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今月の季語十一月〈冬の日〉

caffe kigosai 投稿日:2024年10月17日 作成者: masako2024年10月19日

あんなに暑い暑いとうめきながら過ごしていたのに、暦の上では早くも冬。とても気持ちが追いつきません。気分を冬にすべく、冬の季語の王道(?)を見て行きましょう。

まずは〈冬の日〉。冬の一日の意にも、冬の太陽、日差しの意にも使います。DAYのときは「時候」、SUNのときは「天文」の季語となります。

冬の日の三時になりぬ早や悲し               高浜虚子(時候)

冬の日や臥して見あぐる琴の丈            野澤節子(時候)

大仏の冬日は山に移りけり                     星野立子(天文)

冬の日や茶色の裏は紺の山                   夏目漱石(天文)

「冬日」のときは大概SUNの意で使われていますが、どちらの意かは、基本的には文脈から判断します。どちらにもとれるときには、より良い句になると思われるほうを選択します。

ではありますが、「時候」の虚子の句にも節子の句にも、冬の日差しを感じます。「天文」の立子の句には冬の短い一日を思います。鑑賞するときには、おおらかに往き来するほうが楽しそうです。

漱石の句は、日の当たる山の表側と日陰の裏側を色彩でとらえています。「茶色の裏は紺」、なるほどその通りだと、思わずにんまりしてしまいます。

これらはいずれも太平洋側に住む人の句です。同じ「冬の日」でも日本海側は、天候もそれに伴う心情も異なるでしょう。

再びの雪起しには振り向かず                  若井新一

天よりも青きものなし雪卸                      同

先月も登場した新潟県在住の若井さんの句です。俳句は具体的に詠むことが基本。単に「冬の日」と置いたところから汲まれる一定の情緒は、太平洋側のものなのかもしれません。

〈短日〉は全国共通で使えそうです。秋の間も秋分以降は昼のほうが短いですが、長くなってゆく夜を楽しむこころ〈夜長〉がありました。冬になるともう、夜が長いのは悲しいのです。前掲の虚子の句は、季語は〈冬の日〉ですが、〈短日〉のこころを詠んだものともいえそうです。

短日のしばらく墓を日向にす                   長谷川双魚

あたたかき日は日短きこと忘れ               後藤比奈夫

冬の日の昼間は時間こそ短いですが、空の低い位置からの日差しのありがたさは格別です。

いきいきと電光ニュース暮早し               清崎敏郎

暗くなってからのほうが鮮やかな電光ニュースは、短日を喜ぶものの一つかもしれません。

素つ気なき男の如し短日は                    渡辺恭子

人波にもまれ腹立ち日短か                   富安風生

嘆いたり怒ったりしてみせながら、面白がっているのではないでしょうか。風生は自分も人波を構成する一員でありながら、どうしてみんなこんなに、と憤慨しています。こういうこと、あるある、と思わず頷く一景です。

とっぷりと暮れたあとの、冷えこみの厳しい夜の、鬼気迫る一句もご紹介しましょう。

仮の世の修羅書きすすむ霜夜かな            瀬戸内寂聴

季語の本意を踏まえながら、なぞるのではなく、それぞれの立場で詠み分けると、面白い冬が過ごせそうです。(正子)

 

第十八回 カフェきごさいズーム句会 句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2024年10月5日 作成者: mitsue2024年10月5日

第十八回「カフェきごさいズーム句会」 (2024年9月14日)句会報告です。(   )は添削例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。ご希望の方は右の申し込み欄からどうぞ。

第一句座              
【特選】
一身を水にゆだねて秋の鮎      齊藤真知子
朝焼けの金をしつぽにキタキツネ   高橋真樹子
(朝焼けや金のしつぽのキタキツネ)
赤き旗上げて舟呼ぶ水の秋      藤倉桂
かふなれば破れかぶれの破芭蕉    斉藤真知子
(かうなれば破れかぶれや破芭蕉)
鶏頭の赤に日暮れの来たりけり    矢野京子
(鶏頭の赤燃え上がる日暮かな)

