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今月の季語(4月) 暖か

caffe kigosai 投稿日:2025年3月15日 作成者: masako2025年3月21日

暖冬だとうかうかしていたら、立春を過ぎて妙に冷え込み、地域によっては大雪にもなり、春の実感の遠い今年となりました。それでも春の光を見出し、風の匂いを嗅ぎ、あるいは花粉に悩まされたりしながら、春の体感を整えていきます。

あたたかな雨がふるなり枯葎         正岡子規

〈暖か〉は三春通して使える季語ですが、これは早春のあたたかでしょう。雨を得て枯葎が茫々とあたたかそうにも見えるのです。

あたたかに鳩の中なる乳母車         野見山朱鳥

日溜りに乳母車と鳩の群れ。当然幼子とその母(父)の姿もあるはずです。視覚的にあたたかくもありそうです。

構成員は異なりますが、構図が似ているこんな句もあります。

村中が見えて墓山あたたかし         ながさく清江

〈暖か〉は時候の季語ですから、基本的には気温が暖かの意です。が、それとは別に、心に感じるあたたかさを表すこともできます。

暖かにかへしくれたる言葉かな              星野立子

眠さうに暖かさうに観世音                      星野 椿

いまのことすぐに忘れて暖かし              稲垣きくの

立子(母)の句は、その言葉に喜びを覚えています。椿(娘)は観世音に春眠の気配を感じているのでしょうか。きっと本人もうっとりと眠りたい心地だったのでしょう。きくのの〈暖かし〉には救われます。同時にこの状況に〈暖かし〉と付けられるきくのの太っ腹に憧れもします。

あたたかや布巾にふの字ふつくらと   片山由美子

「ふ」の字形を詠んでいますが、ふきん、ふの字、ふつくら…と「ふ」の音を重ね、あたたかさを呼んでいるようです。

布つながりのこんな句を見つけました。

ハンケチに一日の皺夕桜                    小川軽舟

「一日の皺」は充足感でしょうか。花疲れで手足が温かくなってもいそうです。

〈麗か〉も春の季語です。〈暖か〉に明るさと美しさが加わったものととらえればよいでしょう。

麗かや野に死に真似の遊びして                    中村苑子

麗(うらら)とは老いに眩しきものならし    能村登四郎

「死に真似」とは一見恐ろしそうですが、季語が〈麗か〉ですから、花に埋もれる体勢をとっているのかもしれません。

また、ゆったりとした時間の要素を加えると〈長閑(のどか)〉になります。

のどかさに寝てしまひけり草の上            松根東洋城

さびしさや撞けばのどかな金の音            矢島渚男

本意以外のことを付けようとするとなかなか難しい季語でもありますが、詠むことで心が穏やかになっていきそうです。(正子)

今月の花(三月)生命の木

caffe kigosai 投稿日:2025年2月24日 作成者: mitsue2025年2月24日

この二月、バーレーンの首都、マレーマで仕事が終わり、空港に向かうまで時間があったので「生命の木」を見てきました。

ここにもあったのだ!というのが私の感想でした。「Tree of Life」と呼ばれる不思議な木は他の国にもあり、それぞれパワースポットになっていることは聞いていました。いずれも長い年月そこにあり、土地の人々にとって特別なシンボルツリーとして存在しているのだそうです。御神木は日本でも時々見かけますが、私にとっては初めての生命の木との出会いでした。

バーレーンは島で、国土も小さく琵琶湖くらいと言われています。石油が採れることがこの島を経済的に豊かにしていて、人口の半分が他国から働きに来ているのだそうです。砂漠からの砂が舞い上がり、雨も少なく真っ青な空が見られることはめったになく、大きな太陽が薄グレーの空に薄オレンジ色となって消えていきます。

車は歩道のない街の大道路からやがてパイプラインが張り巡らされる砂漠へと進んでいきます。周りには緑もなく、山も見えず。原油が採掘されている証か、ちらちらと櫓から炎が出ているのがところどころ見えました。時々、バンガローと書かれた小さなテント小屋の集まりを過ぎていきます。観光客用、またはここで働いている人たちのもの?と思っていると「ほら、見えた」と運転手さん。

