色が端午の節句に相応しいと思います。何よりそのまま持って食べられるのが好もしい。 

写真は、飛鳥山にほど近い東京都北区上中里の「平塚神社」境内の一角にある和菓子店「平塚亭つるおか」の柏餅です。「平塚神社」の歴史は古く、創立は平安後期といわれています。

源氏の棟梁、八幡太郎源義家が奥州征伐の凱旋途中にこの地を訪れ、領主に鎧を下賜、それを清浄な地に埋め塚(平塚)を築いたところから平塚の地名となったそうです。御祭神が武勇に秀でた義家とその弟達という「平塚神社」。その門前の柏餅を頬張ると力が漲る心持がします。

をみなこそここ一番ぞ柏餅 光枝

追記
俳句結社「古志」の長年の句友、福島県南相馬で餅屋を営む宮本みさ子さんが、初句集『餅屋句集』(青磁社)を上梓されました。「わが店の柏餅なりすべて白」をはじめ、柏餅の秀句が並びます。機会がありましたらぜひご一読ください。

第二十五回 カフェきごさいズーム句会報告(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年4月30日 作成者: mitsue2025年5月3日

第二十五回カフェズーム句会(2025年4月12日)の句会報告です。(   )は推敲例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
壺焼のひとつが噴けば次もまた  斉藤真知子
たんぽぽは歌ふ花なり我もまた     高橋真樹子
春の暮猫も家路に遠くなり       前田悠
花のごと生まれて花の産湯かな     上田雅子
山下りて清水に濡らす杖の先      周龍梅
(山下りて流れにすすぐ花の杖)

【入選】
河川敷の風のうねりや黄水仙      村井好子
(河川敷の風にうねるや黄水仙)
やさしくて時にはげしく鳥の恋     矢野京子
(時折は羽音はげしく鳥の恋)
春はやて右往左往す葱坊主       伊藤涼子
(春はやて右往左往の葱坊主)
春雷や鼻つ柱を圧し折られ       赤塚さゆり
梔子の花や谷中の夕まぐれ       鈴木勇美
百歳の花見は花の杖持ちて       上田雅子
(百歳の花見は花の杖をつき)
春怒濤むかし流人を運びけり      斉藤真知子
傘の下ふたり分け合ひ花見酒      鈴木勇美
(傘の下ふたり分け合ふ花見酒)
小半日父と二人の花筵         藤倉桂
熊避けや三橋美智也を唄いつつ      早川光尾  
(熊避けの三橋美智也を唄ひつつ)
八重桜春の重さをもてあます      葛西美津子
木曽川の長き鉄橋目借時        村井好子
結局は開かぬままの春日傘       斉藤真知子
胎の子をさすり春眠分かちあふ     高橋真樹子
がむしやらに生きて喜寿なり目刺焼く  藤倉桂 

あんぱんに臍すこやかや桜漬      飛岡光枝

第二句座(席題・春雷、雲雀)
【特選】         
こんにやくを春雷のごと包丁す     高橋真樹子
春雷や今日は私の誕生日        藤倉桂
(揚雲雀今日は私の誕生日)
【入選】
ずぶ濡れし犬の哀れや春の雷      上田雅子
(ずぶ濡れの犬の哀れや春の雷)
関税は何のことやら雲雀鳴く      斉藤真知子
(関税は何のことやら亀の鳴く)
首痛くなるまで空の雲雀かな      葛西美津子
春雷に浮かびし一句忘れけり      矢野京子
太陽の子になりたくて揚げ雲雀     藤倉桂
天守閣転げ落ちしか春の雷       矢野京子
(春雷に転げ落ちたり天守閣)
夕雲雀取り残されてしまひけり     矢野京子

揚雲雀きのふの声の落ちてくる     飛岡光枝
  

今月の花(五月) 銀葉(新芽)

caffe kigosai 投稿日:2025年4月30日 作成者: mitsue2025年4月30日

4月下旬、5年に一度のいけばなインターナショナルの世界大会が京都で開催されました。各流派、世界中のいけばな関係の人々が集まり、家元の皆様のデモンストレーションやワークショップを楽しみ、展覧会には大きなものから小さなものまで力作が並びました。私たちの流派の京都の拠点でも、この機会に教室の展覧会の開催となりました。

