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今月の季語〈一月〉 冬の星

caffe kigosai 投稿日:2021年12月15日 作成者: masako2021年12月18日

冬期は天体観測に絶好と寝袋を担いで出かける方がおられます。私自身はからっきし、ではありますが、俳句との関わりが、身近な動植物や行事に留まらず、天体への関心を押し広げてくれました。たとえ科学的とはいえなくても、それがその人の味になり得る、くらいの開き直りでもって、お好きな方も、それほどでない方も夜空を仰いでみませんか。

ことごとく未踏なりけり冬の星    高柳克弘

俳句の場合、月は別枠で考えますから、たしかに人類が足を下ろした星はありません。ですがこの句は、そういう客観的な事実を伝えているのではなく、作者自身がどの星も未だ踏んでいない、一つずつ踏んでいきたいと念じながら仰いでいるのでしょう。踏む対象として星をとらえたことがあったでしょうか。これは作者のこころざしでもありましょう。どこか、

怒濤岩を嚙む我を神かと朧の夜    高浜虚子

に通ずるものを感じます。

ゆびさして寒星一つづつ生かす    上田五千石

この句もまた若い気概に満ちています。第一句集『田園』所収ですから、実際に作者の若いころの句ですが、心の持ちようは実年齢とは無関係と信じたいものです。

列柱に寒オリオンの三つの星     山口誓子

オリオンの真下に熱き稿起こす    小澤克己

オリオンの三つ星ならば、天体に疎くてもたやすく探せそうです。〈オリオン〉のみで冬の季語として使えます。

生きてあれ冬の北斗の柄の下に     加藤楸邨

同じく北斗七星も見つけやすい星座ですが、こちらは〈冬北斗〉〈寒北斗〉もしくは冬の季語と一緒に使う必要があります。

天狼やアインシュタインの世紀果つ   有馬朗人

〈天狼〉はおおいぬ座のシリウスのことです。冬の大三角形の一点でもあります。

昭和歌謡にもある〈昴〉も冬の季語です。「星はすばる」(『枕草子』二三九段)と、かの清少納言も記しています。一つの星ではなく、星団を成しており〈六連星(むつらぼし)〉と呼ばれもします。

遙かなるものの呼びこゑ寒昴      角川春樹

寒昴幼き星を従へて          角川照子

〈銀河〉〈天の川〉は秋の季語ですが、冬の夜空にも冴え冴えとかかっています。〈冬銀河〉です。

君寄らば音叉めく身よ冬銀河      藺草慶子

冬銀河掌の中の掌のやはらかし     大嶽青児

再びは生まれ来ぬ世か冬銀河      細見綾子

第一句は相聞の句。音叉は冴え冴えと佳き音を響かせそう。第二句は恋人どうしとも親子とも解せそうです。私はとっさに父の大きな掌を思い出しました。第三句は綾子晩年の一句。若さに溢れた句には胸がふくらみますし、年輪の厚みを思わせる句にはずんと胸を突かれます。

この年末年始、冬の星で人生を詠む、というのはいかがでしょうか。(正子)

カフェきごさい「ネット句会(12月)」互選+飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2021年12月7日 作成者: mitsue2021年12月7日

