昨年12月に刊行された福島光加さんの新刊『Koka A Passion for Ikebana』(英語版)のキンドル版、ペーパーバック版、ハードカバー版ができました。本書は、このサイトのエッセイをまとめた『花のテラスで』(2014年刊)、『花のテラスでⅡ』(2018年刊)〈共に花神社〉から48のエッセイを厳選、日本の古典文学の研究者で長年日本の大学で教鞭をとるジャニーン・バイチマンさんが英訳を担当しました。光加さんのいけばな作品もふんだんに掲載されたフルカラーの一冊です。刊行直後からドイツをはじめとするヨーロッパ、北米、南米からの反響が届いています。Amazon(洋書)にアップされていますので、ぜひご覧ください。(店長)
【問合せ】福島事務所 book@kokanote.com
カフェきごさい「ネット投句」(6月)飛岡光枝選
雷の大音響にはっと我に返った心持でしょうか。「神」という一字により、「雷」とニュアンスの差が生まれるのをよしとするかどうか。
忘れ草一輪残る大野原 和子
漱石に「萱草の一輪咲きぬ草の中」がありますが、こちらは一輪残った花。「忘れ」と「残る」がぶつかるので萱草の花としたいが、ほぼ漱石の句と同じになるので悩ましいところ。
旅人の仰ぐ空あり山法師 涼子
原句は「旅人の仰ぐ安らぎ山法師」。「仰ぐ安らぎ」は少々無理があります。
新玉ねぎ茎の青さの皮をむく 涼子
語順がねじれてしまいました。素直に作ると「茎青き新玉ねぎの皮をむく」でしょうか。率直に作るほうが伝わります。
麦の道母の棺に附いて行く 弘道
原句は「麦畑母の棺に附いて行く」。「麦畑」には作者の率直さが表れていますが、動きがほしいところ。
朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」(五月)
新宿朝日カルチャーセンターの「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、5月の季語「夏の風」、花「王冠百合」、江戸の味「初鰹」です。
【特選】
白南風やセーラーの襟翼めく 勇美
梅雨が明けた晴れやかな夏の風に吹かれる少女。シンプルな情景に青春が香る。白南風の「白」が「セーラー」「翼」と呼応して。
桑の葉の露拭く母の真似をして 弘道
忙しい養蚕農家は子供も重要な働き手。母の手元を見ながら、お蚕さんにあげる桑の葉を拭く。「桑」は春の季語だが、この句は「露」が季語のしっとりとした秋の句としたい。
雨脚を刈つてゆくなり草刈機 涼子
「雨脚を刈る」が秀逸。
背にはらむ麦秋の風ツーリング 涼子
前句同様、よく見る光景が的確な言葉でとらえられ印象深い一句に昇華している。この句では「背にはらむ」。
【入選】
黒百合の霧を纏うて一人立つ 和子
一人と擬人化して黒百合の存在感を強めた。
ままごとのお茶のお客や雨蛙 勇美
ほんとうに?と聞きたくなるが、かわいらしい雨蛙を見ているとそんな思いにも。原句は「ままごとのお茶のお客は雨蛙」。
初鰹棹しなはせて宙に舞ふ 涼子
「舞ふ」が作りすぎて実感と遠くなってしまった。「初鰹棹のしなつて宙を飛ぶ」など。
頂きを掴む右手に夏の風 和子
「頂を掴む」が力強く夏の風の句らしいが、より強い季語を選びたい。「頂きを掴む右手や大南風」など。
初鰹高らかに告げ島言葉 勇美
初鰹の喜びあふれる一句。島の言葉で鰹は何というのか聞きたいもの。原句は「初鰹告げて高らか島言葉」。
柔らかな日射し湛へし若楓 和子