多くの作品が並ぶ中、上海から来た生徒がこれは何?と聞いたのは、薄緑の白い葉をもった2メートルほどの枝。それは銀葉でした。実はこの時期にいけばなで使う銀葉と呼ばれるものは裏白の木でばら科です。裏白といえば、正月にお飾りに使うシダを思い出しますが姿も全く違います。

私が初めて見たのは関西でしたが、今では東京のお稽古にも花材として出てきます。少し濃い茶色の枝が曲線を緩く描き、そこに灰色がかった薄緑の葉がついているのは今の時期だけです。枝の脇に小さな蕾がついていましたが、5枚の花弁の1センチほどの白い花が咲くそうです。

原産地は日本で学名はSorbus Japonica、日本という名が付いています。英名はJapanese white beam、又はJapanese moutainashといずれも日本という名称がつきます。ナナカマド属だそうで、ナナカマドもSorbus commixtaという属の学名が付いていますので裏白の木の仲間いうことです。

成長すると10~20メートルの高さにもなるそうですが、私はこの木が秋に楕円形の小さな赤い実を結ぶところを見つけてみたいと思っています。晩秋から冬にかけてお稽古によく使う、鮮やかな赤い実のナナカマドとどう違うのでしょうか。

この時期の葉はふちにギザギザがあり、プリーツのようにおれた線が目立ちます。新芽がたくさん出てくると、濃くなりだした周りのたくさんの緑の中で銀白色が輝き、展覧会でともにいけられた新緑の中でも、中国からの生徒さんの目を引いたわけです。

春に目覚めた初々しい木の葉の中でも最後にやっと芽吹いた、といった葉の色と風情が私のお気にいりです。(光加)

今月の季語(5月)薄暑

caffe kigosai 投稿日:2025年4月17日 作成者: masako2025年4月17日

「家のつくりやうは夏を旨とすべし」と兼好法師も書いていますが(『徒然草』第55段)、日本の夏がしのぎ難いのは、今に始まったことではないようです。まずは「暑さ」の確認から始めましょう。

手もとの歳時記に載っているだけでも〈薄暑〉〈極暑〉〈溽暑(じょくしょ)〉〈炎暑〉と暑さの程度がこまやかに(!)表示されています。〈極暑〉の傍題には〈酷暑〉〈劫暑(ごうしょ)〉〈猛暑〉を置き、〈溽暑〉はわざわざ〈蒸暑し〉と言い換えもしています。さらに〈炎暑〉の傍題には〈炎熱〉が。もはや焼けただれそうです。

昔から、〈暑し〉という一語では済ませたくないほど暑い、と言いたかった気持ちがひしひしと伝わってきます。

蓋あけし如く極暑の来りけり          星野立子

静脈の浮き上り来る酷暑かな          横光利一

我を撃つ敵と劫暑を倶にせる         片山桃史

奪衣婆に呉れてやりたき猛暑かな     佐怒賀正美

点け放つ鶏舎の灯溽暑なり             飯島晴子

地下道を首より出づる炎暑かな       山本一歩

炎熱や勝利の如き地の明るさ          中村草田男

どの句も実感に満ち満ちています。この中でひと味違うのが草田男の句です。外へ出ようとしてその眩しさを白いと思い、怯んだ経験は誰にでもあるでしょう。ですがそれを「明るさ」で、しかも「勝利の如き」と、まるでファンファーレのようにとらえられる人がどれほどいるでしょう。

この句は昭和22(1947)年の作。日本が敗戦の底にあえいでいた時代です。自解に「『勝利』を口にのぼし得る可能性が絶無である歴史的段階が、却って私をしてその語を叫ばしめた」と語っています。「如き」を付けざるを得なくても「勝利」の語を使わないと自らの生を維持できないほどの激情が、〈炎熱〉の景と向き合った草田男にほとばしったのです。その激情と均衡をとり得たのが〈炎熱〉という季語だったと言うこともできるでしょう。

