↓
 

caffe kigosai

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」六月

caffe kigosai 投稿日:2022年7月28日 作成者: mitsue2022年7月28日

新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい」句会。今月の兼題はサイトより六月の季語「梅の実」、花「芍薬」、江戸の味「飛魚のくさや」です。

【特選】
飛び魚や海も空もおのがもの  和子

胸をはって大空を飛ぶ飛魚の心意気(!)を感じさせる爽快な一句。中七(六)の字足らずが勢いに欠けるので工夫したいところ。「大海も空も我がもの飛魚かな」など。

【入選】
定年の男手帳に梅仕事  勇美

梅干しや梅酒を作る作業全般をさす「梅仕事」という言葉は、ここ数年テレビなどでもよく耳にするようになりました。歳時記にはまだ載っていないと思いますが、もう載ってもいいかもしれません。そのためには歳時記に載るような名句が必要(!?)。句は定年を迎えた男性を少しからかっています。現役時代の癖でまだまだ手帳が手放せない様子。手帳に呼応する「仕事」が活きています。

縦走の足に優しきチングルマ  和子

長い尾根歩きで疲れた足とチングルマを詠んでいます。中七は少々無理があり伝わりにくいのではないでしょうか。しっかり伝わる表現を工夫したいところ。「縦走の靴の重たしチングルマ」など。

しなやかにゴーヤ伸びゆく校舎かな  勇美

「校舎かな」とした俳句の形は立派ですが、「しなやかに」がこの句の場合は弱い。色々置けますので、中七下五がより活きる言葉を探してみてください。

来し方のやがて煌めくなめくぢり  勇美

「やがて」が句を間延びさせてしまっているのが惜しいですが、「煌めく」は思いきりました。阿波野青畝に「来しかたを斯くもてらてらなめくぢら」があります。

東京に生まれ育ちて飛魚とぶ  光枝

 

カフェきごさい「ネット投句」7月 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年7月24日 作成者: mitsue2022年7月24日

【入選】
異界へと誘ふ宵闇さるをがせ  和子

針葉樹林に垂れ下がる様子が独特のさるおがせ。風にゆれる様を眺めていると、いつの間にか何処かへ連れ去られそうです。原句は「異界へと誘う宵闇サルオガセ」。

荒梅雨や道に川あり谷のあり  和子

原句は「梅雨荒れぬ道に川あり谷もあり」ですが、散文的で言葉が流れてしまっているのが残念。言葉をよりしっかりと印象的に置いてみましょう。

浪速の味 江戸の味(八月)谷中生姜【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年7月21日 作成者: mitsue2022年7月22日

東南アジア原産といわれる生姜は、その栽培、収穫方法から根生姜、葉生姜、矢生姜に分類されます。通年出回るのは秋に収穫する根生姜で、辛味が強く薬味に適しており、根生姜を初夏に収穫する新生姜は、筋が少なく生食に適しています。

葉生姜は、根茎が小指程度の大きさの時に葉を付けて収穫されます。味噌をつけて生食したり、料理の付け合わせ、甘酢漬けなどにして楽しみます。

葉生姜の一種「谷中生姜」は、江戸時代から谷中本村(現在の東京都荒川区西日暮里付近)で栽培されていました。かの地で栽培が盛んになったのは、水に恵まれ、排水も良く、西日に当たらないという、葉生姜の栽培に適した土地だったからと言われています。関東ローム層の黒土も生姜栽培に適していたようです。

谷中本村で栽培された葉生姜は筋がなく香りも良いので、お盆の贈答品としても使われました。ちなみに江戸っ子は「谷中生姜」を「盆生姜」と呼び、夏の食欲増進によく食べたそうです。

東京都港区の芝大神宮の秋祭りには、境内で「谷中生姜」が売られ、そこの「生姜市」は秋の季語になっています。江戸時代には、二町四方に盛られた生姜の山が三日のうちに売り尽くされたほど賑わったそうです。

谷中での生姜栽培は、都市化が進んだ昭和には各地へ移り、現在都内で売られている「谷中生姜」は千葉県産が多いようです。

居酒屋などで品書きに「やなか」とあれば、「谷中生姜」に味噌などが添えられた一品。青々とした葉を従え、うっすら紅をさした「やなか」をつまみに、暑気払いといきましょうか。