10メートルもないような砂丘の上に悠々と四方八方に手を広げ、私たちを出迎えているかのような一本の木。周りには土産物屋も売り子もいない。丘に上って見ている人も数人。木の周りだけ柵があり、ガードのような人が一人。ぐるぐるに頭部を巻いて目だけでているのは砂埃から守るためでしょうか。足元に気を付けながら砂の丘を登ってたどり着いた木は、高さは5mくらいですが周りの広がりは直径10メートルではきかないでしょう。

ごつごつしている枝の先には、薄緑のねむの木のような葉がついていました。柔らかな新芽は、樹齢400年というこの木がこれからも成長していくことを表していました。木はProsopis cineraria、英語でPersian mesquite またはGhaf。砂の下10~40メートルに地下水が流れ、地下茎が達しているという人もいます。バーレーンはエデンの園があったという伝説があり、聖書では楽園の中央にTree of Life、生命の木が立っていたということからなぞらえているのでしょうか。

宗教的な意味がある図形のTree of Lifeもあることを思い出しました。西アジアにも同様な木があることを知りました。でもこの木は、雨の極端に少ないこの地域にこんな大木になって立っているのは奇跡です。表皮が少しささくれているような古い枝を撫でて、パワーをください、と念じてきました。(光加)

加賀の一盞(三月) 利休忌茶会

caffe kigosai 投稿日:2025年2月21日 作成者: mitsue2025年2月21日

ひと口の和菓子に雅を感じる。金沢に美味しいものは多いが、その一つが和菓子、古くより茶の湯文化と相まって脈々と続いている。茶道は足のしびれを我慢しなければならないが、お菓子と抹茶が楽しめるところ。このコラムを始めるにあたり若かりし頃体験した利休忌茶会を紹介する。

千利休は茶の湯を広く世に示した人物、毎年三月の忌日に茶会を催す。当時習っていた先生は裏千家の業躰(家元で業を体得した師範)で茶会は百数十人の集まりになる。参加の皆さんは着物なので私もお召しに草木染の袴を新調し参加した。

金沢市内の料亭を貸切り、先ずお薄を頂きその後茶懐石へと進む。お菓子はお薄の席で菓子器から一つ頂く。これを主菓子といって練り切りの上生菓子、春の題材で特に利休が好んだ菜の花がこの茶会にはよく選ばれる。口に含めるととろりと解け風雅な味わい。金沢の老舗菓子屋に聞くと季節々々で数百種類の主菓子を作りそれぞれ銘があるとのこと。写真は「春告草」の練り切り。

よどみなくお茶銘問ふや春の雪  淳

茶会は先ず女性から三十名ほどずつ席に入る。男性陣(約二十名)はお点前、お運び、裏方茶筅振りなどの役を務め、最後の席でお薄を頂き茶懐石へと移る。

先ず塗の平盃にかんなべからお酒を注いで頂き乾杯をして料理を頂く。盃からぐい吞みに変ったころから定番の余興が始まる。謡やそれに合わせての仕舞、歌やおもしろ話など。最後は能「高砂」の「四海波静かにて」と「千秋楽は民を撫で」を皆で謡上げ締めとなる。

茶の湯はほとんどの美術工芸を集めた総合芸術、金沢にはそのすべてが用意されている。和菓子を始めとする芸術に触れるのも人生の楽しみのひとつだろう。(淳)

新企画「加賀の一盞」スタートのお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2025年2月20日 作成者: mitsue2025年2月20日

「カフェきごさい」サイトに今月より、金沢在住の花井淳さんによる「加賀の一盞」がスタートします。世界中の食、特にお酒への造詣が深い花井さんの記事と写真をどうぞご期待ください。
このシリーズは「浪速の味 江戸の味」と交互に掲載の予定です。三か所から発信される食の様々をどうぞお楽しみに!(店長 飛岡光枝)