若楓の葉の柔らかさではなく、日射しを柔らかいととらえて新鮮。「湛へし」→「湛へて」。
海界へ白帆弓なり大南風 涼子
海神の操る帆船のよう。
はちきんは酒豪揃ひぞ初かつを 涼子
高知の女性「はちきん」と鰹は少々付き過ぎだが、「初鰹」の「初」の勢いが感じられる。
森の奥王冠百合の花香る 光枝
浪速の味 江戸の味(七月) 江戸前にぎり寿司【江戸】
「鮓」はもともと魚類の保存方法のひとつで、古くから塩づけや粕づけが行われていました。魚を飯に漬けて発酵させた「熟れ鮓」は全国にあり、近江の鮒鮓はよく知られています。熟れ鮓を夏に漬け込むので「鮓」は夏の季語になったと言われます。
元禄時代になると飯に酢を加えた「早鮓」が生まれ、江戸前のネタを使った「にぎり寿司」が江戸っ子に大人気となりました。ちなみに「寿司」というお目出度い当て字は江戸で生まれたそうです。
当時のにぎり寿司は、おにぎりほどの大きなもので屋台で売られていました。それをひとつふたつ頬張ってさっと帰るのが粋と言われ、せっかちな江戸っ子にはぴったりの食事でした。
江戸前のにぎり寿司の特徴は、ネタを調理して使う、いわゆる「仕事」がしてあることです。小鰭の酢〆、鮪のづけ(醤油漬け)、穴子の煮物などがよく知られています。もともとは冷蔵技術が無い時代の知恵でしたが、現代ではこの丁寧な仕事が江戸前寿司の人気をより高めているのではないでしょうか。
江戸前にぎり寿司の夏のネタに「新子」があります。ニシン科の新子は出世魚で、大きくなるにつれ「コハダ」「ナカズミ」「コノシロ」と名前が変わります。「新子」が出まわるのは夏の三週間くらいと限られているうえに、身が小さく、一貫に多くの新子が使われるため、お値段もなかなかになるとか。新し物好きで見栄っぱりな江戸っ子をまねて一度はいただいてみたいものです。
川風にゆるる暖簾や鮓の見世 光枝
今月の花(七月) 青芭蕉
梅雨入りのころ、そろそろ夏の花材が見かけられるころとなりました。
この状況の中で、オンラインのデモンストレーションをお引き受けすることも多くなりました。対象は国内だけでなく、中には北に位置する国もあります。先日はドイツを中心とするヨーロッパ、来週はヨルダンのアンマンの支部に向け東京の本部からデモンストレーションで発信です。
「日本の旬の花材も見たいので使ってください」と言われ、その土地であまりみかけず、日本らしい旬のもので喜んでいただけるには何がいいかしら、と考え花屋さんに注文します。
北の国に向けて、例えば芭蕉の葉を使ってはどうでしょうか。
日本の芭蕉の北限はどのへんでしょうか。意外にどこでも見受けられます。私たちがせいせいとした気持ちで見上げるのは今から。葉の巻きがとけ、涼しげで青々しく、手にすれば風が渡ってくるような軽やかさのある、時には二メートルを超す大きな平たい葉。思わず扇いでしまいたくなります。丁寧に扱わないとすぐに則脈にそって横に切れてしまいます。直角に交わっている主脈も柔らかいのでこれも取り扱い注意です。
水が滴るような緑の葉の茎にハサミを入れるとサクッという音とともに切れ、その伝わってくる手ごたえから、これなら水も空気も通す構造と納得をするのです。
空気を通す、といえば私のあこがれは芭蕉布。琉球糸芭蕉から作られます。琉球糸芭蕉は、地下から出ている茎が折り重なって葉のようになっていくのですが、これを偽茎と言い、その繊維で糸が作られます。今では織り手も少なくなり高価なものとなったようですが、暑い東京でまとってみたらどんなに涼しいでしょう。
