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今月の季語(三月)万朶の桜

caffe kigosai 投稿日:2022年2月17日 作成者: masako2022年2月17日

俳句で〈花〉といえば〈桜〉です。また〈桜/花〉とのみあれば、ふつうは昼間の、咲ききった桜を指します。

四方より花吹き入れて鳰の海    芭蕉

しばらくは花の上なる月夜かな   芭蕉

鳰の海は琵琶湖のこと。ときに海のように広いと思うこともある湖ですが、今は桜色に縁取りされて、花吹雪を受けているのです。鳥瞰図のようにも思えてきます。よく見えていますから昼の景とみてよいでしょう。二句目は「月夜」と夜に指定されています。花はおそらくたっぷりと雲のように咲き誇っていることでしょうが、夜の景であることは「月夜」まで読んで初めて分かるのです。

ところで〈夜桜〉のように夜の文字を加えなくても、夜の桜の季語があります。

天と地と中に息して花あかり     角川春樹

花影婆娑と踏むべくありぬ岨の月    原 石鼎

〈花あかり/花明り〉は桜の白さによって、闇の中でもそのあたりが仄かに明るいことを指します。満開の夜の桜のたたずまいを表す季語です。『天と地と』は海音寺潮五郎の歴史小説ですが、これを原作とした同名の角川映画(1990年)があります(NHKほかテレビドラマにもなっています)。春樹の句は当然それを踏まえているでしょう。この句のみで鑑賞すれば、天地のあわいに生きる自分と桜を詠んだものになりますが、謙信や信玄ら(『天と地と』の時代)の歴史上の人物を意識すると、空間軸に時間軸が加わって句の世界がさらに大きくなる気がします。

石鼎の句は「月」も登場しますが、そもそも〈花影〉が「月光などによる花のかげ」(『広辞苑』)であり、夜を意識してよい季語でしょう。「月光など」の「など」が気になりますが、石鼎の句は「月」のおかげでその点もクリアしています。

花の山ふもとに八十八の母     沢木欣一

年々にわが立つ花下も定まれり   相生垣瓜人

欣一の句は空海が九度山に留めおいた母を月に九度訪うた故事を思わせます。この句には「母米寿の祝ひに金沢へ」と前書があります。欣一自身も離れて暮らす母の身を案じていたに違いありません。

後句は瓜人七十四歳の句です。句集『明治草』に〈先人の教ふるままに花も見し〉と並んで収められています。はじめは教えられたとおりに捉えようとしていたが、今では自分の見方で自分の花を仰いでいるとも読み得るのではないでしょうか。

この二句は〈花〉を季語としていますが、植物の桜を必ずしも眼前にしていなくてもよく、むしろ、実物の桜を超えたところで、自身の思いを託して詠んでいると受け止めることができそうです。

そうはいっても米寿の祝いの花や定まった花が中途半端な咲き方であるはずはなく、やはり満開の花を想定するのがよいでしょう。

花万朶をみなごもこゑひそめをり       森 澄雄

花万朶(ばんだ)は桜が満ちているさま。いつもはかしましい「をみなご」すら声をひそめるほどの花のエネルギーはまた、

永劫の途中に生きて花を見る     和田悟朗

のような詠み方もされます。さて今年の桜、どう詠みましょうか。(正子)

今月の花(三月)スイートピー・宿根スイートピー

caffe kigosai 投稿日:2022年2月17日 作成者: mitsue2022年2月18日

宿根スイートピー

スイートピー

スイートピーの花が庭に咲いているのを初めて見たのは、デンマークでした。教授が引率する大学生のグループが、海外の学生会議に出席する企画に参加した折のことです。学生たちはデンマークの小都市、ボーディンボーの家庭に分散して滞在するという、五十年前ではかなり画期的なことでした。

ホームステイ先の家がどんな家だったか、家族構成はどうだったかといったこと以上に鮮明に思い出すのは、三角形にたてた棒の間にスイートピーが這い上がり、花を咲かせていた裏庭の光景です。

それまでもいけばなは習っていたものの、地植えのスイートピーが咲いている光景は見たことがありませんでした。春、お稽古に配達された包みを開くと白や赤、ピンクなどの鮮やかな色や香りに、周囲にいた人たちが「あ、スイートピー!春ね!」とどっと沸いたものです。