今月の季語(三月)水草生ふ

caffe kigosai 投稿日:2025年2月18日 作成者: masako2025年2月20日

春の風は光るといいますが、光るのは風のみにあらず。子どものころの私は、耕しが始まるまでは田が遊び場所でしたから、用水路の音と光、田面の色と感触(ズック靴をどろどろにしては叱られていました)などなど、身の周りのすべてがきらきらし始めることを体で知っていた気がします。

水が光るのは雪解けにもよりますが、水生植物が芽吹き、水中の動物が活動を始めるからでもありましょう。

これよりは恋や事業や水温む        高浜虚子

東京高等商業学校(現・一橋大学)の卒業生を送る句。人も春の到来とともに新しく動き始めます。

水草生ふ水深きことかなしまず            山口青邨

〈水草生ふ〉はミクサオウと読みます。ミズクサオウと読むことも、〈水草生ひ初む〉の形で使うこともあります。この句は皇居の和田堀のあたりで詠まれたようですが、新社会人へのはなむけとも思えそうな句です。青邨は長く大学で教鞭をとった人でした。

水中のいよよなめらか水草生ふ            鷹羽狩行

〈水温む〉と〈水草生ふ〉が表裏一体の季語であることを思わせられる例句です。共に仲春の季語ですが、前者は「地理」の、後者は「植物」の章に収められています。

天地開闢萍の生ひそむる 斎藤愼爾

蓴生う魚たちの眼もふるふると   四ツ谷龍

「萍(うきくさ)」は水底で越冬し、春になると水面に浮いて増え始めます。あっという間に水面を覆う繁殖力に「天地開闢」は実にふさわしく思われます。「蓴(ぬなは)」はその文字で明らかなように「蓴菜(じゆんさい)」のことです。ちなみに萍も蓴菜も夏の季語です。「生ふ」がついて春の季語となります。

水中のみならず水辺にも大きな変化が現れます。

見え初めて夕汐みちぬ蘆の角        太祇

さざなみを絶やさぬ水や蘆の角            村上鞆彦

葦牙の水のつぶやき忘れ潮     佐藤鬼房

>蘆(あし)と葭(よし)は同じ植物を指します。その茎で作った簾を葭簀といいますが、春に芽ぐむときには〈蘆の角(つの)〉〈角組(つのぐ)む蘆〉〈蘆牙(あしかび)〉とするのが一般です。

角や牙のようにつんと尖った芽はたちまち生長し、晩春には若葉となります。

古蘆のけぶりかぶさる蘆若葉        深見けん二

若蘆の葉先の風に揃ひけり                今瀬剛一

前年の枯蘆を刈り取っていない場所には、けん二の句の景が現れます。また、丈がちぐはぐなままそよぐ蘆叢も見たことがありません。共に精緻な写生の技が光る句といえるでしょう。

水音の耳うち荻の角組まれ                 和久田隆子

荻は蘆とよく似ています。芽はどちらも尖っていますが、葉が伸びてくるとススキに似ているほうが荻と判別できます。船頭小唄の「河原の枯すすき」は実は荻のことではないかと、昔、近江八幡の船頭さんから聞いたことがあります。さてどうでしょう。

水辺に降りたら、ぬるんできた水をゆっくり覗いてみてください。(正子)

第二十二回 カフェきごさいズーム句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2025年2月1日 作成者: mitsue2025年2月1日

第二十二回「カフェきごさいズーム句会」(2025年1月11日)句会報告です。((  )は推敲例)。
このズーム句会はどなたでも参加可能です。ご希望の方は右の申し込み欄からどうぞ。見学も大歓迎です。

第一句座              
【特選】
さいはひ橋渡つて仕事始かな      鈴木勇美
菰を着て誰が面影や冬牡丹       葛西美津子
大欅ひび割れさうな冬の空       葛西美津子