【入選】
ゑのころや今もできない逆上がり   伊藤涼子
赤とんぼ湧きくる里へ米買ひに    高橋真樹子
しみじみと二人暮しや菊日和     赤塚さゆり
(しみじみと二人の暮らし菊日和)
鈴虫や使ひ納めの硝子猪口      花井淳
桃剝いて桃の香りの中にをり     上田雅子
秋簾ゆかしき昭和の純喫茶      赤塚さゆり
(秋簾ゆれる昭和の純喫茶)
新米やまづはまんまる塩むすび    藤倉桂
梨を剝く半分で済む二人かな     前﨑都
啄木の思郷の歌碑や葛の花      村井好子
(啄木の望郷の歌碑葛の花)
式部の実母なき庭にこぼれをり    前﨑都
(式部の実母なき庭にこぼれけり)
おんぼろの掃除機唸る九月かな    早川光尾
縫糸の絡まってゐる秋暑かな     斉藤真知子
(赤き糸絡まつてゐる秋暑かな)
子かまきりまこと小さき鎌かざし   上田雅子
ごろ寝して我も花野の一草に     高橋真樹子
朝顔の鉢片づけて新学期       矢野京子
日本の秋とぼとぼとまだ見へず    矢野京子
並びゐて細身なれども初秋刀魚    斉藤真知子
あぎとへる鯉の動かす秋の水     前﨑都
触れあうて白桃のこの傷みやう    矢野京子
沈香と妻のおもかげ宵の秋      花井淳
(沈香に妻のおもかげ秋深む)

窓にさす朝の光やマスカット     飛岡光枝

第二句座(席題・鵙の贄、新米)
【特選】         
新米を研ぐ皺の手もいとおしく    高橋真樹子
(新米を研ぐ皺の手のいとほしく)
眼から風抜けてゐし鵙の贄      高橋真樹子
(眼から風の抜けゆく鵙の贄)

【入選】
鵙の贄我は見つけてしまひけり    藤倉桂
もてなしは新米炊く香山の家     藤倉桂
山深き一揆の里や鵙の贄       花井淳
新米と告げて供ふや父に母に     藤倉桂
(新米と告げて供ふや父母へ)
砥部焼の白き茶碗に新米を      前﨑都
(砥部焼の真白き茶碗今年米)
ふるさとの香りも混ざる今年米    赤塚さゆり
(ふるさとの香りの混ざる今年米)
因縁の枝に刺されて鵙のにへ     矢野京子
子供らの指差し騒ぐ鵙の贄      上田雅子

上弦の月あかあかと鵙の贄      飛岡光枝

今月の花(十月) 珊瑚みずき

caffe kigosai 投稿日:2024年9月29日 作成者: mitsue2024年9月29日

門下の「珊瑚みずき」のいけばな

フィンランドのCornus

秋になって紅葉する葉はたくさんありますが、サンゴミズキの場合は枝や茎の独特の赤が映えるようになり、その色から「珊瑚みずき」と呼ばれます。直線の枝は曲げることもできるので、私はクリスマスの壁の飾りに土台を兼ねて枝を曲線にして使うこともあります。いけばなで使うのは白玉みずきの変種であるこの「珊瑚みずき」が多いのです。

6月の中旬、フィンランドにワークショップをしに行きました。グループをまとめている門下のⅬさんは 航空会社のCAとして来日。そのつど東京の私の教室でいけばなを熱心に勉強し、もう30年にもなるでしょうか。定年と同時に母国フィンランドで自分のスタジオを立ち上げ、要請があれば地方の都市にもいけばなを広めに出かけていきます。

彼女とその仲間にとっての大きな問題は、この北の地での枝物の入手です。花市場ではユーカリやヒバなど、何時も同じものばかり。そんな時は、彼女のグループのメンバーの「あそこの土地にいけばなに使えそうな枝がある」という情報が役に立ちます。今回も彼女の片腕で7歳からいけばなをはじめたヘレナが「Cornusが花をつけている」とある場所を教えてくれました。

CornusとはCornus alba Sibrica、「珊瑚みずき」のことだろうか?連れて行ってくれた場所には葉をつけた2メートルほどの高さの枝が固まって生えていました。柔らかい葉の下は浅緑のまっすぐな枝が伸びていて、頭部に小さな白い花が固まって付いていました。