谷中生姜青々と葉のはみ出せる 光枝

今月の季語(八月) 秋果

caffe kigosai 投稿日:2022年7月20日 作成者: masako2022年7月21日

立秋を過ぎると暑さを〈残暑〉と呼び、いつまでも続く暑さを〈残暑見舞〉で労りあいます。夏の暑さより、秋の残暑がしんどいのは、疲労が累積してくるからでしょう。

ですが夏のまっとう暑さがそのあとに出回る果実を甘くみずみずしく育て、残暑に喘ぐ喉を潤してくれます。秋の果実をおいしくいただくことも、自然の巡りに身を委ねることなのかもしれません。

秋果盛る灯にさだまりて遺影はや                       飯田龍太

〈秋果〉は秋の果実類の総称です。実際には個々の名前を季語として詠むことが圧倒的に多いです。具体的に見ていきましょう。

まず夏ではなく秋の季語だと知って驚く代表として〈西瓜〉。果物か野菜か問題は脇へ置くことにしましょう。

風呂敷のうすくて西瓜まんまるし           右城暮石

泣いてをり肘に西瓜の種をつけ               中嶋鬼谷

風呂敷に包んだ西瓜は手土産でしょうか。切り分けていない西瓜を見ることのほうが少なくなった昨今です。後句は誰にも覚えがあるでしょう。結局泣くのだから喧嘩しなければいいのに、と思うのは大人になってしまったからですね。

〈桃〉も「え、秋?」といわれる確率が高いです。種類が多く、早くから出回るからでしょう。

妻告ぐる胎児は白桃ほどの重さ               有馬朗人

指ふれしところ見えねど桃腐る               津田清子

ほら、今このくらい、と妻から白桃を手渡され、初めて父たることを実感した作者かもしれません。また桃はデリケートな果物です。傷みやすいこともあって、貴重品のように扱います。

葡萄食ふ一語一語の如くにて                   中村草田男

昨今は南半球の葡萄が春のころから店頭に並びますが、日本とは季節が逆であることを考えれば、やはり葡萄は秋のものでしょう。

勉強部屋覗くつもりの梨を剝く               山田弘子

水分たっぷりで、剝いてあれば手も汚さず食べられて、子どもの様子を見に行くにはぴったりの果実かもしれません。

よろよろと棹がのぼりて柿挟む               高浜虚子

柿うましそれぞれが良き名を持ちて       細谷喨々

柿も品種の多い果実です。渋柿が圧倒的に多いですが、渋を抜かずに食べられる柿がこの時期には詠まれているようです。棹を伸ばしているのは近所の悪童どもでしょうか。

星空へ店より林檎あふれをり                   橋本多佳子

空は太初の青さ妻より林檎うく               中村草田男

保管技術が進み、ほぼ年中食べられるようになりましたが、穫れたてのみずみずしさは秋のものでしょう。星空も青空も秋の高く澄んだ空です。

栗の毬割れて青空定まれり                       福田甲子雄

胡桃割る胡桃の中に使はぬ部屋               鷹羽狩行

甲子雄は山梨の人。栗が熟すころに、盆地の空は高い秋の空になるのでしょう。狩行の句は、向田邦子のエッセイにも登場します。発表当時を私は知りませんが、話題になったのかもしれません。

実石榴を割れば胎蔵曼陀羅図                 木内彰志

いちじくを割るむらさきの母を割る       黒田杏子

石榴や無花果は流通に乗りにくいのか、メジャーとは言い難い存在ですが、コアなファンがいる果実です。

蜜柑はまだ青いです(青蜜柑=秋/蜜柑=冬)が、柚子、酢橘、金柑、檸檬、……柑橘類が次々に旬を迎えます。柑橘好きの私としては、垂涎の季節の到来です。(正子)

 

今月の花(八月)ブーゲンビリア

caffe kigosai 投稿日:2022年7月18日 作成者: koka2022年7月18日

蔓状の枝に小さな花をたくさんつけるブーゲンビリア(ブーゲンヴィレア)を身近で楽しもうとしても、東京ではワイヤーで組まれた土台に蔓が巻かれた鉢植えを買ってくるのがせいぜいです。

花といいましたが、じつは三枚の花びらのようなものは苞(ほう)です。それぞれの苞の元から出ている筒状の先の白いものが本当の花なのです。葉は先のとがった楕円形で蔓には棘があり、切るとすぐにしおれるので作品として長くいけておくのは困難です。

日本でも南、それも沖縄までいけば、ピンク、赤、白、黄色、オレンジ、赤紫、白にピンクのはいったものなど、華やかなブーゲンビリアが見事な放物線を描き、競い合うようにその美しさを見せています。

