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第六回 カフェきごさいズーム句会報告

caffe kigosai 投稿日:2023年9月12日 作成者: mitsue2023年9月12日

毎月1回ズームで行う「カフェきごさいズーム句会」、今月の句会報告です。
この句会はどなたでも参加可能です。ご希望の方は右のご案内から、どうぞ。

第六回 2023年9月9日(土)

飛岡光枝選
≪第一句座≫ (当季雑詠)
           
【特選】
猿の腰かけ木の魂喰うて太りけり     前﨑都
ふるさとの山は大なり栗ごはん      早川光尾
病室の窓から見えるだけの夏       上田雅子
廃屋を飲み尽くさむと凌霄花       藤倉桂
沈黙の半跏思惟像秋暑し         赤塚さゆり

【入選】
台風の置き土産なり虫合奏        早川光尾
Tシャツもくたびれ残る暑さかな     赤塚さゆり
草揺らし草揺らしては飛蝗かな      矢野京子
連山のくつきりと見え蛇笏の忌      斉藤真知子
蟹漁の港真つ赤に染まる秋        前﨑都
虫ごゑに五体傾くや仕舞風呂       藤倉桂
母癒ゆる猿のこしかけ神棚へ       前﨑都
灯篭や涙の川を消えてゆき        藤井和子
どれもこれも細き刀や秋刀魚買ふ     上田雅子
広島忌永久に怒れるゲンであれ      矢野京子
銀輪の向かふ奥能登秋の虹        花井淳
皆元気便り送らむ今年酒         藤井和子
底紅は眼を見開いて雨の中        葛西美津子
鯊ゐるかのぞく佃の舟溜り        葛西美津子
新生姜人肌色のなまめかし        矢野京子

≪二句座≫(席題、蜻蛉、稲妻)

【特選】
稲光あるはずのなき天守閣        伊藤涼子

【入選】
赤とんぼ人を待つにはあらねども     高橋真樹子
かつて居りし追い払ふ程の赤とんぼ    上田雅子   
親しげに帰郷の我に蜻蛉くる       斉藤真知子
ひねもすを谷地田に群るる蜻蛉かな    藤倉桂
鬼やんま一世教師で逝かれしか      前﨑都
稲妻や旅寝のシーツひやひやと      葛西美津子

浪速の味 江戸の味(九月) 鱸【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2023年8月25日 作成者: mitsue2023年8月25日

江戸前の鱸

日本全国の河川や沿岸に生息し出世魚として知られる鱸は、秋が最も風味がよく美味しいことから秋の季語となっています。

大きいものは1メートルを超える肉食の鱸は、下あごが突き出た大きな口を持つ、精悍な顔つきの魚です。背は黒灰色、腹部は銀白色という体色も存在感があります。

『平家物語』には、清盛が船で熊野参詣に向かった折、船に飛び込んできた大きな鱸を熊野権現の御利益だとして自ら調理し、みなに振舞ったという件があります。

鱸は江戸前の魚として知られ、江戸時代には白身の魚としては鯛に次ぐ人気だったと言われています。刺身はもちろん、膾や昆布じめにしたり、寿司のネタにも使われました。皮は炙り焼きにし、骨は出汁をとり一尾無駄なく食されました。

漁獲量は現在でも隣県の千葉県が日本一ですが、東京育ちの私にはそれほど馴染みのある魚ではありません。スーパーに並んでいるのを見かけることもほとんどありません。今回初めて自宅で塩焼きにして食べましたが、身はふっくらとして甘みのある旨さ。家庭で料理されることが少ないのはもったいないと思いました。

多くの鱸が水揚げされる千葉県の船橋漁港には、新鮮さを保つ「瞬〆すずき」をブランドとして売り出している業者や、鱸を使った料理を提供する店も増えています。湾岸に生息する鱸は、味が河川や海の環境に大きく左右されます。いつまでも江戸前の美味しい鱸を食べたいものです。

釣りあげん月呑みこみし大鱸  光枝

今月の花(九月) 麻の実

caffe kigosai 投稿日:2023年8月18日 作成者: mitsue2023年11月1日

彩色苧殻を使った作品

夏の終わり、いけばなの教室に花屋さんから花材が届きました。目を引いたのは、長さ80センチ程度のまっすぐな数本の棒。赤、青、黄と鮮やかに塗られ、手に取ればなんとも軽くおもちゃのような楽しさが伝わります。乾かした麻の茎に色を塗った苧殻です。

