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浪速の味 江戸の味(十月) 新豆腐〈大山豆腐〉【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年9月20日 作成者: mitsue2022年9月20日

 

山かけ豆腐 蒸豆腐 氷室豆腐

おぼろ豆腐

収穫されたばかりの新大豆で作る「新豆腐」は、甘みのある深い味わいが愛されてきました。日本各地に有名な豆腐がありますが、「大山詣り」で知られる神奈川県大山の名物「大山豆腐」もそのひとつです。

古くから山岳信仰の霊山である大山は、また、農民からは水を司る神として、漁民からは海からの目印として崇拝されてきました。山中の雨降山大山寺は奈良東大寺建立で知られる良辨僧正の開山と言われています。

江戸時代になると、大山では先導師と呼ばれた御師が、各地をまわって布教や大山講の結成に努め、宿泊場所の提供や案内を行いました。江戸の人口が爆発的に増えたことも参詣者の増加に拍車をかけ、江戸の人口が100万人の頃、年間20万人もが訪れたそうです。

そんな参詣客に振る舞われたのが、渓谷の清水で作られた「大山豆腐」です。豊富で清冽な水は、豆腐の保存にも適していたとか。毎年訪れた多くの江戸っ子が大山豆腐に舌鼓を打ち、江戸に戻ったのち大山詣りの土産話として語ったことでしょう。現在でも大山参道に並ぶ御師の宿坊では、工夫を凝らした様々な豆腐料理を味わうことができます。

大山は江戸市中から眺められ、道中手形不要で参詣できる身近な山でした。現在でも東京からの手軽なハイキングコースとして人気です。私が初めて大山に登ったのは高校の遠足、その頃は残念ながら豆腐料理にあまり魅力を感じませんでした。紅葉でも知られる大山の秋、ぜひ新豆腐を味わいに再訪したいと思います。

掌に乗せて掌にあまりけり新豆腐  光枝

今月の花(十月)ななかまど

caffe kigosai 投稿日:2022年9月19日 作成者: koka2022年9月20日

東京のある会館の床の間に大きくいけられた「ななかまど」。葉は黄色がかった薄い緑からオレンジ、そして、赤へと紅葉し、直径五~六ミリほどの艶やかな実の房が葉の間からたわわに下がっていました。十月末の展覧会ではいけることはありますが、その見事なななかまどを大都会の真ん中でみかけたのは、まだ夏を引きずっている九月のごくはじめのことでした。

そのななかまどの葉に傷や痛み、枯れたところがないのは、この作品を生けた作家の方をはじめ、関係者が注意深く毎日手入れをなさっているからでしょう。それにしても、久しぶりに見るあまりにも立派なななかまど、収めたお花屋さんに、秋がもう始まっている北の地から来たものか尋ねてみました。

「これは限られた地域の荷主さんから出されたもので、気候も日当たりも山の最適な場所で、きっと特殊な仕掛けをして大事に育てたななかまどだと思う」という答えでした。もちろんそれがどこの誰なのか、その花屋さんも直接は知らず、その場所に行ったこともないそうです。実際のところ、雨が当たっても条件によっては葉にシミが生じ,葉どうしがすれる風も大敵です。葉をよく見ても水分がなくなって丸まっているものはなく、こういうのをプレミアムななかまど、とでもいうのだろうかと私は写真を撮らせていただきました。

ななかまどは早春、小さな薄緑の葉がお互いをかばうように丸まって出てきて、やがてほどけていきます。葉は奇数羽状複葉、つまり先に一枚、あとは細い葉柄に対についています。

春も遅く、緑を深めた葉の枝先についた花は五弁の小さな花弁をもち、たくさん集まって咲くので遠くからみると白い泡が吹いているように見えます。花をいける時は、花弁がはらはらと散りやすいので気を付けなければなりません。