(連中)都 涼子 良子 桂 雅子 昌子 すみえ 弘道 光尾 裕子 眞理子 隆子 利道 光枝

≪互選≫
都選
暖房車膝の楽譜がすべり落つ  昌子
冬眠の蛇や土偶に絡みつき  桂  
異教徒もシャンパンを抜く聖夜かな  涼子
 
桂選
番傘に時雨華やぐ五条坂  昌子
始業ベル飛び込んでくる白き息  すみえ
花八つ手卒寿の姉のつつがなし  都

すみえ選
柿膾照葉を添へて盛られけり  裕子
ぴゆーと鳴る風も薬味よ葱鮪鍋  隆子
キティちゃんの長靴が踏む霜柱  雅子

良子選
番傘に時雨華やぐ五条坂  昌子
祢宜おらぬ村の神社に雪しまく  弘道
柿膾照葉を添へて盛られけり  裕子

裕子選
流行のスケッチャーズ履いて冬銀座  弘道
ぴゆーと鳴る風も薬味よ葱鮪鍋  隆子
ゴッホ展赤きベレーの木の葉髪  都

眞理子選
夜なべしてあの子この子に冬帽子  雅子
番傘に時雨華やぐ五条坂  昌子
パドックの出走馬はや息白し  都

涼子選
日時計のごとくに猫の日向ぼこ  光尾
寂聴の愛だ恋だの紅葉散る  眞理子
ぴゆーと鳴る風も薬味よ葱鮪鍋  隆子

弘道選
和箪笥の隠し引き出し日短  良子
日時計のごとくに猫の日向ぼこ  光尾
ぴゅーと鳴る風も薬味よ葱鮪鍋  隆子

昌子選
頬真っ赤空気すみずみまで凍る  眞理子
日おもてのなほ燃えている冬紅葉  隆子
小春日やロープウェーに海を見て  良子

雅子選
風狂の色なつかしや枯蟷螂  利通
日おもてのなほ燃えてゐる冬紅葉  隆子
寂聴の愛だ恋だの紅葉散る  眞理子

隆子選
日時計のごとくに猫の日向ぼこ  光尾
暖房車膝の楽譜がすべり落つ  昌子
山茶花や笑ひ出したる一樹あり  光枝

利通選
冬眠の蛇や土偶に絡みつき  桂
日時計のごとくに猫の日向ぼこ  光尾
和箪笥の隠し引出し日短  良子

≪飛岡光枝選≫
【特選】
追ひかける見覚えのある冬帽子  良子

「異人たちとの夏」という山田太一の小説に、町中で亡き両親とすれ違うシーンがあります。句を読んだ時、その光景と重なりました。無くしてしまったものへの思いが滲む一句です。原句は「追ひかくる見覚えのある冬帽子」。

柿膾照葉一枚添へにけり  裕子

「紅葉」では普通ですが、「照葉」で鮮やかな句になりました。原句は「柿膾照葉を添へて盛られけり」ですが、動詞が多いと焦点が甘くなり、受身形は句が弱くなります。

ぴゆーと鳴る風も薬味よ葱鮪鍋  隆子

冷たい川風が熱々の葱鮪鍋をより美味しくします。江戸っ子のやせ我慢も感じさせます。

【入選】
夜更けてあの子この子に帽子編む  雅子

子供たちを思い描きながらの眠たいながらも楽しいひととき。原句は「夜なべしてあの子この子に冬帽子」。「夜なべ」は秋の季語。

亡き母の半纏羽織る霜の朝  光尾

霜の朝には頼もしい半纏。原句は「母の遺し半纏出番霜の朝」。よりシンプルに。

禰宜をらぬ村の神社に雪しまく  弘道

激しい雪のなか、しんとある神社が目に浮かびます。「に」が消えるとよりよい。原句は「禰宜おらぬ村の神社に雪しまく」。

杜氏来るもんぺ姿の母若く  利通

ふるさとでの思い出の光景でしょうか。心の中のご母堂はいつも若い。原句は「杜氏来るもんぺ姿の母若し」。

水鳥や二羽の相寄る沼日和  すみえ

穏やかな水辺の様子が、過不足ない言葉運びで静かに心に浮かび上がります。

寂聴の愛だ恋だの紅葉散る  眞理子

「紅葉散る」がいい。

キティちゃん長靴が踏む霜柱  雅子

霜柱を踏むという句は山とありますが、キティちゃんの長靴だけを描いたのがよかった。

パドックの出走馬はや息白し  都

「はや」は、白息ではなく激しい白息ではないでしょうか。表現したいこと(もの)を的確にことばにしたい。「息白く太しパドック出走馬」など、ご一考を。

「ネット句会」12月 投句一覧

caffe kigosai 投稿日:2021年12月2日 作成者: mitsue2021年12月3日

12月「ネット句会」の投句一覧です。
参加者は【投句一覧】から3句を選び、このサイトの横にある「ネット句会」欄(「カフェネット投句」欄ではなく、その下にある「ネット句会」欄へお願いします)に番号と俳句を記入して送信してください。
(「ネット句会」欄にも同じ投句一覧があります。それをコピーして欄に張り付けると楽です)

選句締め切りは12月4日(土)です。みなさんの選と店長(飛岡光枝)の選はこのサイトにアップします。(店長)

・43~45の句が漏れていました。失礼しました。すでに選句いただいた方も変更可能ですので、ネット句会欄から再度選をお送りください。(12月3日 店長)