また美人蕉の愛らしい赤い花をいけるのもこの頃。姫芭蕉といって芭蕉とは近縁です。
近縁でいえば、実芭蕉が私たちの食生活に最も近いかもしれません。改良を重ねられたものがバナナです。八月、パプアニューギニアの祭りで、道端に売っていたバナナの数えきれないほど房の付いたものを、いけばなの花材として使いました。首相夫人も迎えたデモンストレーションでしたが、翌日の地元の新聞に「IKEーBANANA ’いけばなな’」バナナといけばなをかけてユーモアを交えて紹介されていました。現地では甘くなく料理としていただくバナナがよく食卓に上るのだそうです。
最大の歓迎として、地を掘って豚を一頭埋めてバナナの葉をかぶせ、野菜やスパイスなどとともに蒸し焼きにしてくださった地元の方たちのことを、芭蕉の葉を手にすると懐かしく思い出します。
小さいものから大きなものもある幅広い芭蕉の葉。せっかくなので使った後は乾かして再度使います。乾かしすぎて秋、冬を迎える頃には手に取ると、ぱらぱらと形がなくなるほど破れてしまいます。芭蕉はやはり夏のものだと思う瞬間です。(光加)
今月の季語(七月) 夏の星
月の季語を追う途中ですが、今月は星の季語を挟むことにしましょう。
〈夏の風〉〈夏の月〉のときと同様に、夏期の星をさす季語に〈夏の星〉があります。
アラビヤの空を我ゆく夏の星 星野立子
嘴あらば銜へむ夏の星赤し 正木ゆう子
子へ与ふ一字探しぬ夏の星 辻 美奈子
明治生まれの立子ですが、渡航経験は豊富です。アラビヤを目的地としたことはなさそうですから、インドからヨーロッパへ回った旅の際に上空を通過したのでしょう。魔法の絨毯でアラビヤの夜空を飛びゆくようでもあり、星々の間を抜けてゆく銀河鉄道のようでもあります。こんなことができるようになるなんて、と嬉々としていそうです。
天体の捉え方がユニークな正木さんは、夏の星をついばみたく思っているようです。赤い星はアンタレスでしょうか。苺、というよりカシスの味がしそうです。
辻さんは『真咲』という句集を出されたときに、句集名にはお嬢さん方の名前から一字ずつ貰ったとおっしゃっていました。夏の星を仰ぎながら探し当てたのは、さてどの文字だったのしょう。
熱帯夜に星を仰ぐこともあり得ますが、〈夏の星〉の句を読んでいると涼しいといわれなくても涼しくなってくるようです。
白髪の母似と言はれ星涼し 栗田やすし
星涼しアンデルセンの童話など 星野麥丘人
父祖の地に入りて微塵の星涼し 橋本榮治
栗田さんは今風にいうならば見事なグレーヘアの紳士です。真っ白でふさふさのシルバーヘアというほうが適っています。髪は「母」からの遺伝であったと判明するころには、「母」はかの世へ渡られているかもしれず。いよいよ涼しく星を仰ぐことにもなりましょう。
麥丘人は石田波郷、石塚友二の跡を継いで「鶴」の主宰を務めた人です。星空の見える(見えそうな)窓辺でアンデルセンの童話を子に読み聞かせたことがあったのかもしれません。その夜は、子のみならず父の夢にも涼しく星が降ったことでしょう。
橋本さんの「微塵の星」は銀河でしょうか。〈銀河/天の川〉は秋の季語ですが、帰省やキャンプはむしろ夏。そういうシチュエーションに〈星涼し〉は最適な季語といえそうです。
昨年は梅雨明けが八月に食い込みました。七月いっぱいずーっと梅雨(そんな日が来るなんて、と思っていましたが、今年は西日本の梅雨入りがなんと五月に!)。〈梅雨の星〉を六月限定の季語とは言いかねるようになってきました。さて今年は?