【入選】
寒雀小さき礫のごと降り来       たきのみね
(寒雀光の礫となり降り来)
再会の辛子にむせぶおでんかな     鈴木勇美
(再会は辛子にむせぶおでんかな)
咲きながら眠れる冬の牡丹かな     葛西美津子
(くれなゐの眠れる冬の牡丹かな)
掃除会社からバイトの子煤払ひ     上田雅子
(煤払ひ掃除会社のバイトの子)
ストーブに火の揺らめきてポトフかな  高橋真樹子
(ストーブの火の揺らめきてポトフかな)
四世代ゐてなみなみと初湯かな     赤塚さゆり
(初風呂の湯をなみなみと四世代)
買初にすべらぬ箸を夫のため      前﨑都
(買初やすべらぬ箸を夫のため)
ごめ啼くや能登の寒さはいかばかり   葛西美津子
雪煙富士駆け上がりくれなひに     藤井和子
(富士駆け上がりくれなゐの雪煙)
丹頂の求愛のこゑ真白かな       高橋真樹子
(鳴き交はす真白きこゑや丹頂鶴)
冬眠の蛇おそろしき夢に醒め      斉藤真知子
人もまた雪にまみれて雪達磨      高橋真樹子
水仙のみなぎる命束ねけり       伊藤涼子
(水仙のしづかな命束ねけり)
ガザの子にせめての春や早く来い    早川光尾
(ガザの子に小さき春よ早く来い)
数独のなかなか解けぬ寅彦忌      村井好子
  
初雀ベランダの日を啄めリ       飛岡光枝
  

第二句座(席題・土竜打ち、寒夕焼)
【特選】         
土竜打つでたらめの歌大声で      葛西美津子
(土竜打ちでたれめな歌大声で)

【入選】
解体は明日も続きぬ寒夕焼       葛西美津子
(瓦礫解体明日も続く寒夕焼)
へうたんのような男の子よ土竜打つ   高橋真樹子
(へうたんのやうな男の子が土竜打つ)
土竜打ち叩きし縄はぼろぼろに     斉藤真知子
信州の雪舞ひ上げつ土竜打       花井淳
(信州の雪舞ひ上がる土竜打)
藁束もゆきまみれなり土竜打つ     矢野京子
(藁束のゆきにまみれて土竜打つ)
首かしげ鴉見てゐる土竜打       花井淳

土竜打つ戦なき世を願ひつつ      飛岡光枝
 

浪速の味 江戸の味(二月) ふく梅・むすび梅【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2025年1月31日 作成者: mitsue2025年1月31日

ふく梅(下)とむずび梅

東京都文京区の「湯島天満宮」は四五八年に雄略天皇の勅命により創建されたとされ、江戸時代には江戸の天神信仰の中心となり、湯島天神として親しまれてきました。現在では学問の神様として、受験シーズンには合格祈願の受験生で賑わいます。

また、江戸の頃から梅の花見の名所としても知られ、白梅を中心に多くの梅が植えられ、毎年二月から三月の梅まつりの時期には境内はよい香りで満たされます。

「湯島の白梅」を一躍有名にしたのが泉鏡花の小説「婦系図(おんなけいず)」です。何度も映画化、テレビドラマ化され、新派の舞台の代表作のひとつとなっています。

境内での主人公二人の別れのシーンの「別れる切れるは芸者の時に言うことよ、今の私には死ねと言ってください」は国民的名台詞として、私の幼い頃はクレイジーキャッツのギャグなどでもお馴染みで、子ども達も空で言えるほどポピュラーでした。

湯島天神のほど近くに行列ができる和菓子店があります。豆大福が人気の店ですが、梅の花の季節には特に食べたくなるのが「ふく梅」と「むすび梅」です。

「ふく梅」は、梅じそを練り込んだ白あんが皮からほんのり透ける、白梅を模した愛らしい和菓子です。中心の小梅が味のアクセント。

「むすび梅」は大豆を混ぜたおこわに昆布が入ったおむすびですが、その様子は今流行りの挟むおむすびのよう。こちらも小梅がひとつ付いており、受験勉強の夜食などにぴったりです。

訪れた一月中旬は受験シーズン真っただ中。咲き初めた白梅の傍には、奉納された絵馬が風にからから音を立てていました。合格祈願の絵馬に混ざって、だるまに目を入れた合格御礼の絵馬もあり、できるならみんなに合格してほしい!と願わずにいられない春の初めでした。