奇しくも草田男が亡くなったのは1983年8月5日。その忌日を〈炎熱忌〉といいます。

炎天こそすなはち永遠の草田男忌     鍵和田秞子

〈暑し〉も〈暖か〉や〈涼し〉と同様に、身体感覚のみならず心情表現に使うことができる、ということでもありましょう。

さて、そこで〈薄暑〉です。冒頭に「暑さの程度」と記しました。うっすら暑いという意味ではその通りなのですが、たとえば極暑のころに「今日はそれほどでも」と感じる日があったとして、それを薄暑と呼ぶか、といえば否でしょう。薄暑は暑さへの入口。「ゆきあひの暑さ」ではないでしょうか。

街の上にマスト見えゐる薄暑かな     中村汀女

むかうへと橋の架かつてゐる薄暑     鴇田智哉

コントラバス改札通る薄暑かな       大西 朋

〈暖か〉とはもちろんのこと〈春暑し〉とも違う、夏の到来を喜ぶ心や、すこし汗ばむことによって季節のめぐりを確かめる気分を感じます。私もかつて、

もの買うて薄暑の街になじみけり     髙田正子

と詠んだことがあります。友人たちと谷中を歩き回った日のことでした。吟行で行ったのですが、いせ辰に寄ったらすっかり買物モードに。収穫を抱えて出たら、街の色あいが変わった気がしました。そのときの気分は〈夏来る〉、もしくは〈はつなつ〉であったような…。

私の場合は好きな季節でもあり、こんな表現になりましたが、季節を表す語と体感が噛み合う体験であったと今では思います。

さあ、今年もあっという間に暑くなりますよ。その前に〈薄暑〉でぜひ一句。(正子)

 

第二十四回 カフェきごさいズーム句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年4月11日 作成者: mitsue2025年4月11日

第二十四回カフェきごさいズーム句会(2025年3月29日)の句会報告です。(  )は推敲例。

第一句座 
【特選】
泰山の鳴動してか黄砂来る     早川光男
(泰山の鳴動止まず黄砂ふる)
駆け出せば子供らはもう春の風   矢野京子
(駈け出して子供らははや春の風)
噛み当てし眼かなしき蛍烏賊    葛西美津子
(噛み当てて眼かなしき螢烏賊)
児童公園母と子達の花筵      上田雅子
(一枚は母と子どもの花筵)

【入選】
恐ろしき炎が包む春の山      上田雅子
また一人欠けて詣る彼岸寺     赤塚さゆり     
北斎の浪の如くにミモザか     早川光尾
(北斎の浪とあふれてミモザかな)
空耳や父の声のせ春の風      前田悠
(空耳か父の声のせ春の風)
滝口の石に分かるや春かなし    花井淳
(滝口の石に分かるる春の水)
残り鴨お前も足を挫いたか     前﨑都
待ち受けにふるさとの山暖かし   早川光男
曲水や伏見の酒の香り立つ     花井淳
足投げ出す風やはらかき蝶の昼   伊藤涼子
五七五ゆく春の指折りながら    葛西美津子
(ゆく春や五七五と指を折り)
異国語の表紙の句集風光る     前田悠

むらさきに春明けゆくや初句集   飛岡光枝

第二句座(席題・四月馬鹿、青き踏む)
【特選】         
うかうかと過ぎてしまへり四月馬鹿 葛西美津子
(うかうかと老人となり四月馬鹿)
毎日が四月馬鹿なり大統領      前田悠

【入選】
若いよね言われしことも万愚説   斉藤真知子
十勝岳の風満身に青き踏む     高橋真樹子
爪先でふらつきながら青き踏む   早川光尾
宝くじ買つてしまひぬ四月馬鹿   伊藤涼子
万愚説痴呆の父に約束し      周龍梅

広州のあひる追ひかけ青き踏む   飛岡光枝
  

第二十三回 カフェきごさいズーム句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年4月11日 作成者: mitsue2025年4月11日