むささびや杉にともれる梅雨の星 水原秋櫻子
梅雨の星齢といふも茫々と 廣瀬直人
晩夏限定の星の季語もあります。〈旱星〉です。夜になっても全然涼しくならない! というときに登場しそうな季語です。
蛇・蝎・サザンクロスも旱星 鷹羽狩行
バーボンは荒くれの酒旱星 牛田修嗣
暑さに濁る大気を通過し、地上に光が到達するのは一等星でしょうか。旱星とは禍々しい名ですが、実は光の強い星なのでした。(正子)
カフェきごさい「ネット句会」6月 互選+飛岡光枝選
〔連中〕あきえ 都 良子 昌子 桂 雅子 光尾 すみえ 涼子 裕子 弘道 隆子 勇美 粗笠 利通 光枝
*お詫び* 投句欄4番の句の一字「掴」が?になっていました。大変失礼しました。お詫びいたします(店長)
≪互選≫
あきえ選
7 てきたうに相槌打つて冷奴 良子
19 学友と傘寿祝いの新茶汲む 昌子
24 香水の残り香に負ふ深手かな 隆子
桂選
22 幸せが跳ねて弾んで小鹿かな 雅子
34 薄暑めく踝ほどの川遊び 利通
41 面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
良子選
9 ひと休み世を遠くして飲むラムネ 昌子
17 夏服や藍色深き有磯海 裕子
20 繰り言は生きてる証冷奴 都
裕子選
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海 勇美
21 見つからぬ身の置きどころ毛虫かな あきえ
41 面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
都選
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
12 ランドセルが弾んで行くよ梅雨晴間 涼子
29 石楠花に雨ぽつぽつと峠越え すみえ
光尾選
9 ひと休み世を遠くして飲むラムネ 昌子
26 初夏や標どほりに山の寺 良子
37 八十路背広着て見る衣替 弘道
すみえ選
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
13 ワレワレハチキュウジンナリ熱帯夜 勇美
14 一寸の胡瓜かがやく花の先 涼子
勇美選
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
20 繰り言は生きてる証し冷奴 都
伊藤涼子
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海 勇美
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
40 蔓薔薇からみて静かなる真昼 光枝
雅子選
1 頼もしや義士より多し日傘骨 粗笠
7 てきたうに相槌打つて冷奴 良子
46 瑠璃蜥蜴水口はやも乾きけり 利通
弘道選
20 繰り事は生きてる証し冷奴 都
29 石楠花に雨ぼつぼつと峠越え すみえ
34 薄暑めく踝ほどの川遊び 利通
粗笠選
7 てきたうに相槌打つて冷奴 良子
29 石楠花に雨ぽつぽつと峠越え すみえ
30 田植え機の去りて田水の澄み初むる 裕子
昌子選
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海 勇美
7 てきたうに相槌打って冷奴 良子
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
隆子選
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
21 見つからぬ身の置きどころ毛虫かな あきえ
44 夕映えの心は詩人麦の秋 裕子
利通選
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑 あきえ
24 香水の残り香に負ふ深手かな 隆子
41 面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