昨夜氷り朝ほころぶ梅の花  光枝

今月の花〈二月〉 連翹

caffe kigosai 投稿日:2025年1月30日 作成者: mitsue2025年1月30日

ウクライナの連翹

1センチにもならない茶色の蕾の先にかすかに顔をだした黄色は花びらの一部。初めてこの枝をいける生徒さんは連翹を手にして 「これは曲げることができますか?」と聞きます。

春のいけばな教室の何時もの光景です。私は、「やってごらんなさい」とアドバイス。

やがてぱちんという小さな音と、「あ!」という声。意地悪をしているのではありません。こうやって、失敗しながら手に覚えさせていくのです。

連翹は枝の中心の部分が空洞になっていて、曲げようとしても折れやすく、枝ぶりの美しさをそのまま使うのが一番なのです。

鮮やかな黄色のこの花木(かぼく)は、春の代表的な花材の一つ。他にも山茱萸や万作などは葉が出る前の枝に黄色い花が付き、1月の中頃から花市場に登場します。

季節が進むと、その黄色の鮮やかさが春の青い空に映えます。

ヘルシンキ、オーストリア、韓国、ドバイ。私は連翹の花をいけた土地とそれぞれの「レンギョウ」の姿を思い出します。いずれの土地でもそんなに高い木にはなりません。

すっと伸びた枝を持つもの、蔓のようになったものなど様々で、しだれた黄色い花の枝が地に着くとそこから根を下ろすという生命力の強いモクセイ科の中国原産の植物です。

いけばなに必要な線の要素を持つものとして、ありがたい存在です。夏季にはげんなりする暑さの中でも緑の葉が出て、この時期の数少ない緑の枝ものとしてお稽古に使われます。

シナ連翹の変種といわれる朝鮮連翹、また、シナ連翹とレンギョウを掛け合わせたものがドイツで栽培されており、黄色い大きな花を咲かせると聞きました。

私がオーストリアで見たものはこの種類だったのでしょうか。

ある日お稽古の途中で、一人の生徒が携帯を開いて「これと同じでしょう?」と声をかけてきました。ウクライナの出身の方で、以前可愛いお嬢さんをつれて来たことがありました。

写真は鮮やかな黄色の花の壁。「きれいねえ!!日本のより、花が大きいわねえ」「端に写っているのはお嬢さん?」。いけていた人たちも手を止めて携帯の画面をのぞき込みました。

彼女の家は首都キーウから車で4時間ほど。「家の近くの道に咲いていたけれど、今はもう、危なくて帰れない」とすこし声を落としました。

いつかこの季節、あふれるばかりに黄色に咲き誇っている花の道を一家で散歩することが早くできるように、と心から願うのでした。
(光加)

今月の季語〈二月〉 風光る

caffe kigosai 投稿日:2025年1月13日 作成者: masako2025年1月23日

春の風は光ると初めて耳にしたのはいつのことだったでしょうか。

風光りつゝ漣を作りつゝ                          高木晴子

風光りすなはちもののみな光る              鷹羽狩行

野山で遊んだ体験から、私がまっさきに肯うことができたのはこうした自然の光でした。雪解けの水も芽吹きも、どれもちらちら光って、外遊びの子どもの心を高揚させてくれました。

風光る白一丈の岩田帯                             福田甲子雄

産むために帰るふるさと風光る              鶴岡加苗

大人の心も、例えば命の誕生を待って輝きます。昨今は温暖化の影響でおかしなことになっていますが、それでも春の匂いを嗅ぎ当てると嬉しくなります。春の風は期待感を運ぶのかもしれません。

春風や闘志いだきて丘に立つ         高浜虚子

古稀といふ春風にをる齢かな         富安風生

虚子の春風はシュンプウ、風生はハルカゼと読めばよいでしょうか。同じ春の風でも読みによって印象が変わります。

兄妹にはるかぜ海を見にゆかむ              山田みづえ

春風に此処はいやだとおもって居る          池田澄子

みづえは読みを指定しています。澄子の春風はどうでしょう。風圧が「いや」ならシュンプウ、生ぬるさが「いや」ならばハルカゼでしょうか。あなたはどちらで読みますか?