さわってみると縦にかすかにうねりがあります。軽いのは乾かされて中が空洞のためです。「取り扱い注意!折れやすいでしょう?」と説明をします。

お盆休みで実家に行っていた生徒が「苧殻ってご先祖様のお迎え火や、送り火に使うあの苧殻ですか?それに色をつけた、ということか」と手に取ってしげしげと見入っていました。

子供の頃、お盆にはいる日「さ、お迎えしましょう!」という母の掛け声の下、小さな庭に下り暮れていく夏の空を仰ぎ見ていると「危ないから近づかないで」とさらに母の声。

何本にも折られてほうろく皿に盛られた苧殻にマッチで点火すると、パッと燃え上がった炎がいつも見ている家族とは少し違ったそれぞれの表情を照らし出したものです。今や都会の集合住宅に暮らす身にとっては、思い出としてのみ残る光景となりました。

このころは、苧殻が麻布を織る繊維を取るために栽培した麻の、皮をはいだあとの茎ということを私は知りませんでした。

麻の栽培歴史は古く、起源前から存在していたとも言われ、日本のみならず今に至るまで人々の生活に寄り添った植物として知られています。

もみじの葉より少し切れが深いような形をしている麻の葉の模様は、子供が健康に育つようにという思いを表すそうです。昔、白地に紺の線で六角形の麻の葉が描かれた布が物干しざおに何枚も干してあるのを見て、この家には生まれたばかりの子供がいるのでは?と思ったものです。麻は成長するのが早く3メートルを超すこともあり、麻のようにすくすく育ってほしいという親の願いを表わしているのでしょう。

殻に守られた麻の実はヘンプシードと呼ばれ、必須脂肪酸や植物繊維が多く含まれたスーパーフードとして近年認識されています。古代中国では五穀のひとつとして知られていました。日本人にとっては七味のひとつとしてお馴染みで、中の一番大きいものが麻の実です。油分の多いことから食品のほかに石鹸やペンキの成分としても使われているということです。

不規則な生活をしている現代人には健康のバランスを取るため貴重なヘンプシードですが、最近気が付いたことがあります。長年着ていた長じゅばんの柄が源氏香の模様ということは知っていたのですが、下地の柄が麻の葉をデザインしたものでした。

思いがけないところで大人になっても麻の葉に守られていたのです。夏ももうすぐ終わり、単衣の着物は今年は着られるかなあ、とふと思った時のことでした。(光加)

第五回 カフェきごさいズーム句会報告

caffe kigosai 投稿日:2023年8月17日 作成者: mitsue2023年8月17日

毎月1回ズームで行う「カフェきごさいズーム句会」、今月の報告です。
この句会はどなたでも参加可能です。ご希望の方は右のご案内から、どうぞ。

第五回 2023年8月12日(土)

飛岡光枝選
≪第一句座≫ 当季雑詠             

【特選】
   日盛りのいま絢爛と金閣寺        伊藤涼子
   勝ち進むざんばら髪や大団扇        前﨑都
   夏の果ボトルシップに射す夕日      鈴木勇美
   太陽と同じ大きさトマト熟る       赤塚さゆり
【入選】
   炎昼やラーメンスープ飲み干せり     村井好子
   一粒も欠けぬかがやき巨峰盛る      伊藤涼子
   高く低く蛍連れ舞ひ星に消ゆ       藤井和子
   産毛なす白磁の肌や桃香る        伊藤涼子
   砲声のまだ鳴りやまぬ麦の波       早川光尾
   かたまって人上りくる墓参り       高橋真樹子
   桃太郎出よ大きく紅き桃         葛西美津子
   この暑さ五右衛門釜に入りしごと     斉藤真知子
   桟橋を這ひずる蛸や雲の峰        前﨑都
   亡き兄の笑顔も揺れて吊忍        早川光尾
   八月の影うづくまる上野かな       葛西美津子
   蟻の列ついてゆきたる子供かな      斉藤真知子   
   朝顔や今日も始まる町工場        赤塚さゆり
   ひと晩は星に抱かれキャンプかな     斉藤真知子
   大いなる墳墓を守り芒原         鈴木勇美

