↓
 

caffe kigosai

カテゴリーアーカイブ: 浪速の味 江戸の味

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

浪速の味 江戸の味(十月) 新豆腐〈大山豆腐〉【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年9月20日 作成者: mitsue2022年9月20日

 

山かけ豆腐 蒸豆腐 氷室豆腐

おぼろ豆腐

収穫されたばかりの新大豆で作る「新豆腐」は、甘みのある深い味わいが愛されてきました。日本各地に有名な豆腐がありますが、「大山詣り」で知られる神奈川県大山の名物「大山豆腐」もそのひとつです。

古くから山岳信仰の霊山である大山は、また、農民からは水を司る神として、漁民からは海からの目印として崇拝されてきました。山中の雨降山大山寺は奈良東大寺建立で知られる良辨僧正の開山と言われています。

江戸時代になると、大山では先導師と呼ばれた御師が、各地をまわって布教や大山講の結成に努め、宿泊場所の提供や案内を行いました。江戸の人口が爆発的に増えたことも参詣者の増加に拍車をかけ、江戸の人口が100万人の頃、年間20万人もが訪れたそうです。

そんな参詣客に振る舞われたのが、渓谷の清水で作られた「大山豆腐」です。豊富で清冽な水は、豆腐の保存にも適していたとか。毎年訪れた多くの江戸っ子が大山豆腐に舌鼓を打ち、江戸に戻ったのち大山詣りの土産話として語ったことでしょう。現在でも大山参道に並ぶ御師の宿坊では、工夫を凝らした様々な豆腐料理を味わうことができます。

大山は江戸市中から眺められ、道中手形不要で参詣できる身近な山でした。現在でも東京からの手軽なハイキングコースとして人気です。私が初めて大山に登ったのは高校の遠足、その頃は残念ながら豆腐料理にあまり魅力を感じませんでした。紅葉でも知られる大山の秋、ぜひ新豆腐を味わいに再訪したいと思います。

掌に乗せて掌にあまりけり新豆腐  光枝

浪速の味 江戸の味(9月)鷹の爪【浪速】

caffe kigosai 投稿日:2022年8月21日 作成者: youko2022年8月22日

暦の上では秋になりましたが、暑い日が続いています。幸い食欲が落ちることもなく、痩せることもなく過ごしていますが、夏バテ気味の方には、香辛料の効いた料理が食欲をそそるのでお勧めです。唐辛子はピリ辛料理には欠かせません。ナス科の一年草。熱帯アメリカ原産とされ、白い花の散った後の青い実が熟れてだんだん赤くなり、一面真っ赤になった唐辛子畑は壮観です。摘み取った唐辛子を干して保存できるようにします。

大阪府堺市の「堺市史」によると、堺市中区福田は、江戸時代から唐辛子の「鷹の爪」の一大生産地でした。実が小さく、先が尖った形が鷹の爪に似ているのでその名があるそうですが、平賀源内が72種の唐辛子について解説している中で、「食するにはこれを第一とすべし」と記述しているとのこと。

現在国内で流通している唐辛子はほとんどが外国産や他の品種です。約1%の国内産唐辛子の中でも、堺鷹の爪は日本に唯一残る一節に一つずつ実をつける純系品種です。3~4㎝の小ぶりな唐辛子ですが、外国産の約3倍の辛さがあり香りがよいのが特徴です。その特産品も摘み取りに手間がかかるため、農家が栽培をやめていったそうです。

このままでは、堺鷹の爪は作られなくなってしまうと危機感をもった生産者で販売もされる方が尽力され、交配で品種が変わらないよう完璧に管理された畑で栽培を続け、きびしい条件をクリアしなければならない「なにわ伝統野菜」として認証されるまでになりました。掲載した写真は「なにわ伝統野菜」に認証された折の報道資料です。一節に一つかわいい赤い実が天を向いてついています。

日本は食料の自給率が低く、外国産に依存していることは知っていたつもりでしたが、国産唐辛子がこれほど少ないとは思いませんでした。手間がかかり採算がとれないと、伝統ある特産品もだんだん作られなくなるという現実を消費者も知ることが大事だと思いました。堺鷹の爪の魅力を広く知ってもらえたらと思います。そして料理に利用してその味、香りを楽しみたいと思います。

ペペロンチーノ味の決め手は鷹の爪   洋子

浪速の味 江戸の味(八月)谷中生姜【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年7月21日 作成者: mitsue2022年7月22日