(投句一覧)
1 凩や思ひの丈を叫びつつ
2 和箪笥の隠し引出し日短
3 流行のスケッチャーズ履いて冬銀座
4 裏窓に漏れ来るファドや冬?
5 落ち葉焚く一年のこと皆捨てて
6 野良猫の三毛の親子や時雨くる
7 夜の森哀れキーンと鳴く狐
8 夜なべしてあの子この子に冬帽子
9 頬真っ赤空気すみずみまで凍る
10 母の遺し半纏出番霜の朝
11 風狂の色なつかしや枯蟷螂
12 番傘に時雨華やぐ五条坂
13 禰宜おらぬ村の神社に雪しまく
14 日時計のごとくに猫の日向ぼこ
15 日向より日向へ一羽尾長鴨
16 日おもてのなほ燃えてゐる冬紅葉
17 読みかけの小説抱へ寒林へ
18 冬眠の蛇や土偶に絡みつき
19 杜氏来るもんぺ姿の母若し
20 追ひかくる見覚えのある冬帽子
21 暖房車膝の楽譜がすべり落つ
22 大間かと問うて叱られ葱鮪鍋
23 鯛焼きや尾をはね上げて町の角
24 雪もよひ砂場に残るミニパトカー
25 水鳥や二羽の相寄る沼日和
26 水鳥の静寂を愛す日の芝生
27 小春日やロープウェーに海を見て
28 寂聴の愛だ恋だの紅葉散る
29 始業ベル飛び込んでくる白き息
30 山茶花や笑ひ出したる一樹あり
31 鯨より吾飲込まれ覚めにけり
32 銀杏落葉くるくる舞いて街は黄に
33 極月やちんちくりんの髪になる
34 寒菊や夕富士すくと立ちにけり
35 柿膾照葉を添へて盛られけり
36 柿ひと葉快晴微風力尽く
37 異教徒もシャンパンを抜く聖夜かな
38 ぺちやくちやと話のつきぬ囲炉裏かな
39 ぴゆーと鳴る風も薬味よ葱鮪鍋
40 どこからか鍬振る音や今朝の冬
41 キティちゃんの長靴が踏む霜柱
42 ウイルスは地球の一部冬の星
43花八手卒寿の姉のつつがなし
44パドックの出走馬はや息白し
45ゴッホ展赤きベレーの木の葉髪

カフェきごさい「ネット句会」12月のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2021年11月28日 作成者: mitsue2021年11月28日

☆「ネット句会」専用の投句欄ができました☆

カフェきごさい「ネット句会」は、どなたでも参加自由です。12月の投句締切りは12月1日(水)です。(お知らせが遅くなりましたので、1日締切りとします)

・このサイトの右側に出ている「ネット句会」欄より、12月1日までに3句を投句ください。

・12月2日中にサイトへ投句一覧をアップしますので、12月4日までに参加者は3句を選び、投句と同じ方法で選句をお送りください。

・後日、参加者の互選と店長・飛岡光枝の選をこのサイトへアップいたします。

・「ネット句会」欄を設けましたので、投句、選句ともそちらへお送りください。

二十四節気「小雪」が過ぎ、各地の雪の便りも聞こえてきました。東京もコートの襟を立てるような風が吹くようになりました。今年最後のネット句会、力作をお待ちしています。(光枝)

カフェきごさい「ネット投句」十一月 飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2021年11月24日 作成者: mitsue2021年11月24日

【入選】
冬菊や弁天様の鈴鳴らす  裕子

冬の日に輝くように咲く菊に見守られながらの弁天様参り。音が登場して世界がより開けました。

秋蝶の手すりに二匹二月堂  弘道

秋蝶の静かな様子。原句の「秋蝶や手すりに二匹二月堂」でも結構ですが、句の内容に沿うと切れが強すぎないほうがいい。

夕陽呑む一瞬煌めき雪の富士  和子

冠雪ごと夕陽に輝く富士の山。原句は「夕陽呑む一瞬の煌めき雪の富士」。

寒菊の伸びはうだいを一括り  涼子

動物を捕まえる時のような描写が愉快。寒菊の生命力を感じます。

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」十月

caffe kigosai 投稿日:2021年11月24日 作成者: mitsue2021年11月24日

新宿の朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、今月の季語「後の月」、花「蘇鉄の実」、浪速の味「秋鯖」です。