鳥に食べられずに冬を迎えた秋の赤い実は、雪の中で、葉がすっかり落ちた十数メートルにも達する黒褐色の木肌とよい色のコントラストとなることでしょう。

ななかまどは「七度窯にくべても燃えない」と名前が付いたといわれますが、それだけ瑞々しいということなのでしょうか。名の由来には異説を唱える植物学者もいるということですが、新芽のしたたるような緑色を見ると、この名前が付くほど春の水分を吸って芽吹く美しさから来ているのかとも思います。他に雷電木(らいでんぼく)または雷電(らいでん)という名前でも知られています。

ななかまどの街路樹を最初に見たのは北海道の帯広でした。先日再度訪れたこの町で、つややかな赤、また、オレンジ色の実をつけたななかまどを見かけました。陽の当たるところは紅葉がはじまっていて、その色合いは九月に入っても収まらない東京の酷暑を一瞬忘れさせてくれました。

この十月、私は帯広では初めてのいけばなのデモンストレーションを計画しています。北海道といえば、花屋さんに枝ものはたくさん種類がありそうですが、実はそれほど多くありません。現地の出演者のお知り合いの庭などで、少し紅葉したななかまどを切らせていただき、いけることはできないかしら、さぞ美しいことだろうとひそかに思っています。

「花は美しいけれど、いけばなが美しいとは限らない」勅使河原蒼風家元の『花伝書』の言葉です。この言葉を胸に、どんな花材に会えるか楽しみにしています。(光加)

今月の季語〈十月〉⑪ 秋めく

caffe kigosai 投稿日:2022年9月17日 作成者: masako2022年9月19日

紅葉は秋の季語。でも十月に紅葉は早いよと思う方も多いのではないでしょうか。実は私もこれまではそう思っていました。今年は九月のはじめに長野へ行き、標高が高くなるに従い木の葉の色が変わっていくのを目の当たりにしました。はじめのうちは下界(?)の残暑の記憶を曳いていましたから、病葉? 立ち枯れ? と訝しんでいたのですが、幸いにも紅葉に他ならない桜と真向かうことになり、秋を実感した次第です。

病葉を涙とおもふ齢かな                      齋藤愼爾〈夏〉

霧に影なげてもみづる桜かな               臼田亜浪

すると残暑厳しい下界へ戻ってからも、日を追って様子が変わっていくことを明らかに感じられるようになりました。いつもなら末枯か、せいぜい薄紅葉と思うにとどまる現象であっても、紅葉への一過程としてとらえる眼差しを高山から賜った心持ちでした。

多摩の水すこし激する薄紅葉               山口青邨

末枯といふ躊躇うてゐる景色               後藤比奈夫

私の身辺では薄紅葉というよりは薄黄葉といえましょうか。ほんの少し前までは木々の下に入れば「緑蔭」と思いましたが、今や木の葉を透る日の光がうっすらと黄味を帯びて感じられます。

九月の中ごろ、かつては里山と呼ばれた谷戸を歩きました。ボランティアの方々の丹精の稲が穂を重く垂れ、黄金色の一歩手前の色合いになっていました。また臭木やごんずいの実が、そろそろ遠目に花と見紛うほどに熟してきていました。

柿紅葉貼りつく天の瑠璃深し               瀧 春一

まだ「紅葉且つ散る」には到っていませんでしたが、ときどき拾ったのが柿紅葉でした。コーティングされたようなつややかな柿の葉は紅葉も独特の美しさです。その地に今も実るのは、禅寺丸柿とのことでしたが、原木はわが町内の古刹の境内に今もあります。

禅寺丸柿原木の木守柿                                   正子

棲み古りてここ甘き柿生れる里

拙句でご無礼します。大昔には宮中に献上もされたという甘柿ですが、今では残っているところでのみ出会う存在です。剪定されず、のびのびと大きく育っていることが多いです。