東南アジア原産といわれる生姜は、その栽培、収穫方法から根生姜、葉生姜、矢生姜に分類されます。通年出回るのは秋に収穫する根生姜で、辛味が強く薬味に適しており、根生姜を初夏に収穫する新生姜は、筋が少なく生食に適しています。

葉生姜は、根茎が小指程度の大きさの時に葉を付けて収穫されます。味噌をつけて生食したり、料理の付け合わせ、甘酢漬けなどにして楽しみます。

葉生姜の一種「谷中生姜」は、江戸時代から谷中本村(現在の東京都荒川区西日暮里付近)で栽培されていました。かの地で栽培が盛んになったのは、水に恵まれ、排水も良く、西日に当たらないという、葉生姜の栽培に適した土地だったからと言われています。関東ローム層の黒土も生姜栽培に適していたようです。

谷中本村で栽培された葉生姜は筋がなく香りも良いので、お盆の贈答品としても使われました。ちなみに江戸っ子は「谷中生姜」を「盆生姜」と呼び、夏の食欲増進によく食べたそうです。

東京都港区の芝大神宮の秋祭りには、境内で「谷中生姜」が売られ、そこの「生姜市」は秋の季語になっています。江戸時代には、二町四方に盛られた生姜の山が三日のうちに売り尽くされたほど賑わったそうです。

谷中での生姜栽培は、都市化が進んだ昭和には各地へ移り、現在都内で売られている「谷中生姜」は千葉県産が多いようです。

居酒屋などで品書きに「やなか」とあれば、「谷中生姜」に味噌などが添えられた一品。青々とした葉を従え、うっすら紅をさした「やなか」をつまみに、暑気払いといきましょうか。

谷中生姜青々と葉のはみ出せる 光枝

浪速の味 江戸の味 7月【鱧鮓】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2022年6月22日 作成者: youko2022年6月27日

今年は祇園祭の山鉾巡行、天神祭の陸渡御、船渡御も行われるので、コロナ禍で神事のみとなっていた関西の夏の祭に本来の賑わいがもどってきそうです。あまり密にならぬようにと思いつつもやはり、熱気に包まれた祭は心躍ります。

祭鱧とよばれるくらい、関西の夏祭に鱧は欠かせません。夏が旬の白身の魚で、全長1メートルの円筒状で、口が大きくのこぎり状の歯を持ち、かみつきます。「食む(はむ)」がなまってはもになったとも言われます。小骨が身と皮の間に斜めに入り込んでいるので、鱧切り包丁で、小骨を切っていきます。

成分は鰻に似ていて、白身魚にしては脂肪含有量が多い旬の鱧は、照り焼き、天ぷら、湯びき鱧などどのように料理してもおいしいのですが、お勧めは「鱧鮓」です。照り焼きの鱧をのせた棒鮓を食べやすく切り分けたものです。甘辛いタレをつけて焼いた鱧と鮓飯がよく合います。祭見物の最中に手軽に食べられますし、箱に入った鱧鮓はみやげにも重宝します。

祇園祭や天神祭の思い出に登場するまさに祭鱧の料理だと思います。写真の鱧鮓は創業300年を超える大阪鮓の「すし萬」の鱧鮓です。大阪鮓と言えば箱鮓で、一手間かけた魚が鮓飯と一体となり風味を増します。見た目はそれこそ宝石箱のようです。鱧鮓は棒鮓で、鱧と鮓飯の間に山椒の実が少々。この山椒の実が食欲を増進させます。鱧は鰻より淡泊で、骨切りしてあるので炙ると身が開きます。ごつとした風味が暑気払いにもよさそうです。

鱧鮓や三年ぶりの渡御を見に   洋子

浪速の味 江戸の味(六月) 飛魚のくさや〈江戸〉

caffe kigosai 投稿日:2022年5月23日 作成者: mitsue2022年5月23日

飛魚のくさや

夏の季語「飛魚」は季節回遊魚で、春先から夏にかけて日本付近へ北上し産卵します。世界で五十種ほどいるうちの三十種ほどが日本近海で確認され、各地で食料として親しまれています。

飛魚の特徴は何と言っても大きく発達した胸ビレでの滑空です。シイラなどの捕食から逃げるため、海面から2メートルくらい上を100~300メートルも飛び続けることができるそうです。沖縄で離島へ渡る途中、船の前を翔び続ける姿に驚いたことがあります。