【特選】
億年の時の響きや蘇鉄の実  和子

太古からの植物、蘇鉄。毛で覆われたその実のしんとした佇まいは、はるかなる時間を感じさせる。原句は「万年の時の響きや蘇鉄の実」。

【入選】
公園の櫻吹雪に鳩も舞ふ  孝年

桜と鳩の乱舞。春たけなわの素直な喜びが感じられる。原句は「公園の櫻吹雪に鳩も舞い」。

この中に父母ゐるや赤とんぼ  弘道

赤とんぼに囲まれた秋の一日。原句は「この中に父母いるや赤とんぼ」。

コスモスを分けて仔犬の探しもの  勇美

コスモスの中をはしゃぎながら行く仔犬の散歩。「分けて」の一語でその様子がよく見える。

歳時記を開きしままに秋暮るる  弘道

その日が暮れると同時に、この年の秋も暮れていくという思い。

漆の葉押し合ひへし合ひ露並ぶ  和子

美しく色付いていく漆の葉の上の露。「漆」の一字が効いている。

夕空にうねる大魚や椋鳥の群  勇美

椋鳥の群のうごめく黒い影。原句は「夕空をうねる鯨や椋鳥の群」。鯨ではうねる感じがしない。

深川や小雨静かに秋に入る  守彦

句の調べが秋のしっとりとした空気を感じさせる。

団栗を食べてみたこと戦後の日  弘道

団栗の季節になると思い出すある時代。

星飛んで旅の終はりのあつけなく  涼子

人生の旅も同じやも。原句は「星飛んで旅の終はりのはかなさや」。

早々と夜着にくるまり十三夜  光枝

今月の花(十二月)冬紅葉

caffe kigosai 投稿日:2021年11月22日 作成者: koka2021年11月23日

「もう紅葉も終わりでしょう」という門下の話に、せめて名残の冬紅葉が見られるだけでもと期待した帯広でした。

地元はもちろん全国で有名なお菓子の店の本店に併設されたギャラリーで、私の門下のSさんが彼女の六人の生徒とともにいけばな展を開催することになりました。

Sさんは東京のいけばなの本部や私の教室にも時々勉強に上京。しかし、この二年近くはそれもかなわなかったのですが、事態が少し好転したのを見極め、展覧会の開催を決断しました。「こちらの花屋さんにある花材もこの季節になってくると大したものもないし、先生どうしましょう!」との電話に、一年ぶりに飛行機に乗り帯広に向かいました。

機体の降下がはじまると、わずかに黄色の葉をつけた樹々が視野に入り、せめて冬紅葉には出会えるかもしれないと少し希望がわいてきました。

今回のように目的がある時だけでなく休暇でもたびたびここ帯広に来るのは、実は私の好きな温泉があるからです。

モール温泉と呼ばれる独特の温泉で、同じ性質の温泉は今では他にも発見されましたが、初めは主に帯広を中心とする十勝地方とドイツの「バーデン バーデン」の周りが知られるだけでした。ちなみにバーデンとはドイツ語で温泉のこと。

北海道のこの地方の温泉は、アイヌの方たちが薬の沼と呼んでいたそうです。番茶色ではあるもののお湯は澄み、匂いがなく、時々白い一ミリ位のものが浮かんでいます。それは植物の化石が溶け出したものという説明が脱衣所にありました。

十勝地方には古くから葦などが生えていたようですが、それらの植物が長年の間に泥灰(moor=モール)の中で腐植物となり、その有機物質の層を通ってくるお湯はアルカリ性に近くじんわりと体が温まります。

見上げれば空っぽの梢を風が吹き抜けていきます。その代わり、足元には赤や黄色、茶色の色鮮やかな葉たちが厚みのある織物を拡げてくれます。手帳の中に一枚、しおりにと拾いはじめましたが、どの一枚をとっても個性的な色の配置で決めかねました。

この葉たちも土に帰っていき、何万年、いやもっとだろうか、やがてあの豊かなお湯を生む母体の層の一部となるのでしょうか。冷たい風の道を歩いていけば、永遠の端にちょっと触れてみたような、そんな思いに駆られる初冬の北国でした。(光加)

浪速の味 江戸の味(十二月)【てっちり】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2021年11月21日 作成者: youko2021年11月24日

鍋料理がおいしい季節となりました。大阪では、「ふぐ鍋」のことを「てっちり」と言います。

ふぐは内臓に猛毒をもつものが多く、「てつ」はふぐの異称「鉄砲」からきています。「あたったら死ぬ」ということです。「ちり」は、魚介、野菜、豆腐などを昆布だしで煮て、ポン酢醤油につけて食べる鍋料理の一つです。

新鮮なふぐを求めて、料理屋も一般の消費者も黒門市場に買い出しに行きます。黒門市場は、千日前の繁華街近くにある大阪を代表する市場で、150ほどの店が軒を並べています。いろいろある鮮魚店の中でも、ふぐの専門店が目につきます。