この花が北欧のデンマークで八月に咲いていたのですが、日本に比べで緯度も北にあたるここでは夏に咲くのだろうと思いその時は何の疑問もわきませんでした。

あの時に咲いていた薄ピンクのスイートピーが宿根スイートーピーではなかったかと思いはじめたのは、この花が耐寒性があることを知ったここ数年の事です。

近頃は晩春から店頭で見かけることもある宿根スイートピーは、一年草である一般のスイートピーと異なり冬を超す多年草です。丈の高い器に茎ごと無造作にいけても、垂れ下がる長さが自然の勢いを語ってくれます。

花の色はスイートピーと同様、白,ピンク。紫などがあります。ふくよかなマメ科の蝶形の花は小ぶりで花弁はやや厚く、一年草のスイートピーに比べて香りはぐっと控えめです。葉は細長く、巻きひげの出ている茎には翼(よく)があります。いけるときは折れやすいので気を付けます。

巻きひげは支柱に絡みついてぐんぐんと伸び、二メートルを超してもさらに上がっていきます。優しげで静かなイメージの花を咲かせるこの植物ですが、動物的な面も持っているのだと気づかされました。

今では確かめるすべもなく記憶の中にしか存在しないデンマークの小さな町のスイートピーは、果たして宿根スイートピーだったのだろうか。心に引っかかったままの小さな謎のひとつです。(光加)

カフェきごさい「ネット句会(2月)」互選+飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年2月7日 作成者: mitsue2022年2月8日