夕闇迫るころに飛び交う蝙蝠。運河を往くダルマ船に夏の疲れが漂います。「傾く」にある不安感も「蝙蝠」に通じます。原句は「かわほりや運河に傾くダルマ船」。仮名遣いは作者の自由ですが、この句会は旧かな遣いで統一しています。
サイダーや今だけ君を独り占め 桂
サイダーを飲む喉元から目が離せない恋の句。「今だけ」がせつない。某飲料メーカーにぜひ売り込みたい一句です。
ふるさとや持ち重りする夏蜜柑 あきえ
強い酸味と苦みがある夏蜜柑は近年人気を落とし、甘夏蜜柑などがもてはやされています。そんな夏蜜柑は確かにふるさとへの思いに通じます。「持ち重りする」が秀逸。原句は「ふるさとは持ち重りする夏蜜柑」。助詞を消して散文から韻文へ。
昭和今明治のやうに夏の雲 弘道
司馬遼太郎が『坂の上の雲』で描いたように、近代日本へ向かう明治の勢いはどこまでも上る夏雲のようでした。「明治のやうに」と思い切った省略がいきいきとした句に。「昭和今」は、気持ちはわかりますが理屈に落ちてしまいます。例えば「湧き上がり明治のやうに夏の雲」のようにストレートに。
瑠璃蜥蜴水口はやも乾きけり 利通
田へ水を豊かに流していた水口の泥が乾きはじめ、日照りを予感させる季節。てらてらと輝く瑠璃蜥蜴が不安感を煽ります。上五の季語と中七下五が響き合う取り合わせの句です。
【入選】
ここ夜市手掴みで食うメロンかな 都
メロンのおいしさが伝わります。苦労された「ここ夜市」ですが、もう一苦労(工夫)を。「夜市の灯手掴みで食ふメロンかな」などなど。
てきたうに相槌打つて冷奴 良子
相槌を打つ方も打たれる方も冷奴をつつきながら。ここは冷奴でないといけない場面です。
ひと休み世を遠くしてラムネ飲む 昌子
「世を遠くして」が上手い。原句は「ひと休み世を遠くして飲むラムネ」。だらだらと最後まで続けないように。
マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨 雅子
「マンゴ」は栽培地域は限られますが夏の季語。上五中七はしっかり描写できていますが、「走り梅雨」が季語としてあまり効いていない。「マンゴ」の句として再考を。
ランドセル弾んで行くよ梅雨晴間 涼子
原句は「ランドセルが弾んで行くよ梅雨晴間」。「が」で句が散文になってしまいます。「晴間」が理屈、季語再考を。
ワレワレハチキユウジンナリ熱帯魚 勇美
意欲作ですが、原句の「熱帯夜」では茫洋としてしまいます。「熱帯魚」は一例ですが、より具体的に。
石楠花に雨ぽつぽつと峠越え すみえ
夏山登山でしょうか、石楠花の咲く頃の様子を丁寧に描きました。
田植ゑ機の去りて田水の澄みわたる 裕子
田植えが済んだ安堵感が伝わります。原句は「田植え機の去りて田水の澄み初むる」。
湯上りの枝豆ぷりつと顔を出し 光尾
ゆでたての美味しそうな枝豆を描きました。「顔を出し」が嬉しそう。ビール!ですね。
箱庭や鶫のこゑを遠近に 隆子
箱庭に鳥の声を取り合わせた新鮮な句ですが、「遠近に」が少々わかりにくい。「鶫の声の真上より」など言いたいことをより明確に。
髪染めて甲飾らん皐月晴 粗笠
『おくのほそ道』斎藤別当実盛のオマージュ。ご自身を鼓舞するように「皐月晴」としたところが上々。
面影は鱒二に似たり夏帽子 隆子
少しぱっちゃりとした丸眼鏡の井伏鱒二。帽子はカンカン帽でしょうか。「面影」とあるので「似たり」は取る工夫を。
夕映えて詩人のこころ麦の秋 裕子
麦畑を染める夕日に心までもが染まるようです。原句は「夕映えの心は詩人麦の秋」。
ネット句会(6月)投句一覧
6月「ネット句会」の投句一覧です。【投句一覧】から3句を選び、参加者はこのサイトの横にある「ネット句会」欄(「カフェネット投句」欄ではなく、その下にある「ネット句会」欄へお願いします)に番号と俳句を記入して送信してください。選句締め切りは6月4日(金)です。みなさんの選と店長(飛岡光枝)の選はこのサイトにアップします。
【投句一覧】
1 (岐阜和傘の骨四十八本と聞いて)頼もしや義士より多し日傘骨
2 おかつぱを振つて飛び散る夏の海
3 かわほりや運河に傾くダルマ船