日本で冬が終わった時に「珊瑚みずき」の赤い枝に小さな新芽が出てきた姿を見ていますが、こちらは形は同じでも茎の色が全く違っていました。

「珊瑚みずき」はミズキ科ミズキ属。白玉みずきの園芸種です。英名はSiberian dogwood。この名からわかるように寒い地域にも生えているので、地続きのフィンランドにもひょっとして仲間があるのでしょうか。

私がフィンランドで見たのは「黄金みずき」という種類なのかもしれません。冬になるとこの種類は入手困難ですが、日本の初夏に枝や茎が黄緑色の「黄金みずき」をいけることがあります。もともと白玉みずきは園芸種が多く、葉に斑がはいるエレガンティッシマという種類もあり、実も変わったものや、赤い色のより鮮やかなものもあるそうです。

九月、東京の教室で門下が色づいた曲げやすい「珊瑚みずき」をいけました。夏の終わりがやっときて秋というにはまだまだの気候ですが、それでも冬が遠い先にかすかに見えてきたような気がしました。

フィンランドの、どこまでも青い夏の空を懐かしく思い出しながら、あの柔らかな茎をもった植物は本当に「黄金みずき」だったのかと時々思います。正解がでないまま、気がつけばクリスマスのシーズンに突入していそうです。(光加)

浪速の味 江戸の味(十月) 梨【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2024年9月26日 作成者: mitsue2024年9月26日

新高(左)とあきづき

全国区で活躍している梨の妖精「ふなっしー」は船橋市のゆるキャラです。船橋市のある千葉県は梨の収穫量、栽培面積とも全国一で、栽培が盛んな臼井市、市川市、鎌ケ谷市などでは8月から10月にかけて数種類の梨が収穫され、多くの人が梨狩りに訪れます。

千葉県の梨栽培は江戸時代の1700年代後半から広まったと言われています。水はけのよい火山灰の土壌は梨の栽培に適しており、温暖な気候も味方して、大消費地である江戸で高級品として喜ばれました。農家の女性が高下駄を履いて頭上の梨を収穫する古い絵が残っています。その後土壌や品種の改良を重ねて一大生産地に発展していきました。

千葉県の梨は、7月下旬の「幸水」に始まります。私が訪れた9月は1998年に登録された新しい品種の「あきづき」が最盛期でした。「幸水」「新高」「豊水」という人気の三品種を掛け合わせた「あきづき」は溢れるほどの果汁と糖度の高さが特徴です。

また、鳥取県産が知られる「二十世紀」も、実は千葉県松戸市で発見された苗木から栽培が始まったそうです。

江戸の梨は、落語「佃祭」にも登場します。佃祭を舞台に、昔、命を助けた女性に今度は自分が助けられるという古典落語。当時、歯痛に悩む人は、歯の神様として知られる戸隠神社へ祈りを捧げ、梨を川へ流す風習を行っていました。この風習が「佃祭」のサゲに登場するのですが、現代ではあまり知られていないのでサゲの前で噺を収めることが多いようです。

因みに、戸隠神社に祀られている神様、九頭竜大神は梨が大好物で、歯痛に悩む人は竜神様へ梨を供え、三年梨絶ちをすれば必ず治ると言われていたそうです。ジューシーな梨は確かに竜神様が好みそうですし、甘い梨の実は虫歯を誘いそうではあります。歯磨きに励みながら秋の日射しを受けて実った梨を堪能いたしましょう。

顔に熱き日射しや梨を捥ぐ  光枝

今月の季語〈十月〉⑬ 新米

caffe kigosai 投稿日:2024年9月16日 作成者: masako2024年9月19日

売場から米袋の姿が消え、令和の米騒動が懸念される昨今です。日本人の米離れが報告されて久しいですが、やはり主食は米であったかと思わされます。もしかするとパンに親しんでいた世代も、こうなってみると米に執着したくなったかもしれません。