(連中)
利通 雅子 隆子 涼子 裕子 光尾 すみえ 弘道 桂 都 良子 光枝

≪互選≫

良子選
病窓の夕空あはし春隣 すみえ
畦川の小鷺なぶるや空つ風 桂
七十路の皺は勲章初鏡 都

光尾選
老いて知る君の寂しさ龍の玉 桂
一枝の柊挿して眠りけり 光枝
どんど火に照らされ傘寿の幼な友 弘道

都選
藁苞のやはらかき闇寒牡丹 裕子
一枝の柊挿して眠りけり 光枝
ゴドー待つ四温日和の父白寿 利通

すみえ選
畔川の小鷺なぶるや空つ風 桂
日脚伸ぶ歩いてみるか二駅を 都
寒鯉の尾びれ撥ぬるを包丁す 都

裕子選
老いて知る君の寂しさ龍の玉 桂
霞ヶ浦風の強さよ白魚汁 光枝
悪夢はや獏に喰わせて大旦 利通

涼子選
藁苞のやはらかき闇寒牡丹 裕子
老いて知る君の寂しさ龍の玉 桂
霞ヶ浦風の強さよ白魚汁 光枝

雅子選
福袋開ける楽しさ買いにけり 涼子
一心に鎌倉彫や龍の玉 裕子
一枝の柊挿して眠りけり 光枝

桂選
梅が咲き雪降り積もる二月かな 裕子
手が触れて重なる想ひ歌かるた 涼子
寒鯉の尾びれ撥ぬるを包丁す 都

隆子選
手が触れて重なる想ひ歌かるた 涼子
一枝の柊挿して眠りけり 光枝
からからと鳴る柊を挿しにけり 光枝

弘道選
日足伸ぶ歩いてみるか二駅を 都
雪の句を残して君は旅人に 雅子
手が触れて重なる思ひ歌かるた 涼子

利通選
手が触れて重なる想ひ歌かるた 涼子
一枝の柊挿して眠りけり 光枝
冬の滝ことば少なく別れけり 良子

≪飛岡光枝選≫

【特選】
初雪の街は静かに華やげり 雅子

豪雪地帯ではない地方の思いかもしれませんが、深まる冬への心の高揚感が感じられます。

寒鯉の尾びれ撥ぬるを包丁す 都

「寒鯉」の「寒」により、ただ元気のいい鯉ではなく、命の厳しさを感じさせてくれる一句となりました。

悪夢はや獏に喰はせて大旦 利通

新年早々に悪夢には退散願ったという、豪放磊落な目出度い一句。句のリズムがいい。原句は「喰わせて」。仮名遣いご確認を。

【入選】
藁苞の闇やはらかし寒牡丹 裕子

寒牡丹を包むやさしい闇。原句は「藁苞のやはらかき闇寒牡丹」。

本閉じて雪降る気配耳澄ます 弘道

本に夢中になっている時には気付かなかった微妙な空気感。原句は「本閉じて雪降る気配に耳澄ます」。

福袋開ける楽しさ買ひにけり 涼子

言われてみると確かに福袋はそうだと思わせる一句。人生にはこんな余裕がほしいものです。原句は「福袋開ける楽しさ買いにけり」。仮名遣いご確認を。

畔川の小鷺なぶるや空つ風 桂

小さな流れの小さな鳥の様子だけに、より寒さが沁みます。情景がしっかり描けました。

冬の滝ことば少なく別れけり 良子

さびしい内容に厳しい「冬の滝」の組み合わせはわかりやすいのですが、作品としてより深みを目指すべく、季語の推敲を試みてみましょう。例えば「冬の梅」「さくらんぼ」などなど。

窓拭くもロボット任せ春隣 桂

床掃除のロボットは家庭でも普及していますが、窓を拭いてくれるロボットはビルでの作業でしょうか。「窓」とあると空が見えて「春隣」が活きています。

七十路の皺は勲章初鏡 都

勲章になるにはもう少し年を重ねてかな、とも思います。

一心に鎌倉彫や龍の玉 裕子

「彫る」を動詞としたい。「一心に彫る〇〇や」「一心に〇〇彫るや」など。

もろき世にかくも頑な梅蕾 隆子

少々理屈が前に出てしまいました。「梅真白」とか?原句は「もろき世にかくも頑な梅の蕾」。

どんど火に照らされ傘寿の幼顔 弘道

原句の「どんど火に照らされ傘寿の幼な友」ではただの説明。ここから一歩前へ。

いさみ来て今年は二分の梅見酒 隆子

ままならないのが花見のいいところ。原句は「いさみ来て今年も二分の梅見酒」。

「ネット句会」投句一覧(2月)

caffe kigosai 投稿日:2022年2月1日 作成者: mitsue2022年2月2日

2月「ネット句会」の投句一覧です。
参加者は【投句一覧】から3句を選び、このサイトの横にある「ネット句会」欄(「カフェネット投句」欄ではなく、その下にある「ネット句会」欄へお願いします)に番号と俳句を記入して送信してください。
(「ネット句会」欄にも同じ投句一覧があります。それをコピーして欄に張り付けると楽です)

選句締め切りは2月3日(木)です。みなさんの選と店長(飛岡光枝)の選はこのサイトにアップします。(店長)

(投句一覧)
1 鵯の声つんざくばかり梅三分
2 藁苞のやはらかき闇寒牡丹
3 老いて知る君の寂しさ龍の玉
4 無限なり茅の輪潜りて冬青空
5 本閉じて雪降る気配に耳澄ます
6 福袋開ける楽しさ買いにけり
7 病窓の夕空あはし春隣
8 畔川の小鷺なぶるや空つ風
9 梅が咲き雪降り積もる二月かな
10 日脚伸ぶ歩いてみるか二駅を
11 日脚伸ぶ病室からの笑ひ声
12 日は昇り西に満月蕪村の忌
13 動物図鑑古本市に日脚伸ぶ
14 冬の滝ことば少なく別れけり
15 天狼や人新世の地球なり
16 天よりの初景色かな七十階
17 大寒や宅急便の声響く
18 窓拭くもロボット任せ春隣
19 雪の句を遺して君は旅人に
20 初雪の街は静かに華やげり
21 出棺に日の射しきたり寒雀
22 手が触れて重なる想ひ歌かるた
23 七十路の皺は勲章初鏡
24 寒鯉の尾びれ撥ぬるを包丁す
25 霞ヶ浦風の強さよ白魚汁
26 一心に鎌倉彫や龍の玉
27 一枝の柊挿して眠りけり
28 悪夢はや獏に喰わせて大旦
29 もろき世にかくも頑な梅の蕾
30 ピッケルの響き氷壁の蒼天へ
31 どんど火に照らされ傘寿の幼な友
32 ゴドー待つ四温日和の父白寿
33 グレイヘアに揺れる心や初鏡 
34 からからと鳴る柊を挿しにけり
35 かはたれの毛布丸めて抱き枕
36 いさみ来て今年も二分の梅見酒