この飛魚を、東京都の伊豆諸島、特に新島、八丈島などでは古くから「くさや」と呼ぶ干物に加工しています。江戸時代には献上品とされていたそうです。

「くさや」は、開いた魚を「くさや液」に八~二十時間ほど浸けてから水で洗い天日に干して作ります。当初、塩水に浸けた魚を干していましたが、塩が貴重なため、使った塩水を捨てずに塩を足して使ううち、液中に溶けた魚の成分に微生物が作用して「くさや液」が出来たとされています。

「くさや」はその名の通り、独特の匂いがあり好き嫌いが分かれる干物です。「くさや液」によって発酵した魚の独特のうま味は、ご飯のおかずや酒の肴として好む人も多く、八丈島では冠婚葬祭の席には欠かせないそうです。

私の両親は関西出身で、亡くなるまで納豆を口にしなかった父に対して、母は納豆も「くさや」も大好物です。台所で「くさや」を焼くと匂いが家中に漂ってきたのを思い出します。現在の都会では家庭で「くさや」を焼くのは少々難しいかもしれません。

夏の扉つぎつぎ開き飛魚とぶ 光枝 

浪速の味 江戸の味 5月「たこ焼」(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2022年4月21日 作成者: youko2022年4月24日

初夏にとれる蛸は、皮もやわらかくおいしい。明石の蛸が有名だが大阪湾和泉地域の蛸も人気だ。大阪市旭区や和泉市の遺跡から弥生時代のイイダコ壺が出土している。蛸は昔から身近な食べものだったようだ。

大阪の和泉、河内や関西圏の農村地域では、田植えをした時、稲の根が蛸の足のように大地に張りつくよう祈念するのと、梅雨明けの草取りが終わった時期(半夏生 7月2日ごろ)に蛸を食べて疲れを癒していたという。タウリンが大量に含まれているので疲労回復にぴったりである。刺身でも、煮つけでも、酢の物でも美味しく食べられる。

昭和30年頃から屋台店が街々に増えたのと、一家に一台と言われるたこ焼機の普及もあって、大阪と言えばたこ焼というくらいに蛸をつかった食べ物の代表となった。

大正から昭和にかけて「ちょぼ焼」「ラジオ焼」というものが流行していた。ちょぼ焼はハガキ大の鉄板に12個の穴が開いた道具にメリケン粉の溶いたものを流し、こんにゃくや干しえび、醤油を入れて焼くものだった。子どものおやつ的なものだったらしい。「ラジオ焼」は、すじ肉などを入れて焼いたものだった。その後、会津屋の遠藤氏が昭和10年頃、蛸を入れた「たこ焼」を発案したと言われている。現在のようにソースにマヨネーズ、青海苔などをかけて食べるようになったのは戦後のことである。(『大阪食文化大全』参照)

大阪の粉もの食文化の代表的な食べ物であるが、蛸の旨味があってこそだと思う。輸入された蛸が増えている中、大きめに切った明石や和泉地域の蛸を使って、家で焼くたこ焼きはちょっと贅沢な「なにわの味」である。

たこ焼に大きな蛸の浪速かな   洋子

浪速の味 江戸の味(四月) 桜えび【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年3月21日 作成者: mitsue2022年3月21日

桜えびのかき揚げ蕎麦

日本各地で桜の声が聞かれる3月下旬から4月初めに漁の解禁を迎える「桜えび」。体長4ミリ程度の海老は、甲殻に赤い色素が多く桜色に見えるところからこの名が付きました。

桜えびは、日本では駿河湾、東京湾、相模湾、五島列島沖に分布しますが、漁獲しているのは駿河湾だけです。漁期は「春漁(3月下旬~5月)」と「秋漁(10月~12月)」の年二回。深海にいる桜えびが上がってくる暗夜に、袋状の網を引く船曳網漁が行われます。
 
駿河湾での桜えび漁が始まったのは明治28年。その前年、静岡市清水区の由比で、深く潜ってしまったアジの漁網に大量の桜えびが入ったのがきっかけとのことです。その由比が今でも桜えびの最大の漁港で、特に春漁の時期には解禁を待って新鮮な桜えびを求めて多くの人々が訪れます。

数年前の解禁直後、友人と由比で新鮮な生桜えびを楽しんだことがあります。帰路、立ち寄った東名高速由比パーキングエリアの簡素なお蕎麦屋さん。あまり期待はせずに食べた桜えびのかき揚げが絶品で、さすがは解禁時期の地元の味と感激しました。