第二句座(席題、鰡、星祭り)
【特選】
   畑のもの供へる母の星祭り        藤倉桂
   荒縄で括りつけたり七夕竹        藤倉桂
【入選】
   七夕竹寄せ来る波の音を聞き       斉藤真知子
   ダイキリへカシスの赤み星祭       花井淳
   願い事に重くなりたり七夕竹        伊藤涼子
   鰡飛ぶやみなとみらいの夜景美し     伊藤涼子
   老いてなほ小さき願ひ星まつり       斉藤真知子
   七夕に生まれし吾子や二児の父       伊藤涼子
   白き糸白き短冊星まつり          葛西美津子
   ふるさとによき菓子ありて星祭       矢野京子
   七夕や遥かとなりし君の星         上田雅子

今月の季語(9月) 秋の海

caffe kigosai 投稿日:2023年8月17日 作成者: masako2023年8月17日

海無し県に生まれ育った私にとって、子ども時代の海は、海水浴に旅行の支度をして行く場所でした。同じくらいの年回りの子が海沿いの家から水着のまま飛び出してくるのを見かけては、羨ましく思ってもいました。その後も海よりは山、というより丘陵と縁が深く、多摩丘陵の一角に住みついて四半世紀になろうとしています。

そういう私ですが、昨年突如として海にご縁ができました。八月の終わりに松山へ赴いたあと、高松へ移動し、フェリーで男木島、小豆島、直島を回りました。ちょうど瀬戸内国際芸術祭の開催期間中で、野原にダイダラボッチ(のような巨大な作品)が脚を投げ出していたりして、日常とはまるで違う空間を味わうことになりました。新型コロナ禍から解放され切っていないころでしたので、人混みとは無縁の、のびのびした旅にもなりました。

《 瀬戸内の旅2022 》  髙田正子

高松へ

おつとめを果して秋の旅半ば

夕凪やいそひよどりの来る時刻

風音の中に波音星月夜

男木島

人形に雲見せてゐる花野かな

小豆島

昼顔や棚田に余る水の音

野にあればおのづと月を待つこころ

月白や潮干の径を鳥居まで

直島

ひらひらと沖を抜け行く白雨かな

睡蓮の花の切先閉ぢあへず

夏と秋が行きあう頃合でしたので、季語も行ったり来たりするにまかせました。瀬戸内に詳しい知人とふたりきりで回りましたので、安心してリフレッシュできた反面、作句のほうはほったらかしになりました。これらの句は、帰りの新幹線の車中で、もう忘れたなあとぼやきながらまとめたもの。やはり現地で句会をしたいものだと、今年は身近な方々に声をかけてみたところ、小さな句会ができる人数となりました。

秋の航一大紺円盤の中         中村草田男

「秋の海」という季語が使われているわけではありませんが、まずこの句を思います。今年は台風がのろのろと通り過ぎたあとでもあり、被害がなかったのならよいけれど、と気になります。

一つ島沖に浮かべて秋の潮    能村登四郎

大海原に乗り出すわけではありませんから、こちらの景が近いかもしれません。港を出てしばらく航くと、さっきまでいた陸地が島に見えてくることがあります。昨年は、航路の角度が変わるたびに島と見紛う山がありました。屋島です。調べてみると、江戸時代までは確かに島だったとか。那須与一が急に身近に感じられてきました。

秋の浪見て来し下駄を脱ぎちらし     安住 敦

今年は島に泊まります。豊島に新しくオープンした施設があり、運よくお借りすることができました。相部屋になる都合もあって、男性は高松泊まりに。女子会のような雰囲気で、下駄を脱ぎちらしてみるのも良さそうです。

波音が月光の音一人旅               坪内稔典

一人で出て瀬戸内で仲間と合流します。さて今年はどんな海の旅になるでしょうか。またいずれご報告できれば幸いです。(正子)

浪速の味 江戸の味 8月【半助豆腐】(浪速)

caffe kigosai 投稿日:2023年7月21日 作成者: youko2023年7月22日

夏の土用の丑の日には、身体をいたわり精の付く鰻を食べます。鰻の蒲焼の関東風は、背開きにして、白焼き、蒸す、竹串を使い、頭を落としてから焼くのが特徴ですが、関西風は、腹開きにして、蒸さず、金串を使い、頭を付けたまま焼き、最後に頭を落とします。甘辛いタレが鰻の蒲焼によく合い、鰻重、鰻丼にすると食が進みます。そうそう贅沢もできませんが、始末の精神を感じる料理を紹介します。