今年は尋常ならぬ猛暑でしたが、降水量が確保されたため、米の収穫高は期待できるとニュースが告げていました。品種改良で暑さに強くもなっているのでしょう。

ともあれ新米の季節到来。落ち着いて市場が潤ってくるのを待ちましょう。

新米を詰められ袋立ちあがる         江川千代八

どの家も新米積みて炉火燃えて      高野素十

まずは景気の良い句から。前句、ずっしりと新米の詰まった袋が自立するさま。擬人化された袋がいきいきと嬉しそうです。後句、米農家の景とも読めますが、そうでない各家庭でもあり得そうです。今では精米後の米を買うことが断然多いですから、一度に積むほど買ったりはしません。が、昔は玄米で購入し、食べる分ずつ搗いていたと聞きます。また何世代も同居していましたから、養う口の数も多かったはず。米がたっぷり、火もあって、というのは豊かで安心できる景に違いありません。

手に受けて象牙の艶の今年米         栗田やすし

ひんやりと両手に応へ今年米         若井新一

句の表側からは判断できませんが、前句は購入者サイドの、後句は生産者の句です。そう思って読むと、後句の「両手」は稲作に取り組んできた肉厚の手であり、「応へ」には達成感が滲んでいることがわかります。

新米といふよろこびのかすかなり    飯田龍太

この句に龍太は次のように自解しています。

 

掌の上のかすかな籾の重み。炊き上がった新米の香ばしい朝の匂い――だが、三伏の苦しい労働を思うと、その気持は複雑である。    (『自選自解 飯田龍太集』)

 

前出の若井さんには次のような句があります。

指先の水にしびれし種選み           若井新一

泥のほか見ざるひと日や代を掻く

太陽に額づくごとし田草取り

背(せな)の汗野良着の紺を濃くしたり

稲に稲のせて深田を刈りにけり

自分の手では米を作りだせない者の一人として、「新米」のよろこびを感謝の念をもって味わいたいと思います。

さて新米で造った酒を〈新酒〉〈今年酒〉〈新走(あらばしり)〉といいます。今では寒造が一般となり、新酒が出回るのは翌年となりましたが、かつての習慣から秋の季語となっているそうです。

とつくんのあととくとくと今年酒    鷹羽狩行

擬音語のみでなんと旨そうな。

古酒の壺筵にとんと置き据ゑぬ      佐藤念腹

新酒が出るとそれまでの酒は古酒と呼ばれます。新茶に対してそれまでの茶を古茶と呼ぶのと同じです。古暦、古日記も同じ道理。

あわせて覚えておきましょう。(正子)

 

浪速の味 江戸の味 九月【河内ワイン】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2024年9月8日 作成者: youko2024年9月16日

秋の季語に「葡萄酒醸す」「葡萄酒製す」があります。大阪では、「河内ワイン」と呼ばれるワインが知られています。河内は大阪の東部地域で、中河内に柏原市があります。現在の柏原市平野、大平寺などは旧堅下(かたしも)村で、明治11年(1878)、堅下村平野の中野喜平氏が、甲州ぶどうの苗木の育成に成功し、生産が衰退傾向にあった綿に替わってぶどうが栽培されるようになりました。昭和10年(1935)には大阪のぶどう栽培面積は全国で最大となり、その30%が堅下村で栽培されていました。

大阪のワインづくりは、大正元年(1912)に堅下村大平寺で、ブドウ園の経営をしていた高井作次郎氏によって始められました。ぶどうの生産過剰を懸念し、また台風で落ちたぶどうの実を生かして利用することを考え、単身甲州に出向き、明治7年創業の大黒ぶどう酒の製法を学びました。そして大正13年(1924)に「堅下ぶどう酒」として市場に出しました。

ぶどう酒は収穫後、果汁を搾り、酵母で発酵させて作ります。ぶどう酒の起源は非常に古く紀元前6000年ごろ中国などで始まったと言われています。

ワインはぶどう酒の一種で、ぶどうの果実を発酵させて作られます。果皮や種などの成分も含まれているので、風味も多彩です。古代ローマ時代から飲まれていて、ワインはヨーロッパ各地で豊かな歴史を持っています。

7月ごろからぶどうの収穫が始まり、そろそろ「河内ヌーヴォー」が出てくる季節になりました。河内といえば、「河内音頭」で親しまれていますが、ワインも大阪を代表する名産品です。

秋深む今年のワイン香しく  洋子

第十七回 カフェきごさいズーム句会 句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2024年8月29日 作成者: mitsue2024年8月29日