通常、年間を通じて私たちの口に入るのは「干し桜えび」です。水揚げシーズンになると駿河湾にほど近い富士川河川敷の干し場には一面桜色の桜えび畑が出現し、その向こうには雪が残る富士山が春の空に聳えています。

今年の春の漁期は3月27日から6月8日と発表がありました。近年は漁獲高が減り、予定の漁期より前に終了することもあると聞きます。原因は潮流の変化や富士川水系の濁りなどが考えられるそうです。深海からやってくる春の宝を大切にいただきたいと思います。

真暗な海をふぶくや桜えび  光枝

浪速の味 江戸の味 3月【雛あられ】浪速

caffe kigosai 投稿日:2022年2月21日 作成者: youko2022年2月24日

3月3日は雛祭り。雛人形を飾り、桃の花を生け、雛菓子を並べ、女子の健やかな成長を願います。

もともとは中国伝来の上巳(陰暦3月初めの巳の日、後に3月3日)の祓いに由来します。

『源氏物語』の第十二帖 須磨に「上巳の祓い」について書かれているところがあります。【弥生の朔日に出で来たる巳の日「今日なむ、かく思すことある人は御禊したまふべき」となまさかしき人の聞こゆれば、海づらもゆかしうて出でたまふ。】

今日は心にかかる事のある人は御祓いをなさるがよいと知ったかぶりの人に言われて、海辺も見たくてお出かけになった。というのです。

そして陰陽師を召して祓いを行い、舟に仰々しい人形を乗せて流す様子を自身の姿に重ねている様子が描かれています。

これは形代や人形に汚れを移し、祓うため川や海に流す流し雛として、現在に伝わっています。江戸時代になると人形作りの技術が発展し、雛人形は川に流すものではなく飾るものへ変化していったようです。

『和菓子歳時記』によると、宮中には現在の雛菓子に通じる小さくて可愛らしいお菓子が納められていました。貞享4年(1687年)『諸方菓子御用覚帳』に、三月三日 ひいなのこまん 三千ばかり と小さなお饅頭を納めており、元禄7年(1694年)には、饅頭や干菓子、草餅などを雛菓子として惣(総)銀の折や、本金の三重物の器に詰めていたそうです。

かつては特権階級のみで享受された上品な雛菓子でしたが、今は誰もが味わえる身近な雛菓子になりました。その代表格が「雛あられ」です。

『事典和菓子の世界』によると、餅米あられは、餅米を蒸して乾燥させたものを煎ったもの。こうしたあられは、煎った豆と合わせ年末から正月、また三月三日の雛祭りなどに用意されました。これに砂糖がけしたものが、関東でおなじみの「雛あられ」の名で広まるのは、明治以降であるとのことです。白や淡い桃色の可憐なあられです。ポン菓子に近い軽さがあります。

関西の雛あられは、あられ餅で餅を采の目に切り煎ったものです。煎るとあられが散るように膨らむので「あられ」とのこと。私たちがおかきと呼んでいるものに近いです。雛あられも、えびやアオサ、青のりが入った塩味や醤油味に甘い味が混じるという感じで、数十年前からはチョコレートでコーティングしたあられも登場し、今の形の雛あられとして広まったのは60年ほど前からだと思います。小さな子どもも食べやすいカラフルな雛あられです。

雛あられ少女にかへる笑顔かな  洋子

浪速の味 江戸の味(二月) 白魚【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年1月20日 作成者: mitsue2022年1月20日

サイト「茨城をたべよう」より

“月も朧に白魚の篝も霞む春の空“で始まる、歌舞伎の白波もの『三人吉三』の名台詞。この「篝(かがり)」は江戸に春を告げる隅田川での白魚漁の篝火で、広重の浮世絵にもその情景が描かれました。

白魚漁は、白魚が産卵のため海から隅田川へ遡上する夜間に行われました。白魚は将軍家への献上魚で、特権を受けた佃の漁師と日本橋小網町の「白魚役」と呼ばれた漁師のみに漁が許されていました。早朝に水揚げされた白魚は、葵の御紋の御膳白魚箱に納められ江戸城に届けられたということです。