照葉して名もなき草のあはれなる       富安風生

「照葉」は「秋晴」と「紅葉」の両条件を満たして成り立つ季語です。木の葉のみならず、この句のように草の紅葉にも使えるのだと目から鱗でした。

名もなき草という措辞が出てくるのは、「秋の七草」と数え上げられる草があるからでしょう。七種は萩・薄・葛・撫子・女郎花・藤袴・桔梗とされますが、このときの元・里山で見かけたのは薄と葛でした。萩、撫子、女郎花、藤袴、桔梗は花期が早めです。夏のころからあちらこちらで見かけましたから、すでに終わっていたのかもしれません。また若干の手入れが必要な花なのかもしれません。代わりに男郎花、吾亦紅、水引、数珠玉などの剛い植物や、名を知らぬ茸各種を見かけました。タヌキマメ、キツネノマゴなる植物(花も実も)とは初対面。カラスやスズメだけでなく、タヌキやキツネが跋扈する楽しい秋の野でした。

「秋めく」とは秋らしくなるの意。本来は初秋の季語ですが、この程度にまで秋が深まって初めて実感できる気もします。十一月はもう初冬です。十月の野を歩き、秋を堪能してみませんか。(正子)

 

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」七月

caffe kigosai 投稿日:2022年8月24日 作成者: mitsue2022年8月24日

新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」句会。今月の兼題はサイトより七月の季語「夏の水辺」、花「ひまわり」、浪速の味「鱧鮨」です。

【入選】
肩車され向日葵とにらめつこ  勇美

子どもの顔よりはるかに大きい向日葵の様子が目に浮かびます。上五中七が少々散文的なのが惜しい。向日葵がより印象的になる工夫を。「肩車大向日葵とにらめつこ」など。

大氷河割れて地球の崩れゆき  和子

地球の崩れる音が聞こえるような一句です。句の内容からすると「割れて」が弱い。「大氷河崩れ地球の崩れゆく」。

つながるるスワンボートや夏の果  勇美

繋がれてしょんぼりしているスワンボート。夏の終わりをその様子で描いているので「夏の果」という季語はダメ押し。季語を工夫してみましょう。「つながれてスワンボートや百日紅」など。

一坪の庭に聳えて日輪草  勇美

「日輪」の大きさが効いている一句。「一坪の庭に聳える日輪草」もある。

椀の中鱧の白さの目に沁みて  和子

「目に沁みて」は言わずもがな。この五字でより内容を深く詠みましょう。

鱧鮨の経木開けばコンチキチン  光枝

今月の花(九月) 野いばら(野ばら)の実

caffe kigosai 投稿日:2022年8月23日 作成者: koka2022年8月24日

八月末。いけばなの花材を扱う花屋さんでは、初秋を告げる様々な花材たちが息を吹き返したような新鮮な表情で迎えてくれます。

その中に1.5メートルあまりの弧を描く枝の「野いばら」が数本、脇枝にたくさんの緑の実をつけていました。丸い実は5ミリ~7ミリ位で季節が進むと緑はオレンジや赤に代わっていきます。

日本原産の「野いばら」は、18世紀の末、来日したスエーデンの植物学者ツュンベルグがヨーロッパに持ち帰り、以来様々な交配種を産出するのに使われたと聞いています。

草むらに「野いばら」の花を見つけたのは初夏。直径1.5センチ程の香りのいい白い花がにぎやかに咲いていていたのが、ついこの間に思えます。

「いぬバラ」と呼ばれる、花が薄ピンクのバラがロサ・カニーナ。その実はローズヒップと呼ばれお茶に使われる種類の一つです。実が大きく、華やかな赤い実を下げているのは「鈴バラ」(ロサ・セテイゲラ)で、「野いばら」に比べると実が大きく先が少しとがります。弧を描く茶色の枝の大きな棘に気を付けながらいけるのも楽しみです。

日本でいけばなのレッスンにはげみ、今はドイツに住む元門下が、実がついた枝が大きく道端に出ているバラの写真を送ってくれました。「野いばら」の実は秋がくると花屋さんで手には入るけれど、写真にあるような立派なバラの枝は散歩の時は邪魔になるし、車から見ると人が歩いていても枝に隠れてしまい、運転していて危ない、切ったほうが良いのでいけばなの材料にこっそりいただく、と元門下は言っておりました。これは「いぬバラ」でしようか。