カフェきごさい「ネット句会」2月のお知らせ

caffe kigosai 投稿日:2022年1月31日 作成者: mitsue2022年1月31日

今週の立春を前に東京も寒い毎日が続いています。雪国のみなさんは例年以上の雪の量にたいへんな毎日かと思います。「カフェきごさい」ネット句会2月の締切は1月31日(月)です。どなたでも参加可能です。サイトの「ネット句会」欄から3句ご投句ください。

・このサイトの右側に出ている「ネット句会」欄より、3句を投句ください。

・2月1日中にサイトへ投句一覧をアップしますので、2月3日までに参加者は3句を選び、投句と同じ方法で選句をお送りください。

・後日、参加者の互選と店長・飛岡光枝の選をこのサイトへアップいたします。

「ネット句会」今年の初句会、力作をお待ちしています。(店長)

「カフェきごさい」ネット投句(一月)飛岡光枝選

caffe kigosai 投稿日:2022年1月26日 作成者: mitsue2022年1月26日

【入選】
花びら餅今朝作りしと隣から  弘道

作りたての、それもお隣からの花びら餅とはなんと美味しそうなこと。初々しい新年の句です。

老い二人餅鏡をもてあまし  弘道

大きすぎる鏡餅を飾るところでしょうか、鏡開きに食べきれないのかもしれません。原句は「老い二人鏡餅をもてあまし」。「餅鏡」は「もちひかがみ」。

雪衣纏ひて眠る梅林  和子

雪の下で春を待つ梅林。言葉を整理してより印象鮮明に。「うす雪を纏ひて眠る梅林」など。

タクト振る枝黒々と冬の星  裕子

星のまたたくなか、冬木の枝が風に揺れる寒々とした景。原句は「タクト振る枝影黒き冬の星」、中七の影は不要。何が言いたいかをより明らかにする工夫を。

朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」十二月

caffe kigosai 投稿日:2022年1月26日 作成者: mitsue2022年1月26日

新宿の朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」。十二月の兼題はサイトより、今月の季語「冬の月」、花「冬紅葉」、浪速の味「てっちり」です。

【特選】
青空に冬富士浮かべ太極けん  孝年

抜けるような青空に浮かぶ富士山のもと、一心に励む太極拳。富士山からの冷気が全身を巡るよう。原句は「青空に富士浮かびて太極けん」。

小春日や父に似た人通り過ぐ  守彦

映画にもなった山田太一の小説『異人たちとの夏』を思わせる一句。小春日が見せた父上の幻影。

【入選】
お多福の頬ふくふくと大熊手  勇美

いかにも幸いが寄ってきそうな大熊手。頬としっかり言って像が浮かぶ一句になった。

入浴剤柚子に譲りし冬至かな  孝年

いつものお気に入りの入浴剤も、冬至の柚子にはかなわない。

霧の湖つがひの白鳥溶けゆきぬ  和子

霧の中に消えてゆく二羽の白鳥。「溶けゆく」がいい。原句は「霧の湖つがひの白鳥溶けゆきて」。

雪降りて酔ひ深めけり河豚汁  涼子

「酔ひ深めけり」がいかにも河豚の味わいの感あり。雪と河豚の二つの季語が同等なので注意。

冬三日月ツンドラを切り裂かむとす  和子

ツンドラとまで言って大きな一句になった。原句の「ツンドラを切り裂かむとす冬三日月」では散文的で、句の迫力が出ない。

福達磨ちひさき福を選びけり  勇美

素直な心持が好もしいが、良い人すぎるのが少々物足りない。

駅を出た月が待つてる連れて帰ろう  守彦

あまりに美しい月なので、思わず口を出た一句。

年賀状今年限りと書く覚悟  弘道

人生にある様々な終わりのひとつ。「年賀状」から始まる句の姿がしっかりしている。「覚悟」が少々大げさか。

てつちりやあの世でも又喧嘩せん  光枝

浪速の味 江戸の味(二月) 白魚【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2022年1月20日 作成者: mitsue2022年1月20日