鰻の蒲焼の落とした頭を使い、焼き豆腐と炊き合わせにしたのが「半助豆腐」です。タレがしみ込んだ香ばしい鰻の頭を最後に加えることで、焼き豆腐の炊いたんの風味がぐんと増します。鰻の頭を「半助」と呼んでいます。その昔、一円を「円助」と呼び、鰻の頭ひと山がその半分の五十銭で売られていたからとか、いくつか説があるようです。

上方落語の「遊山船」にも「半助」が登場します。庶民の代表の喜六、清八(東京では熊さん、八っつぁん)が、行水を済ませて、難波橋の方へ夕涼みにやってまいります。橋の上は行き交う人で賑わっています。橋の下もなにやら賑やかです。見ると、大きな屋形船が大川へ出て行きます。夕涼みの船です。船には客と一緒に芸妓、舞妓、幇間が乗っており、板場、中居もいます。船上で美味しいものを食べつつ、お座敷遊びを楽しもうというなんとも贅沢な夕涼みです。

橋の上から船の様子を見て、出てくる料理をちゃかしていた二人ですが、黒っぽい四角くて長いものが皿にのせられて出てくると、あれは何やと喜六が清八に尋ねます。「鰻」だと聞いた喜六が「うちの鰻と形が違う。」「うちのんは、こんな丸いころっとしたんや。」と言い出します。清八が「お前の言うてんのは、半助言う鰻の頭や。あれは鰻の胴や。」と教えてやります。喜六は「鰻の胴は食べたことない。」てなことで、鰻の頭「半助」は、庶民にとって身近な食材だったようです。

暑気払ひ半助豆腐ありまつせ   洋子

 

今月の花(八月) 松虫草

caffe kigosai 投稿日:2023年7月19日 作成者: mitsue2023年7月19日

高原の滞在もあと少しとなるころ、母と私は地元の知人の案内でお花畑を見に行きました。

子供だった私はお花畑というのは都会の公園の花壇のイメージしかなく、きっとたくさんの花がかたまって一か所ににぎやかに咲いているのだろう、と期待をして歩き始めました。

道はすこし登り坂となり心地よい風が抜けていく頃、草むらの中に、細い茎の頭に薄紫の小さな花びらを中心からぐるりと付けた花がゆれているのを見つけました。直径5センチくらいだったでしょうか。

「あ、松虫草!ここにも!」気が付けば花は草むらのあちこちに咲いていたのです。お花畑のひとつを形作っていました。耳を澄ませばかすかに虫の声も聞こえてきました。

これが松虫草!と私はその名前が不思議でした。愛らしい清楚なたたずまいは昆虫の松虫とにわかに結びつきませんでした。知人は「松虫の鳴き出す頃に咲くからと聞いたことがありますよ」と教えてくれました。

「松虫といえば、あなたの小学校の入学願書をとりに行ったとき、教室から(あれ、松虫が鳴いている、チンチロチンチロチンチロリン)と一年生の女の子たちが先生のピアノ伴奏で一生懸命歌っているのが聞こえてきたの。たしか秋のはじめだったわ。私、何故かはわからないけれど いい学校だなあ、と思ったの」と母が言うのです。季節に合った歌を歌っていることだけが学校を選ぶ理由とは思いませんが、次の年私はその学校の一年生になりました。

日本に自生している松虫草はScabiosa japonicaです。同じ属名scabiosaを持つ植物は西洋松虫草(Scabiosa atropurpurea)やコーカサス松虫草(Scabiosa caucasica)など外国原産のものです。西洋松虫草は中央部が丸く高くなり、コーカサス松虫草は比較すると中央は平たく花は大きめです。園芸種として色も形も多数あり、どの種類もスカビオ―サと呼ばれ花店では一年中見かけます。

花の終わった状態がどこか丸い宇宙船を思わせる形になって売られているものもあります。ステルンクーゲルという名前は、ドイツ語では星の球体という意味だそうで、不思議な形はこれもスカビオサ?と思いますが、花が咲いている時に見ると確かにスカビオサです。

紫や白のほかピンクや赤や黄色、臙脂色、紺に近い青色のもの、細かい花びらの集まった手毬のような丸いもの、灼熱の都会の中で入った花屋さんの涼しいストッカーの中に、華やかなスカビオサを見つけることがあります。色や形は異なりますが、いずれもScabiosaの属名を冠する花たち。見ていると、あの薄紫の可憐な松虫草とチンチロリンという松虫の音がどこか遠いところから聞こえて来そうな気がしてくるのです。(光加)