「いぬバラ」の花は可愛らしい薄ピンク色です。そう聞くと、シューベルトの『野ばら』を思い出します。「童はみたり 野なかの薔薇」というゲーテの詩は、近藤朔風氏の訳詩で知っていました。シューベルトやヴェルナーはじめ多くの作曲家を虜にして、数えきれない曲がこの詩につけられましたが、この「いぬバラ」をうたったのではないかと言われているそうです。

実際の花の色は薄いピンクですが、翻訳には「紅(くれない)におう」と出てきます。ドイツ語の分からない私はこれは本当に赤い色をさすのか、と門下に聞いてみました。この色については、ドイツの方たちもいろいろと意見があるということでした。

ゲーテはこの詩を書いたとき、牧師の娘さんに恋をしていたとか。童(少年)はゲーテ自身という説もあるそうです。実らなかった恋は薄いピンクの花を赤にして、彼の心の内にしまわれたのかもしれません。

世界遺産になっているヒルデスハイムという町のマリア大聖堂には、聖堂を覆うようにして樹齢1000年近いと言われるつる状のバラがあると聞きました。有名なこのバラの花は、ドイツの食器やカトラリーなどに「ヒルデスハイムのバラ」としてデザインされているようです。

大聖堂のバラは、ゲーテの時代も見てきたにちがいありません。どんな実を結ぶのでしょうか。いつか会いに行きたいバラの一つです。(光加)

浪速の味 江戸の味(9月)鷹の爪【浪速】

caffe kigosai 投稿日:2022年8月21日 作成者: youko2022年8月22日

暦の上では秋になりましたが、暑い日が続いています。幸い食欲が落ちることもなく、痩せることもなく過ごしていますが、夏バテ気味の方には、香辛料の効いた料理が食欲をそそるのでお勧めです。唐辛子はピリ辛料理には欠かせません。ナス科の一年草。熱帯アメリカ原産とされ、白い花の散った後の青い実が熟れてだんだん赤くなり、一面真っ赤になった唐辛子畑は壮観です。摘み取った唐辛子を干して保存できるようにします。

大阪府堺市の「堺市史」によると、堺市中区福田は、江戸時代から唐辛子の「鷹の爪」の一大生産地でした。実が小さく、先が尖った形が鷹の爪に似ているのでその名があるそうですが、平賀源内が72種の唐辛子について解説している中で、「食するにはこれを第一とすべし」と記述しているとのこと。

現在国内で流通している唐辛子はほとんどが外国産や他の品種です。約1%の国内産唐辛子の中でも、堺鷹の爪は日本に唯一残る一節に一つずつ実をつける純系品種です。3~4㎝の小ぶりな唐辛子ですが、外国産の約3倍の辛さがあり香りがよいのが特徴です。その特産品も摘み取りに手間がかかるため、農家が栽培をやめていったそうです。

このままでは、堺鷹の爪は作られなくなってしまうと危機感をもった生産者で販売もされる方が尽力され、交配で品種が変わらないよう完璧に管理された畑で栽培を続け、きびしい条件をクリアしなければならない「なにわ伝統野菜」として認証されるまでになりました。掲載した写真は「なにわ伝統野菜」に認証された折の報道資料です。一節に一つかわいい赤い実が天を向いてついています。

日本は食料の自給率が低く、外国産に依存していることは知っていたつもりでしたが、国産唐辛子がこれほど少ないとは思いませんでした。手間がかかり採算がとれないと、伝統ある特産品もだんだん作られなくなるという現実を消費者も知ることが大事だと思いました。堺鷹の爪の魅力を広く知ってもらえたらと思います。そして料理に利用してその味、香りを楽しみたいと思います。