サイト「茨城をたべよう」より

“月も朧に白魚の篝も霞む春の空“で始まる、歌舞伎の白波もの『三人吉三』の名台詞。この「篝(かがり)」は江戸に春を告げる隅田川での白魚漁の篝火で、広重の浮世絵にもその情景が描かれました。

白魚漁は、白魚が産卵のため海から隅田川へ遡上する夜間に行われました。白魚は将軍家への献上魚で、特権を受けた佃の漁師と日本橋小網町の「白魚役」と呼ばれた漁師のみに漁が許されていました。早朝に水揚げされた白魚は、葵の御紋の御膳白魚箱に納められ江戸城に届けられたということです。

白魚が徳川家にとって特別な魚だったのは、三河時代から家康の大好物であったこと、白魚の頭部に透ける模様が葵の紋に似ているからなど諸説あるようです。

白魚(シラウオ)は、踊り食いで知られる素魚(シロウオ)と混同されがちですが、全く別の魚です。ハゼ科の素魚は活魚として出回りますが、シラウオ科の白魚はたいへん繊細で、空気に触れるとほとんどがすぐに死んでしまい、半透明だった体は白くなります。

雛の節句には白魚のすまし汁という風習が江戸時代からあり、大正時代まで続いていたそうです。東京の河川の水質汚染などで白魚がいなくなり、その風習が廃れたのは残念なことです。

芭蕉の句「明けぼのやしら魚しろきこと一寸」は桑名での作、白魚が名物の桑名地方に「冬一寸春二寸」という諺があるそうです。東京のさる寿司屋では、春に大きくなった白魚を蒸して丁寧に握る江戸前の寿司を復活させました。

かつては日本全国に生息していた白魚、現在は北海道、青森県、秋田県、島根県、茨城県などが主な産地となっています。茨城県の霞ケ浦ではかつては帆船での帆引き網漁で白魚を獲っていました。今では「寒引き」と呼ばれる寒中の漁が盛んで、春が待たれる時期の白魚も格別です。

冒頭のお嬢吉三の台詞はこう続きます。“(中略)ほんに今夜は節分か 西の海より川のなか 落ちた夜鷹は厄落とし 豆沢山に一文の 銭と違つた金包み こいつあ春から縁起がいいわえ”。

隅田川に蹴落とされた夜鷹のおとせさんには気の毒ですが、江戸っ子はこの名台詞に春の到来を感じたとか。春の縁起物とも言えそうな白魚の淡泊な味を楽しみたいものです。

掻き寄せて白魚はねる笊の上  光枝

今月の花(二月)連翹

caffe kigosai 投稿日:2022年1月20日 作成者: koka2022年1月20日

松の内も過ぎたころでした。そのプライベートクラブは主に各企業の役員たちが集まるところと聞いていました。

前の週にいけられた松や花をぬき、水を変えた花器のそばに、次にいけこむ花として古新聞紙の包みの中から小さな蕾が顔を出していました。連翹でした。五ミリにも満たない蕾にはわずかに黄色がさし、花は頼りなげな細い枝に健気に数センチの間隔でついていました。

花木(かぼく)と私たちが呼んでいる、花をつけた枝はこの季節になると急に出回り始めます。中でも次々に登場する黄色の花木たちは、春をだんだんと引き寄せてくれるようです。年末にコロリとした蕾をつける蝋梅にはじまり、年があらたまると連翹、山茱萸、万作と続きます。

連翹が出てきたということは いよいよ春がはじまるファンファーレが鳴ったのです。

連翹は枝の中が空になっているため、いけるときに矯めようとすると折れてしまいます。枝が長くなると弧を描くので、線を生かしていけるのがこの花木の特徴を生かすことにもなるでしょう。枝先が地に着くと、そこからまた根がでて伸びていきます。学名の「Forsythia suspensa」の「suspensa」は「伸びる」という意味があります。

かつて、この季節に訪れたドイツ、アラブ首長国、韓国、そして連翹の原産国とされる中国で、この花が待っていてくれました。ドイツでは交配によってやや大き目な花が咲きます。花冠は四つに割れ、葉は後から出てきます。夏には花に代わり濃い緑の葉をいけます。