今では世界各地で栽培されていますが、ブーゲンビリアの原産地は中南米です。中米メキシコの首都メキシコシティでは女流画家のフリーダ・カーロの住んでいた家の、独特のブルーに塗られた塀からその色に負けない鮮やかなピンクの苞をつけた枝をのぞかせていました。

政情不安なパキスタンに行ったときは、舗装をしていない道の傍で、行き交う車の埃の中、黄色い苞をつけた枝が揺れていました。

ブーゲンビリアのこのうえもなく冴えた色に出合ったのは、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーの青い空の下でした。あの色は土の性質によるのか、あふれる光のせいなのでしょうか。

この海域にはブーゲンビル島という島があります。この島を訪れたフランス人の探検家ブーガンヴィュ(1729-1811)にちなんで、ブーゲンビル島と名付けるられたといわれています。植物のブーゲンビリアはそのブーガンヴィュがブラジルにいった時、同行の植物学者が珍しいこの木を発見、属名にその名をつけ、それがブーゲンビリアをさすようになったということです。

パプアニューギニアとその近海は、第二次世界大戦では日本と連合軍との激しい戦闘の中におかれました。今も日本から慰霊の旅行団を迎えるこの国で、ブーゲンビリアは、ここで散っていった幾多の魂に深い鎮魂の思いとともに、命の意味と重さを問いながら瑞々しく鮮やかな色で咲き続けていくに違いありません。
(以上は、2014年8月の「今月の花 ブーゲンビリア」に加筆修正したものです)

この話を書いた後、夏になると近所の道に園芸用品の緑の棒をくみ上げたブーゲンビリアの小さな棚が出現。その華やかな色合いが太陽の光に揺れている様子を楽しんできました。

先日、アフリカの日本大使館にいる門下からメールがありました。今回の元総理の事件で弔問においでの地元名士の方も多いとのこと。「花屋さんから白薔薇と白百合は入手できるけれど、薔薇は棘があるから黒枠のお写真のそばには使えませんよね」と聞いてきました。「白いブーゲンビリアならたくさんありますけれど、もちませんし」とも。ブーゲンビリアは切ってすぐに水の中に入れてもどんどん萎れていきます。百合だけでもいいのではとアドバイスをしましたが、白いブーゲンビリアは公邸の庭にあるので、萎れたらすぐ庭から切ることになったようです。

パプアニューギニアにしても、今回の白いブーゲンビリアにしても、人が人を殺める、その慰霊の場面でこの花が使われることを残念に思います。

華かな色を振りかざすような丈の長いブーゲンビリアが元気に風に揺れてているところを見ると、これ以上ブーゲンビリアに悲しい思い出のイメージを重ねてほしくないと思います。次に見るときは楽しい陽気な場面でと願うのです。(光加)

新刊絵本のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2022年7月2日 作成者: mitsue2022年7月3日

こどものとも012 
「なぜ なくの?」  杜今日子:作(福音館書店)定価440円

「カフェきごさい 花仙の会」で美しい墨書を披露してくださっている日本画家杜今日子さんの新作絵本『なぜ なくの?』が刊行されました。「こねこが ミャア ミャア なぜ なくの?」呼びかけるようなことばと生き生きした子猫の絵に惹かれてページをめくると・・・。かわいらしい動物がつぎつぎと登場する、子どもと会話しながら親子で楽しめる一冊です。ぜひご覧ください。(店長)

カフェきごさい「ネット投句 6月」 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年6月30日 作成者: mitsue2022年6月30日

【特選】
一輪の余花の白さよ山深く  和子

山道で思いがけなく出会った、咲き残る花への驚きと懐かしさ。「一輪」「白さ」が秀逸。原句は「一輪の余花の白さよ山深し」。

【入選】
飛魚の羽の光るや防波堤  裕子

防波堤から飛魚の飛ぶ遥かな海を臨んでいるのでしょうか。夏の波のきらめきと、飛魚の羽のきらめきと。原句は「飛び魚や羽光るるは防波堤」。

紫陽花の川と流るる電車道  和子

走る電車の中から沿道の紫陽花を眺めているのでしょう。とりどりの色が混ざり合い流れていくという、動きのある紫陽花の句は新鮮。ごちゃごちゃしそうな内容が、思い切った言葉の運びですっきりした一句になりました。