泣いてゆく向うに母や春の風              中村汀女

ストローの向き変はりたる春の風            高柳克弘

「の」が挟まれば確実に優しい風になるようでもあります。

風吹くや耳現はるゝうなゐ髪              杉田久女

をさなごに生ふる翼や桜東風                仙田洋子

春になると、気圧の配置により日本列島は太平洋からの風を受けます。五行の考え方に則っても「春」の方角は「東」。〈東風(こち)〉は春を象徴する風といえるでしょう。

貝寄風や若く死にたる弟に                  榎本好宏

涅槃西風濁りて浪も黄なりけり              石塚友二

芋銭河童に踵のありて彼岸西風              神蔵 器

〈貝寄風(かひよせ)〉〈涅槃西風(ねはんにし)〉〈彼岸西風(ひがんにし)〉は西から吹く風です。貝寄風は聖霊会(聖徳太子の命日、旧暦2月22日)に捧げる貝殻を吹き寄せる風の意。好宏は弟を思うよすがにしています。涅槃西風は涅槃(旧暦2月15日)のころ、彼岸西風はお彼岸のころの西風です。

八荒の雲とも見えて比良の方                能村登四郎

春一番灯台守を眠らせず                    吉年虹二

春疾風すつぽん石となりにけり              水原秋櫻子

太陽にしろがねの環春北風                  森 澄雄

〈比良八荒〉〈春一番〉〈春疾風(はるはやて)〉〈春北風(はるきた)(はるならひ)〉は強い風です。

風の名前はバラエティーに富んでいます。時期、方角、強さ、それに伴うイメージの違いを意識しながら、詠み分けてみませんか。

(正子)

 

浪速の味 江戸の味(一月) ちゃんこ鍋≪初場所≫【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2024年12月29日 作成者: mitsue2024年12月29日

二〇二五年は一月十二日から始まる初場所。東京の正月らしい青空の下、両国国技館には色とりどりの力士の幟がはためき、否が応にも新年の気分が盛り上がります。

江戸時代から勧進相撲が開かれていた回向院、そして国技館のある両国にはちゃんこ鍋屋さんが多く、関取の名を冠した店やりっぱな土俵を設えた店など様々あり、所属した部屋の味を受け継ぐ美味しいちゃんこ鍋が味わえます。

「ちゃんこ」の語源は、父さんを意味する「ちゃん」に親しみを込めて「こ」を付けたとか、料理番の古参力士を「父公(ちゃんこう)」と呼んでいたからなど諸説あるようです。相撲部屋の料理は全て「ちゃんこ」と呼ばれることはよく知られており、その代表格が「ちゃんこ鍋」です。

鍋料理は様々な食材が同時にとれる上、味の変化がつけやすく毎日食べても飽きません。ちゃんこ鍋の基本は鶏のソップ炊き(スープ炊き)だと言われています。それは鶏は二本足で立ち、手を付かないので相撲に負けないという縁起を担いでのことだそうです。現代では牛肉や豚肉も食材にしますが、正月は鶏肉のちゃんこ鍋を食べる文化が残っているそうです。

写真は両国駅前「安美」のちゃんこ鍋。青森県出身、伊勢ケ濱部屋の関取「安美錦」関(現在は年寄安治川)の店で、魚や鶏肉のつみれ鍋が評判です。相撲甚句が流れる店ではちゃんこ鍋ランチが手軽に楽しめ、近隣の会社員も多く訪れます。

長く照ノ富士の一人横綱が続いている大相撲。先場所初優勝の「琴櫻」、鋭い出足の「豊昇龍」、そして大銀杏も間に合わぬほどのスピード出世を遂げた「大の里」と、この初場所は話題が満載です。相撲を楽しみ、ちゃんこ鍋をつつきながら、一日一番、足腰の粘り強い一年を送りたいものです。

初場所や潮のかをりの隅田川  光枝

みなさま
今年も「カフェきごさい」を応援いただき、ありがとうございました。
どうぞよいお年を!

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十四回 2026年1月10日(土)13時30分(原則第二土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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