今月の季語(八月) 秋の雲

caffe kigosai 投稿日:2023年7月17日 作成者: masako2023年7月19日

立秋を過ぎても暑さはおさまりませんが、空の色と雲の形がどことなく変わってきます。秋は風の音からと詠んだ古人もいますが、雲の様相から、といってもよい気がしています。

まず雲のキャンパスである空の句から読んでいきましょう。

秋空や高きは深き水の色             松根東洋城

秋空へ大きな硝子窓一つ                            星野立子

東洋城の空は深みがあって透き通った色です。空と線対象になった深い水まで見えてきそうです。立子の句は、外からの視線であれば、硝子窓に空が映っているでしょう。内からであれば、きれいに磨かれた硝子窓が切り取る空です。どちらの視線も、澄んで明るい空を捉えています。現実の秋の空は、晴れることもあれば雨雲に覆われていることもありますが、季語の「秋の空」はいつも爽やかに晴れ渡っています。

上行くと下くる雲や秋の天                       凡兆

秋空や展覧会のやうに雲                           本井 英

この二句には雲が登場しますが、主役はやはり空です。雲が上と下ですれ違えるほど高い空です。また、展覧会の絵のように、雲をいくつも展示できる広い空なのです。高く広く澄んだ空に浮いたり、漂ったりするのが「秋の雲」です。

ねばりなき空にはしるや秋の雲               丈草

噴煙はゆるく秋雲すみやかに                   橋本鶏二

台風一過の空を寝不足の目で見上げた朝、丈草の句を思い出したことがあります。鶏二の句は、同じような白さで空にあっても、動きが違うといっているのでしょう。

秋の雲立志伝みな家を捨つ                                   上田五千石

前の二句とは質感も情感も異なりますが、志を胸に身一つで、と考えますと、これもまた軽やか。「蟾蜍長子家去る由もなし 中村草田男」と合わせて読むと「家」の重さを実感します。

「秋の雲」は総称ですから、何雲を指してもよいはずですが、鰯の群れのようであれば「鰯雲」、鯖の背の模様のようであれば「鯖雲」、羊の群れのようであれば「羊雲」とその名を呼ぶでしょう。

鰯雲人に告ぐべきことならず                               加藤楸邨

妻がゐて子がゐて孤独いわし雲                           安住 敦

鰯雲甕担がれてうごき出す                                   石田波郷

楸邨も敦も暗い目をして雲に対しているのでしょうか。波郷の「甕」は野辺送りの甕でしょう。それに対して、

鰯雲鰯いよいよ旬に入る                                       鈴木真砂女

ああそうか昼食(ひる)は食べたのだ鰯雲       金原まさ子

こちらのあっけらかんとした生活感はどうでしょう。

鯖雲に入り船を待つ女衆                                       石川桂郎

鯖の背の斑紋を連想させる鯖雲が出現するのは、秋鯖の漁期と重なるのだとか。この句はまさにその景を示しています。

牧神の午後はまどろむ羊雲                                   高澤晶子

羊の群れのようだと空を仰ぎ、きっと良い天気なのでしょう、牧神のいねむりを想像しています。秋の空は広く、雲は軽やか。現実から空想まで、いろいろに詠み分けてみませんか。(正子)

 

第四回 カフェきごさいズーム句会報告

caffe kigosai 投稿日:2023年7月14日 作成者: mitsue2023年7月14日

ズームで行う「カフェきごさいズーム句会」今月の報告です。

第四回 2023年7月8日(土)

飛岡光枝選
≪第一句座≫ 当季雑詠

【特選】
笑はせて笑はせられてさくらんぼ     真樹子
抜けし我が羽根とも知らず踏みゆけり   真知子
誰待つとにあらねど風の竹床几      美津子

【入選】
ほととぎす止むを待つてのティーショット 光尾
夜濯や夜も明るき街に住み        都
艶やかな茄子を主役に夏料理       雅子
病む夫と歩幅合はせて茅の輪かな     桂
田の神が渡つて行くや青葉風       桂
目標の日に八千歩雲の峰         京子
朝一番生死確かむカブト虫        都
茅の輪くぐる少し変身したやうな     都
白蓮の夜明けの空に月残る        美津子
遠雷や眠りの淵をうろうろと       美津子