連翹の種類は他に「シナレンギョウ」、その変種といわれている「チョウセンレンギョウ」があり、日本では固有の「大和レンギョウ」、「小豆島レンギョウ」もあり、後者は葉が出てから花が付くそうですが私は見たことはありません。

プライベートクラブの薄暗いエレベーターホールにいけられたこの連翹は、暖房のきいた空間ですぐに花が開くことでしょう。エレベーターのドアが開いたとたん最上階へ昇ってきた人々の目をパっと引き、黄金色の鮮やかさで季節を感じさせてくれるでしょうか。

この花が開く季節を迎えると、毎年新たな気持ちになります。お正月を迎えるためのいけこみやお稽古がある十二月末、そして年頭の、各所にいけられた祝い花の手入れの忙しい日々もひと段落。連翹が花材に出てくる頃は、私にとっての小正月というべきでしょうか。

この「カフェきごさい」に植物のことを書かせていただいて、今年で十年目に入ります。その第一回は連翹を書きました。新たなスタート、どうぞまた一年よろしくお願いします。(光加)

今月の季語〈二月〉 梅

caffe kigosai 投稿日:2022年1月17日 作成者: masako2022年1月20日

温暖化のせいでしょうか、私の住む南関東では年内に梅が咲き出すようになりました。そのころになると、咲いていないで欲しいと念じつつ梅林に立ち寄ったりもする、臍曲がりな私です。昨年末は冷え込みのおかげで、梅林は寒林の風情でしたが、それでもかそけき花を二、三輪見つけました。

もっとも梅は種類が多く、十二月から咲くものもあります。〈冬至梅〉〈寒紅梅〉は早々に盛りを迎えます。

寒の梅挿してしばらくして匂ふ       ながさく清江

朝日より夕日こまやか冬至梅         野澤節子

年が明けると私も素直に〈探梅〉のこころを抱くに到ります。春に魁けて咲く梅を〈早梅〉、早梅を求めて歩きまわることを〈探梅〉といいます。どちらも冬の季語です。

早梅の紅くて父と母の家             加倉井秋を(冬/植物)

早梅の発止発止と咲きにけり       福永耕二

日の当る方へと外れて探梅行         鷹羽狩行(冬/生活)

冬から始めましたが、〈梅〉自体は春の季語です。〈桜〉同様古来より暮らしに密接に関わってきた植物ですから、傍題も含めて季語は豊富です。

梅が香にのつと日の出る山路かな            芭蕉

しら梅に明くる夜ばかりとなりにけり        蕪村

我春も上々吉よ梅の花            一茶

芭蕉の句は『炭俵』所収。これを発句に弟子の野坡と歌仙を巻いています。「しら梅に」は蕪村の辞世句です。「ああ夜が明けてゆく……」。明け放たれるまでこの命はあるだろうか、美しい朝を見届けられるだろうか、と手を伸べているような句と私は解しています。一茶の句は作句活動が最高潮を迎える文化後期のもの。柏原を終の住処とし、妻を娶り、子を望みつつ生きる、この先の一茶を知る後世の者としては、何か空元気で我と我が身を奮い立たせているようにも思えてきます。

紅梅の紅の通へる幹ならん                  高浜虚子

老梅の穢き迄に花多し                       同

白梅のあと紅梅の深空あり                  飯田龍太

うすきうすきうす紅梅に寄り添ひぬ        池内友次郎

しだれ梅より見し城の優しくて           京極杞陽

暮れそめてにはかに暮れぬ梅林             日野草城

箒目の門へ流るゝ梅の寺                    上野章子

白梅、紅梅、薄紅梅、しだれ梅、老梅、……と梅そのものはもちろんのこと、梅林、梅園、梅の宿、……と梅の咲く場所を季語として詠むこともできます。

また季語は歳時記の植物の章にとどまりません。

庭の梅よりはじまりし梅見かな        深見けん二

梅見酒をんなも酔うてしまひけり       大石悦子

梅見茶屋ぽんぽん榾をとばしけり        皆川播水

〈梅見〉(生活の章)、〈梅見月〉(時候の章)、〈梅東風〉(天文の章)と、桜に少し早く、春を喜ぶ季語がたくさんあります。探してみましょう。(正子)

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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