砲声の響く湖霧深し  和子

砲声も湖も霧のなかに溶け込んでいく、現代の不安感をも感じさせる一句。原句は「砲声の響く湖夏の霧」。実景は原句通りなのだと思いますが、作品に仕上げる段階で「夏」が季語として効いているかどうかを考えたいところです。

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい吟行句会」五月

caffe kigosai 投稿日:2022年6月29日 作成者: mitsue2022年6月29日

新宿朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。五月は数年ぶりに「新宿御苑」での吟行句会を行いました。初夏の爆発するような緑のなか、泰山木、薔薇の花に出会いました。

【特選】
とりどりの薔薇と競つて花帽子  勇美

イギリスの競馬場の一場面のよう。薔薇の花の間を浮き沈みしながら行く花帽子が見えるようです。原句は「とりどりの薔薇と競ひて花帽子」。

蛇の衣のこして父は逝きたまふ  勇美

箪笥に入れておくと服にこまらない、財布に入れておくとお金が貯まると言われる蛇の衣(抜け殻)。遺品整理の折でしょうか、父上が仕舞っておいた蛇の衣が。身近にいる人でも、実はその思いはよくわからないもの。「蛇の衣」という少し不気味な存在感が活きた一句です。原句は「蛇の衣のこして父の逝きたまふ」。吟行の折、高い木にぶらさがる蛇の衣を見つけました。

【入選】
ひとときの風を楽しみ黒揚羽  和子

夏の蝶、黒揚羽ならではの堂々とした存在感。

ご長寿が木陰で昼のビールかな  勇美

美味しそうなビールですが、上から下まで散文のように述べてしまったのが残念。「木の陰で昼のビールや寿」など。

新緑や今が一番いい二人  裕子

若い恋人同士でしょうか。老婆心ながらというところですが、目に染みるような新緑に託す思いが感じられます。原句は「新緑よ今が一番いい二人」。

目を閉じて若葉のうねり海に似て  裕子

初夏の緑に身をまかせる作者。思いが句に収まりきっていないのが残念。「目を閉じて若葉のうねる海のなか」など。

ビー玉の中に逆さの虹かかる  勇美

ビー玉の中の光は句材として新しくはありませんが、情景をしっかり言葉で表現できています。原句は「ビー玉の中に逆さの夏の虹」。この句の場合は、夏の季語にあえて夏はいりません。

風の色仄かに見ゆる蛇の衣  和子

「風の色」で切れるのか、「仄かに見ゆる」で切れるのかが曖昧。仄かに見えるのが風の色なのか、蛇の衣なのかをしっかり描きましょう。

泰山木ここにありとぞ花開く  和子

泰山木の大きな花が空で見得を切っているようです。泰山木ならではの一句。

松の芯ドコモタワーを遠景に  勇美

新宿御苑の森の向こうに、松の芯のように尖るドコモタワー。

蛇いちご遠いむかしの帰り道  光枝

浪速の味 江戸の味 7月【鱧鮓】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2022年6月22日 作成者: youko2022年6月27日

今年は祇園祭の山鉾巡行、天神祭の陸渡御、船渡御も行われるので、コロナ禍で神事のみとなっていた関西の夏の祭に本来の賑わいがもどってきそうです。あまり密にならぬようにと思いつつもやはり、熱気に包まれた祭は心躍ります。

祭鱧とよばれるくらい、関西の夏祭に鱧は欠かせません。夏が旬の白身の魚で、全長1メートルの円筒状で、口が大きくのこぎり状の歯を持ち、かみつきます。「食む(はむ)」がなまってはもになったとも言われます。小骨が身と皮の間に斜めに入り込んでいるので、鱧切り包丁で、小骨を切っていきます。

成分は鰻に似ていて、白身魚にしては脂肪含有量が多い旬の鱧は、照り焼き、天ぷら、湯びき鱧などどのように料理してもおいしいのですが、お勧めは「鱧鮓」です。照り焼きの鱧をのせた棒鮓を食べやすく切り分けたものです。甘辛いタレをつけて焼いた鱧と鮓飯がよく合います。祭見物の最中に手軽に食べられますし、箱に入った鱧鮓はみやげにも重宝します。