ペペロンチーノ味の決め手は鷹の爪   洋子

今月の季語(9月) 台風

caffe kigosai 投稿日:2022年8月11日 作成者: masako2022年8月16日

梅雨のころから台風が到来する昨今です。しかも来れば必ずといってよいほど列島を縦断し、隙をつくように新たな被害をもたらします。まるで人間の浅智恵を嘲笑うように。

台風を充ちくるものゝ如く待つ        右城暮石

先んじて風はらむ草颱風圏             遠藤若狭男

颱風の白浪近く箸をとる              山口波津女

暮石は接近中の台風の威圧感を全身全霊で受け止めているようです。逃げようもなく、また挑みようもないものを「待つ」と表現し、刻々と濃くなる存在感を表しています。どこか期待感に通じる感覚かもしれません。

台風には風台風も雨台風もありますが、いずれの場合も先払いのように吹いてくる強い風があります。若狭男は颱風の圏内に入ったことを草の姿態で感じ取っています。どちらの句も怖がっているわけではありませんが、台風を強く意識しています。

対して波津女(山口誓子の妻)は台風が来てしまう前に食事を済ませておこうとしています。人の営みが滞らないように、さまざまな準備を整えてもいることでしょう。台風より日々の暮らしのほうに意識が向いています。さ、あなたも、と誓子も妻に促されて食事をとったかもしれません。

台風はtyphoonの音に漢字を当てていることからも明らかなように、比較的新しい季語です。対して〈野分〉は王朝和歌にも登場している歴史を感じさせる季語です。文字通り野を分けて吹く秋の暴風のことですが、風台風のことだと捉えても間違いではないでしょう。

鳥羽殿へ五六騎いそぐ野分かな        蕪村

野分中つかみて墓を洗ひをり          石田波郷

吹かれ来し野分の蜂にさゝれけり      星野立子

何か事件があったのでしょうか。画家でもあった蕪村は、緊迫感を視覚的に描いています。

波郷が洗っているのは親しい人の墓石でしょうか。つかんで洗うという荒々しい振る舞いが二人の親密度を表しているようです。野分を突いてその日に来なければならない理由があったに違いありません。

立子の句は、蜂にさされたといいつつどこかユーモラスです。蜂も当惑して八つ当たりするしかなかったのかもしれません。

おとろへし親におどろく野分かな      原 裕

野分来ることに少年浮き浮きと        岩田由美

かつては私も、台風接近中の父母の行動に大人への憧れのような感情を抱いたものでした。おそらく裕もそうだったのでしょう。時を経て、密かに着々と進行していた親の「おとろへ」に気づいてしまったのです。

かつての少女も、周囲のいつもとは異なる慌ただしい雰囲気に、客人を待つような昂りを覚えたものです。少年と感じ方が異なっていたかどうかは、少女でしかなかった私には本当のところは分かりませんが、句としては、いずれ「波津女」の立場となる少女より少年のほうが「浮き浮き」の純度が上がる気もします。もっとも今後のジェンダー差については与り知りませんが。

長靴に腰埋め野分の老教師             能村登四郎

脚をすっぽり覆うほどの長さかもしれません。職業によっても野分感が異なりそうです。

家中の水鮮しき野分あと        正木ゆう子

「野分あと」は台風一過のこと。「家中の水」の捉え方に鮮度があります。

台風も野分も天文の季語ですが、時候の章にも類する季語があります。

島畑のかんかん照りや厄日前          岸田稚魚

田を責める二百十日の雨の束          福田甲子雄

〈二百十日〉は立春から数えて二一〇日目、今のカレンダーでは九月一日ころを指します。早稲の花が咲くころにあたり、農家は大風大雨を恐れました。〈厄日〉ともいいます。できる対策はすべて施し、あとは祈るだけという気持ちがひしひしと伝わってきます。(正子)

カフェきごさい「ネット句会」(8月)互選+飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年8月6日 作成者: mitsue2022年8月7日