第十七回「カフェきごさいズーム句会」(2024年8月17日)句会報告です。(  )は添削例。
「カフェきごさいズーム句会」はどなたでも参加できます。ご希望の方は右の申し込み欄からどうぞ。

第一句座              
【特選】
いつの間に椋鳥の樹となりにけり     斉藤真知子
黒揚羽揺れる木漏れ日泳ぎゆく      早川光尾
(真昼間の木漏れ日泳ぐ黒揚羽)
墓洗ふ会つたことなきはらからの     前﨑都
魂もバツタになりしファブールかな    周龍梅
(魂のバッタとなりてファーブルかな)
秋立つや男の家事をひとつづつ      花井淳

【入選】
うなぎ食うて女の一生長々し       葛西美津子
六分の一切れを買ふ初西瓜        上田雅子
けさ秋の一舟川を下りゆく        斉藤真知子
開校と閉校の碑や晩夏光         村井好子
朝顔のゆゑに家居と決めにけり      たきのみね
(朝顔の咲きつぎ家居と決めにけり)
首里城の槌音高し沖縄忌         上田雅子
(首里城の槌音高く沖縄忌)
喜雨休み煙管ぷかぷか山守は       前﨑都
(山守は煙管ぷかぷか喜雨休み)
蜩や五輪応援午前五時          村井好子
墓参り藪蚊一匹つれ帰る         矢野京子
夏終わるオンザロックの氷コロン     早川光尾
(夏終はるオンザロックの氷コロン)
終戦忌けふの日記を書き終はる      矢野京子
梨を食ふ父の時代の名の梨を       たきのみね
(梨を食ふ父の時代の二十世紀)
黒葡萄夜のしづけさに熟しをり      伊藤涼子
(黒葡萄夜のしづけさに熟しゆく)
若き父ビールの髭で子をあやし      鈴木勇美
納涼会銀座に潮のかをりかな       鈴木勇美
(納涼会銀座は潮のかをりして)
しばらくはとまらせてをく蜻蛉かな    斉藤真知子
真夏日や電柱の陰バスを待つ       早川光尾
炎天や四天王像顔歪め          赤塚さゆり
ぽつぽつと叔母語りくれ広島忌      たきのみね
(広島忌叔母ぽつぽつと語りくれ)

朝顔や母はむらさき父は白        飛岡光枝
  

第二句座(席題・枝豆、馬肥ゆる)
【特選】         
天高く肥ゆるものあり吾と馬       斉藤真知子
朝取りの枝豆掛ける勝手口        赤塚さゆり

【入選】
馬肥へて牧夫に鼻を寄せにけり      伊藤涼子
(馬肥えて牧夫に鼻を寄せにけり)
枝豆の最後のひとつ子に譲り       赤塚さゆり
枝豆や母ほどうまく茹でられぬ      たきのみね
(枝豆や母ほどうまく茹でられず)
里山を離れぬ祖母や月見豆        藤倉桂
(山里を離れぬ祖母や月見豆)
接待やたんとゆがきてだだちや豆     矢野京子

枝豆を飛ばすや好きな人の前        飛岡光枝

今月の花(九月) パンパスグラス

caffe kigosai 投稿日:2024年8月28日 作成者: mitsue2024年8月29日

小さな実をたくさん付け、弧を描く「野茨」の枝、丸い葉と蔓の間に薄緑の丸い実をつけた「山帰来」がそろそろ花材として現れるころ、暑さのためにしばらく休みにしていたお稽古を再開しました。

花材として届けられた中に「パンパスグラス」がありました。包みの中から、若い緑色のまっすぐな茎が出ていて、先に行くにつれて細くなり、瑞々しく、勢いを感じさせる秋の花材のひとつです。長さは1メートルをはるかに超えます。

丸い鞘の周りに、鋏で注意深くやや深めの線を入れていき一周させます。この線の一か所に鋏の先をあて、鋏の片方の刃をさしこみ一気に線を入れます。すると鞘を作っている表皮が落ち、花があらわれます。