4 ここ夜市手摑みで食うメロンかな
5 サイダ-や今だけ君を独り占め
6 ジュ-ンベリー今朝も勝者は小鳥たち
7 てきたうに相槌打つて冷奴
8 バラ大輪やはり女王陛下かな
9 ひと休み世を遠くして飲むラムネ
10 ふるさとは持ち重りする夏蜜柑
11 マンゴーの熟るる匂ひや走り梅雨
12 ランドセルが弾んで行くよ梅雨晴間
13 ワレワレハチキュウジンナリ熱帯夜
14 一寸の胡瓜かがやく花の先
15 堰越えて車道も越えて梅雨出水
16 夏空やかもめの翼流線形
17 夏服や藍色深き有磯海
18 街は雨六月ひらく赤き傘
19 学友と傘寿祝いの新茶汲む
20 繰り言は生きてる証し冷奴
21 見つからぬ身の置きどころ毛虫かな
22 幸せが跳ねて弾んで小鹿かな
23 甲羅干す子亀の前をあめんぼう
24 香水の残り香に負ふ深手かな
25 詩を語るしづかな眼青嵐
26 初夏や標どほりに山の寺
27 昭和今明治のやうに夏の雲
28 照り返し母の笑顔や田植笠
29 石楠花に雨ぽつぽつと峠越え
30 田植え機の去りて田水の澄み初むる
31 湯上りの枝豆ぷりっと顔を出し
32 廃線の跡を辿るや青嵐
33 梅雨夕焼つかのま廚の手とめて
34 薄暑めく踝ほどの川遊び
35 麦秋の褐色まぶし越日和
36 箱庭や鶫のこゑを遠近に
37 八十路背広着て見る衣替
38 髪染めて甲飾らん皐月晴
39 百合の香や夜のオフィスの融解点
40 蔓薔薇からみて静かなる真昼
41 面影は鱒二に似たり夏帽子
42 矢車草おかつぱ動くかくれんぼ
43 矢車草まず筆頭に風渡る
44 夕映えの心は詩人麦の秋
45 葉柳やマスク姿の黙黙と
46 瑠璃蜥蜴水口はやも乾きけり
47 冷やし酒京漬物を皿に盛り
48 鈴蘭よ聖母マリアの青色吐息
カフェきごさい「ネット投句」(5月)飛岡光枝選
白い花穂をなびかせて吹く湿気を帯びた風が茅花流し。そのけぶるような様子と自分の思いが上手く一句となりました。
【入選】
枇杷の実や昭和の窓の軋む音 勇美
高級な枇杷は贈答品として高値がつきますが、庭木としてもお馴染みの枇杷は、身近なおやつでした。句はそんな庭がある木造の家屋。「軋む」と昭和を音で表現して新鮮。
麦秋やハーモニカ吹き子ら帰る 弘道
一読、風景が目に浮かびます。これは作者が外から子供たちを見ている句ですが、「ハーモニカ吹き帰る夕」などとすると自分が句のなかに入ります。
柏餅2個入りパック買ひにけり 弘道
現代の柏餅。これが桜餅でもうぐいす餅でも上手くいきません。柏餅の元気さが生きる句です。数字も「2」としたのがいい。
新しき歯に晴々と青胡瓜 勇美
人間の歯は残念ながら生え変わらないので、「新しき歯」とは乳歯、あるいは大人の場合は義歯でしょうか。「晴々と」は気持ちはわかるのですが、もっと具体的だとより
胡瓜の「青」が生きると思います。「新しき歯にしやきしやきと青胡瓜」など。
鰹船一本釣りの背が並ぶ 涼子
鰹の一本釣りの様子を丁寧に描きました。動きがないので写真のようなのが残念。「鰹船一本釣りの背が躍る」など。
朝日カルチャーセンター「カフェきごさい句会」4月
新宿朝日カルチャーセンターの「カフェきごさい句会」。今月の兼題はサイトより、4月の季語「花惜しむ」、花「アスパラガス」、浪速の味「いかなごの釘煮」です。
【入選】
良く晴れて妻も年とり花見かな 守彦
あっけらかんとした気持ちのいい花見の句。「妻も年とり」にしみじみとした人生の喜びが感じられる。
穴子ずし漁獲減りしと友の文 弘道
穴子の産地の友からの文か。「漁獲減りしをなげきつつ」とするとより身に引きつけた句に。
南風水玉の裾まひあげて 勇美
夏の風のいたずら。勢いのある表現で句をいきいきとさせている。
この扉引けばブルース朧の夜 涼子
物語めいた一句。ことばの省略がよく効いている。
盃に花のこぼるる良き日かな 守彦
芭蕉の「木のもとに汁も膾も桜かな」を思わせる句。
ぐい呑に白き花びら舞ひ来たる 守彦
リズムがよく動きがあって句がいきいきした。「白き」がいい。
アスパラガスあらぬ方へと伸びゆけり 光枝