【連中】涼子 桂 すみえ 良子 都 隆子 酔眼 光尾 雅子 利通 裕子 光枝
 
≪互選≫
都選
噴水に疲れみえたり午後三時 すみえ
緑の葉付けて供さる新生姜 雅子
背泳のそのまま星の裏側へ 隆子

良子選
一時の華やぎとなれサングラス 桂
噴水に疲れみえたり午後三時 すみえ
山ひとつ氷室蔵して静かなり 光枝

すみえ選
山ひとつ氷室蔵して静かなり 光枝
炎天の橋を渡れば秋かすか 裕子
ブーゲンビリア藍深々と島の海 雅子

雅子選
燕の子初めての天怖るるな 桂
仲見世のあかりの中へ初浴衣 すみえ
ブーゲンビリア影まき散らし風の中 隆子

裕子選
仲見世のあかりの中へ初浴衣 すみえ
惜しみなく体重預けヨット行く 都
山ひとつ氷室蔵して静かなり 光枝

光尾選
戦争のニュースに慣れて蚊遣かな 光枝
告げぬ恋ただザクザクとかき氷 桂
花かぼちゃ噂話をしつつ行く 良子

涼子選
仲見世のあかりの中へ初浴衣 すみえ
山ひとつ氷室蔵して静かなり 光枝
背泳のそのまま星の裏側へ 隆子

利通選
山ひとつ氷室蔵して静かなり 光枝
朝顔や笛工房は路地の奥 良子
炎天の橋を渡れば秋かすか 裕子

桂選
山ひとつ氷室蔵して静かなり 光枝
背泳のそのまま星の裏側へ 隆子
炎天の橋を渡れば秋かすか 裕子

隆子選
仲見世のあかりの中へ初浴衣 すみえ
灼熱化山椒魚も動き出す 光尾
炎天の橋を渡れば秋かすか 裕子

酔眼選
告げぬ恋ただサクサクとかき氷 桂
撫肩の咳ひつそりと水中花 利通
ブーゲンビリア藍深々と島の海 雅子

≪飛岡光枝選≫
【特選】
惜しみなく体預けてヨット行く 都

自分の体ひとつで操縦するヨット。句はその様子をしっかり描き、波を蹴って疾走するヨットが目に浮かびます。「惜しみなく」にヨットと一体化するという思いが伝わります。原句の「惜しみなく体重預けヨット行く」は体重をかけて操るという、より側物的な句となります。