第二十三回カフェきごさいズーム句会(2025年2月8日)句会報告です。(  )は推敲例。
このズーム句会はどなたでも参加できます。ご希望の方は右の申し込み欄からどうぞ。見学参加も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
鶏の鶏冠真つ赤や冴返る         藤倉桂
(鶏の真つ赤な鶏冠冴返る)      
まほろばや背高のつぽと春を待つ    花井淳
(まほろばや背高のつぽと春を待ち)
盆梅や居間は忽ち梅の間に       鈴木勇美
(盆梅や居間はたちまち梅の園)
ものの芽にやうやく影の生まれけり   斉藤真知子
(ものの芽にはやもう影の生まれけり)
春めいて手の届きさうな山の尾根    周龍梅
(春めくや手が届くかに山の尾根)

【入選】
探梅の一輪誰に告げようか       鈴木勇美       
福豆を数ふ間もなく酒のあて      花井淳
湯たんぽと聞いた遠くの波の音     藤井和子
(湯たんぽを抱へ遠くの波の音)
梅の風止むや遥かに波の音       鈴木勇美
梅二輪一輪だけと思ひしが       斉藤真知子
冴返る長き祈りを薬師如来       村井好子
(冴返る長き祈りの薬師如来)
熊笹を叩く一雨寒明くる        葛西美津子
二上の皇子偲ばるる春立つ日      前田悠
大羊歯は太古の緑寒明くる       葛西美津子
路地抜けてまた路地に入る梅ふふむ   赤塚さゆり
(早梅や路地抜けてまた路地に入る)
狐らし寒暮の畔をまつしぐら      藤倉桂
下校児の止まぬペチャクチャ寒明ける  伊藤涼子
(下校児の止まぬおしやべり寒明ける)
ライオンの鬣寂し春の雪         赤塚さゆり
しまひ湯や遠く雪崩の音ひびき     鈴木勇美
(しまひ湯や遠き雪崩の音ひびく)
亀泳ぐけふからはもふ春の水      斉藤真知子    
上野駅着けば降り止む春の雪      赤塚さゆり
雨はしろがね三椏はまだ莟       葛西美津子
誘導員顔固まりし冴えかへり      早川光尾
(冴返る顔固まりし誘導員)

春の雪まだ眠りゐるキムチ甕      飛岡光枝

第二句座(席題・雪かき、野火)
【特選】         
身の丈の雪に埋もれて雪を掻く     伊藤涼子

【入選】
鎮もりてまた立ちあがる野焼の火    伊藤涼子
雪かきの音で目覚める朝かな      斉藤真知子
ともかくも家から出たし雪を掻く    前田悠
甲板の雪は波へと落としけり      斉藤真知子
今まさに野火に捲かれて恋の道     葛西美津子
雪掻くや山にまつすぐ白き道      藤倉桂
(雪掻くや山へまつすぐ白き道)
まどろみて除雪車の音遠退きぬ     赤塚さゆり
誰もかも顔真つ赤なり雪を掻く     赤塚さゆり
雪掻きを雪投げといふ国言葉      高橋真樹子

からからの関東平野野火走る      飛岡光枝
  

浪速の味 江戸の味 四月【お花見カフェ】浪速ならぬ吉野

caffe kigosai 投稿日:2025年4月9日 作成者: youko2025年4月11日

観桜句会で、4月5日、6日に吉野山に行ってきました。中千本は六分咲きでした。明日あたり満開でしょうか。一目千本、まさに絶景の花の山です。

これはこれはとばかり花の吉野山   貞室「一本草」

(2つめの「これは」は縦書きで「く」の表記です)

感動が伝わってくる名句です。貞室(1610~1673)は京の俳諧師です。

『奥の細道』の「山中」に「貞室」の名前が出てきます。「温泉に浴す。」で始まりますが、その温泉宿の主の父が俳諧好きであったとのこと。「洛の貞室若輩のむかし、ここに来りし比(ころ)、風雅に辱しめられて、洛に帰て、貞徳の門人となつて、世にしらる。」とあります。若き日の貞室が、この地での俳諧の席で辱めを受けたが、京に帰ると一念発起し、貞徳の門人となり、後に世にしられるようになったという内容です。貞室は、一念発起のきっかけになったのはこの地での体験のおかげと、山中の俳人からは俳諧の添削料をとらなかったと言われています。