≪第二句座≫ 席題;甘酒・七夕

【特選】
暗く深き室にふつふつ一夜酒       美津子
七夕竹叶はぬ願ひずつしりと       雅子
  
【入選】
七夕はつれなき雨に流れゆく       和子
短冊に書くは体のことばかり       光尾
甘酒を啜り一息山の小屋         和子
世界中の星に願はん平和の世       雅子
一匙に母の笑顔や一夜酒         桂
我熱く夫は冷たく一夜酒         雅子
軒下に覗く七夕飾りかな         和子

  

浪速の味 江戸の味(七月) かき氷【江戸】

caffe kigosai 投稿日:2023年6月28日 作成者: mitsue2023年6月28日

蒸し暑い日本の夏を彩る「かき氷」。近年は様々なトッピングのかき氷も登場し、
幼い頃食べていたシンプルなかき氷とは別物の感があります。

平安時代の『枕草子』にかき氷が登場することはよく知られています。清少納言が「あてなるもの(上品なもの)」として「削り氷に甘葛(あまずら)入れて、あたらしき鋺(かなまり)に入れたる」と書いた当時の氷は氷室で保存した天然氷でした。

夏の氷が貴重だった時代は長く続き、江戸時代末には船で北国の氷が大量に運ばれるようになりましたが、それでも庶民の身近になったのは明治時代になってからです。

明治維新でいち早く開港した神奈川県の横浜は、様々な「日本初」が誕生した土地です。日本初のかき氷店も明治2年に横浜で生まれました。その後東京でも明治後半には、夏はかき氷、他の季節は焼芋、汁粉などを出す店が増えていきました。

遠い昔の氷室の時代から明治初期までは天然氷しかありませんでしたが、その後製氷技術の発展により氷は各家庭でも利用できる時代がきました。

何でも簡単に手に入るようになった時代の反動か、ここ十年くらい前から「天然氷」を売り物にしたかき氷店が急速に増えました。東京近郊では日光や秩父の天然氷がよく知られており、写真のかき氷は八ヶ岳の天然氷を使っています。

天然氷のかき氷はふんわりした食感です。冬の間、何週間もかけてゆっくり凍らせた天然氷だと思うと、心なしか上品な風味を感じます。鉋で削り、シンプルな蜜をかけ、銀の器で供す、そんな枕草子風(!)の削り氷を出す店がそろそろ出てくるかもしれません。

水平線に大きな夕日かき氷  光枝

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「カフェきごさいズーム句会」のご案内

「カフェきごさいズーム句会」(飛岡光枝選)はズームでの句会で、全国、海外どこからでも参加できます。

  • 第三十五回 2026年2月14日(土)13時30分
    (3月は第一土曜日・7日です)
  • 前日投句5句、当日席題3句の2座(当日欠席の場合は1座目の欠席投句が可能です)
  • 年会費 6,000円
  • 見学(1回・無料)も可能です。メニューの「お問い合せ」欄からお申込みください。
  • 申し込みは こちら からどうぞ

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スタッフのプロフィール

飛岡光枝(とびおかみつえ)
 
5月生まれのふたご座。句集に『白玉』。サイト「カフェきごさい」店長。俳句結社「古志」題詠欄選者。好きなお茶は「ジンジャーティ」
岩井善子(いわいよしこ)

5月生まれのふたご座。華道池坊教授。句集に『春炉』
高田正子(たかだまさこ)
 
7月生まれのしし座。俳句結社「青麗」主宰。句集に『玩具』『花実』『青麗』。著書に『子どもの一句』『日々季語日和』『黒田杏子の俳句 櫻・螢・巡禮』。和光大・成蹊大講師。
福島光加(ふくしまこうか)
4月生まれのおひつじ座。草月流本部講師。ワークショップなどで50カ国近くを訪問。作る俳句は、植物の句と食物の句が多い。
木下洋子(きのしたようこ)
12月生まれのいて座。句集に『初戎』。好きなものは狂言と落語。
趙栄順(ちょよんすん)
同人誌『鳳仙花』編集長、6月生まれのふたご座好きなことは料理、孫と遊ぶこと。
花井淳(はない じゅん)
5月生まれの牡牛座、本業はエンジニア、これまで仕事で方々へ。一番の趣味は内外のお酒。金沢在住。
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