大阪の料理屋では、明治、大正のころから「てっちり」「てっさ」(ふぐの刺身)が冬の魚料理を代表するものになりました。鍋料理の中でも、「てっちり」は高級で、特別感があります。

ふぐをポン酢醤油で食べると、そのぷりぷりとした食感と、淡白ながら旨味がぎゅっとつまっていて「幸せ~」と食レポができそうなくらい笑顔になります。

 

てつちりや今日はええ日と言ひ合うて   洋子

 

今月の季語〈十二月〉 冬の月

caffe kigosai 投稿日:2021年11月17日 作成者: masako2021年11月18日

今年の秋は長雨と台風の影響であったのか、金木犀が二度に分けて香るという不思議な現象がありました。三度香った所もあったとか。山茶花も異様に早く咲き出しましたし、すべて人類の招いた温暖化に起因するのかと心が痛みます。そんな中にも、月だけは堪能できた秋でした。名月も後の月も天気には恵まれ、実に美しく仰ぐことができました。

この稿を書いている十一月八日は月と金星が大接近。このあと十日には土星に近づき、その後は木星に近づくのだとか。月蝕や流星群の観測もできますし、天体好きにはこの上ない季節の到来です。

立冬過ぎに仰ぐ月は〈冬の月〉です。

此木戸や錠のさゝれて冬の月     其角

この句が『猿蓑』に収められたときの経緯が『去来抄』に記されています。最初「此(この)木戸(きど)」が「柴(しばの)戸(と)」に読めてしまったのだとか。間違いに気付いた芭蕉は、これほどの名句は版木を彫り上げた後であっても修正すべきである、と改めさせたのだそうです。

冬の月かこみ輝き星数多        高木晴子

冬の月より放たれし星一つ       星野立子

月と星の取り合わせの句は、シーズン中の句会に一再ならず見かけます。先行句要チェックでしょう。

次に見し時は天心冬の月        稲畑汀子

秋のようにずっと外で仰ぐことはなく、思い出したように外に出ると月はもう触れられそうにないほど遠く高くに。

冬三日月わが形相の今いかに      鳴戸奈菜

霊寄せの冬満月の上り来ぬ       井上弘美

と月の形を示しながら詠むこともできます。

雪嶺に三日月の匕首飛べりけり     松本たかし

この句は月自体が季語になってはいませんが、「匕首」とは冬の三日月なればこそ。

〈月冴ゆ〉〈月凍る〉を用いることもできます。

月冴ゆる石に無数の奴隷の名      有馬朗人

月凍てて千曲犀川あふところ      福田蓼汀

月自体も冴え冴えとしていますが、視界も非情なほどに照らし出されています。

毟りたる一羽の羽毛寒月下       橋本多佳子

寒月やひとり渡れば長き橋       高柳重信

寒月下あにいもうとのやうに寝て    大木あまり

K音の響く〈寒月〉は耳にも寒い季語かもしれません。多佳子の句には、昼間は走り回っていた鶏が夕べに饗され、あとには……というエッセイがあります。重信の句は「ひとり」の影があまりにけざやか。孤心が募りゆきます。あまりの句の「あにいもうと」ではないふたりは夫婦でしょうか、恋人同士でしょうか。読者の数だけ鑑賞のしかたがありそうです。私は、心の寄り合うさまを思いますがいかがでしょう。

大寒の月光浴といふものを       黒田杏子

このときの月は寒満月と解してよいでしょう。三日月の匕首と同じく、季語の使い方の自在さを学びたいものです。(正子)

カフェきごさい「ネット投句」十月

caffe kigosai 投稿日:2021年10月27日 作成者: mitsue2021年10月28日

【入選】
萎れたるカンナの花を捨てに出る  弘道

存在感のあるカンナだけに、萎れた時の虚しさも大きい。

新走り比良山の水で作つたと  弘道

酒作りに水の取り合わせはよくありますが、「作つたと」が新酒を贈ってくれた人の言葉のようで秋の喜びが感じれらます。原句は「新走り比良の水で作つたと」。

秋深しずらりと並ぶ藁ぼつち  和子

雨風にさらされ日に日に色が深くなっていく藁ぼっちが目に浮かびます。原句は「藁ボツチずらり整列秋深し」。

後の月スープに豆をひとつまみ  涼子

豆名月に豆は付きすぎではありますが、供える豆をスープに仕立ててしまったようで愉快。

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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