今年の花を楽しみに毎年、吉野山の旅館「櫻花壇」に宿泊し、大広間で開催される観桜句会に参加してきました。思うような句が作れなくても一念発起に至らなかった我が身を反省するばかりです。「櫻花壇」は、昭和天皇御泊所で玉座の間がある旅館でした。谷崎潤一郎が宿泊して作品を書いたことでも知られる文芸の宿でもありました。8年ほど前に、そのすばらしい旅館「桜花壇」のご主人がお亡くなりになり、旅館が閉じられてしまいました。もうあのすばらしい大広間からの全山一望の絶景は見られないと思っていたのですが、このたび、ご親族により期間限定「お花見カフェ」として「櫻花壇」がよみがえったのです。

5日の午後、吉野山中千本に到着すると早速、「お花見カフェ櫻花壇」に向かいました。大広間で、満開が近い山桜を眺めながら、葛切りセットをいただきました。柚子茶が添えられていておいしかったです。ここからの眺めはやはり絶景だと感動しました。そして、6日の朝の句会を久しぶりにこの大広間で行うことができました。懐かしい日々がよみがえってくる幸せな時間でした。

ふたたびの櫻花壇の花の句座   洋子

今月の花(四月)サクラサク バーレーン《番外編》

caffe kigosai 投稿日:2025年3月25日 作成者: mitsue2025年3月25日

二月、バーレーンの日本大使館で催される天皇誕生日のレセプションでいけばなインスタレーションをするため、出かけました。

この国に初の女性大使として赴任した私の門下は、バーレーンは砂漠の小さな国なので桜もしばらく見られないかもと東京で何気なく話していました。「やはり日本の桜は特別ですものね」と言っていたことを思い出し、私のお土産は桜にしようと決めました。

バーレーンの農水省に当たるお役所に日本大使館を通して聞いていただくと、土がついてなければ持ち込み可能、一方日本の植物検疫は、数種の植物の中に虫や卵を見つけるとその箱ごと没収とのこと。成田の植物検疫所に問い合わせると、目的、量、大きさなどを聞かれました。ネットから申請書を出し、何度かの電話とメールのやり取りのなか、桜に付きそうな虫と注意事項を係官が丁寧に教えてくださいました。

二月のはじめ、花屋さんで固いつぼみの枝に虫がいないか、卵は張り付いていないか、数十年のお付き合いのベテランの花屋さんのスタッフと一本ずつチェックをし、枝の元を水代わりのゼリー状の物が入ったビニール袋に入れて規定の箱に収めました。

朝、自宅まで配達してもらい、その日の夜の便でドバイを経由。成田の検疫所の検査時間は予約をしていました。植物の日本語、英語、学名を書いて申告した私の書類には問題なく、チェックを受け、英文の検疫済みの書類も受け取り、箱は預かり荷物にすることで飛行機に積めました。

深夜の首都マレーマ。空港に迎えの大使館の方に車にバケツを積んできてほしいとお願いしたのは、ホテルですぐに桜を水につけるためでした。追加の木瓜と万作と共にホテルで水の入ったバケツに入れましたが、赤い木瓜の蕾はぐったりと下を向いていました。東京から同行した助手のKさんが自室で枝にもっと割を入れるなど回復にあたり、ホテルの冷蔵庫をひとつ空けていただき桜と万作の入ったバケツの保管をお願いしました。

桜たちの顔色を見るのが滞在中の朝食前の習慣となりました。Kさんはうなだれている蕾の周りにテイッシュペーパーをひとつひとつ巻き、水の中で枝を切り直し皮を削りさらに鋏をいれ、回復に成功。

天皇誕生日の当日、金屏風の前で満開になった桜は、数百人の客人をにこやかに迎える大使の横にありました。桜を見たことのないバーレーンの方たちは、この花は何?どこで売っているの?中には造花だと思ったという方もいました。

帰国後数週間、大使から「花が終わると今度は柔らかな緑の芽が出てました、桜は強いのですね」というメールが届きました。あっぱれ!と私は大役を果たしたバーレーンの桜につぶやいたのです。(光加)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十四回 2026年1月10日(土)13時30分(原則第二土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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