どこに線を入れるかにより、穂の長さが決まってきます。現れた少し青臭い銀緑の花穂に「あら、きれい!珍しいからもうこのままの長さで切りたくない」、出てきた花穂を傾けて下がり具合を見ながら「どの花器にしようかしら」、曲げられないまっすぐな線を見ながら「立派ね。このまま剣山に刺しても安定するかしら」などなど、教室のあちこちで声が上がります。

パンパスグラスはイネ科です。原産地は南アメリカですが、今ではニュージーランドなどの水はけのいい、温暖な気候の地域でも見かけます。ひとつの株からたくさんの茎を出す多年草で、大きいものは3メートルの高さにもなります。羽のようにふさふさとした花序が集まって一斉に揺れる様はなかなかいい光景で、風に揺れればその存在がぐっと増すことでしょう。それは気持ちよい秋風の様子でしょう。

すこし紅色がかったものもありますが、改良品種でしょうか。明治に日本に入り、庭などに植えられたそうです。いけばなで使う、乾かして着色をしたイタリアンパンパスもこの仲間です。

パンパスグラスは雌雄異株で、立派な花序をつけるのは雌株なのだそうです。この名は英語名ですが、もともとパンパスグラスはスペイン語で大草原〔pampa(パンパ)〕の草という意味だそうです。

そう、昭和の方ならおそらくご存じの、アルフレッド・ハウゼ楽団の「さらば草原よ」というタンゴの名曲がありました。こちらはスペイン語で(Adios Pampa Mia)。秋今宵、お稽古であまったパンパスグラスをいけて、風そよぐ銀色の花穂が揺れる大草原に思いを馳せてみましょうか。何十年か前に聞いたこの曲を、今はネットで探して。(光加)

今月の季語(9月) 秋の海(2)

caffe kigosai 投稿日:2024年8月19日 作成者: masako2024年8月22日

ちょうど1年前にご報告した2022年の瀬戸内の旅は、新型コロナ禍により人出は戻っていませんでしたが、瀬戸内国際芸術祭(瀬戸芸)の開催期間と重なったおかげで、不思議なオブジェとの出会いがありました。すっかり味をしめ、2023年は仲間に声をかけたところ、現地で句会を開ける程度の人数が集まりました。私は俳句甲子園終了後に松山から直接向かう旅程なので、「一人で出て瀬戸内で仲間と合流します。さて今年はどんな海の旅になるでしょうか」と書きました。今月はそのレポートです。

 

〈瀬戸内の旅2023〉  髙田正子

初秋の旅山に沿ひ海に沿ひ

秋高し讃岐うどんにまづ並び

平家蟹のみを描きて夏のれん

豊島(てしま)

再生の島いちじくのよく肥り

島ひとつ呑み秋の雲影歪む

国生みの島影はるか月を待つ

雨のあと大きな月を波の上

月光をすこしの毒として眠る

豊島美術館

湧きつぐを水のあそびと見て涼し

一粒の水月明を滑りだす

 

2022年は瀬戸内に詳しい知人と二人きりの、熱中症対策さえしていればよい気楽な旅でした。それが23年は新しい結社を起こすという、1年前には砂粒ほども思っていなかった事態となっていました。瀬戸内行は決行しましたが、直前まで結社の口座開設が難航するなど、一進一退に一喜一憂する日々でもありました。讃岐うどんの順番待ちに〈秋高し〉と付けたのは、松山から高松へ移動中に口座開設が叶った旨を着信し、ほっとしたから。予讃線の意外に長い乗車時間が終わり、降り立った高松駅前の空の高かったこと。

ただ、島旅の楽しさを教えてくれた知人が、あろうことか直前にコロナ感染し、メイン幹事不在の旅となってしまいました。

十人に一人が足りぬ秋灯          正子

豊島では、二人の若者が句会に飛び入り参加してくださったことも嬉しい思い出です。

つぎつぎにつながつてゆく涼しさよ  正子

「新しい結社」では「俳句でつながる」をモットーの一つに掲げようと考えていましたから、豊島美術館で、ぷくりと湧いた水の粒が、ときに隣の粒を巻きこんでつつーっと走るのを見て、背を押される心持ちにもなりました。