花かぼちや噂話の長々と 良子

軽い噂話の楽しさ。季語「花かぼちや」が上手い。原句「花かぼちや噂話をしつつ行く」でも様子はわかりますが、散文的でパンチに欠けるでしょうか。

【入選】
朝顔や笛工房は路地の奥 良子

「笛工房」とあると、その涼し気な音色が思われます。

大花火日本の空にナイアガラ 涼子

中七下五の思い切りが一句を大きくしました。原句の上五「花火の夜」は、説明になってしまったのが残念。

告げぬ恋ただサクサクとかき氷 桂

「ただ」が全体の説明になってしまったのが惜しい。消す工夫をしてみましょう。「告げぬ恋匙サクサクとかき氷」などなど。

噴水に疲れみえけり午後三時 すみえ

午後三時が絶妙。噴水は同じように上がっているのに。原句は「噴水に疲れみえたり午後三時」。

灼熱化山椒魚の動き出す 光尾

温暖化どころではなく、灼熱化でさすがの山椒魚も動く。原句は「灼熱化山椒魚も動き出す」。

背泳やそのまま地球の裏側へ 隆子

海での背泳ぎでしょうか。まるで海を背負って泳いでいるような、季語を大きく捉えた夏らしい一句。原句は「背泳のそのまま星の裏側へ」。

怖いなあ夏は稲川淳二かな 酔眼

何十年もテレビで見ない夏はありませんでした。原句は「怖いなあ……季語は……稲川淳二かな」。

撫肩の咳ひつそりと水中花 利通

水中花をそっと見ている様子がよく描かれています。

雲の子はあれよあれよと雲の峰 すみえ

ぐんぐん育つ夏雲。「雲の子のあれよあれよと雲の峰」もある。

ブーゲンビリア藍深々と島の海 雅子

よく描かれていますが、少々単純でしょうか。今一歩深く。

起し絵やがたんごとんと都電ゆく 裕子

起し絵の中の懐かしい風景。原句は「都電の通りし街は起こし絵の中」ですが、言葉が多くごちゃついてしまいました。

☆次回の「ネット句会」は10月です。みなさまどうぞお元気で、ますますのご健吟を!光枝

ネット句会(8月)投句一覧

caffe kigosai 投稿日:2022年8月2日 作成者: mitsue2022年8月2日

8月の「ネット句会」の投句一覧です。
参加者は(投句一覧)から3句を選び、このサイトの横にある「ネット句会」欄(「カフェネット投句」欄ではなく、その下にある「ネット句会」欄へお願いします)に番号と俳句を記入して送信してください。
(「ネット句会」欄にも同じ投句一覧があります。それをコピーして欄に張り付けると確実です)

選句締め切りは8月4日(木)です。後日、互選と店長(飛岡光枝)の選をサイトにアップします。(店長)

(投句一覧)
1 朝顔や笛工房は路地の奥
2 燕の子初めての天怖るるな
3 仲見世のあかりの中へ初浴衣
4 この星の巨大クレーター原爆忌
5 早起きの朝顔に空晴れわたり
6 天使魚永遠に夜をひるがへる
7 戦争のニュースに慣れて蚊遣かな
8 一時の華やぎとなれサングラス
9 納涼バスお台場の海突き抜けて
10 惜しみなく体重預けヨット行く
11 花火の夜日本の空にナイアガラ
12 告げぬ恋ただサクサクとかき氷
13 噴水に疲れみえたり午後三時
14 緑の葉付けて供さる新生姜
15 大南風洗濯もののフラメンコ
16 木漏れ日にけんけん遊び汗の子ら
17 進んではすこし流され水馬
18 灼熱化山椒魚も動き出す
19 山ひとつ氷室蔵して静かなり
20 風死すか台北街のアーケード
21 背泳のそのまま星の裏側へ
22 炎天の橋を渡れば秋かすか
23 片蔭やアイコンタクト道譲る
24 海山がきそうて誇る日焼の子
25 ブーゲンビリア影まき散らし風の中
26 男水たたら踏みして滝轟轟
27 怖いなあ……季語は……稲川淳二かな
28 ブーゲンビリア咲ひて南国日和かな
29 花かぼちや噂話をしつつ行く
30 撫肩の咳ひつそりと水中花
31 青幻の母芭蕉布の紡ぎ唄
32 雲の子はあれよあれよと雲の峰
33 マルエフと頼むランチョン生ビール
34 水草の陰を伸び伸びイモリかな
35 ブーゲンビリア藍深々と島の海
36 都電の通りし街は起こし絵の中

「カフェきごさい」ネット句会(8月)のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2022年7月29日 作成者: mitsue2022年7月30日

三年ぶりに開かれた「祇園祭句会」で京都を訪れました。極力人混みを避けるため、遠くから祇園囃子を聞いていましたが、祭りの街の熱気が伝わる熱い(暑い)京都でした。

「カフェきごさい」ネット句会8月の締切は8月1日(月)です。どなたでも参加可能です。サイトの「ネット句会」欄から3句ご投句ください。

・このサイトの右側に出ている「ネット句会」欄より、3句を投句ください。

・8月2日中にサイトへ投句一覧をアップしますので、8月4日までに参加者は3句を選び、投句と同じ方法で選句をお送りください。

・後日、参加者の互選と店長・飛岡光枝の選をこのサイトへアップいたします。

夏の「ネット句会」、みなさまの力作をお待ちしています。(店長)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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