祇園祭や天神祭の思い出に登場するまさに祭鱧の料理だと思います。写真の鱧鮓は創業300年を超える大阪鮓の「すし萬」の鱧鮓です。大阪鮓と言えば箱鮓で、一手間かけた魚が鮓飯と一体となり風味を増します。見た目はそれこそ宝石箱のようです。鱧鮓は棒鮓で、鱧と鮓飯の間に山椒の実が少々。この山椒の実が食欲を増進させます。鱧は鰻より淡泊で、骨切りしてあるので炙ると身が開きます。ごつとした風味が暑気払いにもよさそうです。

鱧鮓や三年ぶりの渡御を見に   洋子

今月の花(七月)ひまわり

caffe kigosai 投稿日:2022年6月21日 作成者: koka2022年6月30日

マケドニアのひまわり

マケドニアの詩祭でいけたひまわりの花。マケドニアはアレクサンダー大王を輩出した地域です。この国は1991年、時のユーゴスラビアから血を流さず独立したのですが、歴史をみれば国境も支配者もよく変わる不安定な国と言わざるを得ません。独立まもない1996年、その年の優れた詩人に与えられる金冠賞の授与式が大統領も出席し国をあげて華々しく行われることに驚きました。

受賞者で旧知の大岡信さんと奥様が到着する前、私は授賞式が行われるストル―ガの古い教会の中に花をいけることになっていました。町で1~2軒しかない花屋は品質管理は十分とはいえず、花の種類も限られていました。前もって注文していた赤の小さなアンスリウムだけは10本手に入れることができました。森でも作品の骨格となる木や枝を切らせてもらったのですが、華やかな席での作品としてはそれだけでは色が足りません。

詩祭委員の一人が背の高いお嬢さんを私の助手にと紹介してくれました。オーストラリアに家族で数年住んだことがある18歳は長い金髪にハート型の顔、物憂げな表情はどこかボッティチェリの春の女神に似ていました。周りに英語の通じる人がいなかった私はほっとしました。「お祝いなので鮮やかな色の花を集めたいの」と言うと、彼女は「この季節はどこでも花は咲いているから歩いてみましょう」。この春の女神にいざなわれ、歩き出しました。すると、一軒の家の庭に私の背の高さのひまわりが何本もたくさんの花をつけてゆらりとゆれていたのです。

知っている家ではないけれどと言いながら彼女は簡単な木の柵を入っていき、出てきた家主はすんなりと花を切らせてくれました。そのひまわりはいかにも手入れをされていないまま、澄みきった空気の中でのびのび育ったいずれも15センチもあろうかという大輪で、太い茎は薄緑、葉は柔らかな光を受け、下には次々と開きそうな蕾が続いていました。数本手にしてみればゴッホの描いたひまわりの逞しさに重なるものがありました。新鮮なひまわりたちは個性と生命力にあふれ、教会の作品の中にいけると薄暗い空間が赤のアンスリウムを伴って光が灯されたようでした。

後にマケドニアは国名が北マケドニアになりました。金冠賞は今でも続いています。喜びの花として飾られたひまわりを懐かしく思い出します。
(以上は、2019年7月の「今月の花 ひまわり」を加筆修正したものです)

前述の文を書いたのはわずか3年前。今の私には、この季節に見かけるひまわりの黄色が心にしみます。

ウクライナを思って花をいけるときに使われるのが国旗の色であるブルーと黄色の花たち。ブルーは花器で代用することも、また青いデルフィニウムなどを使うこともあります。この季節は黄色の花は手に入りやすいひまわりであることが多いのです。

このところ1970年封切りの「ひまわり」という映画がにわかに脚光を浴びています。マルチェロ・マストロヤンニとソフィア・ローレンの演じた戦争で引き裂かれた夫婦の話です。若いころ私も見てジーンときたのを思い出します。中でもひまわり畑の中を歩くソフィア・ローレンの姿が目に焼き付いています。

陽を浴びて一面に花を咲かせるひまわり畑の前で土地の人が言います。その下にはたくさんの人たちが眠っている。戦争で犠牲になった兵士たちだけでなく一般の人や子どもたち、捕虜など。ゆれるひまわりがその一人一人の魂の様に見え、反戦映画の代表作の一つとなっています。後にそのロケ地はウクライナと聞きました。

ウクライナの国花は「ひまわり」。ロシアの国花は「かみつれ」、そしてウクライナと同じく「ひまわり」でもあるのです。種の縞が特徴のたくましいこの花に国境はありません。真の平和が訪れ、ひまわりが二つの国に美しく咲き誇る日々が一日でも早いことを願ってやみません。(光加)

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2026 - caffe kigosai
↑