白魚が徳川家にとって特別な魚だったのは、三河時代から家康の大好物であったこと、白魚の頭部に透ける模様が葵の紋に似ているからなど諸説あるようです。

白魚(シラウオ)は、踊り食いで知られる素魚(シロウオ)と混同されがちですが、全く別の魚です。ハゼ科の素魚は活魚として出回りますが、シラウオ科の白魚はたいへん繊細で、空気に触れるとほとんどがすぐに死んでしまい、半透明だった体は白くなります。

雛の節句には白魚のすまし汁という風習が江戸時代からあり、大正時代まで続いていたそうです。東京の河川の水質汚染などで白魚がいなくなり、その風習が廃れたのは残念なことです。

芭蕉の句「明けぼのやしら魚しろきこと一寸」は桑名での作、白魚が名物の桑名地方に「冬一寸春二寸」という諺があるそうです。東京のさる寿司屋では、春に大きくなった白魚を蒸して丁寧に握る江戸前の寿司を復活させました。

かつては日本全国に生息していた白魚、現在は北海道、青森県、秋田県、島根県、茨城県などが主な産地となっています。茨城県の霞ケ浦ではかつては帆船での帆引き網漁で白魚を獲っていました。今では「寒引き」と呼ばれる寒中の漁が盛んで、春が待たれる時期の白魚も格別です。

冒頭のお嬢吉三の台詞はこう続きます。“(中略)ほんに今夜は節分か 西の海より川のなか 落ちた夜鷹は厄落とし 豆沢山に一文の 銭と違つた金包み こいつあ春から縁起がいいわえ”。

隅田川に蹴落とされた夜鷹のおとせさんには気の毒ですが、江戸っ子はこの名台詞に春の到来を感じたとか。春の縁起物とも言えそうな白魚の淡泊な味を楽しみたいものです。

掻き寄せて白魚はねる笊の上  光枝

浪速の味 江戸の味(1月)【白みそ雑煮】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2021年12月21日 作成者: youko2021年12月25日

『大阪府の郷土料理』に大正初期の船場商人のお正月の様子を紹介した大阪朝日新聞(大正六年一月四日)の記事が掲載されています。

先ず、小梅を煎茶にいれた大ぶくで祝う。大ぶくの時は無言である。次に出る雑煮に箸を一寸添え「お祝いお祝い」の言葉とともに屠蘇に移る。屠蘇の酒杯は最年少者から酌みはじめ、順々に年長者に回す。雑煮は大抵味噌雑煮。箸紙にさした雑煮箸は出入りの大工が特に持って来るので、大店では立派な箸を用いていた。とあります。

雑煮は古くは内臓を養い健全な状態に保つという意味で「保蔵」と呼ばれ、保は同音の煮るを意味する烹に、蔵は種々のものを入れることから同音の「雑」に変わり、「烹雑(ほうぞう)」となったが、近代になり「雑煮」と書くようになったとのことです。

大阪では、餅搗きは二十八日か三十日に行っていました。語呂合わせで、二十九日は「苦の餅」になるので避けたとのことです。河内の一部では二十九日に搗き、こちらは「二十九日(福)」の語呂合わせです。まあ、何でもいい方にとればうまくいくということです。

雑煮は丸餅で、白みそ仕立てです。これに使う水は若水(元日の早朝に汲む井戸水)を用い、豆木を燃やして炊きました。今は水道の水ですが、元日の早朝というだけで、気分は若水です。雑煮は丸餅に、にんじん、大根、子いも、彩に水菜などをいれたシンプルなものです。その他に牛蒡、焼き豆腐など地域、家庭により具は少し違うようですが、白味噌の甘味が丸餅によく合います。三日には、焼き餅に水菜を入れたすまし雑煮となります。三日目に、あっさりしたすまし雑煮になるのも雑煮の味の変化を楽しむということで納得です。

雑煮をいただき、よい年を始めたいと思います。

一年の力湧きくる雑煮かな    洋子

投稿ナビゲーション

← 古い投稿
新しい投稿 →

「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第二十七回 2025年6月14日(土)13時30分(原則第二土曜日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

Catégorie

  • à la carte (アラカルト)
  • 今月の季語
  • 今月の料理
  • 今月の花
  • 加賀の一盞
  • 和菓子
  • 店長より
  • 浪速の味 江戸の味
  • 花

menu

  • top
  • きごさいBASE
  • 長谷川櫂の俳句的生活
  • お問い合せ
  • 管理

スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
©2025 - caffe kigosai
↑