うすうすとしかもさだかに天の川       清崎敏郎

島の空は広いです。消灯時刻前から、うっすらと天の川が見えました。都会の夜空では、薄いというより確信の持てぬ見え方しか記憶にありません。消灯すれば更にと思えましたが、そのまま朝まで覚めることもなく眠ってしまいました。

天の川柱のごとく見て眠る             沢木欣一

三時頃に起き出した方によると、暁の空には稲妻が走ったのだとか。

2024年も瀬戸内の豊かな時間を、と思っていましたが、残念ながら中止に。来年はまた瀬戸芸の開催年にあたりますから、合わせて計画しようと話し合っています。(正子)

第十六回 カフェズーム句会 句会報(飛岡光枝選)

caffe kigosai 投稿日:2024年8月3日 作成者: mitsue2024年8月3日

七月十三日のカフェズーム句会句会報告(飛岡光枝選)です。(   )は添削例。
カフェきごさいズーム句会はどなたでも参加いただけます。右の欄よりお申込みください。

第一句座              
【特選】
初めての糸瓜咲きけり黃鮮やか     たきのみね
(金色に初めての糸瓜咲きにけり)
首のべて亀の噛みつく大暑かな     葛西美津子
鰭ゆらし夏のよどみへ金の鯉      葛西美津子
三伏のま白き鳩の歩み来る       葛西美津子

【入選】
雲の峰マンタと泳ぐ太平洋        藤倉桂
夏を告ぐほほづき市や空青し      前﨑都
おさがりの今年ぴつたり夏帽子     矢野京子
(今年ぴつたりおさがりの夏帽子)
ベランダのトマトを添えて夏料理    早川光尾
(ベランダのトマトを捥ぎて夏料理)
サングラス親指ぐいと踏み出しぬ      村井好子
犬用の合羽も干され梅雨晴間      赤塚さゆり
早苗田の影悠然と浅間山        藤井和子
(早苗田に影悠然と浅間山)
老い二人ほどよき間合ひ冷し酒       前﨑都
(老い二人ほどよき間合冷し酒)
茄子漬の白き切り口雨あがる      たきのみね
取取のマカロン並ぶ梅雨晴間      赤塚さゆり
(取り取りのマカロン並ぶ梅雨晴間)
心太割箸の香もすすりけり       高橋真樹子
(割箸の香をすすりけり心太)
金魚鉢ちがふ景色に移さるる      斉藤真知子
梅雨しとどグロリオーサは赤増しぬ   上田雅子
トンネルを抜け青田波青田波      村井好子
(トンネルを抜けて押し寄す青田波)
異国語は音楽めきて夏の夜       鈴木勇美
おのづと手を合はせてをりぬ滝の前   前﨑都
(おのづから手を合はせけり滝の前)
海の日や新日本丸の風受けて      花井淳
(海の日や新日本丸風受けて)
母のゐし夏の夕暮れ琥珀羹       葛西美津子
この星を焼き尽くさんと酷暑かな    藤井和子
(この星を焼き尽くさんと油蝉)
神鳴や我が夜我が街撃ちぬきて     鈴木勇美
青い目の少女うるはし浴衣かな     伊藤涼子
月明に似たる糸瓜の花一輪       たきのみね

飛岡光枝出句
どぢやう鍋ポンポン船の遠ざかる

第二句座(席題・登山、鰻)
【特選】 
鰻やのメニュー松竹梅とかいろはとか  上田雅子      
(うな重や松竹梅とかいろはとか)
うな重やちょつと寄り道鰻塚      藤倉桂
(うな重やちよつと手を合はせ鰻塚)

【入選】
女郎蜘蛛住んでをるらし登山小屋    伊藤涼子
山登りケルンに積みし石ひとつ     斉藤真知子
不忍の池見下ろして鰻食ふ       上田雅子
(鰻食ふ不忍の池見下ろして)
登山口熊に注意の六ヶ条        高橋真樹子
近江町はうなぎ鰻の熱気かな      花井淳
(近江町うなぎ鰻の熱気かな)
一献や鰻白焼きあればよし        矢野京子
リハビリの後の一鉢うなぎかな      前﨑都
百寿まで生きると決めて鰻喰ふ     高橋真樹子

飛岡光枝出句
富士登山父母かくも若かりき

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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